〜かたることばが歌になる風になる〜

オペラ「カルメン」コンサート続き

私たち合唱は、ジプシーの女カルメンと一緒に働くタバコ工場の女工。
本番二日前「ゲネプロ(本番と同じセットの舞台でのリハーサル)」でのこと。
物語の序の部分の音楽が始まると、営倉の建物に見立てたセットの真ん中の階段を上りきった高台に、見張りを命じられてドン・ホセが立つ。一番目立つところ。
私たち11名は、女工の仕事の休憩時の場面として上手と下手から、客席から舞台に繰り出し、決められた位置に座ったり、カルメン派とそうでない者とがガンを飛ばす感じで、味方同士と歓談したりしながら舞台を練り歩くなどの決められた演技をする。ずぶの素人ばかりだが、堀口先生の演技指導を元に、あとは自分で考えてやるしかない。狭い練習室とセットの組まれた舞台とでは、音楽の流れと自分の動きとのズレがあって、本番直前の2回の舞台稽古では、合唱を歌う時点の位置がどのあたりになるのかを把握することや、私の場合では、歌いやすい場所、ホセが歌う時とのタイミングなどを聞いて絡むなどを自分なりに考えたりして動く。芝居をする人たちの稽古がどんなものなのかを少し理解できた。
私は高さ2メーターの高い所で、しかも1間(1平米)ほどの狭いスペースで、ホセに色気で誘惑を試みるが、純粋で真面目なホセは乗ってこない、というような演技をせねばならない。私と組んでいるのは合唱団の指揮者で、先生は高いところで動くのが怖いから演技は私に任せると言って、手前の階段に座って、おしゃべりのしぐさや、派閥の違うグループの女工を見て「やなやつらねぇ」と言った表情を出したりすることに専念していた。
本番の舞台セット。
ホセが「La voi la!(ラ ヴォヮ ラ・There she is!・彼女がいるよ!)」と2度歌いそのあと合唱。「La voi la! voi-la la Carmen ci-ta(ラ ヴォヮ ラー ヴォヮーラ ラ カルメン チッタ・彼女がいるよ!)」
狭い練習室と違って、舞台では、序奏が鳴って出ていって階段の途中ですぐ最初の合唱になる。見張り役で立っているホセを色気で誘惑するような動きのところも、いつもの音楽の流れと少しズレていった。
私はいつものように彼の腰に手を回すと、これまでは彼が胸のところで組んでいた手が、この日は腰の後ろに来ていて一瞬彼の手に触ってしまってギョッとしてしまった。しかもホセがカルメンに呼びかけるように歌うところで私が芝居しているので、ジャコミさんも今までと違ったからか、途中の歌の出を間違えてしまって、それが可笑しかった。この演目を何度も歌っているはずのプロでもこういうことがあるんだと思った。ゲネプロの録画を見ると私の動きは何となく中途半端。合唱のあとのホセの歌が終わってから演技に入っていこうと決めた。
コンサート当日「花座」のほそみっちゃんが来てくれて、感想のメールに「楽しかったです。小編成(ピアノ中心に、フルート1本、ヴァイオリン一人、打楽器一人)でこれだけの作品に仕上げるのは大変な労力が費やされたことと想像しています。やりたいことをやる!の一心が結集され、お客様に感動を与えたと思いました。オペラを見る機会がない方々にオペラの面白さを普及することができた演奏だったのではないでしょうか」と。
私たちは、堀口先生の演出力、企画力、情熱に押されてできてしまったところがある。勿論カルメン、ホセ、その他の歌い手の方々が素晴らしいのは言うまでもない。それに小編成とはいえ、安心して歌える一流の演奏家の小オーケストラ。満席に近い客席の方に向かって、楽しくて踊り出したいような気分で思いっきり歌ったのは、私だけではないと思う。私のことをほそみっちゃんは「堂々とされていました。ひょっとして、歌の世界に進まれても(専門はピアノなので)、何かやらかされたのでは、と妄想してしまいました」と、ほめてくれてるのか、怖がっているのかお上手?を言ってくれていた。
それにしてもコーラス「コットンキャンディ」のみんなの度胸には脱帽だ。
合唱は1幕最初の10分ぐらいで終わるので、最後の出演者全員のカーテンコール直前まで客席で観ることができた。お客さんの笑いを誘う場面もあって、とてもリラックスして楽しんで下さっている雰囲気が漂っている。
カルメンの終演後、ロビーの一角に設けられたサロンで、堀口先生の「若手音楽家の会ピアチェーレ」の会員さんの軽食付きコンサートが催され、ジャコミさんや他の出演者の方の歌を聴くことができた。
ジャコミさんの「オーソレミーヨ」と堀口先生との素敵なデュエット。お二人は、ジャコミさんのお国スイスの劇場で、4年間、年間に90回ぐらいにもなる公演で共演された仲。少し音が消えたりしてまずいところがあるが、とてもリラックスして楽しい雰囲気は感じ取れると思う。「カルメン」のコンサートが終わってもバンバン歌えるそのエネルギーを頂き、至福の時間を共有させて頂いた。今回は、今まで合唱で歌っていなかったところを合唱で歌う演出が好評だったとのこと。「来年も」とおっしゃって下さったことを励みにがんばろう。「色気を出して誘惑する」なんてしたこともないので、初めての練習の時「酔っ払いじゃないんだから」と堀口先生からの、笑いながらのダメ出しも良い思い出となった。

活動を終了した「女声合唱団風」のこと、「コーラス花座」のこと、韓国ドラマ、中国ドラマなど色々。

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