経営システム雑考

企業に在籍する経営学博士の雑考

篤姫 「無血開城」

2008-12-03 00:45:03 | 価値連鎖
  天璋院(宮崎あおい)は勝(北大路欣也)と対面し、官軍との戦を避ける方法について話し合う。勝は江戸に火を放ち、焼け野原にして官軍の江戸城攻めを阻むという策を披露する。一方の天璋院は、西郷(小澤征悦)の心を和平へと動かす手だてについて、幾島(松坂慶子)とともに思 案する。そのころ、西郷率いる官軍は江戸に入る。西郷との話し合いのため薩摩藩邸に向かう勝に、天璋院は父・斉彬(高橋英樹)の手紙を託す。西郷と対面した勝は江戸城明け渡しを約束した上で徳川家の存続を願い出るが、西郷はあくまで官軍による江戸城攻めを押し進めようとする。しかし勝が天璋院から預かった斉彬の書状を見せると、西郷は心を動かされ、江戸城攻撃をとりやめる。大奥では天璋院が女中を一堂に集め、徳川家存続のため江戸城明け渡しに応じる意向を告げる。そして大奥につとめる者は皆、徳川家の家族であり、大奥を出た後の世話も自分が責任を持つと言う。

  今回はNHK大河ドラマ「篤姫」を経営学的に読み解こうと思う。通常の連続ドラマは12回程度であるのに対し、大河ドラマは50回の連続ドラマである。その間、常に視聴率上位を維持しており、幕末史の切り方やキャスティングなど優れた面を多く含んでいる。

  さて、篤姫=天璋院であるが、江戸城の無血開城を成功させた幕末史における特筆すべき人物の一人であるが、経営学的に見るならば、事業ライフサイクルの衰退期におけるトップマネジメントチームの一人とみなすことができる。この時期の経営者は、事業の延命、あるいは、終焉へのソフトランディングと次期事業への投資に傾注すべきである。したがって、内部投資などの成長戦略を採ってはならない。

  その意味から、大政奉還の後で、倒幕の形成が固まりつつある状況において、鳥羽・伏見の戦いを仕掛けて朝敵となった慶喜は衰退期のセオリーを外している。衰退期では、戦線を縮小し拠点防衛に留意し、次期事業への準備をなすべきである。

  一方、天璋院が採用した戦略は、家族主義、徳川宗家の延命、内戦の回避であり、衰退期の戦略としては非常に的を射たものであった。やはり、相当な力量を持ち合わせた人物だったのであろう。

  当時の状況において江戸での市街戦を回避できたことは、明治維新や産業革命導入への大きな布石であり高く評価されるべきである。坂本竜馬が司馬遼太郎の小説で発見されたように、このドラマを契機に天璋院が再評価されて欲しいものである。

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