Mi Aire

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馴染みのカフェを作ろう!

2007-02-01 01:17:24 | エッセイ
昔、機会があって2度ほどマドリードに1ヶ月くらいずつ滞在したことがある。
この時、私にはちいさな夢があった。それはこの未知の異国の街で馴染みのカフェ(バル)をつくること。
黙って座れば店のカマレロが私の好みのものを出してくれる。それが私のささやかな憧れだった。
そのためには同じ店に通わなければならぬ。
マドリードでは友人とスペイン人家庭に下宿していたのだが、食事は自分たちで作っていた。家族がいない時には、台所は自由に使えるが、休みの日や共稼ぎの夫婦のどちらかの出勤が遅い時など使えないことも多かったので、朝食でさえ近くのバルに行くことが結構あった。
下宿していたピソを出て通りを下っていったところのバルで、わたしと友人はよく朝食を摂った。
カフェ・コン・レチェとパン・トスターダ(トースト)が定番。
店のおやじさんは普通に注文をきき、わたしの定番をもってきてくれたが、ある時注文しようとすると「いつものやつ?」と訊いてくれた。「いつものやつ。」それは私の夢がかなった瞬間だった。
それ以来、おやじさんは私の顔をみると親しみをこめて笑ってくれるようになった。

留学していたマラガでも馴染みのバルがあった。ここは年配のご夫婦がこぢんまりと経営している小さなバルで、もっぱら休み時間に一息入れる場所だった。
ここではカフェ・コン・レチェのカフェとレチェ(ミルク)の量が8通りに分類されていて、カフェ・ヌーベ(雲)だとか、カフェ・ソンブラ(影)だとか、面白い名前がついていた。さらに猫舌の人は「カフェ・コン・レチェ・ウン・ポキート・フリーア!(ちょっぴり冷たい?カフェ・オレ)」などという注文ができるのだということを学校の友達に教わった。わたしは猫舌というほどではないけれど、休み時間のあいだに熱いと飲みきれないときもあるので、たびたびこれを注文したから、バルのおじさんはこの好みを覚えてくれ、何もいわなくても、目で「いつものやつね?」ときいてくれて、飲み頃のカフェをだしてくれるようになった。

アルバイトのカマレロの多い日本では、なかなか難しいかもしれない。
こちらが通っても向こうも同じ人でなければ好みなどは覚えてくれない。
スタバみたいなチェーンのカフェではこんな贅沢はなかなかできないだろう。

未知の街で馴染みのカフェができれば、もうそこは未知の街ではない。
落ち着いて熱いカフェを啜る、ゆったりとした時間が約束されているのだ。


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2 Comments

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いいですね^^ (深紅)
2007-02-09 23:53:18
何も言わずとも、いつものやつね!と分かってくれるお店。 
私も、カフェでゆったりとした時間を過ごす大人な女性になってみたいなぁ。
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最近は (Carmelita)
2007-02-10 09:18:16
スタバやタリーズみたいなお店が多くて、なかなかそんなカフェをみつけるのは難しいよね。
でも12月までいた半蔵門ではランチ食べるお店などではお馴染みのお店がありましたっけ。
なつかしいな。
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