煌明公司nettaskforce

こちらは「ガンダムSEED」のディアミリファンサイトです。個人の趣味での二次製作作品をご理解の上閲覧くださいませ。

二次創作:「ミリィ酒」

2021年01月02日 | 小話
 夜行バスは定刻通り夜明け前に中央駅バスターミナルに着いた。
疲れた…。
 今回の取材は交通の便が悪い地方で、長距離バス・現地のバス、輪タク、小舟、驢馬、徒歩での往復だった。インタビュー調査自体はスムースに進んだものの、体力的に辛かった。今時、わざわざ現地へ行かなくてもインタビュー自体はできるが、その場の空気感もたいせつにしたい。地元の歴史や住民の反応も知りたい。そういう諸々の視覚化できないものをカメラに収めたい。それが私のスタイルだ。 取材要約はすでに契約先へ送付したので、先方からの返事待ちの間、いったん自宅へ帰り休養することにした。

 アパートにたどり着くと、まずはシャワーを浴び、ランドリーをまわしてベランダの観葉植物に水をやる。ついでに自分も水分補給しながら、建物の隙間から見える海岸線をぼんやりと見ていたが、体が空腹を訴えてきた。近くのコンビニに買い出しに行くか早朝から営業しているカフェでモーニングが無難な選択だが、ふと、以前から挑戦してみたいことが思い出された。思い立ったが吉日! というわけで、朝日につつまれはじめた街へ飛び出した。

 市街地から少し離れた場所に移転した魚市場・青果市場は、仕事を終えた人達向けの食堂が隣接している。最近は観光客向けのこじゃれたカフェスタイルの店もあり、なかなかの人気だ。わざわざ遠出してまでここに来たのは、お散歩でもお買い物でもなく、一度やってみたかったアレをやりに来たのだ。

 そう、「朝酒」。

 オーガニック野菜とマヒマヒのサンドイッチに、冷え冷えの白ワイン、デザートにアサイー&ヨーグルトも付けちゃえ。
 市場直営だから野菜は新鮮極上。シイラのフライも熱々、サクッ。甘めのマヨネーズも好み。ワインうま~。銘柄なんて気にしない。寝不足の目には朝日がまぶしいけど、澄んだ青空と穏やかな海に涼しい風があるからノープロブレム。背徳感より爽快感が勝る。

朝酒、最高!

帰宅してもまだ10時前だったので、少し横になって休もむことにした。
朝寝・朝酒・朝湯なんて、ダメ大人路線まっしぐらだなぁ、でも、たまにはいいよね。

 朝酒、最高!

大事なことだから二度言ってから、ベッドへダイブした。



   
 *元ネタ「ワカコ酒」新久千映著/ゼノンコミックス
**マヒマヒ・サンド………シイラなど白身魚フライをはさんだサンドイッチ。ハワイでポピュラー。
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ディアミリ二次創作 夏至祭5

2020年06月20日 | 小話
 水の音がする。雨が降り出したようだ。
 重い体を起こし、窓から空を見上げる。病室の窓から見える灰色の空は、20時をまわってもまだ明るかったが、次第に雨雲につつまれていく。稲妻も走り遅れて遠雷も聞こえててきた。
天気予報では、今夜から明朝にかけて降水確率が高いと発表していた。
「週末の夏至祭は晴れるといいな…。」
 
 北欧の国々では、短い夏を祝い、盛大な夏至祭が催される。ここ、スカンジナビア公国でも然り、夏至に近い週末は各地でイベントがあり、盛り上がる。もちろん、郊外の別荘でのんびりと初夏を味わう人もいる。それぞれが思い思いの夏を楽しむのだ。
 公国に来たばかりの頃、ディアッカと夏至祭を観光しようと、楽しみにしていた。思いがけず新たな命を宿した今は、出産を控え出歩くこともままならない。体調は良いのだが、おなかがせり出して靴がうまく履けないのだ。(笑) ヨタヨタとペンギンのような足取りで人込みは歩くのも危ないし、お楽しみは来年までお預けだ。来年の夏至祭は生まれてくる子とディアッカと3人で過ごせると思うと期待が2倍に膨らむ。
「来年が楽しみだね。」
 お腹を撫でながら、独り言をつぶやいた。

 その時、一際激しい稲光と雷鳴が轟きわたった。一瞬身を縮め息を呑む。近くに落雷したのかと思った瞬間、いままで体験したことのない痛みが体中を駆け抜けた。
 陣痛が始まったのだ。
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ディアミリ二次創作 夏至祭4

2018年09月02日 | 小話
 
 涼やかな風を感じた。ほんのり湿り気を帯びた気配が髪をそよがせる。ひんやりとして心地よい。
ぴとん… ぽとん…
水音がした。
そういえば雨が降っていたっけ…。

 ディアッカがスカンジナビア公国におけるプラント大使館設立のために地上勤務となったのは、折りしも公国とオーブの国交200年記念祭を目前とした時期だった。両国では様々なセレモニーやイベントが予定され、その取材も兼ねて私は北の国へ赴き、ディアッカとのお試し共同生活を試みたわけだ。
 もちろん取材経費節約のためでもあるが、いや、もう、なんというか、いろいろ便利で面白いし、この先も腐れ縁が続きそうだし、嫌じゃないし、等々の様々な理由を言い訳に自分を納得させ、超長遠距離恋愛に終止符を打った。実際周囲の圧も強まったせいもある。両親やエルスマン家の期待、友人たちの好意とおせっかいが二重三重に包囲してきた。今回のディアッカの地上出向にしても議長の強力な推薦があったらしい。キラいわく、
「オーブの大使館勤務になった時の実績が買われたんだよ。でも二人に何の進展も無かったからもう一回チャンスを与えてくれたんじゃない? 任命式の時もラクスが『プラントの少子化政策の希望の星となってくださいね』とか囁いてたし。」
それって、駐在武官の任務として有りなのか? という疑問はさておき、大使館勤務において各国との交流・情報収集のために奥方達の役割が重要なのは理解している。ディアッカにとっても女性パートナーがいることは望ましいのだ。婚約者という建前で官舎となった借り上げマンションに住まわせてもらうのだから、できる限りのヘルプをする覚悟はできていた。



 今回の取材は200年祭の観光イベント紹介や、両国の交流に尽力した人物へのインタビューなど比較的ソフトなものだが、並行してプラント大使館の交流事業にも参加すると結構多忙な日々となった。眠気や嗜好の変化は、体がまだ環境に慣れないためと思っていたが、念のため確認したら試験薬は大当たり。すぐに産科で診てもらうと8週目だった。
 ディアッカの喜びようと動揺ぶりは小一時間続き、狡猾といわれた赤服とは思えないほどの言動に密かにギャップ萌え、もとい、ほほえましく思った。彼以上にハイテンションだったのはオーブとフェブラリウスの親達で、早くも孫溺愛発言を連発しまくっていた。
 入籍とか式とか、生まれてくる子供の国籍とか問題はいろいろあるが、まずは無事出産できるよう努めることにした。幸い悪阻はさほどきつく無かったので、契約した取材もこなし、臨月前には現地のフリーライターに交代できるよう手配も整えた。公国はナチュラル・コーディネーター双方の医療関係も充実しているし、ディアッカには一番に子供を見せてあげたいから、このまま公国での出産をと考えていた。が、これが結構揉めた。三か国会議が開かれるほどに。


 オーブの両親は、仕事を早めに交代し、安定期に帰国して親元での出産を希望した。
プラントの義父は最新医療の整ったフェブラリウスでの出産を打診してきた。現在、軌道エレベーターの試験的運用が開始され、体に負担をかけずに宇宙へ上れるようになっていたからだ。また、第二世代コーディネーターとナチュラルとの自然受胎・妊娠・出産の臨床データは貴重で、今後のプラントの人口問題に大いに役立つ必要なものだから、と。
 人口問題となると、ここで議長が出てくる。するとオーブ側も代表首長が出張る。公国の主治医および病院側も母体と子供の安全のため、遠距離移動や急激な環境変化は避けたいと主張する。

 税金使って衛星中継してまで討論することかと、あきれつつも、皆の好意に応えるべく会議に臨んだ。ディアッカは「ミリィが決めていいよ」と言ってくれたので、気が楽になる。
三か国それぞれの申し出をありがたく受け止め礼を述べたが、やはり父親たるディアッカには側にいて、胎内で育つ段階から一緒に見守ってもらいたいから公国で出産したいと返答した。
傍らにいたディアッカがすごく嬉しそうに微笑み、椅子に座って通信する私をバックハグした。これを見たアスハ代表首長は友人カガリに変わり、「ミリィがそういうなら、しかたないな。強引にオーブへ帰国させたらディアッカに一生恨まれそうだ。」と笑った。議長もプライベートの時に見せる歳相応の女子モードで「そうですわね、ディアッカさんにはイクメンの経験をしっかり積んでもらわねばなりませんものね。」と、微笑んだ。
一応公国での出産に落ち着いたものの、フェブラリウスの義父から三か国の合同医療チームを立ち上げ、それぞれの国の専門家が見守ってはどうかと、提案があった。即座にディアッカが割り込んできて冷ややかな声で言った。
「ミリィをモルモットにする気か?」
肩に置かれたディアッカの指に力が入る。まずい、これは本気で怒ってる感じだ。
「ディアッカ、苦しい。胎児に障る。」
「あ、ごめん、大丈夫か?」
とりあえず“赤ちゃん”を盾に落ち着かせ、狡猾顔をパパ顔に変えさえる。それからモニター画面の義父をまっすぐ見つめ、深呼吸して応えた。
「これからは私と同じような女性が増えると思います。前例があればより安心して子供が生めます。私のデータをこれからの母親達のために役立ててください。」
「そうか、ありがとう!ミリアリアさん。」
「ちょ、ちょと、待てよ!」
「では早速、EMI(エルスマン・メディカル・インダストリア)の最新医療機器と精鋭チームを送るよ。」
「オーブからも専門の医師を派遣しよう。第一世代とナチュラルとの出産データは参考になるだろう。」
「我々公国もデータは提供できますし、産科と遺伝子検査のスタッフをそろえましょう。」
「なに、勝手に決めてんだよ!」
「これでプラントの人口問題にも一筋の光が見えてきましたわ。vv」
「予定日頃には、母さんそっちへ行こうかしら。有給休暇溜まってるし。」
「え?ええ?お前ひとりで行く気か?」
「お父さんも来れば? 公国の夏は涼しいし森と湖がきれいよ。」
「公国への親善訪問をその時期に合わせる手もあるな、秘書官、調整してみてくれ。」
「それなら、僕たちも行けないかな? 大使館の正式オープンにあわせて。」
「そうですわね、カガリさんもいらっしゃるなら三か国の友好親善にもなりますし。」
「じゃあ、アスランにも声かけておくよ。夏至の時にそっちじゃザリガニ食べるんだってな?楽しみだ。vv」
「俺の話も聞けー!!!」
もちろん誰も聞いちゃいなかった。
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ディアミリ二次創作 夏至祭3

2015年04月03日 | 小話
夏至祭 3

 閃光と雷鳴、激しい雨に見舞われながら傘もささずに駐車場から病院の夜間受付へ駆け込んだ。面会書類に記入する間に連絡を受けた担当のヨハンセン医師がやって来てタオルを渡してくれた。
「ミリアリアさんは先程母乳を飲ませて、今はちょうどお休みになったところですよ。先に新生児室へご案内しましょうか?」

 男子誕生・母子ともに健全、と連絡をもらったものの、どうしても仕事を抜けることができずこの時間になってしまった。心臓がバクバクするのは走ってきたせいだけではない。一刻も早く赤ん坊とミリィに会いたくて、ついつい早足になり案内役の医師を追い越してしまう。
 EMI(エルスマン・メディカル・インダストリア)製最新設備の新生児室に生まれたての赤ん坊が一人すやすやと眠っていた。俺によく似た肌と髪の子供、耳の形はミリィに似てるかも…。不覚にも目から汗が出そうになる。担当医師が赤ん坊の健康状態と今後のスケジュールを簡単に説明してくれたが、興奮していて情報が上滑りしていく感じだ。ずっと見ていたかったがミリィの様子も心配で、病室へ行くことにした。
 室内には常駐の看護士が付き添っていた。医師と看護士に礼を言うと二人は替えのタオルと温かいコーヒーを持ってきましょう、と席をはずしてくれた。

 ミリアリアは軽い寝息をたてベッドに横たわっていた。たくさん汗をかいたのであろう、髪がいつもより乱れている。出産という男には到底想像できない大事業を成し遂げ、安堵の表情を浮かべてるようにも見えた。しばし戦士の休息だ。
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ディアミリ二次創作/夏至祭2

2014年06月27日 | 小話
夏至祭 2

 目が覚めたらベッドにいた。
 あれ? 昨夜はディアッカの帰りを待ってリビングのソファで転寝して…。
そう、シャトルが遅れてディアッカは22時過ぎてもまだ帰ってこなかった。どうしても起きて待ってると言ったものの、眠り込んでしまったみたい。ソファからベッドまで誰が運んだのかな? ディアッカ?
 パジャマのままリビングへ向かうと、コーヒーの香りがした。
ディアッカがいる!

 ドアを開けると、コーヒー片手にモバイルを見ていたディアッカがすぐこちらに気づいてニンマリ笑う。
「起きたか? おはよう、久しぶり。」
「おはよう、ディアッカ。お帰りなさい。いつ帰ったの?」
「ほぼ真夜中だな、お前起きて待っててくれたんだってな、悪ぃ。」
 宇宙に行くのも地球に帰ってくるのも大変だってことは子供の僕にもわかる。それでも休暇はオーブの家に帰って来てくれるディアッカはえらいと思う。軌道エレベーターができるともっと簡単に宇宙から帰ってこれるらしい。早く完成するといいな。
「ミリィがっかりしてたよ、ご馳走つくったのに一緒に食べれなくてさ。」
「埋め合わせはするさ。今日は俺が朝飯作ってやるよ、お前は何が食いたい?」
「お豆腐入りのフワフワオムレツ! それから、カフェオレ!」
 子供はコーヒー飲んじゃだめだってミリィが言うから、いつもはミルクか果物と野菜のジュースだけど、ディアッカがいる時は少しコーヒーを飲ませてもらえる。ミルクたっぷり蜂蜜ちょっぴり、もちろんミリィにはナイショ、男同士の秘密だ。少し苦いけどちょっと大人になった気分。

 ディアッカが帰ってきた次の日、ミリィは必ずお寝坊だ。いつも一人で気張ってるから俺がいる時ぐらいのんびりさせてやるのさ、とディアッカは言う。手際よく調理を済ませ、僕がおいしいともりもり食べているのを確認すると、今度はミリィのためのコーヒーを準備し始めた。ミリィもいつもは紅茶だけどディアッカがいる時はコーヒーを飲む。オレンジキュラソ-を入れた『マダム・ボルジア』。
「では、姫を起こしにまいりますか。」
 いつものマグカップではなくちょっとおしゃれなカップ&ソーサーに淹れたコーヒーをトレイに載せてディアッカはミリィの部屋へ向かった。
「後で作文の宿題手伝ってよ!」
「りょーかい。」

 とりあえず、一声かける。そうしないといつまでたっても戻ってこないから。両親が仲良しなのはいいと思うけれど、なんていうか、僕が入り込めない雰囲気を作る時がある。こういう時、弟か妹がいたら寂しくないのに、と思う。幼稚園の頃はサンタクロースに弟か妹くださいって手紙書いたこともあったっけ。
 でも、ディアッカはいつもミリィに会えなくてかわいそうなのだから、帰ってきた時くらいミリィを独り占めさせてあげよう。僕も2年生だし、いろいろ一人でできるもん。
ヨーグルトを食べ終えたら食器洗浄器に食器を入れスイッチを入れた。コーヒー飲んだ証拠を残さないためだ。
 ミリィが起きだす前にパジャマを着替えて歯磨き洗顔を済ませよう。午後は思いっきり遊べるように、作文の準備をはじめよう。




※ お寝坊ミリィはディアミリのデフォルト事項。
  紅茶派のミリィはオレンジスライス入れたシャリマ・ティーがお気に入り、というの  が当サークルの設定です。
※※子供の疎外感を聞かされた親の友人達は「ディアッカだからな、仕方ないよ。」「早くガールフレンドができるといいね。」など、親離れ推奨支援体制。
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