■住宅街に突如現れる 幻想的な作品
北千住の住宅街にある古い黒い家。
もともとはお好み焼き屋さんだったとも、鉄工所だったとも…
この家の中で今、ひとつのアート作品が体験できます。
大巻伸嗣さんは、北千住で毎年行われている「Memorial Rebirth 千住」というイベントや、
(日常の風景が無数のシャボン玉で一変する「Memorial Rebirth 千住」。写真は2014年の様子。)
昨年春に森美術館で開催された「シンプルなかたち展」にも出展されていた「Liminal Air Space-Time」といった、刻々と表情が変わる、すこし儚い雰囲気を持った作品を制作されているアーティストです。
(金属光沢を持った不思議な布が風で刻々と表情を変える「Liminal Air Space-Time」/ 大巻伸嗣
「シンプルなかたち展」@森美術館 で撮影)
住宅街の中のとても狭い路地に入り口があるので、本当に入っていいのかちょっと不安になりましたが、「こんにちは〜」と扉を開いてみるとスタッフの方々がにこやかに迎えてくださいました。(※会場内は撮影禁止です。)
(ここが入り口。「音まち 千住の縁」ののぼりが目印です。)
案内に従ってまずは2階へ。
「こちらを入ったところに作品があります」と言われて通された部屋は真っ暗!!手すりだけを頼りに恐る恐る室内に入っていきます…
少し目が慣れてくると、家の柱の間に、風船のように軽やかで白熱電球のように明るく輝いた球体が降ってくるのが見えます。ゆっくりゆらゆらと落ちてくる不思議な球体…しばらくして、それが白い煙が詰まったシャボン玉であることに気づきます。
日常に目にする物体とは全く違う、美しく不思議な球体にぼんやりと心を奪われたまま1階へ…
今度は同じ空間を下から見ることができます。
2階で見たときには、球体のままゆっくりと目の前を通り過ぎていったシャボン玉。今度は地面に着地するとぱっと割れ、床に沿ってゆっくりと煙が輪を描いて広がっていきます。
空中で割れると半透明の煙がゆったりと宙を漂い、まるで宙を漂う大きなクラゲをみているような幻想的な光景でした。
ゆっくりと時間をかけて煙が姿を変えていく様子を見ているうちに、この空間が空調もなく気流のない、とても静かな空間であることに気づきます。
再開発がすすみ新しい建物が建ち並ぶ北千住の街の中で、ここだけゆっくりと時が流れているかのように古くからある、この黒い家そのものを表しているかのような作品でした。時間を忘れていつまでも眺めていたくなる、とても美しい作品でした。
■参加型して楽しむ まちなかアートプロジェクト「音まち 千住の縁」
このイベントは「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」という市民参加型の”まちなかアートプロジェクト”のひとつ。
この「くろい家」の他に、同じく大巻伸嗣さんの「Memorial Rebirth 千住」や、”空から音が降り注ぐ演奏会”「千住フライングオーケストラ」、野村誠さんの「千住だじゃれ音楽祭」といった、大人も子どもも楽しんで参加できるようなアートプロジェクトを多く手がけているそうです。
こんな活動を通じて、もともとはアートに興味のなかった地元の方々もお祭りのようにみんなで作品を作り上げているそうで素敵です。
(市場が近いためか、たくさんのねこさんに出会えた北千住のまち。)
また神奈川在住の私には ”北千住”という街はあまり馴染みがなかったのですが、大きな市場があることや(都内に築地以外の市場があることも知りませんでした…!)、美しい川の風景、かつてあった「おばけ煙突」という名所など、これらのイベントに参加して初めて知る土地の魅力も多くありました。
(北千住駅から歩いて15分ほどの場所にある「足立市場」。日曜日はお休みなのでご注意ください。)
(ねぎま鍋やまぐろメンチカツといった名物にも”音まち千住”を通じてはじめて出会えました。)
現在は北千住駅ちかくの「たこテラス」という会場で、その”おばけ煙突”をテーマにした久保ガエタンさんの展覧会もプロジェクトのひとつとして開催されています。
(北千住駅ちかくの「たこテラス」。スタッフの方に声をかけて久保ガエタンさんの作品も見せていただけます。)
幻想的な作品に出会い、知らなかった土地の魅力に出会うことができるかもしれない”音まち千住の縁「くろい家」” は3月13日(日)までの土日月・祝日の開催です。
※大巻伸嗣さんの「音まち千住の縁」のアートプロジェクトに対する考え方や、これまでの作品のことなどがCINRA.NETでインタビュー記事になっていました。
「足立区名物「シャボン玉」祭に5千人が集結 大巻伸嗣インタビュー」(CINRA.NET)
ものすごく労力をかけていながらとても ”儚い” 大巻さんの作品。
”かたちには残らないけれど、崇高なものを経験したと感じる。そうした経験こそが重要だと思うんです。”
という言葉に、作品に対する考え方が表されているように感じます。
■DATA■
日程:平成28年1月30日(土)〜3月13日(日)(土日月・祝日のみ開催)
時間:10:00〜17:00
会場:くろい家(東京都足立区千住仲町29-4)
料金:無料(混雑状況によって、入場をお待ちいただく場合がございます)
アクセス:北千住駅(西口)から徒歩約10分
※駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。
ゲストキュレーター:難波祐子
下町の喧噪を抜けると、突如現れる「くろい家」。築50年を超える異様な佇いで、かつては鉄工所、居酒屋、釣堀だったとか。時間が止まったままのこの空間で、アーティストの大巻伸嗣が時の影をゆらします。かすかに気配が動くのは、忘却から蘇る時なのか、それとも異次元の時間なのか。
「アーティスト・トーク」
今冬に千住で活動をしているアーティストを招き、トークイベントを開催します。
日程:平成28年2月28日(日) 17:00〜19:00
会場:東京藝術大学 千住キャンパス スタジオA(東京都足立区千住1-25-アクセス:北千住駅(西口)から徒歩約5分
料金:無料(事前申込可能・先着50名)
ゲスト:大巻伸嗣、友政麻理子、久保ガエタン
モデレーター:難波祐子
※事前予約が定員に達しない場合のみ、当日受付を実施
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コメントありがとうございます!
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とても素敵な空間なので是非体験しに行ってみてください^_^ ありがとうございました。