歌舞伎座千穐楽、閉場式から一週間がたちました。
観終わったあとは、あの場に立ち会えたという喜びでいっぱいだったのですが、昨日のズームインと中村屋特番を観ていたら、もうあの場所に行けないんだという実感がひしひしと湧いてきて切なくて涙が出てしまいました。
ズームでは福助さんが歌舞伎座内を案内し、思い出を語るというもので、今となっては見ることのできない楽屋の流しや押し入れの中まで見せてくれました。
窓もちゃんと開かない位老朽化してるので改修は仕方ないけど、愛着のある場所がなくなるのは寂しいと語る福助さんの切なげで複雑そうな表情が印象的でした。
中村屋特番は勘太郎君と愛さんの結婚エピソード、1年半の公演の様子、最年長のお弟子さん小山三さん、千穐楽の様子などを取り上げてました。
歌舞伎役者の舞台裏は普段見ることができないので実に興味深かったです。
そして波野家の家族の絆の固さにはいつもほろっとさせられてしまいます。
お母さんが梨園に慣れない愛さんを気遣う姿、七之助くんがお兄さんの結納で「よかったよかった」と涙する姿、勘太郎くんが名古屋平成中村座で肩を捻挫してても舞台に立つ役者魂、そして好き勝手やってるように見えて、実は一番の努力家で、人との関わりを大事にし情に厚い勘三郎さん。
特に勘太郎君の代役を務めようとした時、結婚式のスピーチで愛さんの亡くなったお母様のことを話した時、小山三さんが復帰された時の涙にはグッとくるものがありました。
本当になんて魅力的な人達なんでしょう、中村屋さんが色んな人に愛される理由が分かるなぁって改めて思いました。
また、千穐楽では拍手が鳴りやまなかったのにカーテンコールをしなかった理由が分かり、すごく納得してスッキリしました。
歌舞伎座千穐楽を終えてなんとなく歌舞伎とはちょっと距離を置こうかな、と考えてる自分がいたけど、こんな素晴らしいエンターテイメントを観ないのはもったいないなぁって思いました。
実はコクーンも赤坂も観るつもりはなかったけど、やっぱり観ておかなきゃダメだろうなぁ。
で、番組観てたら忘れないうちに閉場式の私の怒涛の一日のことを書かなきゃと思ったので覚えてる範囲で感想を。
千穐楽3部は私も緊張していて浮足立ったいたので、気づいたら終わってしまったという感じで、歌舞伎座を出た後もなんかお別れしたりないなぁという気持が残っていました。
なので閉場式に行きたい気持ちはあったけど千穐楽が終わるころには当日券売り場にすでに長蛇の列が出来ており、体調もあまり良くなかったので私は徹夜は無理だなぁと半ば諦めていました。
でも前日の夜、眠ろうとしても気になって気になって眠れなかったので深夜2時にやっぱりダメもとで行ってみようと決断。
それからお風呂に入り支度をし、4時に家を出発。歌舞伎座についたのは朝5時半。
すでに行列は歌舞伎座の周りを囲んでおり、ちょうどお稲荷さんの前あたりまで列が伸びていました。
前後には若い方からお年寄りまで、歌舞伎座の最後に立ち会いたい!という熱い思いを抱いた方ばかりだったので、すぐに意気投合し、好きな役者についてや、歌舞伎座の思い出など、歌舞伎談義に花が咲き、待ち時間用に本やipodを持って行ったけど全く必要がなく楽しい時間を過ごせて、並ぶのが全く苦ではありませんでした。
そうこうするうちに(9時位かな)係員さんが整備をし始め、人数を数え出したので聞いてみると、ちょうど私達のところで、「たぶん並んでてもチケットは回ってきません」との厳しいお言葉。
すでに前に150人は並んでいたのでダメもととは思っていたけど、せっかく3時間程並んだのにあぁそうですか、で帰れる訳もなく、もちろん周りも私のずーっと後の方たちも誰一人帰ろうとはしませんでした。(この時点で行列は歌舞伎座の周りを半周はしてました)
どうしても歌舞伎座に入りたい私達、幕見席90席は指定席のみで立ち見はないとのことだったので、係の方に皆で「どうして立ち見を入れないのか、立ち見でいいから入れてほしい」と必死で頼んでみたのですがダメとのこと。
さらに徹夜組の中には取れたチケットをオークションに売り出している人がいる(ほんと悪質、許せません!)からせめて一人一枚の販売にしてほしいと申し出る方もいたのですが、「係の方は決まりなので・・・」とおっしゃるばかりで、もうダメかもムードの中、それでも皆で「大丈夫、大丈夫」と励ましあいながら並び続けました。
いよいよ10時、チケットが発売開始したのですが、席を選べるため列が全然進まない・・・。
そして係員さんから発せられる「夜の部一等席売り切れましたー!」の声。
そのうち夜の部が先に全部売り切れ、昼の部一等、二等も売り切れ、「もう三等しか残ってません!」ってところで30人は並んでたので周りは皆顔面蒼白。
私も前の方と手を取り合って祈るような気持ちでいたら、私よりずっと後ろの方が、「もうすぐだからきっと大丈夫ですよ」と声をかけてくださり、自分だってチケット取れないかもしれないのになんでそんな優しい言葉をかけてくれるんだろうって思ったら涙が出そうでした。
すでに昼の部は開場しており、私がチケットを買えたのが11:35、残り10枚ちょっとっていうところでギリギリ買うことができて本当にラッキーとしか言いようがありません。
ダメだと思っていたのでチケットを手にした時はほんと手が震えました。
前に並んでいた奥様と意気投合したので2人で並んで一緒に見ることになり、喜びも倍増。
でも、私たちの後ろには始発で並んでも買えない方が大勢いたので心苦しい気持ちでした。
やっぱり最後なんだから立ち見を入れてでもより多くのファンに見せてあげたらよかったんじゃないのかなって思ってしまいました。
開演間近だったのですぐさまお弁当を買い、4階まで駆け上がったのでバッタバタだったし、寝てないから疲れはピークだったけど、興奮していたので全く疲れと眠気はありませんでした。
そうこうしてるうちに開演。
まずは松竹の大谷会長の挨拶。3分位。
次に歌舞伎界を代表する立役8人による舞踊「都風流」。
都風流は久保田万太郎が作詞を担当し、演奏会用に昭和22年6月に初演されたものとのこと。
明治・大正期の浅草周辺の風物を、初夏から晩秋にかけて組唄的に描いたもので、浅草のお富士様、隅田川の白帆、ほおずき市、草市の宵月、虫売り、菊供養、べったらなどの今日も多くの人に愛されている東京の年中行事、江戸の風情などが読み込まれているんだとか。
特に舞台装置はなく、いたってシンプルな舞台に舞台中央のせりから8人が上がってくるという登場。
確か上手から團十郎、勘三郎、吉右衛門、菊五郎、幸四郎、仁左衛門、三津五郎、梅玉さんの並びだったと思います。
それぞれ違う色の色紋付にお揃いの色(ベージュ?)の袴姿に扇を持って8人が並ぶ様子は素踊りなので顔は作っていなくても相当の迫力があり圧巻の一言。
だって同じ芝居でこのメンツが揃うということってまずないですから、すごいことだと思いました。
全員で踊る時の振りはほとんど揃ってないのにはびっくりでしたけど、それぞれの個性が見て取れたし逆に味があって面白かったです。
それから一人、二人が前に出て踊り継ぎ、他の人は長椅子に座って様子を見ているというスタイルだったのですが、神妙な顔つきで左手を着物の中に入れて扇をゆらゆらさせて座っている姿が皆さん美しい!
皆さんかっこよすぎて、誰を見ていいんだか悩んでしまいました!
その中でもやはり人間国宝の菊五郎さんは貫禄があって、かっこよかったです。
時間が15分位と短くて、もっと観ていたかったです。
10分の幕間を挟んで「京鹿子娘道成寺」の道行より鐘入りまでを。
これは玉三郎さんと菊之助さんの二人道成寺の花子五人バージョンというなんとも豪華な演目。
花子には玉三郎、時蔵、福助、芝雀、魁春さんの名女形と呼ばれる5人。
この中で娘道成寺を見たことがあったのが玉三郎さんだけだったのですごく新鮮だったし、5人の花子なんてなかなか見れるものじゃないのでこちらも」とっても貴重だと思いました。
時間はたっぷり一時間以上あったので大充実でしたし、まさに歌舞伎座の最後を締めくくるのにぴったりな演目でした。
まずは道行、福助さん。流し目が色っぽい花子でした。
そしてすっぽんから玉様。
玉様の硬質な美しさは神々しくてうっとり。
5人の中で一番踊りなれているからか、振りが一番綺麗だなあって見てました。
その後誰が何を踊ったか記憶が曖昧でしたが福助さんのブログによりますと・・・
金冠・言わず語らずを時蔵さん。
まり唄は五人で、三段笠は芝雀さん。
恋の手習を玉三郎さんと福助さん。
山づくしを玉三郎さん、時蔵さん、芝雀さん、福助さん。
ただ頼めを魁春さん。
振り鼓を魁春さん、玉三郎さん。
幕切れの鐘入りは五人・・・とのことでした。
もちろん玉様が一番美しくて好きなんですけど、次に時蔵さんの花子が清楚で凛とした雰囲気があって素敵で、いつか時蔵さん一人での花子も見てみたいなって思いました。
途中まり唄などで5人が同じ舞台に立った時はもうとにかく華やかで、客席から大きな歓声とほうっとため息が上がっていました。
幕切れの鐘入りは鐘の上に玉様と魁春さん、鐘に寄り添うように時蔵さん、芝雀さん、福助さんが並ぶ格好。
こんな光景もう二度と見れないかも、と考えたら本当に頑張って並んで甲斐があったなとしみじみ思いました。
そういえば玉様はもう一人で娘道成寺はやらないんですよね・・・確かに体力的に厳しいのかもですけど、一度見てみたいなぁ。
所化は種太郎、萬太郎、巳之助、竹松、壱太郎、新悟、右近、廣太郎、種之助、米吉、廣松、隼人、児太郎でした。
舞い尽くしの部分はなかったような・・・
10分の幕間の後は、人間国宝の芝翫さん、富十郎さん、藤十郎さんによる口上。
芝翫さんが一番最初に挨拶されたのだけど、体調が優れないのかとても弱弱しく、声もあまり聞きとれませんでした。
たぶん歌舞伎座の思い出や襲名時のエピソードを語っておられたと思います。
自分は3年後の新歌舞伎座には立てないなんておっしゃって笑いを誘っていたけど、笑いごとではなく、是非とも3年後も元気なお姿を見せてほしいものです。
藤十郎さん、富十郎さんはまだまだ若い、ということを強調されていて新歌舞伎座に立つ意欲満々といった感じ。
特に富十郎さんの声は4階にまではっきり響き渡り、すごいなぁって感心してしまいました。
ここで幕間が45分間。その間舞台のスクリーンが出て「歌舞伎座を彩った名優たち」が上映されました。
時間がたっぷりあったので、歌舞伎座の一階から三階の隅から隅まで歩いて回ることが出来、しっかりと見納めすることができました。
一階ロビーはまるで着物の品評会のようなゴージャスな着物を着た方で溢れていて、見ているだけですっごく楽しかったです。
また芸能人も沢山いらしていたようで、私は瀬戸内寂聴先生、三田佳子さん、吉行和子さん、あとなんでも鑑定団の「いい仕事してますね」の中島先生をお見かけしました。
売店はほとんど売り切れていたのですが、食品系は最後だからかほぼたたき売り状態。
豆花を買って帰りました。あと小倉モナカも食べました。
最後は手締式。
てっきり幹部俳優だけだと思っていたので、幕が開いて舞台上に200人の俳優が表れたのにはほんとにびっくりしました。
もうこれだけいたらお目当ての役者さんを探すのが大変です。
幹部俳優が一列目で御曹司が二列目、三列目、といった感じ。
菊五郎さんは一番右端でした。
菊ちゃんはどこ?と思ったら一際色が黒い松録さんの隣ですぐわかりました((笑)
海老様もすごいオーラと目力だったんですぐわかりました。
真ん中の方に猿之助さんがいらっしゃったので雀右衛門さんのお姿を探したけれど、残念ながらいらっしゃいませんでした。
それにしてもすごい眺め、こうやって最後勢ぞろいしたことで、最後が締まったので見れてよかったです。
芝翫さんの挨拶のあと、藤十郎さんによる一本締め。綺麗に揃って、なんだか清々しい幕引きで閉場式は終わりました。
終わってからはしばらく歌舞伎座を近くで、また遠目で眺め、ご一緒した奥様と記念に写真を撮り「またどこかの劇場で会いましょう」、と握手をして別れ歌舞伎座をあとにしました。
一睡もしてなくて体はボロボロだったけど、そんなことを吹き飛ばす位の貴重で素晴らしい舞台を見ることが出来、そして一緒に並んだ方々との素晴らしい出会いがあって、最高に幸せな一日でした。
歌舞伎座の歴史を感じさせる外観や、重厚感のある内装、いろんなものが揃う売店、レストラン、定位置だった狭い3階の座席、一度だけ経験した桟敷席、一階席、二階席、そして歌舞伎座にしかない幕見席、全てが大好きでした。
さようなら歌舞伎座、沢山の思い出をありがとう。
歌舞伎座さよなら公演
歌舞伎座 閉場式
平成22年4月30日(金)
一、御挨拶
松竹株式会社 会長 大谷 信義
久保田万太郎 作詞
吉住慈恭/二世稀音家浄観 作曲
一、都風流
菊五郎
吉右衛門
仁左衛門
勘三郎
三津五郎
梅 玉
團十郎
幸四郎
一、京鹿子娘道成寺
玉三郎
時 蔵
福 助
芝 雀
魁 春
一、口 上
芝 翫
富十郎
藤十郎
一、歌舞伎座手締式
幹部俳優出演
御 礼
松竹株式会社 社長 迫本 淳一
観終わったあとは、あの場に立ち会えたという喜びでいっぱいだったのですが、昨日のズームインと中村屋特番を観ていたら、もうあの場所に行けないんだという実感がひしひしと湧いてきて切なくて涙が出てしまいました。
ズームでは福助さんが歌舞伎座内を案内し、思い出を語るというもので、今となっては見ることのできない楽屋の流しや押し入れの中まで見せてくれました。
窓もちゃんと開かない位老朽化してるので改修は仕方ないけど、愛着のある場所がなくなるのは寂しいと語る福助さんの切なげで複雑そうな表情が印象的でした。
中村屋特番は勘太郎君と愛さんの結婚エピソード、1年半の公演の様子、最年長のお弟子さん小山三さん、千穐楽の様子などを取り上げてました。
歌舞伎役者の舞台裏は普段見ることができないので実に興味深かったです。
そして波野家の家族の絆の固さにはいつもほろっとさせられてしまいます。
お母さんが梨園に慣れない愛さんを気遣う姿、七之助くんがお兄さんの結納で「よかったよかった」と涙する姿、勘太郎くんが名古屋平成中村座で肩を捻挫してても舞台に立つ役者魂、そして好き勝手やってるように見えて、実は一番の努力家で、人との関わりを大事にし情に厚い勘三郎さん。
特に勘太郎君の代役を務めようとした時、結婚式のスピーチで愛さんの亡くなったお母様のことを話した時、小山三さんが復帰された時の涙にはグッとくるものがありました。
本当になんて魅力的な人達なんでしょう、中村屋さんが色んな人に愛される理由が分かるなぁって改めて思いました。
また、千穐楽では拍手が鳴りやまなかったのにカーテンコールをしなかった理由が分かり、すごく納得してスッキリしました。
歌舞伎座千穐楽を終えてなんとなく歌舞伎とはちょっと距離を置こうかな、と考えてる自分がいたけど、こんな素晴らしいエンターテイメントを観ないのはもったいないなぁって思いました。
実はコクーンも赤坂も観るつもりはなかったけど、やっぱり観ておかなきゃダメだろうなぁ。
で、番組観てたら忘れないうちに閉場式の私の怒涛の一日のことを書かなきゃと思ったので覚えてる範囲で感想を。
千穐楽3部は私も緊張していて浮足立ったいたので、気づいたら終わってしまったという感じで、歌舞伎座を出た後もなんかお別れしたりないなぁという気持が残っていました。
なので閉場式に行きたい気持ちはあったけど千穐楽が終わるころには当日券売り場にすでに長蛇の列が出来ており、体調もあまり良くなかったので私は徹夜は無理だなぁと半ば諦めていました。
でも前日の夜、眠ろうとしても気になって気になって眠れなかったので深夜2時にやっぱりダメもとで行ってみようと決断。
それからお風呂に入り支度をし、4時に家を出発。歌舞伎座についたのは朝5時半。
すでに行列は歌舞伎座の周りを囲んでおり、ちょうどお稲荷さんの前あたりまで列が伸びていました。
前後には若い方からお年寄りまで、歌舞伎座の最後に立ち会いたい!という熱い思いを抱いた方ばかりだったので、すぐに意気投合し、好きな役者についてや、歌舞伎座の思い出など、歌舞伎談義に花が咲き、待ち時間用に本やipodを持って行ったけど全く必要がなく楽しい時間を過ごせて、並ぶのが全く苦ではありませんでした。
そうこうするうちに(9時位かな)係員さんが整備をし始め、人数を数え出したので聞いてみると、ちょうど私達のところで、「たぶん並んでてもチケットは回ってきません」との厳しいお言葉。
すでに前に150人は並んでいたのでダメもととは思っていたけど、せっかく3時間程並んだのにあぁそうですか、で帰れる訳もなく、もちろん周りも私のずーっと後の方たちも誰一人帰ろうとはしませんでした。(この時点で行列は歌舞伎座の周りを半周はしてました)
どうしても歌舞伎座に入りたい私達、幕見席90席は指定席のみで立ち見はないとのことだったので、係の方に皆で「どうして立ち見を入れないのか、立ち見でいいから入れてほしい」と必死で頼んでみたのですがダメとのこと。
さらに徹夜組の中には取れたチケットをオークションに売り出している人がいる(ほんと悪質、許せません!)からせめて一人一枚の販売にしてほしいと申し出る方もいたのですが、「係の方は決まりなので・・・」とおっしゃるばかりで、もうダメかもムードの中、それでも皆で「大丈夫、大丈夫」と励ましあいながら並び続けました。
いよいよ10時、チケットが発売開始したのですが、席を選べるため列が全然進まない・・・。
そして係員さんから発せられる「夜の部一等席売り切れましたー!」の声。
そのうち夜の部が先に全部売り切れ、昼の部一等、二等も売り切れ、「もう三等しか残ってません!」ってところで30人は並んでたので周りは皆顔面蒼白。
私も前の方と手を取り合って祈るような気持ちでいたら、私よりずっと後ろの方が、「もうすぐだからきっと大丈夫ですよ」と声をかけてくださり、自分だってチケット取れないかもしれないのになんでそんな優しい言葉をかけてくれるんだろうって思ったら涙が出そうでした。
すでに昼の部は開場しており、私がチケットを買えたのが11:35、残り10枚ちょっとっていうところでギリギリ買うことができて本当にラッキーとしか言いようがありません。
ダメだと思っていたのでチケットを手にした時はほんと手が震えました。
前に並んでいた奥様と意気投合したので2人で並んで一緒に見ることになり、喜びも倍増。
でも、私たちの後ろには始発で並んでも買えない方が大勢いたので心苦しい気持ちでした。
やっぱり最後なんだから立ち見を入れてでもより多くのファンに見せてあげたらよかったんじゃないのかなって思ってしまいました。
開演間近だったのですぐさまお弁当を買い、4階まで駆け上がったのでバッタバタだったし、寝てないから疲れはピークだったけど、興奮していたので全く疲れと眠気はありませんでした。
そうこうしてるうちに開演。
まずは松竹の大谷会長の挨拶。3分位。
次に歌舞伎界を代表する立役8人による舞踊「都風流」。
都風流は久保田万太郎が作詞を担当し、演奏会用に昭和22年6月に初演されたものとのこと。
明治・大正期の浅草周辺の風物を、初夏から晩秋にかけて組唄的に描いたもので、浅草のお富士様、隅田川の白帆、ほおずき市、草市の宵月、虫売り、菊供養、べったらなどの今日も多くの人に愛されている東京の年中行事、江戸の風情などが読み込まれているんだとか。
特に舞台装置はなく、いたってシンプルな舞台に舞台中央のせりから8人が上がってくるという登場。
確か上手から團十郎、勘三郎、吉右衛門、菊五郎、幸四郎、仁左衛門、三津五郎、梅玉さんの並びだったと思います。
それぞれ違う色の色紋付にお揃いの色(ベージュ?)の袴姿に扇を持って8人が並ぶ様子は素踊りなので顔は作っていなくても相当の迫力があり圧巻の一言。
だって同じ芝居でこのメンツが揃うということってまずないですから、すごいことだと思いました。
全員で踊る時の振りはほとんど揃ってないのにはびっくりでしたけど、それぞれの個性が見て取れたし逆に味があって面白かったです。
それから一人、二人が前に出て踊り継ぎ、他の人は長椅子に座って様子を見ているというスタイルだったのですが、神妙な顔つきで左手を着物の中に入れて扇をゆらゆらさせて座っている姿が皆さん美しい!
皆さんかっこよすぎて、誰を見ていいんだか悩んでしまいました!
その中でもやはり人間国宝の菊五郎さんは貫禄があって、かっこよかったです。
時間が15分位と短くて、もっと観ていたかったです。
10分の幕間を挟んで「京鹿子娘道成寺」の道行より鐘入りまでを。
これは玉三郎さんと菊之助さんの二人道成寺の花子五人バージョンというなんとも豪華な演目。
花子には玉三郎、時蔵、福助、芝雀、魁春さんの名女形と呼ばれる5人。
この中で娘道成寺を見たことがあったのが玉三郎さんだけだったのですごく新鮮だったし、5人の花子なんてなかなか見れるものじゃないのでこちらも」とっても貴重だと思いました。
時間はたっぷり一時間以上あったので大充実でしたし、まさに歌舞伎座の最後を締めくくるのにぴったりな演目でした。
まずは道行、福助さん。流し目が色っぽい花子でした。
そしてすっぽんから玉様。
玉様の硬質な美しさは神々しくてうっとり。
5人の中で一番踊りなれているからか、振りが一番綺麗だなあって見てました。
その後誰が何を踊ったか記憶が曖昧でしたが福助さんのブログによりますと・・・
金冠・言わず語らずを時蔵さん。
まり唄は五人で、三段笠は芝雀さん。
恋の手習を玉三郎さんと福助さん。
山づくしを玉三郎さん、時蔵さん、芝雀さん、福助さん。
ただ頼めを魁春さん。
振り鼓を魁春さん、玉三郎さん。
幕切れの鐘入りは五人・・・とのことでした。
もちろん玉様が一番美しくて好きなんですけど、次に時蔵さんの花子が清楚で凛とした雰囲気があって素敵で、いつか時蔵さん一人での花子も見てみたいなって思いました。
途中まり唄などで5人が同じ舞台に立った時はもうとにかく華やかで、客席から大きな歓声とほうっとため息が上がっていました。
幕切れの鐘入りは鐘の上に玉様と魁春さん、鐘に寄り添うように時蔵さん、芝雀さん、福助さんが並ぶ格好。
こんな光景もう二度と見れないかも、と考えたら本当に頑張って並んで甲斐があったなとしみじみ思いました。
そういえば玉様はもう一人で娘道成寺はやらないんですよね・・・確かに体力的に厳しいのかもですけど、一度見てみたいなぁ。
所化は種太郎、萬太郎、巳之助、竹松、壱太郎、新悟、右近、廣太郎、種之助、米吉、廣松、隼人、児太郎でした。
舞い尽くしの部分はなかったような・・・
10分の幕間の後は、人間国宝の芝翫さん、富十郎さん、藤十郎さんによる口上。
芝翫さんが一番最初に挨拶されたのだけど、体調が優れないのかとても弱弱しく、声もあまり聞きとれませんでした。
たぶん歌舞伎座の思い出や襲名時のエピソードを語っておられたと思います。
自分は3年後の新歌舞伎座には立てないなんておっしゃって笑いを誘っていたけど、笑いごとではなく、是非とも3年後も元気なお姿を見せてほしいものです。
藤十郎さん、富十郎さんはまだまだ若い、ということを強調されていて新歌舞伎座に立つ意欲満々といった感じ。
特に富十郎さんの声は4階にまではっきり響き渡り、すごいなぁって感心してしまいました。
ここで幕間が45分間。その間舞台のスクリーンが出て「歌舞伎座を彩った名優たち」が上映されました。
時間がたっぷりあったので、歌舞伎座の一階から三階の隅から隅まで歩いて回ることが出来、しっかりと見納めすることができました。
一階ロビーはまるで着物の品評会のようなゴージャスな着物を着た方で溢れていて、見ているだけですっごく楽しかったです。
また芸能人も沢山いらしていたようで、私は瀬戸内寂聴先生、三田佳子さん、吉行和子さん、あとなんでも鑑定団の「いい仕事してますね」の中島先生をお見かけしました。
売店はほとんど売り切れていたのですが、食品系は最後だからかほぼたたき売り状態。
豆花を買って帰りました。あと小倉モナカも食べました。
最後は手締式。
てっきり幹部俳優だけだと思っていたので、幕が開いて舞台上に200人の俳優が表れたのにはほんとにびっくりしました。
もうこれだけいたらお目当ての役者さんを探すのが大変です。
幹部俳優が一列目で御曹司が二列目、三列目、といった感じ。
菊五郎さんは一番右端でした。
菊ちゃんはどこ?と思ったら一際色が黒い松録さんの隣ですぐわかりました((笑)
海老様もすごいオーラと目力だったんですぐわかりました。
真ん中の方に猿之助さんがいらっしゃったので雀右衛門さんのお姿を探したけれど、残念ながらいらっしゃいませんでした。
それにしてもすごい眺め、こうやって最後勢ぞろいしたことで、最後が締まったので見れてよかったです。
芝翫さんの挨拶のあと、藤十郎さんによる一本締め。綺麗に揃って、なんだか清々しい幕引きで閉場式は終わりました。
終わってからはしばらく歌舞伎座を近くで、また遠目で眺め、ご一緒した奥様と記念に写真を撮り「またどこかの劇場で会いましょう」、と握手をして別れ歌舞伎座をあとにしました。
一睡もしてなくて体はボロボロだったけど、そんなことを吹き飛ばす位の貴重で素晴らしい舞台を見ることが出来、そして一緒に並んだ方々との素晴らしい出会いがあって、最高に幸せな一日でした。
歌舞伎座の歴史を感じさせる外観や、重厚感のある内装、いろんなものが揃う売店、レストラン、定位置だった狭い3階の座席、一度だけ経験した桟敷席、一階席、二階席、そして歌舞伎座にしかない幕見席、全てが大好きでした。
さようなら歌舞伎座、沢山の思い出をありがとう。
歌舞伎座さよなら公演
歌舞伎座 閉場式
平成22年4月30日(金)
一、御挨拶
松竹株式会社 会長 大谷 信義
久保田万太郎 作詞
吉住慈恭/二世稀音家浄観 作曲
一、都風流
菊五郎
吉右衛門
仁左衛門
勘三郎
三津五郎
梅 玉
團十郎
幸四郎
一、京鹿子娘道成寺
玉三郎
時 蔵
福 助
芝 雀
魁 春
一、口 上
芝 翫
富十郎
藤十郎
一、歌舞伎座手締式
幹部俳優出演
御 礼
松竹株式会社 社長 迫本 淳一