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コルクのぶらぶら日記 

いつもぶらぶらしているようだけど....やっぱりブラブラしています。

京都 3月16日

2012-03-17 19:34:18 | 原発
 3月16日。朝目が覚めるのが怖かったです。テレビのニュースや携帯でYahooのニュースをみるのが恐ろしかったです。事態はどんどん悪化していました。「放射能、爆発で敷地に飛散か」
「4号機 建屋の壁に大きな穴2つ」「4号機燃料プールの水温上昇」「福島第1で400ミリシーベルト」「3号機核燃料プール 覆いなし」「福島第1制限値16倍の放射線」…いずれも15日から16日の朝にかけてのインターネットニュースの見出しです。妻や実家の両親を東京に残し、不安が募るが、しかたがない。

 「せっかくだから京都タワーにでも登るか。」
途中、娘のリクエストでスターバックスで朝食。目の前には以前、家族三人で旅行した時に並んだ思い出のバス停があります。京都タワーのお土産屋さんを物色して、「お母さんに何か食料を送ろうよ。」と娘。それはいい考えだと店のおばちゃんに商品を送れるかと聞きます。
「はい。送れますよ。どちらまでですか?」
「東京なんですけれど。」
「それは無理。ぜんぜん配送業者が動いていないんですよ。」
「えっ? じゃあいつぐらいになったら送れるんですか?」
「さあ、まったくわからないですよ。ああ、そーうですか。東京からいらしたんですか。東京も随分ゆれたんでしょうねえ。」
随分のんきなリズムで応えてくれます。それはそうですよね。ここでは別世界の出来事なのでしょう。
地震も。原発も。

京都タワーには「たわわん」というゆるキャラがいるとタワーのガイド係のおっさんが説明してくれます。
「たわわんというんですか。」
「はい。わりと有名なデザイナーが作ったそうですよ。ほかにも『ひこにゃん』なんてキャラクターもつくっているそうです。」
「へー。じゃあ一緒に写真とろうかなあ・・・」
娘の前ではこういったのんきな会話を交わしたけれど、そのあと、京都タワーから町を見下ろしながら、彼女の目を盗んで、僕はさめざめと泣きました。
この晴れた朝の京都の町、季節外れのまばらな観光客。ひとり記念写真を撮る韓国人男性。この日の光景を僕は一生忘れないでしょう。

 「お前も逃げろ」とすすめた元部下から返事がきました。

「今朝はお電話ありがとうございました。事態の深刻さは理解してるのですが、ここまで危険な状況だと移動中に被爆するリスクも相当たかいことと、今日も出社しなきゃならない妹を一人置いていくわけにもいかず…。とりあえず家から一歩も出ずに最悪の事態を覚悟したいと思います。」

これが日本人なのです….

 妻からもメールが来ました。 

「こちらで定期的にガイガーカウンターで値を調べています。
東京で大丈夫なら京都でも大丈夫でしょう。
今日は風が陸から海へふいているので。」

 
 ところで僕たちの泊まった京都の部屋ではCNNが見放題でした。ニュースは日本のTSUNAMIとFUKUSHIMAのnuclear reactor explosion(原子炉爆発)で持ち切りでしたね。新宿にいる特派員がアメリカのスタジオとやり取りをしています。僕の英語力では100%はわからないけれど、何度もmelt downという言葉が使われているのはわかりました。それからdesaster 、catastoropheという言葉も使われています。

 「そちらにいて日本のオフィシャルの対応はどうですか?」
「正直言って、こちらの情報はあまり信用できない。健康に影響ないといったあとで、やっぱり健康に影響があるといってみたり、避難範囲がころころ変わったり、それに最悪の事態に至ったときにどういう心配があるのかといったことを全く伝えようとしない。」と日本への不信感を露わにしていました。
実際、15日の午前の段階でフランス大使館は「10時間ほどで東京に弱い放射能が到達するおそれがある」として、都内在住の自国民に外出を控えるように勧告していたのに、一方、日本はといえばこの日、都内の観測施設で、通常の20倍以上の放射線量を観測しながらも、石原慎太郎都知事も政府も「専門家」も「ただちに健康に問題が生ずるわけではない」」と繰り返すのみでした。一体どちらが正しいのか? そもそも少しでも危険性があれば用心しろと勧めるべきではないのか。一方CNNではメルトダウンのカウントダウンが進行と繰り返し報じています。どうみてもあまり落ち着いていていい状況ではないようです。アメリカのシンクタンクもフランスの原子力安全期間も今度の事故はレベル6だと言い始めていました。それなのに何故「心配ない」のか。NHKとも民放のニュースとも温度差がありすぎるのだ。それは政府の報道管制のせいなのでしょうか。あるいは単に大口広告クライアントである東京電力に遠慮した結果なのでしょうか。ともあれ、この温度の違い、報道姿勢の違いはあらたな不安を感じさせました。

 
 いまのうちに準備すること。
水と非常食の買い出し。事態がさらに悪化した場合のさらなる避難場所の確保。親の世代の思い出話によく出てきていた「疎開」という言葉が頭に浮かびました。そして情報の確保。
幸い、ホテルの1階ロビーには簡単なビジネスセンターがあり、インターネットを有料で使うことが出来るということがわかりました。さらにフロントの女性からの情報収集。
「僕らのように東京から来ているお客さんも多いんですか?」
「そうですね。まだ観光シーズンではありませんが、少しずつ増えています。」
「やっぱり、地震や原発から逃げてですか?」
「そういった方も結構いらっしゃるようです。」
「そういった人たちと連絡というか、情報交換をすることは可能でしょうか?」
「それは、お客様のプライバシーに関わることですので、当ホテルとしてはご紹介するというわけにはいきませんが。」
そうか。他にも同じような考えの人がこのホテルにもいるのだ。そう思うと少し気が楽になりました。なにしろ、ここのところあまりにも自分と周囲の温度差があって、孤独感に苦しめられ続けていたものですから。自分だけ、頭がおかしいのではないだろうかと。

 この日、夕方の4時頃、自衛隊のヘリコプターが原発の上から水を落とす準備をはじめていると報道は伝えました。しかし、2時間後の6時のNHKのラジオニュースは、3号機の上空の放射線量が高すぎるため、本日の作業を断念したと伝えました。一方、僕はさらに事態が悪化した時に備え、仕事で知り合った、北九州の知人へ万が一の時はそこに避難させてもらうように段取りをつけはじめました。

 この日3月16日の朝日新聞の夕刊の見出しはこうなっています。

3号機 格納容器破壊か

運命の3月15日

2012-03-15 06:26:03 | 原発
 3月15日です。
多くの日本人が何らかの決断をした日です。

 去年の3月14日の夜から我が家では原発の状況をめぐって何度も何度も話し合いました。僕は3号機がプルトニウムを含む大変危険な原発であること、この状況では他の原子炉も連鎖的に爆発してさらに危機的な状況に陥る可能性があること、そうなった場合首都圏は逃げる人でパニックになる、あるいは道路が封鎖されて逃げる道が断たれてしまう可能性もあることを家族に話しました。普通の状況だったら家族3人でさっさと西に避難していたでしょう。しかし妻の父は前日手術を受けていました。そういった中で彼女は父を残して逃げるわけにはいかないと言いました。

 翌日、早朝娘と僕の二人で京都に向かう決断をしました。決断したのは7時ごろ。

その前後に2号機と4号機が爆発しました。

3月15日朝日新聞(夕刊)
圧力容器損壊か
放射能大量飛散の恐れ
 

3月16日朝日新聞(朝刊)
福島第一制御困難
4号機でも爆発、建屋に穴
周辺、高濃度の放射能

 

 妻を東京に残し朝11時出発の新幹線「のぞみ」。西に向かい車両がゆっくりと動き出した時に「お父さん息が苦しいの?」と娘に聞かれました。無意識のうちにそうなっていたんですね。
車内では電光掲示板が中部電力の驚くべき広告を流していました。
いわく。「CO2をださないクリーンな発電に取り組んでいます。」福島で何発も原発が爆発している中、これはいったいどういう了見なのでしょう。

到着した京都の町は計画停電もなく、空気も気兼ねなく肺いっぱい吸い込めます。

父と娘の6日間の闘いが始まりました。



1年前の3月14日

2012-03-14 06:23:41 | 原発
 3月14日です。
一年前の今日の朝、会社に行くため不安を抱えて駅のホームに向かいました。原発が爆発しても会社は活動しているなんてシュールだなあと思いながら駅に着くとこう構内は真っ暗。前日、東京電力は14日の6時20分から計画停電を実施すると発表していました。ここは停電ではなかったけれど、電気の使用をおさえていたのでしょう。
ダイヤも思いっきり乱れていました。駅員に聞くと今はなんとか動いているけれど帰りの便は保証出来ないとのことでしたので、割と遠距離から通勤している僕は会社に電話して休みをもらいました。少なくとも僕のやっているような仕事は人命に関わるものではないので、こんな日に無理して出社することはないと思いました。

 駅から自宅に向かう途中の青い空を憶えています。
フランス関連の知りあいに電話すると、フランス人は政府の指示で飛行機をチャーターしてどんどん帰国しているとのことです。やはり事態はそこまで深刻なのかと思いました。

 妻の父は地震のあった11日に入院し、この日14日に手術をうけました。
計画停電の恐れがあるため、手術の時間は午前中に変更になり、妻と娘は既に病院にいっていました。僕は近所のホームセンターで必要なものをそろえたりしながら自宅で待機していました。

 午前11時ちょっとすぎ、テレビは東京電力の福島第一原発3号機の爆発を伝えました。MOX燃料を使用しているあの3号機です。

14日福島中央テレビ撮影

 実はこの前後この原発近辺で大きなひき波が自衛隊のヘリにより発見されたと報じられました。
この爆発した状態のところにまた津波が押し寄せるのでしょうか? まるで映画のような破滅的な光景が頭の中に浮かびました。立っている膝から力が抜けて行きました。結局ひき波は誤情報でしたが、テレビ局内の騒然とした空気は電波を通して伝わってきました。

実は3号機が危ないという情報はこの日の朝日新聞の朝刊にも見出しになっていました。いわく、

3号機も爆発の恐れ

 つまり、こうなるかも知れないことは政府も東電もマスコミも知っていたのですよ。
それでも多くのいじましい日本人は、計画停電の混乱の中「会社」に向かっていたのですよ。彼らは我々の安全をなんだと思っているのでしょう。会社に向かうサラリーマンの後ろ姿は彼らの目にはどのように映っていたのでしょう。

 この日の夕方4時16分の枝野官房長官の記者会見での発言です。「周囲のモニタリングを注視をしているところでございますが、今のところ特段の観測値の上昇などは見られておりません。」これを観て「あんな爆発をしてそんなわけないだろうに。いったいどこで測ったんだ。あそこはプルトニウムを燃料にしていたんだぞ!」と心の中で叫びました。また、「御用学者」として有名になった東大の中川恵一という男がすでにこの日テレビに出演して「この程度の放射能なら健康に影響ないから大丈夫。」と言い始めていました。「この程度」だって? いったいどれだけ放射性物質が放出されたか見当もつかないうちからこの人はこんなことを言っていたんですよ。

 夕方無事手術の立会を終えた妻と娘が帰宅しました。
彼らは3号機の爆発を知りませんでした。疲れた彼らに、僕の考える今起きている現実を伝えるのは大変つらいことでした....

 それから1年後の今日、東京新聞の朝刊は1面で伝えています。

大飯1次評価大筋了承
原発再稼働 首相ら判断へ


皆さんはこの日本という国家をどう思いますか?

3月13日

2012-03-13 01:37:14 | 原発
 去年の3月13日は日曜日でした。
前日に1号機が爆発し、一夜明けたこの日は不安をかき消すために家族でコメディーのDVDを観ていたのを思い出します。

3月13日の朝日新聞朝刊の4面にはこんな見出しです。

被曝の不安 刻々拡散

避難時に被曝した可能性があるひとが160人にのぼることを伝えながらも、保安院は「直ちに健康に影響を与えるレベルではない」と説明していると伝えています。


一方で1面の見出しはこんな不気味な現実を伝えています。

3号機も冷却不全

経済産業省原子力安全・保安院は13日朝、東京電力福島第一原発の3号機で同日午前5時10分、原子炉を冷やす給水のしくみがすべて止まった、と東電からの通報を受けたと発表した。

そして炉心についてはこのように記されています。

水位が低下して燃料が水面に露出し、炉心溶融が起きた可能性がある。枝野氏は「炉心溶融が起きていることを前提に対処している」と述べた。


やっぱ、このときからメルトダウンしていると政府は思っていたんですよね。

さらにこの記事はこれまた次の不気味な一文で締めくくられています。

3号機では、通常のウラン燃料とは違い、ウランとプルトニウムを混ぜた「MOX燃料」を使ったプルサーマル発電が昨年9月に始まったばかりだった。

 この日は不安で一日中ワインを飲んでいました。プルトニウムという言葉を目にしたときはぞっとしましたね。僕は高木仁三郎の「プルトニウムの恐怖」という本を以前読んでいましたから。
翌日は月曜日です。原発が1基爆発し、さらにもう1基が危険な状態にあるなか、はたして今まで通り会社に行けるものなのだろうか...そう思ったのを思い出します。

去年の3月12日の日記です

2012-03-12 22:14:55 | 原発
去年の3月12日の日記を再掲載します。

やっちゃいましたね。
 放射能。

日本は広島、長崎と、その怖さをしっていたはずなのに。

「日本の原発は安心です」といままでいっていた「文化人」を「メディア」を糾弾しましょう。
かれらは許されるべきではない。
東京電力の社長は何故おもてに出てこないのですか?
彼の住所を知っている人は公開しましょう。

 一番恐れていた水蒸気爆発(実際には水素爆発)。
ついにやってしまいました。
マスコミはゴマカスのに必死です。

でもことの重大さを理解するには、たとえばあなたが少しで英語を理解するならば、海外のメディアに目を通してみるとよいです。

 まだ、他の原子炉も制御できていないとは。 恐ろしい....