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熟年オジサンの映画・観劇・読書の感想です。タイトルは『イヴの総て』のミュージカル化『アプローズ』の中の挿入歌です。

無頼の掟(ジェイムス・カルロス・ブレイク著)

2006-12-31 | 読書
ローリング・トゥエンティーズ(狂乱の1920年代)を背景に、双子の叔父とその甥・ソニーに、彼らが愛した女達を絡めて、アウトローの強盗団が南部からテキサスを荒らして回る道中が、ソニーの一人称で活劇風に語られる。
世界恐慌直前、テキサスの荒野には石油と一緒に湧き出た好景気にに浮かれた連中が溢れかえっており、彼らから金を奪う曲者がおり、そのまた曲者から金を奪うのが彼らのやり方である。
銀行強盗、脱獄、逃避行など道具立ては派手だが、必然的に思い浮かべてしまう『ブッチ・チャシディ&サンダンス・キッド』『ワイルド・バンチ』の開拓時代強盗や、『ボニー&クライド』の大恐慌時代の強盗と比較するのも面白い。
特徴的なのは、叔父たちの女性との関わりとユーモラスな軽口が、犯罪小説の重苦しさを和らげ、浮かれて享楽的な独特の時代をうまく表現している。
サイド・ストーリーとして、監獄の悪徳警官だった息子をソニーに殺され、復讐の鬼と化して跡を追う保安官補が、まるで『レミゼラブル』のジャベール警部か、『逃亡者』の追っかけ者のように無気味であり、双方が交差する廃坑の町がクライマックスとなっている。
意外な人物が独り生き残るが、ラストの一行がたまらなくカッコ良くて、しばし余韻に浸れる。
(2006-1-27読了、butler)


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