安倍総理の三選が決まり、総理の悲願である憲法改正への動きが加速している。だが、 憲法改正といっても、9条2項を残したまま自衛隊の存在を明記(加憲)するだけの、最もハードルが低いかたちでしか発議できそうもないし、しかも、公明党の支持を取り付けるのが難しく、国民投票で勝てる見込みはほとんどない。戦後、最強の安倍政権においてすら、改憲に失敗するとなると、そのダメージは計り知れず、外国人が作った憲法に永久に縛られたまま生きざるをえないという無力感に苛まれる可能性が高い。
安倍総理は『戦後レジームからの脱却』を掲げ、その象徴的目標として憲法改正を唱えてきた。だが、『戦後レジームからの脱却』とは、憲法改正だけを意味するものではない。敗戦後、GHQがこの国に残した悪しき負の遺産を全て取り除いてはじめて、『戦後レジームからの脱却』を完成させることができる。これを実現するには、『戦後レジーム』を死守している勢力、即ち、敗戦利得者たちの力の源泉を叩き潰す他なく、彼らの力が弱まれば憲法改正もスムースに実現する。逆に、『戦後レジーム』を死守している勢力を残したまま、イチかバチかの正面突破で憲法改正に挑戦しても、失敗する可能性の方が高く、安倍政権は退陣に追い込まれることになる。
戦後、敗戦利得者としてGHQ統治下で力を獲得し、GHQが去った後も既得権のようにその力を維持しながら『戦後レジーム』を死守してきた勢力がある。主に教育界とメディア業界で著しい。公職追放で保守系学者が大学から根こそぎ追い出された後、その後釜を独占したマルクス経済学者などの左翼学者たちは、自分たちと同じ思想を持つ学生ばかりを後継の教授に選ぶことで、大学をイデオロギーでコントロールし、一般学生に偏向教育を押し付けてきた。一方、戦争中、戦争を煽りまくった日本放送協会は、敗戦後、GHQにその社屋の一部を接収され、GHQの忠実な犬として戦勝国史観を日本国民に刷り込むプロパガンダ機関に変貌することで焼け太りした。
敗戦後、日本に君臨したGHQは、NHKや新聞メディアにプレスコードを強要し、アメリカや戦勝国への批判を一切禁止する一方、日本政府批判は「報道の自由」の名の下に大々的に奨励した。GHQ統治下の1950年に制定された放送法は、受信料の名目でNHKに徴税権のような特権を与える一方、「言論の自由」の美名の下、NHKが日本政府の干渉を受けない公共放送になることを定めた無茶苦茶な法律で、GHQが日本政府に無理やり押し付けたものだった。GHQは日本が独立した後も、NHKが戦勝国史観を日本人に刷り込み続けることを期待してNHKに特権を与えたのかもしれない。何れにせよ、放送法は独立後も既得権のように残り、『戦後レジーム』の中核を担うこととなり、NHKの肥大化、偏向、暴走を許す原因となった。放送法第3条の『放送は何人からも干渉されない』という項目は、同じくGHQが日本政府に押し付けた教育基本法第16条『教育は不当な支配に服することなく』と同様、放送と教育を政府のコントロールの効かない聖域にしてしまうことを意味し、こうした聖域が左翼の縄張りと化し、反日勢力や外国勢力の温床となり果てていくのである。
動画出典:ETV特集『敗戦とラジオ 放送はどう変わったのか』2010年
NHK会長に安倍総理と近い籾井勝人氏が送り込まれた時、NHK内部の抵抗は激烈を極めた。籾井体制下、籾井会長と対立してNHK理事をたった一期二年で退任させられた下川雅也元理事は、
最後となる経営委員会で逆切れ退任挨拶を行っている。『公共放送NHKは、戦後の理想の時代が生んだすばらしい存在』『戦後の原点に立ち返るべき』などと発言し、戦前の日本を全否定してGHQ占領時代を「理想の時代」呼ばわり。GHQの負の遺産である憲法と放送法を礼賛し、自分が採用したNHK職員がいる限り、外部の力で変えようとしてもNHKは決して揺らがないと豪語した。
公共放送NHK様は政府からも誰からも干渉されない。政府は国民が選挙で選んだ代表? 知ったことか。放送の方向性はNHKの優秀な職員が勝手に決めさせてもらう。それはGHQがNHKに与えてくれた特権なのだ。NHK会長や経営委員に誰を送り込もうが、そんな奴の言うことには面従腹背。我々は天下の公共放送なのだ。だが、受信料は見る見ないに拘わらず国民から強制的に徴収する。NHK職員の高額な給与は当然だ。我々は良質な番組を愚民どもに提供してやっているんだ。ナニ、テレビを持っていないだと? 小癪な。だったら携帯から徴税してやる。NHKの徴税権よ、永遠に、と言わんばかりの傲慢な発想。それを「報道の自由」「言論の自由」だとはき違える夜郎自大ぶり。国家の中にもう一つ、徴税権を持つ別の国家が存在するかのような歪んだ構造。だが、政治家はNHKの選挙への影響力を恐れて、何も文句を言えない。まるで、統帥権を振り翳した戦前の軍部を彷彿とさせる。無論、NHKと雖も一枚岩ではなく、政治部はより抑制的で政権寄りだが、社会部やドキュメンタリー部門は完全に左翼の巣窟。あの朝日新聞より酷い。朝日は民間企業であり、新聞業界の衰退とともに力を失っていくが、受信料強制徴収権を持つNHKは肥大化する一方。政府のコントロールの効かない巨大世論操作機関・NHKに中国や韓国、北朝鮮などの外国勢力が浸透したら、一体、どんな災いを引き起こすか。いや、既に浸透されてしまっているかもしれないのである。
安倍政権が正面突破を狙って憲法改正を推し進めたとしたら、NHK内部の左翼職員たちは、その職権を最大限に悪用して改憲阻止の番組を量産するだろう。
戦前の日本を悪魔化する番組や護憲ドキュメンタリーを作りまくり、偏向報道の限りを尽くすだろう。NHKにそこまでやられて、国民投票に果たして勝てるのだろうか。NHKの世論に与える影響力は凄まじい。ネットを使わない情弱老人世代の選挙行動は思いのまま。多分、国民投票で否決されると思う。保守の真の目標は、憲法のマイナーチェンジなんかではなく、『戦後レジームからの脱却』だったはず。ならば、このまま闇雲に憲法改正へ突入するのではなく、「急がば回れ」で『戦後レジームの権化』であるNHKの解体こそ先に仕上げるべきではなかろうか。無論、NHKを具体的にどうするのか、様々な意見があろう。単にスクランブルをかけて民営化するのか、一部を公共放送として残したまま、無駄な部門を民間へ売却するのか、やり方はいろいろある。
要は、世論操作を行う巨大組織に徴税権を与えたまま野放しにしておいてはならないということ。NHKの解体は憲法改正より遥かに簡単。国民投票は要らないし、両院の3分の2の賛成も要らない。放送法を改正さえすればこと足りる。無論、NHKは必死の抵抗をするであろうが、それは憲法改正をする場合でも同じ。憲法のマイナーチェンジよりNHKの解体。これこそ、『戦後レジームからの脱却』の近道となりうるはずである。