東京高裁、女性新人教師の自殺は公務災害と認める判決
焼身自殺を図った女性新人教師の自殺は公務災害だとして、両親が災害補償基金を訴えていた裁判で、東京高裁は両親の言い分を認める1審判決を支持、基金側の控訴を棄却した。
2004年9月の午前5時、静岡県内の小学校に新人教員として赴任した木村 百合子さん(当時24)は、受け持っていたクラスについての悩みを抱えたまま、灯油をかぶり、自ら火を放った。
2005年、百合子さんの母・和子さんは「現実じゃないですね。あの青天のへきれき。こんなことが現実に起こるのか。そういう朝でした」と語った。
着任後、4年生の学級担任を任された百合子さん。
しかし、授業を妨害したり、言うことを聞かない児童が増え、クラスは学級崩壊状態になっていったという。
百合子さんの日誌には、「いじわるをされているが、仕返しが怖くて何も言えない子。小学生で円形脱毛症になりかけている子。なぜこんなにも多くの問題が起こるのか?」、
「自分の授業が下手だから。それはそうだけれど、教室内の重い空気に、何とも言えない息苦しさを感じる」などとつづられていた。
周りの先輩教師にSOSを送っていたという百合子さん。
しかし、ある教員からは、こんな言葉を突きつけられたとしている。
百合子さんの日誌には「6月25日、ある先生が、わたしに『給料をもらってるんだろう、アルバイトじゃないんだぞ、ちゃんと働け』と言った。この部分だけ取り上げると、
語弊を招くが、わたしの心に突き刺さった。わたしはこの3カ月、自分の最善を尽くしてきた」とつづられていた。
和子さんは2005年、「学校はどうなっちゃってるの? 困ってる先生を何でこんなに怒ってるの? 体裁を整えるために怒ってるの?」と語った。
そして、うつ病を発症した百合子さんは、着任からわずか半年で、自ら命を絶った。
両親は、百合子さんが自殺したのは公務災害、いわゆる労災であるとして、両親の申請を認めなかった地方公務員災害補償基金を相手取り、提訴した。
そして2011年、静岡地裁は両親の言い分を認め、百合子さんの自殺は公務災害であるとの判決を言い渡した。
父親の憲二さんは1審判決後、「娘が亡くなって以来、喪失感がありましたけれども、たくさんの支援の方に支えられて、ここまで来ることができました」と語った。
しかし、災害補償基金側は、これを不服として、控訴。
百合子さんの自殺は、「本人の性格などが原因」という従来の主張を繰り返した。
文部科学省の統計によると、全国の公立学校の新人教員のうち、1年以内に依願退職した数は、2000年度から2010年度までの間に、8.7倍も増加していた。
また、2010年度に依願退職した新人教員288人のうち、91人が精神疾患を理由としている。
その一方で、災害補償基金側のデータによると、毎年4,000件余り認定されている公務災害のうち、うつ病などの精神疾患の件数は、わずかに1桁台だった。
これは、精神疾患と公務の因果関係を証明することの難しさを表しているともいえる。
そして19日、東京高裁が出した判決は、「着任当初から、クラス内で児童による深刻な問題行動が多発し、これが、若年の新規採用教員にとっては、強度の心理的負荷を
ともなう程度であったことに加え、学校側の支援態勢も、結果的に見て、不十分なものであったと認められる」と、1審の判決を支持し、基金側の控訴を棄却。
両親の言い分を認める判決を言い渡した。
閉廷後、両親が会見に臨んだ。
憲二さんは「娘が一生懸命やっていたってことが認められてうれしいです」と語り、和子さんは「娘も一緒にきょうの判決を聞いていたと思います。この木村 百合子の事件を
よく調べてほしいと思います。この判決が、今の大変な学校の現状を改善していくことにつながってほしいと、役立ってほしいと願っています」と語った。
(2012/07/19 18:22 テレビ静岡)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00227805.html
http://www.peeep.us/cdea7d71
公務災害認定「娘の努力認められた」…自殺教諭の遺族会見
控訴を棄却する」。
裁判長の声が響き渡ると、法廷内は拍手に包まれた。
静岡県磐田市立小学校の新任教諭だった木村百合子さん(当時24歳)が2004年、うつ病になり、自殺したのは公務災害だったと認めた1審・静岡地裁の
判決を不服として、地方公務員災害補償基金(東京)が認定取り消しを求めた控訴審判決。東京高裁でも主張が認められ、母・和子さん(58)は
涙を浮かべて支援者と手を取り合った。
判決後の記者会見で、父・憲二さん(62)は「娘が一生懸命にやっていたことが認められてうれしい」と静かに喜びを語り、「実際に起きたことを真剣に受け止め、
どうすればよかったのかを調べて改善に生かしてもらいたい」と教育現場の環境改善を求めた。
和子さんも「24歳の娘が自ら死ななくてはいけない学校現場はひどすぎる。学校内に教師を自殺に追いつめる問題があることを認め、対策を立ててほしい」と祈るような表情を見せた。
控訴審では、公務に精神疾患を生じさせるほどの「過重性」があったかが争点となった。
基金側は〈1〉公務はうつ病を発症させるほど過重ではなかった〈2〉1審判決は木村さんの性格的な脆弱(ぜいじゃく)性を十分検討していない――などと主張した。
これに対し、三輪和雄裁判長は「うつ病の発症は過重な公務による心理的負荷を原因とするものであって、公務と精神疾患及び自殺との間に相当因果関係がある」などとして、基金側の主張を退けた。
その理由として、判決は「わずか1か月半の間に児童による数々の問題行動が起こり、木村さんは対処を余儀なくされていた」と指摘。
木村さんの性格は「社会通念上、想定される範囲内にとどまる」と認定した。
学校側の支援については、「新任教諭に対する支援としては不十分だったといわざるを得ない」とした。
弁護団は「現場で頑張っている先生方の救済に役立つ」と高く評価した。
同基金静岡県支部の土屋優行副支部長は「判決の内容を本部で精査、検討の上、対応を検討していく」とコメントした。
(2012年7月20日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20120720-OYT8T00656.htm
「娘の死 現場に生かして」/磐田教諭自殺
2012年07月20日
磐田市立小学校の新任教諭だった木村百合子さん(当時24)の自殺が19日、東京高裁で再び「公務災害」と認められた。
「娘の死の真実が知りたかった」と裁判を起こしてきた遺族は、「娘の死を現場に生かして欲しい」と涙ぐんだ。
◆遺族 目頭押さえ一礼
閉廷後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した百合子さんの父・憲二さん(62)は「判決を真剣に受け止めてほしい。どうすればよかったのかを調べて、改善して欲しい」と訴えた。
母の和子さん(58)も「この判決が、教育現場の大変な状況を変えることにつながって欲しい」と呼び掛けた。
2人は法廷で、地方公務員災害補償基金側の控訴を棄却する主文が読み上げられた瞬間、表情を緩ませた。
憲二さんは隣に座った小笠原里夏弁護士と笑顔で固い握手を交わした。
傍聴席にいた和子さんは目頭を押さえながら立ち上がり、一礼。
周りを取り囲んだ支援者たちと手を取り合い、喜びを分かち合った。
百合子さんの姉妹も駆けつけた。
姉の直子さん(34)は「控訴された時はまた繰り返すのかと思ったけれど、高裁がきちんと認めてくれて本当に良かった」と涙。
妹の真理子さん(28)も「本当に良かった。教師に限らず、厳しい職場で大変な思いをしている人に生きて欲しいと思います。(百合子さんに)会いたい」と話した。
◆「検証と対策不十分」
「真実が知りたかっただけなんです」
百合子さんの母親の和子さんは、控訴審の判決を前に、朝日新聞の取材に答えていた。
「娘の命を無駄にしたくないから、自殺したことを隠さなかった。親として積極的に発言したり行動したりして、学校が抱える問題を知って欲しいと思った」
ただ、現実は厳しかった。
百合子さんが亡くなった約1カ月後と翌年6月。
校長や教頭、市教委の課長と2度、話し合った。
しかし、退職金などの事務手続きを穏便に済ませようとしているかのような態度に傷ついたという。
公務災害の申請書は、所属長の校長に提出義務がある。
和子さんたちは学校側に面会を求めたが、出張などの理由で会えず、面会が実現したのは約5カ月後。
校長は申請書類の遅延届を提出し、最終的に基金が書類を受理したのは、両親が校長に申請した半年後だった。
その間も、学校は娘の自殺など無かったかのように動いていたように映った。
「百合子は一生懸命やっていたと思っていた。でも、先生たちはそう思ってくれていなかった」
和子さんは、判決を受けても、検証と対策がまだ不十分だと考えている。今後も講演の場などで訴え続けたいという。(小林太一)
◆地方公務員災害補償基金県支部の話 ご家族のご心痛は察するにあまりある。
公平性の観点も踏まえ、基金本部が判決内容を精査・検討の上、対応を検討する。
◆磐田市教育委員会の話 木村さんが自ら命を絶ったことは誠に悲しく痛ましい。
改めて遺族の皆様にお悔やみを申し上げたい。
今回の判決と木村さんが亡くなった事実を再度重く受け止め、引き続き教育支援体制の整備につとめたい。
http://mytown.asahi.com/shizuoka/news.php?k_id=23000001207200004
http://www.peeep.us/2234c365
磐田・教諭自殺「公務災害」二審も支持
2012年7月20日
◆基金側の控訴棄却
磐田市立小学校の教諭だった木村百合子さん=当時(24)=が二〇〇四年、うつ病になり自殺したのは公務が原因として、公務災害ではないと判断した地方公務員災害補償基金静岡県支部(支部長・川勝平太知事)の
認定を取り消すよう遺族が求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は十九日、「公務外災害の認定は違法」として基金側の控訴を棄却し、認定を取り消した一審の静岡地裁判決を支持した。
判決で、三輪和雄裁判長は「着任当初からクラス内で児童による深刻な問題行動が多発し、対応に追われていた」と指摘。
「若年の新規採用教員には強度の心理負担を伴い、学校側の支援体制も不十分だった」と認め「負担はうつ病を発症させるほど重く、自殺と公務には相当の因果関係がある」と結論付けた。
木村さんは〇四年四月に県の教員に採用された。
四年生のクラス担任になったが、同年九月、乗用車内で焼身自殺した。
同基金県支部は「公平性の観点も踏まえながら、基金本部が判決の内容を精査した上で対応を検討する」とのコメントを出した。
父親の憲二さん(62)は自殺の三カ月後に公務災害認定を申請したが、〇六年八月に退けられた。
不服を申し立てた同支部審査会にも〇七年十二月に請求を棄却された。
静岡地裁は一一年十二月、認定の取り消しを認める判決を出し、基金側が控訴していた。
◆両親「改善に生かされれば」
憲二さんと母和子さん(58)は判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見。
目を赤くしながら「今日の日を迎えられてうれしい。娘も判決を聞いていたような気がします」と静かに喜びを語った。
百合子さんが亡くなってから八年。
両親は「二十四歳の娘が苦しんで自ら死ななくてはならない学校現場はひどすぎる」と話し「判決が教育現場の改善に生かされれば」と付け加えた。
基金には「学校に新規教師を自殺に追い込む問題があると認め、対策を立ててほしい。上告せずに公務災害を認めて」と求めた。
代理人の塩沢忠和弁護士は「一番弱い人の立場に立って判断する『最弱者基準説』を採用した東京高裁初の判決。教育問題で悩む他の先生の救済にも役立つ」と評価した。
大津市のいじめ事件にも触れ、教育現場で起きる問題への校長や市教委などの意識が低く「事なかれ主義がはびこっている」と指摘。
「感度を高くして現場の問題に気付き、有効な対策を取ることができていない」と批判した。
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20120720/CK2012072002000061.html
静岡県 磐田市 小学校 学校 公務員 職員 先生 教師 教員 裁判 自殺 自殺裁判 判決 うつ 欝 鬱 うつ病 病気 三輪和雄 裁判長
依願 退職 精神病