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ポートランド日記(後)

2月13日(土)

 いよいよ本番の日。演奏会場は市内の「ティファニー・センター」。結婚式なども行われるイベントホールで、夜7時から開かれるミロンガ(タンゴのダンスパーティー)の中のコンサートとして行われます。昼間のうちに入ってサウンドチェック。音響スタッフとのやりとりももちろん英語なので、「モアギター、アッププリーズ(?)」など不明なお願いをしたもののそれなりに伝わったのでひと安心。

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 メンバー全員の曲と3人の曲を舞台上で合わせて一旦家に戻り、着替えてお出かけ。ちょっと雨が降り始めたものの、夜の会場はドレスアップした人々でいっぱい。本番までの時間は緊張をほぐすため、ステージ横で変な顔の写真をとったりして過ごします。

 とても興味深かったのが、イベントの進行が日本のミロンガととてもよく似ていること。きっとブエノスアイレスのスタイルによく似ているからだと思うのですが、まずは自由に踊る時間があり、その中でコンサートが始まります。もちろん演奏中もみなさんは踊っています。最初のステージが終わると、司会者からイベントの告知があって、プロのダンサー(バレンタンゴの場合はイベントのインストラクター)数組によるデモ舞踊があり、次のステージへという構成。

 

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 日本でもそうなのですが、すごいのはこうした生演奏によるステージでは1曲ごとにミュージシャンに対して喝采に近い拍手を送ってくださること。演奏に対してそうしていただけるのはとてもうれしいことであり、こちらも逆に自分たちの演奏だけでなく、いかに気持ちよく踊ってもらえるように演奏するかに気をどんどん向けたくなります。むしろそうして場が一体になったときにこそ喜びを感じます。

 スタンバイ。紹介のアナウンスに続いてショーがスタート。いつもレポートでは演奏が始まってしまうと詳しい表現がうまくできずいつも申し訳ないのですが(何しろ音なので…)、このステージにかけるジョーの気持ちの強さははっきりと伝わってきます。このために青木さんや私をアメリカまで呼んでくれたことを忘れてはいけません。微妙なニュアンスまでアレンジされた譜面でアンサンブルを構成する様式美としてのタンゴから、シンプルなコード譜だけでそれぞれの持っている技術を即興的にぶつけあう「パリージャ」まで、2ステージは本当にあっという間でした。

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 ここ数年は私自身いろいろなユニットで並行して活動させていただいているので、一週間以上をひとつの本番のためだけに集中して準備したのは久しぶりかもしれません…合宿恐るべし。久しぶりのこの感覚を海外で思い出すというのも不思議な感じです。ひとつのことだけに専念できるのも、複数のことをできるだけ同じ力で同時にやれるのも、どちらも実際にはとてもむずかしいことですが、少なくとも私にとってはこの一週間はとても貴重な時間でした。

 外に出るころにはもう大雨。フロアではとうとうチャカレーラまでかかりだして後ろ髪状態ではありましたが、余韻を十分にいただきながら会場を後にしました。

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2月14日(日)

 さすがにきのうは使い切ってしまったので、もう今日以降何があるかは分からずぼんやりしています…。ジョーとKimikoさんから「この日の昼間はハイチ大地震のチャリティーイベントがある」と聞いて、急に演奏モードに戻ります。

 昼食は市内のメキシカンファーストフード店でブリトーを食べます。軽くしようとしたつもりが、このサイズすごいです。コンビニで売っていてレンジで温めるあれとはわけが違います。ボンレスハムほどのサイズがボンレスハムほどの重さで出てきました。チャリティーの前にお腹いっぱいになってしまうのはちょっと考えてしまいますが、こうして食べ物をたくさん食べられることに感謝するための重要な機会なのだと思いました。 

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 会場は「The Old Church」という建物。名前のとおり、現在は教会としてではなく、多目的スペース、特に音楽ホールとして使われているようです。主催のピアニスト、マイケル・アレンさんと握手。

 マイケルさんはここで今週末「Share The Love」という企画を開いています。さまざまなゲストを招いてのコンサート。待っているとどんどん出演者が集まってきます。若いバイオリニストの兄ちゃんがいると思ったらなんとマイケルさんの実の息子!でした。

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 300名ほどの客席はすでに満席。まずはピアノソロから始まります。マイケルさんのピアノはゆっくりと、森の中で静かに湧き出る泉のように入ってくる美しい音色です。ターナーのバイオリンも透明感あふれるすてきな演奏した。

 ジョー、青木さんとのトリオで後半に登場。私のギターソロでも一曲、カルロス・ガルデルの「El dia que me quieras」を演奏しました。MCで「The day you love me」と訳してしまったのですが、お客さんは笑いながらうなずいてくれたので、きっとニュアンスは伝わってくれたと…。

 ゴスペル歌手のジュリアンさんは楽屋に入ってきた時点で発しているオーラがすごいです。ステージ上でのその歌声は圧倒的な声量と存在感、本当にメッセージが天に届きそうです。教会で聴けるなんて!

 このコンサートはもちろん、実際にハイチで被災されている方が聴くことのできるものではないし、チャリティーという言葉、と始めたらきりがないけど、ただ単にコンサートの収益が寄付されるだけでなく、そこで音楽を共有した人たちから発せられた「何か」に感動して家に帰れるのは、きっとすばらしいことだと思います。

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 この日はバレンタインデー。マイケルさんはこの日の夜も別のチャリティーを企画していて、こちらは小児まひの子どもたちを支援するためのコンサート、パーティー形式でその場で資金を募るスタイルだそうです。ちなみに写真では見づらいかもしれませんが、ピアノを弾くマイケルさんのひざの上には彼の一番新しい赤ちゃんがいます。愛に正直に、愛をみんなに、このコンサートの場にいられたことに感謝です。

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2月15日(月)~16日(火)
 
Mounthood

 ポートランドでの滞在もあと少し。週末はずっと曇りか雨が続いたのですがようやく晴れて気持ちのいい天気です。演奏の日程も終わったのでいろいろ観光とかしたいと思ったのですが、ジョーに最初に連れて行ってもらったのは市内西側にある高台。ここから市街地をのぞむことができて、空気が澄んでいるので東にそびえるフッド山(3,429m)がくっきり見えます。ここで…個人的には満足してしまいました。なんともインドア・ミュージシャンな感じです。

 そのまま市内に入り、初めてJimさん&Kimikoさんのお店におじゃまします。アジアの骨董品を扱った大きなギャラリーで、日本や中国の陶器やたんす等の古民具を中心に所狭しと並んでいました。奥には企画展示があり、その名も「Shunga Show」(!)。圧巻です。

 さすがに春画は紹介できないのでストリートカー(路面電車)の写真をどうぞ。

Streetcar01

Streetcar02

Streetcar03 

 スーパーでの買い物。おみやげは専門店よりご当地スーパーが魅力的。ナッツやドライフルーツ、調味料などを手に入れます。チョコレートも大量に置いてありました。チョコばかりがクローズアップされるのは日本だけと思っていましたが、あるいは逆輸入?アメリカではバレンタインデーは男女ともにカードやプレゼントを贈る習慣があるそうです(新聞広告にはなぜかWiiとか載ってました)。

Chocolates 

 夜はちょっとぜいたくしてステーキハウスへ。アメリカでもステーキはレストランでは決して安くはないと思うのですが、きっと寿司みたいな存在なのでしょう。サイズも12オンス(約340g)からというのがアメリカン。ここでToshiさんが演奏していると聞いていたのですが、この日は残念ながら別のギタリスト。しかしこの人がまたうまいんです。声をかけたところペルー出身のマリアーノさん。Toshiさんとはもちろん友人で、最終日にもまたミュージシャンと知り合いになれたのもご縁です。

…まだまだいたいところ、レポートはここまで。久しぶりの海外、しかし一旦出てしまうと一気にフットワークが軽くなって、いつでもどこでも行けるような気がしてしまいます。魔法がかかっているうちに次の旅を決めてしまおうかな…その機会を心から楽しみにしています!

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