ようこそ劇場へ! Welcome to the Theatre!

熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

『1914/愛』『タカタヅカ絢爛-灼熱のカリビアン・ナイト-』

2004-05-22 | 宝塚歌劇
宝塚歌劇90周年に因んで、タカラヅカ誕生の1914年をタイトルに織り込んだ「1914/愛」(作・演出:谷正純)は、第一次世界大戦が近づくラ・ベルエポックのパリを舞台にした、若き芸術家たちの愛と苦悩の青春群像である、、、と言えば如何にも「ラ・ボエーム」であるが、貧しい若い画家やお針子が出てきても陰気くさいミュージカルにはならなくて、しっかりとハッピーエンドに収めてしまうのが(好き嫌いは別にして)如何にもタカラヅカ的。
中盤での『カンカン』はいいとしても、オープニングから大きな羽根を背負ったレヴュー場面はサービス過剰の感あり。
主人公のアリスティド・ブリュアン(湖月わたる)はじめ、アポリネール(貴城けい)、モジリアニ(大和悠河)、シャガール(立樹遥)、ユトリロ(真飛聖)、マリー・ローランサン(叶千佳)など、殆どの登場人物が実在の人物だが、前半のもたつきを辛抱すれば、後半はそれなりに自由な発想のお話にまとまっている。
架空の人物としては、ドイツのシュタインホフ家の娘役の仙堂花歩が見事なソプラノだけでなく、コメディエンヌぶりを発揮。
また、伯爵家の執事長役・英真なおきのコミカルな所作が笑いを一手に引き受けていた。
地味ながら、画商ポール・ギョーム役の汐美真帆の口跡鮮やかな台詞が印象に残った。

ラテン・ファンタジー「タカラヅカ絢爛-灼熱のカリビアン・ナイト-」(作・演出:草野旦)はキューバが舞台のストーリー・ショー。
年に一度、満月の夜に海から甦ってくる妖精たちが繰り広げる『海のカルナバル』に、マリアという女性(壇れい)が紛れ込んで妖精と恋をする。
夜9時から翌朝の日の出までの一夜の儚い夢の出来事と聞けば、まさに名作「ノバ・ボサ・ノバ」だし、事実意識された造りになっている。
注目は何と言っても、幾つかの場面を担当したキューバの有名な振付家サンティアゴ・アルフォンソ。
最も印象的だったのは、蛇に変身して踊る『夢』の場面。ダンスが得意な柚希礼音とトップの湖月わたるの二人だけの難しいダンスである。湖月が懸命についてゆくが、テクニックの差は歴然としており、どうせなら最初からダンスが得意な相手にして欲しかった。
他にダブルダッチ(縄跳び)を使った新体操風の場面(振付:麻咲梨乃)や、マンボのダンス合戦(振付:アルフォンソ)など新鮮な感覚の場面もあったが、各シーンに繋がりがなく途切れがちなのと、ラテン特有のセクシーな雰囲気が出てこないのが、印象を弱くしている最大要因である。
改めて「ノバ・ボサ・ノバ」の素晴らしさをしみじみと感じた。
(2004-5-22、東京宝塚劇場にて、butler)


最新の画像もっと見る