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太田順一氏の『父の日記』の”反”写真展

2009年04月18日 08時58分48秒 | 映・文・経・社・放送
 『女たちの猪飼野』の作者・写真家として著名な太田順一氏の『父の日記』の”反”写真展を見てきた。

 会場のニコンサロンには生野などから来られたアジュンマらしき方たちを多く見かけた。

 写真は極端にいうと対象のスキャン(”複写”)だという面は否めない。


 ある意味で最近見た太田順一氏の『父の日記』の”反”写真展はつぶぞろいの複写で問題提起している。

 妻(作者大田順一氏の母)を亡くした父親が几帳面に日記をつけておられた。

 その日記は息子と独立して一人暮らしが始まってからつけられた。

 妻を亡くした老人の孤独、筆者の父もワープロを使って生い立ちや軍隊体験、短歌などを残した。

 大田順一氏の父親は几帳面な方で20数冊の日記帳(大学ノートと市販の年度別日記張)にびっしりと書き込んでおられた。

 父親は大正9年生まれという。戦争期のつらい体験もしておられるだろう。

 筆者にはあまり時間がなく、十分読み込めなかった日記。

 二時間くらいの時間的余裕をもって読まないと時間不足だろう。

 47点の日記の写真(殆どは日記のページを読み得るように撮ってある)はしだいに認知症の恐怖感が伝わってくる内容だった。

 あるときは亡妻が夢に登場、目覚めると現実に妻の姿はない、孤独を感じる寂寞感。

 あるときはきめ細かく昭和65年のある日の日記、痴呆は時によって程度が違う、ひどい日と晴れ間のような日、錯覚・幻覚の日とか、いろいろあると見受ける。

 そういうおぼろげな日々、”リアルな”日々が伝わってくる ぬくもりと悲哀が伝わってくる写真展。

 ”反”写真的な日記をほぼそのままを複写(これは実は撮る技術はむつかしく、プロ泣かせなのだ)。

 ”反”写真とは言え、写真の本道とも言える。

 ”反”写真はスキャンするだけの写真に思い切り問題を投げかけている。

 ワープロ・デジタル全盛の時代。

 ”手書きのぬくもり”もあわせて或る意味で大胆に表現する世界。

 団塊の世代の大田順一氏、この団塊の世代が認知症になるころ、問題はより深刻なるという予感・警鐘の意味も感じる展示である。 

 追記(2010年1月10日):伊那信男賞受賞記念展 

 2010年   第34回伊奈信男賞受賞作品展 ニコンサロン大阪(bis)

太田 順一展
[父の日記]
1/5 (火)~1/13 (水)
場所(ヒルトンプラザ ウエスト・オフィスタワー13階)

太田 順一展 [父の日記]

4月22日まで
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展示場所:大阪ニコンサロン/bis
〒530-0001大阪市北区梅田2-2-2
(ヒルトンプラザ ウエスト・オフィスタワー13階)
営業時間 11:00~19:00
(年末年始、2月の第3土曜日とその翌日、8月の第3土曜日とその翌日を除く毎日) 
http://www.nikon-image.com/jpn/support/showroom/servicecenter/osaka/index.htm

 受賞理由(㈱ニコン 2009年12月制作のパンフより)
   ニコンサロン選考委員会
ーーー前略ーーー
 「父の日記」は、大田順一氏の長きに亘る個人的な写真実践から、内在的に、それ故に思い切って出現しているものだ。そしてそのことは、写真表現者が実践を通して獲得する「自由」の真の意味を、私たちに気付かせることになった。この複写行為の底には、・・・・


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1 コメント

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Unknown (kawase)
2009-04-18 10:25:09
期間中には必ず行きたい。手法が斬新だと聞きました。
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