見出し画像

CELLOLOGUE

屠龍1/72

『屠龍』という旧陸軍の戦闘機については、昨年、私の母親の戦争体験の点景として書きました。
直接、屠龍との関係はないのですが、屠龍の基地であった飛行場の隣りの軍需工場で働いていたことと、屠龍で編成された特攻隊を見送ったことから、この双発戦闘機とは縁があったのです。


私も関心を寄せていたので、写真や図面から形は理解していました。ですが、やはり、模型で立体的な印象を掴みたいと思っていました。ところが、不人気機種のせいか、現在、入手できる屠龍の完成品模型はありません(あっても売り切れ)。今からプラモデルを作るというのは不器用な私には土台無理な話。そこにデアゴスティーニ社から、1/72という手頃なスケールで発売されるというので予約までして購入しました(笑)。

この手のモデルは、どこかが曲がっていたり、取り付けが雑だったり、がっかりさせられるものも多いのも事実で不安があったのですが、この屠龍は、一応バランスよくまとまっていて安心しました。主翼や尾翼の取り付け、角度も正確で、機首付近のフォルムもまあ合格だと思います。ところが、細かいミスをあげつらうつもりはありませんが、全体の印象に関わる部分で疑問に思うところも多々あります。

例えば、アンテナが長過ぎる(写真は2、3ミリカット後)、エンジンにカウルフラップがない、尾輪の取り付け部と塗装がおかしいなどがありますが、値段を考えれば我慢する他はないでしょう。ですが、屠龍の大きな特徴である後席の銃架及び旋回機銃が省略(武装解除?)されているのは淋しい。そして、残念なのが、風防と胴体に段差がついている点。屠龍の前方投影面積は卵型であるのに、このモデルはだるま型になっている。そして、プロペラスピナーが明らかに大き過ぎ、かつ、形状も異なる点です。特に、スピナーの形状は全体のフォルムを崩してしまっているので、これは痛い。

モデルは、松戸飛行場を基地とした飛行第53戦隊のキ45改甲型とありますが、どこまでリアルなのかは、見たことがないから分りません(笑)。屠龍は、形式や機体、時期によって仕様や武装に細かい差異があるので判別するのは私のような素人には難しい。モデルは防空隊のものなので、塗色も装備も異なる特攻隊の機体を想像するのはいささか困難です。
しかし、機体を手に取り眺めると、隊員や機体の運命に想いが巡ります。そして、屠龍が飛ぶ空の下では、母をはじめ、多くの人が戦争と関わっていたことにも考えさせられるのです。


川崎航空機工業株式会社製の陸軍二式複座戦闘機キ-45改『屠龍』は陸軍が強いこだわりをもって開発に取り組んだ機体でした。残念ながら、開発段階から、そして実戦で思惑はことごとく外れ、最後に与えられたのが対爆撃機戦闘の任務でした。各都市の周辺から飛び立ち、B29など強敵を相手に奮戦しましたが、数も性能も勝る大型爆撃機に対する戦果は少なく、本土、国民の被害は甚大だったのはご存知のとおりです。そして、B29に体当たりを敢行したり沖縄の海に消えた機体もあったのでした。

屠竜は、連合国側からはニック(Nick)と呼ばれました。ニコラス(Nicholas、男子の名)の略称です。戦闘機は男子名、爆撃機などは女子名で呼ばれていましたから、双発ながら戦闘機であることは正しく認識されていたということでしょうか。
モデルを見ると、屠龍は、双発、二人乗りの戦闘機としては思いのほか小さく、小柄な印象を受けます。胴体は細身で、機首はまるでナイフのように鋭い。同縮尺のアメリカの単発単座戦闘機の方が大きく感じられるほどのコンパクトさです。よくこんな華奢な機体で巨人機に立ち向かったものだと、当時のパイロットの勇敢さと苦労が偲ばれます。

昨年、記事にした女子挺身隊と第45振武隊のことは、私の気持ちが落ち着いたら、もう少し手を入れてみようかと、この模型を眺めながら考えています。

川崎二式複座戦闘機屠龍(キ45改)(第二次世界大戦傑作機コレクション29)、デアゴスティーニ・ジャパン、2017年4月発行.

Nikon D7100/AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「その日その日」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事