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第一軍用列車の行方:ショスタコーヴィチのセカンド・ワルツー2

2019年06月17日 | アート
 前回の続きです。
 前の記事では、ショスタコーヴィチのセカンド・ワルツについて、もともとは彼が書いた映画中の音楽が後に「舞台オーケストラのための組曲」に編入されたのですが、この組曲がスコアが行方不明になっていたジャズ組曲第2番と誤認されたことから、セカンド・ワルツがジャズ組曲として有名になってしまったことを書きました。
 それでは、ショスタコーヴィチが劇中音楽としてセカンド・ワルツを書いた『第一軍用列車』とはどんな映画だったのでしょうか。

 まず、タイトルの「第一軍用列車」が気になります。「軍用列車」なら、兵士や兵器、物資を輸送するための列車と分かります。そして、列車そのものが兵器である「装甲列車」ではありません。では、「第一」とはなんでしょうか。「始発」なのか列車番号が「一番」なのか。高級将校専用のファーストクラス列車なのか。

Первый эшелон (драма, реж. Михаил Калатозов, 1955 г.)


 何はともあれ、YouTubeでその映画『第一軍用列車』を探して見てみることにしました。
 1955年制作、モスフィルム作品、監督:ミハイル・カラトゾフ、脚本:ニコライ・ポゴーディン、音楽:ドミトリ・ショスタコーヴィチ、上映時間:114分

 ロシア語は全く分からないので、参考のために関連サイトでこの映画の概要を知ることができました。
 「列車でコムソモール〔共産党の青年組織。青年団〕の若者集団がカザフスタンの草原地帯に到着。彼らを待っていたのは、冬は凍てつき、春は泥土となる想像を絶する場所。そんな大地で若者達は明日を信じて懸命に働き、生きていこうとする。そして、恋の花も咲く。そんな過酷な開拓地の風土と生活をコムソモール事務員とトラクター労働者の恋を通して描いた作品」となるようです。(〔 〕内は筆者)

 冒頭、赤い星を付けた蒸気機関車が雪の中を驀進してきます。ソビエトのSLはごついです。その後ろには大型の客車が何輌も続く長大な編成です。
 列車は酷寒の停車場に着きます。すると、聞こえてくるのが、素人の楽隊が演奏するセカンド・ワルツ(4分58秒付近)です。停車場の場内で踊る人々。この厳しい寒さの中で楽器や指は大丈夫かと突っ込みたくなりますが開拓団はそこであっさり下車、トラクターが牽く資材を載せた大型の橇に分乗して入植地へ。主役は大地を切り裂く戦車のようなトラクターかも知れません。
 その後は人々の期待や失望、人間模様、争い、恋を絡めた展開になります。大地は次第に拓かれていきますが、それとともに深まる対立は予期せぬ事件を起こします。
 草原でのお祭りで(1時間27分31秒頃から)再び素人楽隊のセカンド・ワルツが聞こえてきます。この後、ストーリーはクライマックスへと進みます。

 原題は、「Первый эшелон」 とあります。Googleに翻訳していただくと(笑)、'Первый'は最初の、第一の、'эшелон'は、階層(級)、部隊、梯団などの他に「大量輸送のための特別目的列車、軍事列車」とあり、まさしく、第一軍用列車です。国策による開拓団ですから特別仕立ての軍用列車で送られるのも当然なことでしょう。また、二つの単語を合わせると「第一期」ともなりますので、開拓の第一陣、第一波という意味もあるのではないかと思います。二重の意味で「第一」軍用列車だったのではないでしょうか。

 たまたま聴いたショスタコーヴィチの「セカンド・ワルツ」を調べて、だいぶ遠いところに着いてしまったようです(笑)。


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