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『風博士』ストーリーと感想

2020-08-23 10:39:54 | テレビ
WOWOWライブで2020.3.21(土)放送の舞台、日本文学シアターvol.6【坂口安吾】『風博士』を録画したものを観ました。
感想を備忘録として書きます。

※ネタばれがありますのでご注意ください。
※文中の敬称は省略させていただきます。





【番組の詳細】
中井貴一、段田安則、吉田羊、趣里、林遣都、渡辺えりらが出演。坂口安吾へのリスペクトから書かれた北村想の新作。
過酷な時代を生き抜く純粋な魂に胸打たれる感動作。


【ストーリー】
敗色濃厚な戦時下。大陸で生き抜くフーさんという男がいた。彼は軍人相手の娼館を経営している。
風を読み、風を知るその男の周りには、どこか不思議な人々が集まってきて……。
 

【感想】
戦争という重い題材を扱いつつ、どこか懐かしく、ほっこりするような気分になる不思議な作品。全体を流れるトーンや風情がそうさせるのかもしれない。
美術はとてもシンプルで転換もほぼほぼない。背景に空が広がり、ネコジャラシがぽつぽつと生えている。夕焼けになったり、満天の星空になったりする。これがとても美しく郷愁を誘う。

太平洋戦争の末期、敗戦の色が濃くなっている頃、大陸の前線基地に軍人専用娼館があった。経営者は元々学者で、軍の要請で風船爆弾の開発に関わっていた人物だ。風を読むからフーさんと呼ばれ、風のように飄々として穏やかな男。
フーさんの会社の従業員、平たく言えば娼婦の梅花、鶯も曰くありげ。実は鶯は敵国の間諜、スパイだった。
自分で志願した19歳の少年兵は、両親が間諜で逮捕された過去がある。その過去から汚名を注ぐつもりで志願してきた。
大尉はある風変わりな少女を連れてきて、この娼館で預かって欲しいとフーさんに頼みこむ。大尉の同胞の妹だという。幸子という少女は目の前で両親と兄を敵の攻撃で一度に亡くし、以来そのショックで心が壊れたままだ。今で言うPTSDだろう…。実は大尉も自国のために、敵国の間諜をしていたのだった。

戦争の最中でも若い少年兵と幸子に淡い恋が芽生える。ほっ。。とする間もまく、少年兵は敵の銃弾を受け貫通銃創で死んでしまう。幸子は二度も目の前で兄(兄と混同している)を亡くし号泣する。

「この戦争は誰が始めたんだろう?」
少年兵が生前、抱いていた疑問に答えは出たんだろうか…。そこには一体何があったというのだろう…?

ラスト、皆で改造したオートバイに乗り脱出を図るシーンは、ほっ。。として後味がよかった。

シス・カンパニーの作品は俳優陣が実力者揃いだし、奇をてらったり、ファン層目当てのキャスティングもしないし、落ちついて安心して観ていられる良質の作品が多いと思う。


【余談】
戦争を題材にしている作品は映像でも舞台でも、あまり観ないことにしている。それは決して無関心ということではなく、観ていて辛くなってしまうから…。
自分自身は戦争を知らない、全く知らない。それでも親や親戚から子供の頃に、少しは話を聞いた記憶がある。子供心にも聞きながら、まるで別の世界のお話のように感じていた。あのデパートが並ぶ大通りが瓦礫の山だったとか…。その傷跡は欠片もなかったから…。
決して忘れてはいけない時代の事柄。全く知らない自分。平和で豊かな時代に生まれ育ち、こうして生きていることにどこかしら罪悪感のようなものをずっと感じていた。
だから余計に戦争を題材にしている作品が苦手なんだと思う。他人事のように思えないから…。


【リンク】


過去のシス・カンパニー作品の記事はこちら。 → 「シス・カンパニー公演 『叔母との旅 TRAVELS WITH MY AUNT 』」



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