転 覧 記

ほぼ展覧会レポ。たまに読書記録。

アンリ・リヴィエール展@神奈川県立近代美術館(葉山館)

2009年10月05日 00時05分18秒 | 展覧会
「展覧会の初日。ようやく幕を開けることができた。やれやれ。
 そう思いながら、ふとバスの窓から海を見やると、水平線の向こうに小さな富士山のシルエット。
 そしてまさに今、あかあかと燃える夕日が、その稜線の向こうに沈もうとしているところだった。
 まるでそれはリヴィエールの絵のようで・・・

ギャラリートークでの、担当学芸員のかたのお話。


19世紀末のフランスを生きたアンリ・リヴィエールは
浮世絵が好きすぎて、誰にも何も教わらずに自分で浮世絵摺っちゃった!
・・・という驚くべき版画家です。

彼は印象派が全盛の1870年代に少年~青年時代を過ごしました。

印象派の画家たちは、浮世絵の構図や自然の捉え方を吸収しつつ
光の移ろいを油絵でキャンバスに描き留めました。
一方リヴィエールは、その印象派がとらえた光と影の透明な色彩を、
浮世絵の画面へ還元した画家であると言えるかもしれません。


実は、リヴィエールの回顧展が開かれたのは世界でも今回が初のことらしく。
彼の遺産を管理していたヌフラール家が一連の作品をフランスに寄贈したこと、
その研究に日本側が協力したことで、この展覧会が実現したそうです。

「私たちの先輩がオルセーの学芸員と親しくて
 前々からお互いの研究成果を交換できるような展覧会ができるといいね、と言っていたのですが
 今回はそれが実現した形となります。」

なるほど。すばらしい。
 

「リヴィエールは確かに美術史に残るような偉大な画家ではないかもしれません。
 しかし、今日は一日良い絵を見た、と思えるような画家ではないでしょうか。」

学芸員のかたの言葉に、そうか、こんなに良い絵を描いても
歴史に名は残せないのか...と何となくやるせない気分になりました。

しかし同時に、
リヴィエールもまさか自身の生涯の作品をまとまった形で初めて目にするのが
日本人になろうとは夢にも思わなかっただろうなあ、とも思って。

何かいろんな気持ちが混ざって、少し泣きそうでした。ヤバかった。


冒頭のお話のあと、
「美術館から出たら、外の景色がすべてリヴィエール色に見えると思いますよ」
というようなこともお話されてました。

言われてみれば葉山は海も山も近くて、ある意味ブルターニュみたいなところだ。
リヴィエールもブルターニュに日本を重ねていたらしい。

彼なら、この葉山の海をどう描いたんだろう。





その2へ続く


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