今日は米軍の「ディスティンクティブ・インシグニア(クレスト)」(以降D.I)のバリエーションでベトナム戦争時に使用された「ローカルメイドD.I(通称Beercans)」(以降Beercans)をご紹介します。
ベトナム戦時、野戦服へのインシグニア不着が目立つようになります。
これは、被服を一旦集めて洗濯し、再度持ち主の元に戻す事が困難な事と、消耗の激しい野戦服を洗濯後再支給するよりも新品を支給し直すほうが理にかなっていた為です。
これにより、前線の兵士はパトロールから帰還した際に今まで着用していた被服を着替え、サイズの合った被服に着替え直すようになりました。
こうなりますと、被服を替える度に部隊章や階級章を縫いつけ直すのが面倒な行為になります。
そこで、下士官用にピン留めの金属製の階級章が普及しました。
その後、部隊への帰属意識・士気高揚などを目的に金属製部隊章D.Iが使われ始めます。
あらゆる装備品と同様にこのD.Iもローカルメイド品が作成されました。
それが今回ご紹介する「Beercans」です。
まず、最初に「Beercans」とはどのような物かご覧下さい。
ちょっと分かり難い写真ですが、これが「Beercans」です。
黒い円形の物はベレー帽です、台布代わりに使用しています。
図案は本国製の物と同じですが、素材と製造法が違います。
まず、本国(米国)製ですが、図案は七宝が張られていますが、「Beercans」は表面が塗装されています。
次に製造法を紹介します。(間違いがあるかもしれませんので参考程度でお願いします。)
1.元の図案に従った型(判子のような物)を作成します。
2.ビール缶のような薄い金属板(鉄や真鍮)を図案に合わせて切り抜きます。
3.型に薬品(ゴムとも言われています)を付けて、切り抜いた金属板に押し付けます。
4.金属板を酸に付け置きます。
5.薬品を塗った箇所とそれ以外の箇所で段差が出来るので元の図案に従い彩色する。(手塗り)
6.ピン留めの金具を付ける。
7.完成
どのような風合いになるかは次の写真をご覧下さい。
ピントが合わず、ボケた画像で申し訳ありませんが・・・。
写真は第9歩兵の「Beercans」ですが、表面に凹凸があるのが分かると思います。(特に龍の鱗の辺り)
こちらは南ベトナム軍の「Beercans」で、第81攻撃中隊の部隊章です。
米軍の物と比べて凹凸が少なく、のっぺりとした感じがします。
元の色は背景は赤のはずなのですが、目立たないようになのか全体に暗い色を上から重ね塗りしています。(裏面は黒色が塗られています。)
尚、「Beercans」に書かれている文字「THAN HO」(アクセント記号略)は「Sacred Tiger(神聖な虎)」という意味との事。
こちらは海軍部隊の物のようですが、詳細は不明。
のんびりと調べています。
図案はPBRですからTF-116関係なのかなぁと思っていますけど・・・。
「Beercans」を裏から見たところです。
この画像からも、「Beercans」の薄さが分かると思います。
「Beercans」と呼ばれる由縁ですね。
左はクラッチを使用して留めるクラッチバックの物、右は安全ピンのように留めるピンバックです。
さて、ご紹介致しました「Beercans」ですが、残念な事にフェイク品(または現地のお土産レベルの戦後生産品)が存在します。
見分け方は残念ながら存じませんが、当時の実物として保障出来るような品(当時従軍していた方から放出された物 等)で表面が錆びたり、腐食している品は見た事がありません。
当時の物である可能性が低いと言われた物ほど表面などに腐食があったりします。
これは、恐らく短期間で当時の風合いを出す為に地中に埋める等、当時の使用状況とは明らかに違う環境に置いた為ではないかと考えます。
よく考えれば、塗装面から錆びるのはおかしいですよね。
そんな中で、由緒正しい偽者という物も存在します。
とある特殊部隊の「Beercans」なのですが、実物は存在が確認出来ない(恐らく作られていない、もしくは極少数)のですが、何故か大量な在庫が存在します。
実は私、コレが欲しかったりします。(笑)
場所によっては安く入手出来る(当時の物ではないと説明されています)そうですので買っちゃおうかな。