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Boruneo’s Gallery

絵はお休み中です
<作品には著作権があり、商業的使用は禁止とします>

4月の雪 6

2006年11月01日 09時16分56秒 | 創作話

      6 ~慕情~ 

「どうして目を覚ましてくれないの・・・」
夢の中で彼女と会っているからなの?   私には会いたくないの?
あの警察の人が言ったことは本当なの? もう、私を愛してないの・・・?
私の愛を裏切ったの・・?

キョンホssi・・・目を覚まして。
・・・恐くても確かめなくてはいけない。あなたの口から本当のことを聞かせて。

 私・・恐い・・・
あの人に会うのが恐いのよ・・・
引き込まれそうなこの気持ちは何なの・・・

あの人の声を聞いてるだけで震えそうだった。 
なのに、もっと聞いていたいのはどうして? 
彼と目を合わせただけで心臓が射貫かれるみたいで・・ あの人の目から離せなくて、じっと見つめた私をなんて思ったかしら・・・ こんなこといけないのに・・・

彼はあの人の夫よ?
お互い辛い立場同士だから、錯覚してるのよ。
あの優しさに触れていたいと思うなんて・・どうかしてるわ・・・

「お願い、キョンホssi、早く目を覚まして。このままじゃ、私・・・」

 ソヨンは夫のベッドの横で語りかけながら、涙を流していた。眠る夫に“ごめんなさい”と謝るように。  

 

 

あれから毎日僕は病院に通った。
彼女が来そうな時間は何となくわかっていたから、会うのは難しくなかった。
そして、会えばあのカフェに彼女を誘うのが僕の決まりだった。

僕たちは不倫相手の夫と妻という特殊な関係だったから、好奇の目で見られることも病院の中ではよくあったし、そのことが僕と彼女を傷つけているというのも事実だった。
実際、仕事しながら毎日通うのは、疲れを覚えてしまう。
仕事と病院と家の往復。
長い一日の中で、唯一心が休まる場所が欲しかった。
だから、少しの休息のためにカフェに誘ったんだ。

それだけ?
いや・・違う

寂しさを紛らわしたいのか?
・・・それも違う

僕が・・・彼女に会いたいんだ。

そのことに気付き始めてから、僕の瞳にはスジンではなく、彼女が色鮮やかに映るようになった。

 ----こんなことになったスジンを、僕はもう愛してないということか?----

----だから、彼女に惹かれたのか?----

自問自答する日々。
すべてに‘そうだ’とも‘違う’とも言えた。
どこにも答えを見出すことは出来なかったが、わかったことがひとつだけあった。
 僕の心は彼女に向かっている。

とうとう・・自分の気持ちに耳を傾けてしまった。

---- 好きになってはいけない人だ ----

僕が何者かもわかっているのに・・・スジンがいるじゃないか・・・。
それでも貴方の夫を今も愛してるのか、君に聞くのはいけないことなんだろうか・・・。


4月の雪 5

2006年10月29日 21時09分06秒 | 創作話

           5 ~出会い~

サムチョクの病院に通い始めてから5日が過ぎ、3月に入っていた。
幾分真冬に比べると温かい日もあったが、海が近いここでは冷たい風が吹く日も多い。
それでも空色は晩冬を知らせていた。

今だ二人の意識は戻らず、特にインスがしなければならない看病はなかった。
点滴がずっと繋がれた状態のまま、顔や体を少し拭いてやったり、話しかけてやることぐらいだ。
ソン・ギョンホの妻である彼女も同じことだった。

あの日、激情のまま去ってから、彼女とは一言も口を利いてはいない。
僕は八つ当たりをしてるんだろうか?
眠り続けている男にぶつけられない怒りを彼女に?

何とも情けない話だな・・・

時折見かける彼女は、心から心配そうに、不安を抱えながら看病している。
僕と同じじゃないか・・・愛していた人の裏切りに心を痛めている。
悲しいくらいに・・・・・

彼女の中に自分を見つけると、遣る瀬無い胸の疼きを覚えた。
そして時間と共に、同じ心の痛みを持つ者として同情にも似た気持ちで、僕たちは言葉を交わし始めていった。

「今日も状態は変わらないですね…」

管に繋がれている二人をガラス越しに見ながら、僕は彼女に話しかけた。

「ええ…相変わらずです…」

「あの…お互いまだ名前を紹介してませんでしたね。僕はチェ・インスといいます」
彼女と向き合った。

「あ、ごめんなさい…私は、ユン・ソヨンです」

「よろしくと言いたいけど、ちょっと複雑だから、どう言えばいいのかな・・・」

僕がふっと笑いながら言うと、彼女は口元を柔らかく緩めて「そうですね。」と澄んだ瞳と笑顔を僕の心にまっすぐ届けてきた。

・・・ドクン・・・僕の体がふっと軽くなった。

それから二人の意識が戻らないまま時間は過ぎていき、インスとソヨンの会話も簡単な挨拶から少しずつ変わっていた。
治療室で、待合室で、病院の休憩室で、会えば必ず言葉を交わし、時には笑顔で話していることも多くなった。

「今日は早いですね、仕事はお休みなんですか?」僕は彼女に笑顔を向けた。

 「ええ、ちょっと休みをもらったんです。疲れた顔を余り見せたくないので・・」 

うつむき加減の彼女の顔を覗き込む。「ホントだ、顔色が今ひとつ良くないな」

 “ふぅ・・・”と尖った口から息を吐いてから、「実は僕もなんです。よかったら、病院の外に一緒に出ませんか?ずっとここに居たら気も滅入るだろうし、気分転換においしいお茶でもどうですか?」と誘ってみた。

「え?」

「そんなにびっくりしないで、あっ・・それとも不謹慎だったかな」

「・・・(笑) いいえ」

何だろう。

「美味しいところが近くにあるんですか?」

目が離せない。何かがざわついている。

「んー、近くかな。車で10分くらいなんです」

“行きませんか?”と僕が車のキーを見せながら微笑むと、“くすっ…”と君が笑った。廊下を彼女と肩を並べて歩いていると、病院独特の匂いも気にならなくなっている自分がいた。

---隣にいる彼女のせい?---

僕は胸の中にうごめき出した“それ”について考えながら、足はゆっくりと駐車場へ向かっていった。


車で10分程走らせた所にリゾート風のカフェがあるのを、以前病院へ向かう道中で見つけていた。
ここは海岸沿いの道が多いからカフェからは海がよく見える。
3月はまだ寒く、景色のいいオープンカフェについては居心地が良いとは言いがたかった。
中で海の見える窓際に席を取る。冬空の雲の途切れ途切れに青い空が見えていた。


二人とも体を温める飲物を頼んで、そのカップで指先を暖めあった。
僕たちはそこで少しずつ、いろんな話をした。
彼女が中学校の教師をしていること。彼女と夫との出会い。僕は何一つ責めることなく落ち着いて聞くことができた。そして僕もスジンのことを話すと、彼女はまっすぐ向き合って聞いてくれて、それがとても心地いい。

だが、今回のことについてはどちらも“なぜ…?”に答えられるものがなかったから、それには触れることが出来なかった。ただ、たわいもない会話にお互いの気持ちが温かく包まれていくことは確かに感じていた。
そう・・・それは多分彼女も・・・。

不思議な感覚だ。
本来ならこんな風に話せない間柄なのに、彼女とは何かが違っていた。
一緒にいると、とても安らいだ気持ちになってくる。時間が経つのがあっという間だ。

地獄へ落ちたと思った日々から、明るい光の筋が僕の中に差し込んでいる。

    ・・・・ドクン・・・・ 
   
・・・・ドクン・・・・

微かな或る気持ちを感じずにいられなかった。
   
   ・・・・ドクン・・・・    

・・・・ドクン・・・・

それが何か、僕は知っているはず。

その日から病院に行くと、彼女を探している自分がいた。


4月の雪 4

2006年10月28日 00時26分45秒 | 創作話

4 ~憤り~


包帯と点滴と何本もの管を付けられて、まるで息をする人形のようにスジンは眠っている。

「スジン…はやく目を覚ましてくれ。」
ガラス越しの君に話しかけた。

「僕たちは特別な夫婦じゃないだろう。確かに、どこにでもいる夫婦かもしれない。
それでも君と出会って、心から愛して、お互いを尊重しながら大事に思ってきたはずだ。
スジンも僕を愛していただろう?どこで、僕たちは間違えた? 
何がいけなかったんだ!?」

幸せが当たり前のように過ごしてきた毎日が、一瞬にして地獄に変わるのは簡単なことだと僕は初めて知った。

ガラス越しに見るスジンのベッドの左横には、カーテン越しにその男が横たわっていた。
妻を奪った男。
スジンが愛したかもしれない男。がそこにいた。
瀕死の重傷だというのに、並んで寝ている二人の姿に腹立出しさが昂じて涙が出るほど胸がつまった。
僕は押さえきれないそれに突き上げられながら、拳の中ですべての感情を握りつぶそうとしていた。

僕との距離を置いて、その男の妻が立っている。
さっきまでは見れた彼女の顔が今は見れない。いや、見たくはなかった。
ベンチで見せた涙も、心配のあまりに震えていた手も、
今ではそれらが憎む対象となりえるものだった。

僕は何も言わず、ただ足早にその場を立ち去ること、それが精一杯だった。

                

 

翌日、インスはスジンに何か変化があったら連絡をくれるように病院に伝えて、会場に来ていた。
コンサート会場は滞りなく準備が着々と進められ、インスがいなくても各自の仕事を皆それぞれにこなしていた。
インスは後ろの客席からみんなの仕事振りを一人静かに眺めていたが、頭の重みを両手で支えて俯き始めた。

・・・根本的なことはみんなと打ち合わせをしたから、僕が居なくてもわかるだろう。大丈夫だ。仕事は何の問題はない。だが……。

怒濤と暗雲と疲労にインスは身も心も疲れきっていた。
信じたい気持ちと疑惑の狭間を行き来しながら、ゆっくりと地獄に落ちていく感覚だけがはっきりとわかることだけのように思えた。

スジン・・・遊びというやつなのか? それとも本気なのか? 

・・・いつからそんなことになっていた?

・・・どういうつもりで僕と毎日顔を合わせていたんだ?・・・

・・・どんな気持ちで僕に抱かれていた?・・・・

・・・僕に抱かれながら、あいつを思っていたのか?・・・・

段々と憤りに似た感情がインスを突き上げたが、到達する前に失速を始めた。

どちらにしても、君が僕を裏切ってたことには変わらないというわけか・・・


大きなため息を吐いた後、背もたれに疲れた頭を乗せて、会場の高い天井を仰いでみる。
インスは自分の中で何かが剥がれていく音に気が付いた。だが、そっと閉じた瞳から涙が滴れ落ちたのを気づかないでいた。


4月の雪 3

2006年10月25日 21時08分37秒 | 創作話

              3 ~報告~

“後で警察から話があると思いますので、ここでお待ちください”

病院関係者に言われて、僕と彼女は集中治療室の前にある待合室で待っていた。どちらかが被害者と加害者に分かれる僕たちに会話はなく、ただ体だけがじっとそこにある感じだ。
大切な人が重体という不安と緊張感の中、野太い張りのかけらもない声が重苦しい空気を裂く。

「事故に遭われた家族の方ですか?どうもサムチョク警察のものです。いやぁ、調査に手間取りまして…。で、怪我の方はどうでしたか?随分ひどそうでしたが」

ーひどそうだと!?ー
こいつの無神経さに思わず襟ぐりを掴みそうになった。
事故はなぜ起きた?その説明をするのがお前の仕事だろう!

言葉を呑み込んだ僕たちを見定めてから、そいつは説明を始めた。
「え~とですね、現場検証からの報告ですが、雪道だったために、ハンドルを切り損ねて対向車と接触したようですね。たまたま別の対向車で目撃された方がいまして、その人によると、ハンドルを握っていた方は男性の方だったということです」

…男性?…

「えっと、一緒に運ばれて来たソン・ギョンホssiですね」警察官は報告書を手にしながら事務的に話を続けた。

…ソン・ギョンホ?…

「ソン・ギョンホssiとイ・スジンssiは恋人同士のようですね。昨夜泊まられたホテルで確認が取れました。一泊二日の旅行でこれから帰るとこだったんでしょうな。どうも、女性の方がふざけてたらしい目撃談があるので、それでハンドルを切り損ねたんでしょう」

警察官はさらに、“意識が戻ったら調書を取りに来ます”と言って、立ち尽くした僕たちの前から姿を消した。

何と言ってた?

今、あいつは何を言った?

恋人同士・・?
一泊二日・・?ふざけていた・・・?

ソン・ギョンホ?
 ・・誰だ・・聞いたことのない名前だ・・・
スジン・・? どういうことだ?

隣で一緒に説明を聞いていた彼女から嗚咽がした。

「…キョンホssi…どうして…!」
彼女の口から洩れた答え。

・・・そうだ、彼は彼女の夫だ・・・

・・・そして、スジンは僕の妻だ・・・

真っ白だった頭の中に、はっきりとひとつだけ浮かび上がってくる。
そしてすべてがわかったとき、心に大きなひびが音を立てて入り、と同時に僕たちの時間をも止めてしまっていた。


4月の雪 2

2006年10月24日 10時34分40秒 | 創作話

               2 ~事故~

 逸る心臓の音が大きくなっていくのを感じながら、救急治療室の文字を探す。
看護士に教わった場所に辿り着くと、救急治療室の大きな扉は
拒絶するように僕の前に立ちはだかり、治療中のランプが赤々と光っていた。
弾む息を抑える間もなく、心臓は動悸が激しくなっていった。

この扉の向こうにスジンがいるのか・・・
一体何が…君は無事なんだろうか・・・

興奮した頭で考えても答えを見つけることはできず、ただその扉にもたれることしか僕に出来ることはなかった。               

どれくらいの時間をそうしていたんだろう。
どうにも空きそうに無い扉を恨めしく思い、 “とにかく落ち着こう…”と、斜め向かいにあるベンチに目を向けた。

女性が一人座っていたが、そんなことを気に留める余裕なんかない。
インスは彼女を見ずに、ベンチの端に力なく腰を落とした。

・・・スジンの怪我はひどいんだろうか?何が起きたっていうんだ?
君の運転が下手じゃないことは僕が知ってる。
それなのに事故を起こすなんて・・・とにかく無事でいてほしい・・・     

                                   

祈る思いで待つことしか出来ないもどかしさ。
ベンチに腰を下ろしていたインスも最初は放心状態で空を見つめていたが、
待たされている間に少しずつ落ち着きを取り戻してきていた。

 インスは先ほどから目の端にぼんやり映っている女性に、少し視線を移して見てみることにした。どこか思いつめたように、祈るように手を合わせている姿だ。
そのとき、何かが落ちた気がした。

 涙・・・・?
泣いてるんだろうか?・・・誰だろう。
・・スジンの事故は、もしかして接触事故なんだろうか? 
この人はその家族かもしれない。

そう思ったインスは、彼女に「あの…」と低い声を掛けた。
声に反応した彼女はゆっくりとインスのほうへ顔を向け始めた。

「僕の妻が事故に遭ってここに運ばれたんですが、あなたは?」
「…わたしも主人が事故にあって…飛んできたんです…」

「…そうですか、…お互い心配ですね」
彼女の顔色は悪かった。涙を拭くことも忘れてしまっている様子だ。

「あの…大丈夫ですか?」
「……」

「きっと大丈夫ですよ。祈りましょう」
僕はそう言うと、彼女が涙を拭けるようにきれいなハンカチをポケットから差し出して渡すことにした。 そのとき、赤々と光っていたランプの明かりが消えた。

「スジン!」思わず僕は立ち上がった。と、同時に彼女も立ち上がって扉の向こうの様子を伺っているようだった。
開かずの間の扉から出てきたのは、胸に赤黒い染みを付けてくたびれた様子のドクターだ。

「少し状態がひどくて…何とか一命は取り戻しましたが、予断がならない状態です。とにかく集中治療室に移ります」

そう言うドクターの後ろを、スジンを寝かせたベッドが運ばれていく。
インスは駆け寄り「スジン!スジン!」と声を掛けるが、“麻酔が効いていますから”と看護士たちに連れ去られていった。
呆然としたインスの前をもう一台のベッドが通ろうとした。
「キョンホssi!しっかりして!」そのベッドに先ほどの彼女が泣きながら駆け寄っていった。                


4月の雪1

2006年10月22日 10時37分26秒 | 創作話

         1 ~序章~

 2月に、ソウルで音楽のライブコンサートが開かれる。
インスはその準備で忙しかった。
会場はスタッフや機材や道具などでごった返していて、何人ものスタッフたちが点検のための作業に大声を上げていた。
いつもの光景があちらこちらで見られていた。
 「インス、これどうするんだ?」配線担当のキムが聞いてきた。
「ああ、それは3番のスイッチに繋いでくれ。それと、あっちの照明は色の配置を変えることにした。配置図はそこにあるから。それから今回はバックステージから雪を降らせるからスタンドの位置も変える。」
「よし、わかったよ、インス。」

キムはインスの指示どおりに動いた。 照明監督として今回のステージを任された僕は、照明の調節に余念がなかった。
そしてひとりステージを降りては 客席の真ん中で全体の様子を見ながら大声で指示を出していく。

 「ヨンウ!5番のスイッチを入れてくれ! それをもう少し中央に向けるんだ。OK!それでいい。」

気心の知れた仲間たちとの仕事は話も弾むし、何より阿吽の呼吸でわかるところがいい。 この会場も、何度か足を運んでは仕事をしていたから勝手も知っていたので、リラックスしながら進めていくことができた。

「よう、インス。この分だと今日は早く上がれそうだな。」
配置図を手にしたキムが、含みのある笑顔で話しかけてきた。

 「何を企んでるんだ?キム。」
インスも含み笑いで答えた。

「お前、今夜ひまだろ?奥さん出張だし、独身気分でこれに付き合えよ。」
そういってキムは手でぐいっとグラスを上げる仕草をした。

「いいな。たまにはキムの愚痴にも付き合わないとな。」
“そうだよ。だが、お前の奥さんの話なんか聞かねえぞ”と言って、キムとインスは笑っていた。

「おーい!インス、電話だぞ!」

スタッフに呼ばれたインスは、キムに“また、後で”と目で挨拶を交わして、ステージ横の音響システムの所に置いてある電話を取った。

「もしもしチェ・インスですが…サムチョク病院?…!?すぐ行きます」
「インス?どうかしたのか?」
「スジンが事故に…すまない!後を頼む!」

周りのスタッフに告げるとインスは上着と車の鍵だけを握り締め、会場を後にして駐車場に駆けていった。

-------スジンが事故?・・意識不明!?--------

一体、何があったんだ!
確かに、君は仕事の出張で昨日から車で出かけていた。
元気にいつものように出かけた君が事故だなんて…
それも意識不明だなんて… 信じられない!!
それにサムチョク病院?…なぜそんな所で?…

僕の頭の中はわからない事だらけだった。
とにかく早く彼女のところへと気が焦るインスは、アクセルを踏み込んで夜の高速道路を走らせた。インスはスジンのいるサムチョク病院へ向かうためにはスピード違反だろうが関係なかった。

目的地に着いたときはもう完全に夜になっていて、駐車場もがら空きだった。
インスは車から降りると、病院の入り口に向かって駆け足で走っていった。
夜だから外来患者もなく、入院患者も自分の病室にいる時間帯だったので病院の中はがらんとしていた。

受付はどこだ!?
「すみません!妻が事故でここに運ばれたと聞いたのですが。」

看護士を捕まえて聞くことができた。
「ああ、イ・スジンさんのご家族の方ですか?今は救急治療室にいます。この廊下を右に曲がられて、真っ直ぐ行かれたら突き当りを左に入ったところですよ。」

「すみません。ありがとう。」

夜の廊下にインスの走る足音が響き、病院独特の匂いが現実を押し付けてくる。
これは夢じゃないんだと・・。


 

 この創作を書き始めたのが 2005年の冬、クランクインと同時で、
書き終えたのが映画公開前でした。
始めは 住人であるサイトで投稿させてもらい、
今はヨン友の携帯サイトで 毎日更新してもらい、
感謝の日々を送っています

 

作品倉庫とも言えるこの場所があるのだから
全作品、ここに収めようと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いします。