Life is・・・so・・・××××××Gun-Parade-March!!

死ぬから生きよう。ただ・・それだけ。

殴った方が痛い手はあっても、刺した方が痛い刃は無くて。

2006-02-24 01:05:33 | Weblog
自分に文章力とか言われている力が無いのに腹が立つ。
自分に才能の欠片も無いのが腹が立つ。
伝えたい気持ちを、口で伝えられないから文字にするのに。
それすらまともに出来ない自分に腹が立つ。
楽しいから、気持ちがいいから書くのに、うまく書けなくて、うまく書いてあげる事が出来ない事に腹が立つ。
浮かぶイメージを、文章に乗せる事が出来なくて腹が立つ。
死ぬ気でやれば、できるのだろうか?
死ぬ気でやれば、できるというのだろうか?
死ぬ気で、本気で、全力でやれば、伝わるのだろうか?



そうしたら、ぼくは誰かを幸せにできるのだろうか?


Vol:18 Gun-Parade-March-2 hydrangea

2006-01-08 19:16:44 | 妄想具現化
紫陽花を見ていた。
砦のベランダから、雨に濡れる紫陽花を。
『蹴球、なに黄昏てるの?』
真後ろから声を掛けて来た真っ赤なドレスの女性・・・ニレコは、うん?もう夜だし夜てる?いや、どうなんだ(*'ω'*)?
等と呟く。
気楽なものだ。あれだけ、オレのせいで恥をかかされたのに。
「ニレコ、すまんな」
本当は謝りたくなんてないから、紫陽花にむかって謝る。
そんな情けないオレにニレコは
『・・・帰ったら暇な時に練習付き合ってやるから な!』
なんて、笑顔で(きっと)言いやがる。頭・・・あがんねぇな。
パーティーはまだ続いている、このベランダなんかじゃ無く、砦内でだけ。
『いやもーマジ暇な時だけな?な?』
最後の一言だけ余計だった。


なるべく繊細にステップを踏む。まるで、踏みしめる先に地雷があるみたいに。
「たったらった・・・たらった・・・・」
記憶を頼りに、ステップ。薄氷を踏むように。
っと・・・ここでパートナーの肩に手をまわ・・・
すっと上げるつもりだった右腕はギシギシと鳴るブリキの様。
ちっ・・生地に金を掛けすぎてフォームは適当になっちまったっぽい。
どうも肩があがりにくいのだ。せっかくオーダーで作ったのに。
ぼやきながらタキシードの裾を翻してくるりとターン。
「たたったらっ・・・・た・・・・た・た・・」
首を回す一動作ですらぎぎぎと音がなる。シャツまでギリギリサイズだ。
よし、ここでパートナーの腰を持って一気に・・・!
ズズズ。地響き。地震ってレベルまではいかないけれど、微妙にバランスが崩れる。それでもすでに足を踏み出していて・・
タンッ。
「あ」
踏んだ。間違いなく踏んだ。
勢いに任せて踏み出した右足は、イメージの中にしかいない女性の左足の爪先を間違い無く踏みしめている。
「・・・あらー・・・」
すでに脳内投影機は相手が顔を顰めて中指を立てている絵まで浮かび上がらせる。
『いてーよはげ!』
声まで聞こえてきた。
何、別に大した事じゃない。なにせ足を間違えて踏んでしまうのも、もうこれで5回目。脳内投影も慣れたもので相手はどんどんリアルになっていく。
「どっかで必ず失敗するんだよなぁ・・・」
今回はまぁ地響きのせいってのはあるんだけれど、あんな小さなアクシデントでダメになっちゃうのはなぁ・・。
脳内の相手がべーっと舌を出して消えてからぽつりと呟く。何やってんだオレ。
「あーぁ、ニレコー、見てないで練習付き合えよー」
「やだね(・ω・)”」
自分はだれもいない大広間で練習していた。それでも、そんな鎌をかけたのは、本当になんとなくだったので声が返ってきた事にびっくりする。
くるりと回って声のした方を向く。部屋の隅に人影。
「足を踏まれまくるのなんてマジ勘弁だ(・ω・)”」
ピンクと白の色とりどりなワンピースを着たニレコが、部屋の隅にある机に肘を突いてこっちを見ていた。
「いや、でもなぁ・・イメージじゃどうにもこうにもうまく・・ってお前なに食ってんの?」
なんかさっきから咀嚼してるなーなんて思っていたのだけれど、その机・・・
「うん?(・ω・)”もぐ。いや、ちょっと聞いてよ奥さん(・ω・)”もぐ。」
左腕は肘を突いたまま。何やら右手が高速で口に何かを運んでいるようなのですが・・
「砦のメンテ前にERを掃除しようと大広間に入ったらですね(・ω・)”もぐ。何やらクルクルぱたぱたやってる人がいるじゃないですか(・ω・)”もぐ。」
な・・なんだあれ?咀嚼が異常に早いのか、口にモノを入れてから直に口を開くのにそこには何も無い・・・。
「それがあんまりぎこちなくて面白かったからちょっと見学しようと(・ω・)”もぐ。座った席の机にこれがあったのごちそうさま。」
綺麗になった皿をこっちに向けてごちそうさまをしてくるニレコ。
そ・・・その机には確か・・・
「ばかwwww!ちょ、おま、それはおれが気分を出すために用意しておいたモンなの!」
蹴球特製”一人の晩酌も寂しくない”豪華三種盛り。
居酒屋のバイトでつちかったノウハウを導入した最新作である。
「いやいや、さすがバージル君は料理がウマイネ(*'ω'*)」
フォークを名残惜しげに眺めるニレコ。
「オレが作ったんだよ・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「(;゜ω゜)・・・」
かちゃーんと音を立てて床に落ちるフォーク。
「は・・・は・・・・」
「は?」
歯がどうかしたのか?
「謀ったなー!!ど・・どどどど毒!?毒なのか!?」
ぐぇ、と喉を両手で押さえて立ち上がるニレコ。待て、いまウマイっつっただろ。
『warning。warning。unknown forceにより砦に攻撃が与えられました。自律プログラムでは対処不能、”管理者”による外部サポートを希望します。繰り返し・・』
「オレが食う予定だったものに毒なんて入れるかwwww」
「ぐぐぐg!清めなければ!」
がっ!と机の上に残されていたワイングラスを手に取り、中に満たされていた紫色の液体をぐいっと飲み干す。
「ふぅ(*'ω'*)」
「おいwwwwwwそれボトルで9kくらいするんだぞwwwwww」
微妙とか言うな。
「毒は清められた(*'ω'*)」
「元から入ってねぇwwwwwwwww」
グラスの横に置いてあるバケツの中から、冷やされているボトルを回収する。二杯目とかに突入されたら事だ。
「(;`ω´)」
「狙ってんじゃねwwwwwwww」
まったく、ほんとに狙ってやがった。
「はぁぁああぁあぁ、ヤダヤダ、小さい男はやだねぇ(*ω*)」
ボトルを天井のライトに翳して中身を見る。ほっ、どうやら無くなったのは一杯分だけだ。
パンッとどこかで破裂音。
「見てよ奥さん、アイツ中身の確認とかしてやがんのっ!ちいせぇちいせぇ!」
「うるせぇwwwwwwワイン一気飲みするお馬鹿は黙ってろよwwwww」
がたんっ!と椅子を蹴り上げていきなり席を立つニレコ。お・・・怒った?
「kr・・・・・・」
「は・・はいっ?」
何故か額を冷や汗が落ちる。なんだこの緊張感は・・・・。
ざわ・・・ざわ・・・と、何やら嫌な予感がする。いや、マジでなんかこえーんすけど。
目の前まで進んできたニレコはすっと右手を挙げて・・・
「ひっ」殴られる!?
そのまま右の手の平を額に当ててきた。
「?」
「kr・・・大丈夫?病院行く?」
さっきまでの緊張感はどこかに消え、ニレコの表情は重症の患者を看取るような、慈愛と哀れみに満ちていて。
瞳には涙のようなモノが盛り上がっている。
そんな、表情でニレコは諭すように言った。
「ちびちび飲むのはウィスキー。ワインはぐい飲み。これ・・常識だよ?」
「ちげwwwwwwwwwww」
どうやらシリアスは10秒くらいが限界のようです。
バッと額に乗せられていた手を叩いてどける。
「せっかくおねぇさんがワインの正しい飲み方を教えてやってるのに(;`ω´)」
大真面目に言ってやがる。こいつ、マジか?
「いあいあ、それ違うから!ワインの飲み方じゃないから!」
予備で持ってきていたグラスをワインを運んできたカートから出してワインを注ぐ。とくとくとく。
「いいか?そもそもニレコはグラスの持ち方からして違う!」
キュッとワインにコルクを挿して栓。1/3ほどワインを注いだグラスの『首』を持つ。
『こちらERバージル。”管理者権限”を発動。現在砦はunknown forceにより攻められている。総員第一種戦闘配置に着け。繰り返す、総員第一種戦闘配置に着け』
「さっきお前はこのグラス自体を手の平で持ってたろ?こう・・こんな感じで」
右手の中指と薬指の間にグラスの『首』を差し込んでグラス自体をワシ掴む。
「帝王持ち(・ω・)左手は猫を撫でる」
居もしない猫を撫でるニレコ。だ・・だめだ・・・・。
「それ漫画の見すぎwwwwwwワイン温くなっちゃうだろwwwwwwww」
「温くなったら捨てて新しく注げばいいじゃない」
「どこのマリーだよwwwwwwwwww」
なんか・・・最初から説明しなきゃいけないような気がして鬱になる。く・・手強いな。
「そんでだ、グラスを持ったら・・・」
「はいはいせんせー」
ビッと手を上げる生徒ニレコ。
「なんだ?」
「その面白服は私を笑い死にさせる為ですか(;`ω´)?」
「タキシードだよwwwwww」
「芸人になるんですか(;`ω´)?」
「お前空気読めよwwww殴るよwwwwww」
『ERバージルより各員、砦は完全に包囲されている。襲撃備え』
「まさか・・・コスプレですか(;`ω´)?」
「・・・ニレコ・・・・ちょっと額を出せ」
とことこと寄って来て前髪を上げるニレコ。瞳がキラキラと輝いている。なにやらすっごい楽しみにしている模様。素直か馬鹿なのだがぜひとも後者の線で行きたい。
「ていっ!」
「あ痛っ!」
ペチンとつるつるの額にデコピン。参ったか。
「なにしやがるヽ(`□´)ノ」
「話を聞けwwwwww」
また最初に立ち返り、グラスを持つ。
「いいか?ちゃんとこの『首』を持ったら・・・」
「グラス自体を親指で弾いて『首』から切り離すんですな(;`ω´)?」
「筋肉馬鹿漫画じゃねwwwwwwwwwwwww」
『砦内配置各員に告ぐ、現在砦はunknown forceからの襲撃を受けている。その際、空間干渉系の攻撃を受けたものと予想され砦は空間移送を強制的に受けたと思われる。砦が割り出した現在地は”ニブルヘイム5”繰り返す、ここはプロンテラでは無い。現在地は”ニブルヘイム5”。各員unknown forceからの防衛を第一とし、迎撃せよ。敵を迎撃せよ。』
「まずは匂いだ!ワインはまず匂いをかいで・・・・うん?」
何か今聞こえたような・・・・
「匂いとは変態めヽ(・ω・)ノ」
どこをどう勘違いしたのかわからないが、なにやら凄い表情でこちらを窺うニレコ。
どれくらい凄いかと言うと・・・(*゜ω゜)・・・な感じなのだが。
まぁいい(良く無いが)今はそれよりも確認しなければ・・・
「なぁニレコ、今何か・・・」
「匂いは嗅がせない ぞ!ヽ(`□´)ノ」
ばっと胸を両手が隠して飛び退るニレコ。
「話を聞いてくれよ頼むからwwwwwwwwwwww」
それから斯く斯く云々と(自分が匂いフェチで無い事から)違和感や、なんとなく聞こえた事に付いて説明する。
するとニレコは
「あぁ、そういえば。」
ぽん、と手を打ち
「面白服を着た人がロリコンとショタコンとペドの違いについて熱く語っている時に『第一種戦闘配置』とか『防衛』とか『迎撃』って聞こえたような気がする(;`ω´)」
「そんな話してねよwwwwwwwwっと、じゃあニレコも聞こえたのか。」
あいヽ(・ω・)ノと手を挙げるニレコ。じゃあ早く教えろよ・・・とは言えないか。おれも聞いてなかったし・・な。
「まさかくっちゃべってて砦内放送聞いてなかったなんてバレたら・・・」
「(((・ω・)))お・・お前は早く持ち場に行けよっ!ここは私が守るからっ!」
ガクガクと震えながらいつの間にか出した杖でシッシッとオレを追い払おうとするニレコ。ずるぃ・・・。
「のりちゃんに怒られる時は一緒だからなwwwwwwww」
「(((・ω・)))シッシッ」
槍を作りながら走り出そうとした時、不意に胸に青い光が立った。
「うぇ?」
「あぁ?」
この青い光は・・・・
「ねぇ、この光って確か・・・」
すぃすぃと手を青い光に翳しながらニレコがこちらを向く。そう、この光は確か・・・
「バージル君の”ブルーリンクス”・・・・」
同時多数支援を可能にするバージル君の特殊能力であり、ある意味幻影騎士団における”極限連携多重戦闘状態”。
同時に多数の支援を可能にはするのだが、それはつまりバージル君一人に全ての負荷が掛かるという事でもある。
故に、戦場においてこの能力はいつも”切り札”的な使われ方をしてきた。それ程までにきつい負荷。苦しい・・・能力。なのにその発現は・・。
「随分とマズイのかな・・・」
心を見透かしたようなニレコの独り言。そう、この能力の発現はそれを意味する。楽な戦いでなんて・・・使わない。
「なぁ、確かこれってつないでいるだけでもエーテルを食うんだよな」
手に絡まない青い光を手で遮ったりしてみる。効果なし。
「うん・・・・何もしなくても私たちの状態を数値化して送ってるはずだから・・・」
いくら手で遮ったところで光は途切れないのに、幾度もその光に手を添えるニレコ。
「オレはニレコといるから・・・これ・・解除してもらえないかな」
うん・・と俯き、ニレコは光の先・・・壁を見る。
「いつもはプライバシーの関係でリンクする時に許可を求めてくるんだけれど・・・」
そうだった。いつもバージル君はこの能力を使う時には必ず許可を求めてきたっけ。
それが今回は無かった。有無を言わせない強制接続。つまり・・・・
「戦況は・・・随分じゃなくて・・・かなりヤバイ事になってるのかもね・・・」
慈愛の瞳で壁を見るニレコ。その先に、苦しんでいる仲間がいるのが見えるように。
「なら・・・・・早く行こう」
とりあえず槍だけを作りだしてニレコを促す。この事態を早く解決する事が、仲間を救う事だと信じて。
もう一瞬だけ光が差す先の壁を見て、ニレコはこちらを見る。強い瞳で。
もう大丈夫。そう言っているような瞳を見た時
”それ”は出てきた。耳を劈く轟音を伴って。
「!?」
「・・・・!」
天井に鉄の板が変な形になって突き刺さっている。
その真下には暗い・・・暗い穴が一つ。ADの入り口。
地を滑るように這い出てきたそれ・・・・ミニデモは躊躇い無くニレコの足に向かって突進してくる。
それを左手に持っていた槍を回転させ、槍の柄でふっ飛ばし、槍先を次に出てきたボロ布骸骨・・・デッドリーゴーストに向ける。
「ニレコ!支援!」
と、言い切る前にブレスと速度が自身にかかる。ついでの詠唱でマニピに入るニレコ。
現状の把握・・・ADが内側から破られ、修練用に飼われていたMOBが溢れ出した。
絶対に破られる事の無いと云われていた、扉を破って。
その扉は今はもう力なく天井に突き刺さり、役目を果たしていない。
あの穴を塞がなければ砦は・・・
現状を把握し、対策を練っていた一瞬にボロ布骸骨の多分指先であろう部分がキラリと光る。
次いで、砦のタイルが波打ちこちらに近づくにつれ鋭利な刃になっていく。アーススパイク。
「!!」
槍の柄を両手で順手に持ち、前に押し出す。体内にエーテルが満ち、体の内側から見えない円が広がる感覚。
べきりっ、と音を立てて大地から切り上げる刃は槍の少し手前で粉々に消え去る。レジスト成功。
槍を右手に持ち、ボロ布骸骨に切りかかろうとした時、右目の端に銀の光弾が見えた。
先程ふっ飛ばしたミニデモのユピテルサンダー。照準は・・・ニレコ!
マグニフィカートがかかり、心が軽くなる。コマ送りの世界。光弾は詠唱を終え、無防備なニレコに!
ニレコの代わりにレジストしてやる為にはまずこちらがエーテルを練ってそれから右に横っ飛びに飛んで槍を相手に間に合わない!
”百機夜攻”
短く呟いて右足で砦のタイルを、地面を、いまこの世界を、踏みつける。
すでにニレコと光弾の間には人間一人分には少し余るくらいの空間しかない。
間に合うか?
ニレコが光弾に気が付き、スローに目を瞑る。
自分がした事に間違いは無いと信じ穂先をボロ布骸骨に向け、駆け出す。ニレコを置いて。
そして、光弾は炸裂した。
タイルから生えた人間よりも3周りは太い、鎧の腕に。
「どおおおぉぉりゃああああああぁあああああ!!」
骸骨相手に突いても意味がない。右手に持った槍を袈裟に断ち下ろす。
ガッ、ボロ布骸骨の左肩に槍の穂先が切り込むと同時に右手が刺し出される。槍のように尖った骨の右手が。
めきめきめき、と袈裟に割り続ける穂先。
左の首筋に刺し込もうと伸ばされた骸骨の腕。
しかしその腕は、タイルから生えたこれも同じような鎧の手に掴まれて握りつぶされる。
ばかんっ。
そして、ボロ布骸骨は袈裟に切り分けられ、灰になった。
足元に未練たらしく絡み付いてくる布を槍の穂先で払い、タイルを足で踏む。
たんたたんたんったたたん。
見るモノによっては、それは不出来なタップダンスに見えたかもしれない。
けれど、それはもちろんタップダンスなんかじゃなくて―
それが合図だったかのように、何かが、何か達が、地面からズルズルと這い出てくる。
ズズズ、と。ズルズル、と。
それは、鎧の騎士。人間よりも3周りは大きな、鉛色の、電動の・・・騎士。
「が・・・ガーディアン?」
ニレコが呆れ声で言う。それもそのはず、ガーディアンは本来GvG時間中にのみエンペリウムの力を借りて敵を討つ自動機械兵。
それがどう考えてもGvG時間では無い時間に現れ、自分たちを守っている。
つまり、蹴球の特殊能力は・・・
「あーあ!バレちゃったよ!オレのスウィートでミステリーな謎が!」
謎がかぶってるよ。
見れば部屋の端で剣機兵がミニデモを切り伏せていた。
「あ・・あんたねー!こんなの裏技じゃないの!ヽ(`□´)ノ」
「だから内緒だったんだよwwwwwwwwwwwww」
蹴球を守るように集まってくる機兵達。剣が3、弓が2、そして豪奢な外装を纏ったマスターガーディアン。
「蹴球騎士団!」
ダメだこれ・・・・。
「ともかく!あの穴は今は塞ぎ様がねぇからER入り口まで下がって防衛するぞ!」
見てくれはアレだが、その案には賛成だった。
現在ERは本部となっている。そこだけは守らなければならない。
急いでERへの通路に向かおうと穴に背を向けた瞬間、何かの破壊音がした。
ばきん、と。
次いで、ガシャンと。
見ればERへの出口には鋼鉄の板が下ろされている。
1Fへの階段がある通路にも、鋼鉄の板。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
恐る恐る背中を振り返ると、溢れんばかりの(実際溢れているのだが)MOBの下にコンソールパネルらしきものがぐちゃぐちゃになって転がっている。
「・・・・・・・・・・・・」
ええ?うそぉ?
「閉じ込められたwwwwwwwwwwwwwwwww」
進路も、退路も無くなった部屋にkrの絶叫がこだまする。

Vol:17 Gun-Parade-March-1

2006-01-02 23:27:20 | 妄想具現化
何もできずに割れた机とカップをただ眺めていた。
そして、椅子共々消えた男の事。
「ジョン・・・あなた・・・」
沈痛な面持ちで同じく裂けてしまった机をただ、見つめるのりちゃん。
「・・・・・・・・・・・・・・」
その時、奇しくもベルは鳴る。
開幕と、閉幕を告げる。
ベル。

『warning。warning。unknown forceにより砦に攻撃が与えられました。自律プログラムでは対処不能、”管理者”による外部サポートを希望します。繰り返します』

感情をまったく含めないマシンボイスが砦中に響き渡る。
とっさに先程の事が思い起こされた。
『パーティー』
あの逆毛の男は、ただそう言った。
それが・・・・・この事なの・・か?
「バージル君!」
真横から怒鳴られて意識を元に戻される。
そうだ、今はやらなきゃいけない事がある。
「了解しました。”管理者”バージル、砦をサポートします。・・・・のりちゃん、先に行」
自身の言霊に砦が反応し、起動。
のりちゃんへの伝言は最後まで伝えれず、強制的に転送され始める。
「・・・・・・すぐに行く」
転送される瞬間に見たのは、そう呟いて髪をくくる強い瞳の銀色。

次の瞬間にはエンペリウムルーム最深部、マスターデッキと呼ばれる机に居た。
そこには数々のコンソールパネルやモニターが並んでいるわけではない。
ただ、木製の少し大きな机があるのみ。
「・・・・・・・」
その机の真ん中に右の掌を置く。
次いで左手を自身の胸に。
「”管理者”バージル、マスターデッキに到着。これより砦をサポートする。パスワード、”VELESS”」
鈍くも、鋭くも、なんの音もおこらず右手は砦とリンク。
数々の状況をエンペリウムルームの空中に直接映し出す。
現状の把握は十分に必要な事だが、一番目の前でモニターされている画面が気になる。
これは・・・
『ノム3よりER。アラートは聞いた。現状知らせ』
エンペリウムルームの中に響くノム君の声。さすがに反応が早い。
「現状把握中。”砦”はunknown forceにより攻撃を受けたと言っている。」
『了解。8番から出る。シャフト用意!』
ザッ、と雑音を残し通信が切れた。乱暴だなぁ。
「8番シャフト用意了解、暫く待て」
右手に通す魔力を探り、調節する。8番シャフトは・・・ノム君の部屋か。
8番シャフトを起動、射出口を屋上まで開き、途中に異常が無いか確認。異常なし。
「ERよりノム3、8番シャフトオールグリーン。エーテル温存の為に射出は火薬射出で願う」
『了解した・・・・ノム3、8番シャフトから出撃!』
ここからでは到底聞こえるべくも無いが、今頃砦内には軽い破裂音が響いているはずだ。
本来シャフトの射出にはエーテルを電気のように使ったエーテル射出によって行われる。
あくまで”本来”は。現在はGvGの時間では無いから肝心のエンペリウムがないのだ。
つまり、今の砦は自身のエーテルだけで動かさなければならない。
ケチれる魔力は・・・少しでも大いに越した事は無い。
『こりゃ・・たまげ・・』
屋上まで無事に射出されたであろうノム3からの通信が途絶える。
「現状知らせ。こちらは未だ把握中」
右手をマウスのように動かして空中に投影されたモニターを調整する。
数が多くてさばききれない。
『全・・ザザッ・・・こりゃ・・ザーッ』
ノイズ塗れ。強力なECM(通信妨害)?
「ノム3、現状知らせ。通信状況が悪い、聞こえたら何か合図送れ」
問いかけながらモニターを探す、現状把握現状把握。
『聞こえては・・・ザザッ・・・こちらから・・』
聞こえてはいるらしいが、どうやら送れないと判断。
と同時に爆発音が響く。
撃った。間違い無くノム君は今”槍”を撃った。
ならば、砦が言うように何かの勢力が攻めてきているという事か。
現状の把握を一時中断して、意識を砦内に向け、用意していた言葉を”砦内”に喋る。
「こちらERバージル。”管理者権限”を発動。現在砦はunknown forceにより攻められている。総員第一種戦闘配置に着け。繰り返す、総員第一種戦闘配置に着け」
意識をエンペリウムルームに戻し、現状把握を再開。
全天位レーダーを・・・・起動させ、敵勢力の数を確認しようとする。
ぐっ、と体にかかる負担。砦の機能を使えば使う程、自分自身から魔力が抜けていく。
表示されたモニターを一番手前に。それを見て、絶句した。
「全天敵で・・・真っ白・・・・」
そう、全ての方向をくまなくチェックしたレーダーはその結果のみをモニターに映し出す。
敵は完全に砦を包囲し、砦外は敵の印である白い点で埋め尽くされ真っ白になっていた。
屋上ですでに戦闘を開始しているノム君には伝える必要は無い。
砦内にのみ意識を向け
「ERバージルより各員、砦は完全に包囲されている。襲撃備え」
そうとだけ言い放ち、意識をエンペリウムルームに。
次は”砦”が要請してきたサポートを果たす。
フリーズしているモニターを一番手前に起こし、”砦”の躓いた部分をチェック。
現在位置の把握で砦の自律プログラムは躓いたらしい。なんて初歩的な・・・故障か?
リンクしている”砦”そのものに問いかける。
「”管理者”から砦へ、現在位置はプロンテラ東京で間違いないかと思うが?引っかかった過程を示せ」
”砦”は即答する。
『”砦”から管理者。サポートを感謝します。unknown forceより攻撃を受ける直前に時空震を観測しました。空間干渉系の攻撃を受けた可能性があり、それを確かめる為に3次元観測による現状の把握を実施、そこで自律プログラムでは律しようの無い答えに辿りついてしまいました。』
”砦”はわけの解らない事を言う。普段はこんな事は絶対に言わないのだが。
「テレポアウトやワープアウトの時空震の可能性は?」
時空震はそう珍しい事では無い。プリーストやアコライトのワープポータル、空間干渉系の能力でも起こる、ちょっとした空間の揺らぎだ。
”砦”は答える。
『ありません。むしろ時空震は”砦周辺”で起こった事では無く、”砦全体”に直接起こった事と考えています』
「つまり、”砦”がそのままワープアウトした、と?馬鹿な。こんな巨大な質量を・・」
黒い水溜りに沈む逆毛の男が脳裏を掠める。今は、忘れろ。
『最大の不明点はそれを元にした”現在位置”です。よろしいですか?』
まわりのモニターに目を走らせつつ、”砦”に頷く。
『今まで居た場所から現在地を結び、それを割り出した結果、ここは”ニブルヘイム5”であると予想されます』
砦の声には感情がまったくない。から、思わず聞き逃す所だった。
「ありえない。ニブルヘイムに4はあっても5なんて・・・聞いた事もない・・」
ニブル討伐戦が終わり、ニブルヘイムは3までの存在を確認されている。
非公開でならば4までは確認できているが、これはまだほんの一部の人間しかしらない事だ。
『その通りです”管理者”バージル。故に自律プログラムはこれを否定。また最初から現在地の割り出しを開始。しかし、何度やっても結果は”ニブルヘイム5”』
そしてフリーズ・・・か。
無理も無い。ありえない答えばかりに辿りついてしまい、やり直し。そしてそれの繰り返し。
自律プログラムには荷が勝ちすぎる・・か。
どうするか悩む・・・事もない。
今現在もっとも重要なのは現在地の確認では無いからだ。
今もっとも重要なのは・・・・unknown forceからの防衛、そして迎撃。
心の中で優先順位をきっちり決めて、”砦”に告げる。
「”管理者”が砦に告げる。現在地の確認を放棄。繰り返す、現在地の確認を放棄」
『現在地の確認を放棄了解。』
すぐ目の前の空間でフリーズしていたモニターが消えた。
これでいい。次は・・・
右手に集中した精神を探る。確かできたはず・・・。
「”管理者”から砦へ、砦設置のカメラとリンクし外部情報の収集を始める」
エンペリウムルームにはその場所の特性上窓が無い。
”敵”が攻めてきているのは確実だが、その姿すらまだ確認できてないのだ。
『了解。カメラとリンクを始めます。が・・・』
砦の言いたい事は解る。ただカメラとリンクする、と云う事一つとっても今は自分のエーテルを使わなければならない。
そして、砦にあるカメラは無数なのだ。しかし・・
「かまわない。接続を開始」
ここで怯むわけには行かない。戦況の確認、敵の識別、対策、自身の身惜しさにスルーなんてできない。
訪れるであろう身体への負担と情報の波に負けぬよう、体を硬くしたその時。
「ふん。待てバージル、索敵哨戒は俺の役目だろうが」
エンペリウムルームの扉が開き、”目”御影が入ってきた。
「御影君、どうして?」
そう、エンペリウムルームは自分の第一種配置だ。そして、彼は最前線に出う事が第一種配置。
突然の事に目を丸くする自分に目もくれずたんたんと喋る。
「ふん。エンペが無いのはわかっている。少し、手伝おうとな」
すぐ横立ち、右の手を左肩にのせられる。
「バージル、俺とリンクしろ。情報を流すぞ」
言われてやっと気が付いた。砦周辺の情報をその”特殊能力”で調べ、教えてくれるというのだ。
急いで左肩から御影へのリンク・・・・成功。
「いくぞ。”YHVH”」
左肩から心臓にかけて、見えない道ができるのを感じる。
そして、360度の視界が壁をすり抜けて遠くまで広がる!
情報に検閲を掛けない。一つ一つ、東西南北から切り取り映像化してエンペリウムルームの空間に投影。
4枚のモニターは、それだけで今までの仮説を全て正しいものとした。
「プロンテラじゃない・・・・」
どうにか喉から言葉を押し出して呟く。
四方は、見慣れた街中なんかじゃなく、暗く煤けた赤色をもった空。
赤褐色の荒野。
そして、砦の空中ぐるりを囲むモンスター。
見渡す限りに人工物は無し。ただ、どこまでも世界は続いていた。
「地獄・・・か」
ふいに思った事が口をつく。まさに・・・・これは誰もが想像する地獄と類似している。
「ふん。言い得て妙とはこの事か」
御影君の皮肉った鼻笑い。
砦内への回線を開く。
「砦内配置各員に告ぐ、現在砦はunknown forceからの襲撃を受けている。その際、空間干渉系の攻撃を受けたものと予想され砦は空間移送を強制的に受けたと思われる。砦が割り出した現在地は”ニブルヘイム5”繰り返す、ここはプロンテラでは無い。現在地は”ニブルヘイム5”。各員unknown forceからの防衛を第一とし、迎撃せよ。敵を迎撃せよ。」
自分で言っておきながら未だに信じられない事実を胸にしまいこむ。
自分は状況を把握し、対処するだけだ。それが、どんなにありえない事であっても。
東西南北を映すモニターに時折閃光と爆発が煌く。
ノム君はまだ無事・・・しかし・・この数では・・・。
敵は数え切れない。何せ、全天を埋め尽くす程だ。
心が・・・折れる。
『アロー!砦1Fよりコンニチワ!!うっひゃー!すっごい数だね!』
一際明るい女の子の声が絶望しかけた耳を叩く。
この声は・・・
「ERバージルよりめぐ、だいじょうぶ?」
ノム君が戦闘を開始し、砦内に第一種を引いて約10分。敵と場合によっては命を落としてもおかしくない時間。
『あっはっは!まだ一発も撃ってないお!んー?撃っちゃっていいの?かなー?んー?』
随分とテンションが高い。マズイな・・・・薬を使っているかもしれない。
「めぐ、聞いてなかったの?敵勢力迎撃だよ。」
薬が効いてしまっている時のめぐは状況の判断や戦闘が怪しくなる。もちろん、言動もだが。
とりあえず、落ち着いて諭しにかかる。全てはこれからだ。
スピーカーの向こうの空気が、一瞬冷えたように感じた。
読み間違え・・・た・?
『じゃあ状況の把握と対策、砦の迎撃機能の始動と迎撃隊配置の伝達、支援によるサポートよろしく。目に見える範囲全てが私の得物って事で。ダイレクトサポートは期待しないけれど、支援と人員の把握だけはすぐにでも頼みます。オーヴァー』
くっくっく、と御影君が笑いをかみ殺す。
そう、薬が効いてない時のめぐは正確無比な射殺兵器になる。
戦闘はばっちり、言動は全て敵を殺す為だけ。
でも・・・感情が、欠落する。
まだまだ僕の読みも甘い。
「ERバージルよりめぐ、失礼した。武運を」
通信を切って精神を集中。頼まれ事を済ましてしまおう。
マスターデッキに座った瞬間から、意識がGvGになってしまっており、人員はいつもの数だけいるものと思っていた。
今は・・・異常事態だ。
集中した精神が、胸にエーテルが集まるのを感じる。
解き放つ。言霊をもって。
「”歌い流れ出でて紡がれ走れ。捉えて縛って慈しめ。切り結ぶ運命の”」
一度伽って。
「”青い糸・・・ブルーリンクス”」
びゅん、と胸から走る青い糸は8本。
事態が急な為、強制的にリンク。
脳内にだけ広がるデータをエンペリウムルームの空間に投影する。
捉える事の出来た人員は、ノム君・御影君・スマ君・のりちゃん・めぐ・無影君・kr君・ニレちゃんの8人。
この敵の数相手に・・・たった9人・・・。
絶望を使命感で押しつぶす。
「”ブレス・速度・マグニフィカート・アスペルシオのUP”」
続いて、自身の精神に空きを作りそこに神聖術をチャージ。維持する。
「砦内各員、”ブルーリンクス”で強制的に全員を支援する。必要と思われる支援はUPしておいたので、各員必要に応じてDLされたし」
放送を切ると同時にがくり、と身体に負担がかかる。
ノム君による支援のDL。4つ同時。
「ぐっ・・・」
歯を食いしばって耐える。なんて事無い。こんなもの、いつもの事じゃないか。
「バージル・・・無理はするな。代わってはやれんがな」
左肩に少しだけ圧力を感じる。御影君・・・心配してくれてるんだね。
大丈夫、なんてこと無いよと声を返そうとした時、エンペリウムルームの扉が開いた。
「男同士で何やってんのー?やーらしーぃ」
長い銀髪をたなびかせ、のりちゃんが到着。
これでやっと”マスターデッキ”っぽくなってきた。
本来の”マスターデッキ”は管理者の他に”マスター”・”マスター補佐官”・”参謀”の3人がいる。
ちなみに”マスターデッキ”は今座っている机その物を指す言葉でもあるが、同時にエンペリウムルームに置かれる本部を指す言葉でもある。
”管理者”である自分と”マスター補佐官代理”を務める御影君。”マスター”負傷及び不在の場合に”マスター代理”となる”マスター補佐官”ののりちゃん。
なんとか・・・・形にはなる・・か?
エンペリウムが無いのが痛いが。
のりちゃんは入室の際に軽口を叩いたが、それからは空中のモニターを睨みつつ大股でデッキに歩いてくる。
「ふぅん。戦況把握完了。バリアも魔砲も使えないのね」
チラとGvG中であればエンペリウムが置いてある台を見るのりちゃん。
もちろん今はただの台だ。
「えぇ、残念ですが個人のエーテルでは無理です」
せめて予備の青ジェムでもあればよかった。
本来の半分程ではあるが、砦の機能が使えたのだ。
もう少し早くわらびーを買いに向かわせていたら・・・・。
後悔が胸をかすめるが
「後悔しても始まらないわよ。現状の打破。それから考えましょう」
のりちゃんに笑顔で言われて、気持ちを切り替える。そうだった、今は戦闘中。
3人でモニターを睨みつける。
「現在交戦中の人はノム君とめぐちゃんだけ?」
一際煌いたモニターを見てのりちゃんが尋ねる。
「いや、スマも戦ってるな。気配でわかる」
ふん、そう長くは持たんと思うがな。と鼻で笑う御影君。
随分と余裕がある・・・ように見える。
残りの戦力は・・・・ん・・?
「kr君とニレちゃんがエンペリウムルーム直前の大広間にいます。何してんだろう・・?」
第一種配置はかけた。
本来なら二人は1Fに降りて最前線に立っているはず。
それが大広間?
「!?すぐに離れるように言って!そこはマズイ!!」
のりちゃんの怒声に驚くと同時に御影君が大広間の映像を送ってくる。投影。
二人は並んで何か喋っているように見える。特に異常は見当たらないが・・・
取りあえずのりちゃんの指示通りに場所の移動を告げようとした瞬間、モニターはノイズにかき乱された。

Vol:16 孤毒の終り。

2005-12-29 23:22:51 | 妄想具現化
「それってマジですの?」
助手席に座った娘が胡散臭そうに聞いてくる。
「マジも大マジだって、嘘じゃないよ」
ハンドルを持ったまま、前を向いて答える。この辺はちょっと混んでるなからな・・。
「喜ばしいですわ。切ないですわ。もう一度最初から・・」
はぁ、とため息をついて右手をハンドルから離し、ちょっと頭を掻く。
えーと、これで何度目だっけ?
「いーかい?よーく聞いておくんだぜ?」
助手席の娘の目をちらっと見る。うむ、ちゃんと聞いてる目だ。
さっき話した時もそうだったけれど・・・・。
「アムスで大麻は合法だ。」
もう何回も話してちょっと暗記しつつある話をまた始める。
「でも、いいか?合法とはいえ、ちゃんと規則はある」
うんうん、と頷く娘。うむ、ちゃんと聞いてるな。
「まず、吸って良い所ってのは決まってる。販売が許されている喫茶店。自宅。広い公園だな。ちなみに持ち歩くのはどこでも可。正し、それを人に売ったりするのはNGだ。売るのはあくまでも許可を持ってる人だけ。いいか?」
「そこが不思議でたまりませんわ。それですと、家の食事の後に家族で大麻を一服って事になったりしますの?」
「うむ、自宅で全員が規則で定められた年齢を超えていたらね」
「ふーん。どうにもこの国で生まれ育ったワタクシには信じられませんわねぇ」
どうしても信じられないらしい。
「まぁ、今度家族旅行で行ってみるか?家族で大麻を吸いに行くみたいであれだけど・・」
「いいですわねぇ。素敵ですわ。悲惨ですわ」
目を輝かせてどうなのか解らない事を呟く娘。どっちなんだ・・・。
「今日はホームセンターに青ジェム買いに行くだけだからアレだけど・・・エレーはいつもその格好?」
ちらっと娘に目をやって聞いてみる。おれにはこっちの方が幾分も不思議だ。
「なんですの?親父様はこの格好に文句でもあるんですの?」
自分が着ている薄布をちょっとつまんで不機嫌そうに言う。
いや、しかしそれはなぁ・・・
「ちょっと・・その・・扇情的すぎやしないかい?」
何せその格好ときたら、殆どボロボロになったスクール水着みたいなモンなのだ。
「いいんですのよ。これが暗殺者の正装らしいんですもの」
「うーん、それは聞いてるんだけれどねぇ。どうも・・その・・・」
「なんですの?」
「エレーは歳や身長の割には胸がもう大きいからなぁ・・お父さん心配で・・」
「っの変態!」
どぐわっしゃっと右から殴られる。
「ぐぅ・・・ナイスキック・・・」
「パンチですわ、変態親父」
く・・くそっ・・・車の運転中だと思って思いっきり殴りおって・・・。
事故ったらどうすんだっ!
「あともう一つ気になる事がありますわ。気にならない事がありますわ」
ど・・・どっち?
「う・・うん?なんだい?」
まだちょっと痛む右脇腹をさすりながら右にカーブ。
「フランスとかでハンバーガーはどう言いますの?ほら・・あちらは・・」
うむ、大変良い質問である。
食い物ってのがアレだが。
「そうだね。メートル法の世界だからね。例えばチーズバーガー」
ちらっとまた娘の目を見やる。お、今度はいつになく真面目な目だ。
「ロワイヤルチーズ」
くわっと目を開く娘。どうやら相当にショックだったらしい。
「本当に!?本当に”ロワイヤルチーズ”なんですの?子供と思って騙そうとしてませんこと!?」
早口でまくし立てて、右手を掴んでくる。あ・・あぶねぇなぁ・・。
「ほ・・本当だよ。誓って、チーズバーガーはロワイヤルチーズさ」
右手に摑まった手を見て、娘の目を見る。
すると娘はぱっと手を離し、座席の背凭れにどっかと身を沈め
「外国ってすっごいですわ・・・」
と一言漏らした。
んむ、外国は凄い。わけわからん。


と、まぁ娘とどこぞの映画の会話みたいなのをしている間に目的地まで着いた。
「じゃあちょっと青ジェム買ってくるからね、いい子で待ってるんだよ」
ドアを閉めながら娘に言って鍵を閉める。
ホームセンターの方を向いた時、背中に声がかかる。
「アイス・・・ストロベリーとバニラのダブルでよろしくですわ」
まったく、仕方ないなぁ。
「おれはそれにミントをプラスした方が好きだから、そのトリプルを2つ買ってくるよ」
振り返って見る、古いビートル”アンティーク・マーダー”の助手席で、娘が笑うのが見えた。
ひゆう。
今日は良い風が吹く。
ちょっとぬるめの風が背中を撫でる。
さて、買い物を済まして娘とアイスでも舐めようかと、ホームセンターに振り返ると。
その間にある噴水の前に、騎士がいた。
金色の逆毛を風にたなびかせ、少し空を向いた、概念防具をつけたままの騎士が。
別にそう珍しい事はない。騎士なんて、この界隈にはたくさんいる。
一歩一歩ホームセンターに足を向けるのだけれど、なんだかその間にいる騎士に向かっているよう。
どこか気になる。何か気になる。あの外装・・・どこかで見たような気もする。
騎士は未だ空を見たまま。肌は少し血の気が感じられず灰色のような。
不吉な色。
横顔からは感情がまったく感じられない。とゆーより、全身から生気が感じられない。
肌は微妙に危険を感じるが、それは相手が騎士ならば自然な事だ。
また一歩ホームセンターに、騎士に近づく。
どうも・・・目が離せない。
そこで不思議な事に気が付く。
・・・・静かすぎる・・・・。
今日は平日。確かに人がまばらであってもおかしくは無い。
が、しかし、ここは一番人の往来が激しい場所であったはず。
そこが静か過ぎる。否、大変な事に気が付く。
”誰もいない”
見渡す範囲に誰も、いない。
車の中には娘がいる。それは解る。けれど、その他には誰も。
騎士とおれと車の中の娘と。
それ以外に人がいない。異常・・・すぎる。
ただ、噴水から流れる水の音がするだけ。
異常に気が付き、娘のいる車まで戻ろうと思ったのだけれど、もう足は一歩前に出ていた。
それが、何かのスイッチとも気が付かずに。
『兄者』
聞きなれた声がどこからか聞こえる。(どこから?)
『兄者』
音を発するのは噴水と、おれの脚。あとは・・・・
『兄者』
ぎりり、と。目の前の騎士がこちらを首だけで向いた。
本当に、首からぎりりと音を鳴らしながら。
驚きで足が一歩後ずさる。
声は確かに弟者の声だった。
が、その声を発したのはどこかで会った事があるようなないような・・・灰色の騎士。
事態がうまく飲み込めない。
『ああ、この顔じゃわかりませんか』
ずるり、と騎士の顔が溶け落ちる。本当に、顔面の肌が溶けて、落ちる。
下から現れたのは、少し青ざめたよく知っている弟者の顔。
でも、体は騎士のままだ。
「お・・・弟者・・・か?」
おれを兄と呼び、見慣れた顔で反射的に問い返す。
『あぁ、兄者。驚かして申し訳ない。この体は借り物なんです。覚えてませんか?』
ぎここ、ぎり、と右手を動かしてみたりこっちを向いてみたりする。
先程までの金髪の逆毛。
今見つけた二の腕に走る概念防具の傷。
”借り物”と言った騎士の体。
「もしかして・・・”くし団子”?」
見覚えがあるはずだ。
それもそのはず、”くし団子”はついこの間まで自分自身が使っていた”アストラル”(別人体)なのだから。
でも”くし団子”はもう正式に破棄したはず・・・・。
『兄者。破棄申請をして渡した場所を、忘れましたか?』
ちょっと楽しそうに聞いてくる弟者。
えーと、たしかあれは・・・・
「弟者が入院していた”病院”?」
そうだ、確かジョンが格安で廃棄しておくからと薦めてくれたんだっけか・・。
『ですよ。それをちょっと保管してまして。愚弟の奴がですがね。それをちょちょっといじって借りさせてもらってるんです』
あはは、と顔色は悪いながらも笑う弟者。
無理しているようには見えないけれど、別人体を使うって事はやっぱりそこまで良くはないのか・・。
「体・・・良くないのか?」
思った事をそのまま聞いてみる。
心配なんて、今更なのだけれど。
弟者は首を振り
『いえ、もう随分良いですよ。今日はそのことで話がありましてな』
一歩、何気なく近づく弟者。
一歩歩くだけでも、借り物と呼ばれた別人体はぎこぎこと音を立てる。
手を貸そうと思い、こっちからも一歩近づいたその時。

「わらび。”それ”から離れろ」
真横から声がした。きっと、この辺りには誰も居ないだろうと思った場所から。
「?」
声がした方を向く。声がした事そのものもちょっと不思議だったのだけれど、それよりもっと不思議な事が・・・。
目を向けた先には、プリーストとチャンプが居た。よく知っている、二人。
「はろー、わらにぃ」
ニコニコと笑顔のチャンプ―海猿君がわきわきと右手を挙げる。
隣にいるのはプリーストのメタトロン君だ。
今日はいつもよりも更にしかめっ面だけれども。
「ああ、海君にメタ君か。どしたの?BOSSの帰り?」
二人の肩、いつもは幻影騎士団のエンブレムがあるはずの場所には茶色の羽が並んで貼り付けられている。
海君は10枚。メタ君は11枚。
斑鳩の羽―
これは主にBOSSと呼ばれるモンスターの集合体を倒しに行くときにつけられるエンブレムだ。
つまり、それを付けている間は、何かのBOSSを倒しに行っている時か、その後。
「いやぁ、帰りってゆーか最中って言うか・・ねぇ?」
海君はニコニコしたままメタ君を見やる。
「わらび。もう一度言うぞ。”それ”から離れろ」
びしっと弟者を指差して言い放つメタ君。
先程の違和感の正体がわかった。
「おいおいメタ君。”それ”なんて弟者に失礼だぜ。メタ君は知らないだろうけれど弟者は元幻影の」
メンバーなんだよ、と紹介しようとした瞬間
「離れろと言うとろうが阿呆!」
メタ君の怒声が聞こえ、目の前に海君がいた。
「え?」
「ごめんよ、わらにぃ」
海君は右の掌をそっと胸にあて
「ぐっ!」
寸剄を放っておれを5mは離れた”アンティーク・マーダー”まで吹き飛ばした。
がしゃん。自分の車の助手席側のドアに衝突して止まる。
しまった・・・中にはまだ娘のエレーが・・・
「メタ君海君!弟者だよ!覚えてないのかよ!!」
なんとは無しに弟者の危険を察知して叫ぶと同時に車の中を見る。
誰も居ない。さっきまで確かにエレーが居たのに。
「こんな”深淵”が弟?わらび、大層な弟を持ったものだな!」
ふっ、と息を短く吐いて神聖術詠唱の体勢に入るメタ君。
海君は
「森羅万象悉く右手に宿れ」
その能力を開放していた。
”森羅万象”
その地にあるエレメント全てを体の一部にエンチャントする海君の特殊能力。
『隔離空間にしたはずが、入ってこられるとはね』
弟者は呑気に構えすら取らない。
「味方だよ!味方!」
と、叫ぶ自分こそが、抜けているのだろうか。
2人は完全に戦闘体勢で
メタ君は自身のエーテルを解き放つ。
「走れ影矢。軸位、暗転、貫通!」
いつの間にか足元に展開されていた魔方陣を一部蹴り崩し、右の手で空間を刺す。
その空間先に海君は突然現れた。
なんの前触れも無く、突然に。
”invincible tears”
指定された空間にある一定質量の物体を送り込めるメタ君の特殊能力。
黄金色に輝く海君の右腕が弟者に突き刺さる前、その数瞬。
二本のきらめくナイフが弟者の背中に刺さる。
「空間内在座標固定!”足を失った人形”!!」
娘・・エレナの声どこからかして、弟者はぴくりとも動かなくなった。
そこに突き刺さる黄金色の右腕。
幻影騎士団3人による、とっさのコンボ。
熱い様な冷たいような爆発が弟者を中心に起こる。
自分は、その瞬間を見ている事しかできなかった。
ただ、見ている事しかできなかった。
黄金色の爆発が引いていく。
「やったか?海」
次の移動先を目で探りながら、メタ君が魔方陣を再構築し始める。
「いや、ダメだ。こいつは・・・っ!」
爆発で起こった煙の中から右腕を押さえながら海君が飛び出してくる。灰色になった、右腕を押さえながら。
『良いコンビネーションだけれどね』
まだ煙った中心からのんびりとした弟者の声。
『エレナ君。どうせなら内在座標だけじゃなく、指定空間事固定してればベストだったよ』
だんだんと煙が引く。
『裏まで固定できないかもしれないけれどね』
煙の中から姿を現したのは・・・
「弟者・・」
まっくろなローブに身を包んだ、魔術師然とした弟者だった。
辺りに、元は先程の騎士であったであろう肉片が飛び散っている。
『兄者、すまない。”くし団子”は壊されてしまったよ』
それ以外は、なんでも無いと手を広げる弟者。
『まったく、思い出の品だと云うのにね』
ちらっと、未だ戦闘意欲を失わないメタ君と海君を見る弟者。
「こいつっ・・・次元歪曲してやがる・・・3次元のダメージソースだけじゃこいつには・・っ!」
固まってしまったように動かない右腕を押さえて海君が吐く。
『さて、兄者。ここだと少し話難い。移動・・しようか』
右手を差し伸べてくる弟者。
「あ・・・あぁ・・・でも、弟者・・」
何かが聞きたいのだけれど、何が聞きたいのかもわからず、その右手をとりあえず取った。
途端に地面が沼のように沈みだす。
不安は・・・特に無い。弟者の手を握っているのだから。
少し、ほんの少し怖いけれど。
「空間断絶!舞い神r―」
姿の見えない娘の声が聞こえたが
『エレナ。子供は殺したく・・・ないんだ』
弟者の一言で、周りは全て静かになった。
とぷんとぷんと地面に沈んでいく体。
最後に目が捉えたのは、こちらに手を差し出すメタ君だった。

Vol:15 The End Of Solitude

2005-12-28 18:45:59 | 妄想具現化
じりりりり、とも鳴らない時計のアラームをぺちりと止める。
今日も午前7:30起床。
アラームは7:35にセット。毎日弛まぬ早寝早起きの為、このアラームはまだその機能を発揮した事がない。
そもそも、毎日弛まぬも何も、この時間以外に起きた事がないのだ。
アラームが無くては起きられない、といった人がギルド内にもいるが、それが今一不思議で仕方がない。
どーしてだろ。こんなにスッキリ起きれるのに。
でも、今朝は変な夢を見たっけな・・・えっと・・あれ?なんだっけ?
首を傾げながらパジャマから普段着へ。
そうそう、ちゃんとパジャマに着替えて寝ない人もいる。
なんかねぇ、そゆのちゃんと区切りが付かなくて気持ち悪いんじゃないかと思うんだけどな。
まぁ人の好みの問題もあるからとやかくは言わないけれどね。
ざっと着替えて1Fまで顔を洗いに行く。2Fのはノム君がまた壊したんだもんなぁ。
力の加減が難しいって言ってたけど、それなら鋼鉄製の蛇口にしたらどうだろう?
あ、それだと僕等が困るのか。
うーん、朝一はまだまだ回転が甘いなぁ。
とんとんとん、と階段を下りて1Fに。
あー、そだ、昨日の帰りに買い物してないから朝ごはんが貧弱になるかも。
えーと、なにが残ってたっけっかなー?卵とベーコンは・・・誰も摘み食いしてなきゃあるはず。
うん、いつも多目に買うし。朝は卵とベーコン、後はパンでいいかな。
1Fについて長ーい縁側を通り突き当たりの洗面所で顔を洗う。
大所帯の為に各人の洗顔料がざらーっと並んでいるのはちょっと壮観だ。
っと、こっちはkr君の・・・と。
同じのが2つくらいあって間違えそうなのがアレだけれど。
ざぶざぶっと顔を洗ってキッチンへ。
リビングに足を入れると、真ん中にある白い長机に人が突っ伏していた。
「うわっ」
両手はぶらーんと垂らしたまま、銀色の髪をばら撒きながら机に頭だけを乗せて突っ伏している。
「のりちゃんかぁ・・・びっくりしたぁ・・」
どうやらこっちとは反対の方に顔があるらしく、視点の先を思わしき所には
「プリン?なぜに?」
こ・・この人はプリンを眺めながら寝てしまったのだろうか・・。
はたと気付く。
「そだ、これから卵とベーコンの朝ごはん作ろうと思うんだけど、のりちゃんも食べる?」
・・・・・・・・・・・・。
返答が無い。ありゃ、まだ寝てるのかな。
「のりちゃーん?」
ちょっと肩を揺すってみる。
「・・・んんー・・・」
反応ニブ目。
昨夜も何か作業してたのかな?眠るのが遅かったのかもしれない。
でも今日はちょっとやらなきゃいけない事もあるし、それより何より・・
「のりちゃん、朝だよー?朝は起きるもんだよー?」
そう、朝は起きるもんなのです。
もうちょっと強めに肩を揺すってみる。
「のりちゃーん・・・のりちゃーんん!」
がくがくがく。
「んんー・・・んー・・・」
て・・・手強いな・・・・
「のりちゃんってば!」
ぱしん、と猫騙しのように手を打つ。
すると
「うむ、今起きた。」
ぱっちりと目を開けて、のりちゃんは覚醒した。
「おはよ~」
「んー・・おはよ~」
気を取り直してキッチンに。
「さっき何か言ったー?」
ごそごそとエプロンを身に着けていると背後からくぐもった声が聞こえる。
まだ突っ伏してるな。
「これからねー卵とベーコンのごはん作るけど、のりちゃんも食べるー?」
キッチンからのりちゃんまでは少し距離がある為、ちょっと声を張る。
少しの間を置いて
「んー、プリン食べるから冷蔵庫から取ってー」
まだ眠そうな声が返ってくる。
「プリンー?のりちゃん目の前にあったよー?」
フライパンを軽く水洗いして、コンロの上に。
「これぬるくなってるから新しいのがいいー」
そりゃ冷蔵庫から新しいの持って来てって事っすか。
フライパンに軽く油を引いてから、冷蔵庫をあける。あら?
「のりちゃーん、もうわらびーのプリンしか残ってないよー?」
同じモノでも見易い所に自分の名前を書いておく、すると間違って食べられたりしないのだ。
「ええーホントにー?ちょっとそれ持ってきてー」
やれやれ、のりちゃんもプリンの事となると疑い深いんだから。
残り一個になったわらびーのプリンを手に取り、リビングへ。
「はい、ここにちゃんとわらびーって書いて」
「どれどれー?」
びびーっ。
蓋であるフィルムを一気にはがすのりちゃん。
「・・・・・・ええ?」
「むむ?どこかなー?どこに書いてあるかなー?」
どこからか出した銀色のスプーン(以前プリン用に欲しいと軍曹にシルバー925で作ってもらっていたモノと思われる)でがしがしはむはむとプリンを食べていくのりちゃん。
「ああああああ」
「これかっ!このカラメルの下かっ!」
もぐはむ。
「ごちそうさまでした」
「・・・・・・・」
あ・・・開いた口が閉まらな・・・い。
「不思議だねー?どこにも名前書いて無いなんて。うっかりさんだねー^^」
「な・・名前はこのフィルムに・・・」
「これはそんなうっかりさんへの罰だね☆」
えいっ、とフィルムを僕の手から取り上げ空になったカップと一緒にゴミ箱にぽい。
「あーおいしかった」
満面の笑顔だ。もう・・その・・いいじゃないか。のりちゃんが幸せなら。
くるりと踵を返してキッチンへ。
朝食を作る事にした。
ささっとコンロに火を着け、ベーコンから炒める。
えーと・・・これはちょっと厚いから2枚でいいかな。
ちょっと火が通りかけた所に卵を割って投入。
スクランブルエッグのが簡単だけれど、まぁたまにはいいか。
ちちょっと塩こしょうで味付けして・・・っと、火を切って少し蒸らす。
んで、完成。超簡単。トーストをトースターに一枚放り込んで、焼く間に冷蔵庫から紅茶の入っているボトルを出してカップに注ぐ。
「あーうちもいるー」
リビングからキッチンの中は見えないはずなのに、のりちゃんが抜群のタイミングで言ってくる。
ど・・どっかに目でも付いてるのか?
「冷たいけどいいー?」
きっと欲しいだろうと思い、もう一つカップを追加。えーと、のりちゃんのカップはこの銀色ので良かったんだっけかな?
「別にいいよー。喉渇いてるから丁度いいよー」
おっけーおっけー。
のりちゃんのカップに冷たい紅茶を注ぎ終わったと同時にトースターからパンが焼きあがった。
こうも完璧に流れ作業が決まると気持ちいいよね。
ワンプレートに朝食をまとめ、紅茶のカップ二つと一緒にリビングに運ぶ。
僕の席は・・・っと、のりちゃんの真向かい、無印で買った白いワンチェアー。
「はい、紅茶お待たせー」
ソーサーは持って来なかったのでかちゃりとも言わない。
「んー、あんがとー」
つつっと紅茶を啜るのを見て、席に着いた。
「いただきまーす」
「召し上がれーってうち作ってないけどね」
はむはむと朝食を頂く。む、自作ながら今日のは中々良い出来だ。
と、自分の腕を再確認していると。
「おはよー。あ、おれも食べたいー」
頭をかきながら寝ぼけ眼のわらびーがキッチンに来た。
「あ、わらびーもう8:00だよー?寝すぎ寝すぎー」
さっき起こさなかったら絶対寝てた人物が言う。
「いや、昨日ちょっと遅かったのと変な夢見たからさー」
ふわぁ、とあくびするわらびー。
「うーん・・・もう一回作るのだるいなぁ・・・」
わらびーには悪いが、もうフライパンは水に漬けちゃってるのだ。
「バージル君のお手製ならなおさら食べたいなぁ」
とか言ってくれてもなぁ。
「あ、それよりわらびー。顔洗ったらお使い頼めないかな?」
「うん?なんの?」
「青ジェム200個。今日は砦の点検するから予備魔力に使うんだ」
GvG中はエンペリウムから魔力を注入されてるから砦は無制限に使えるが、GvG中以外で砦の機能を全部使おうとすると莫大な魔力が必要とされる。
それが例え検査で、その内の全機能を使う訳では無くとも、バリア、魔砲などの実際に魔力を通してみないと解らない装備もある。
そして、そういったモノが一番故障しやすいのだ。
「あ、そか。なら仕方ないけどそのかわり・・」
「解った解った。昼食は腕によりを掛けるよ」
右腕の袖をまくって腕を見せる。
「やりっ、ほんじゃちょっと行ってくらぁな」
わらびーは顔を洗う為にリビングから出て行く。
「そっかー、今日は砦の検査なんだー」
紅茶を啜りながら検査の言いだしっぺが呟く。
「のりちゃんが今日がいいって・・・」
「そだっけ?」
ま・・・まぁいいや・・取りあえず朝食を片付けよう。
「もぐ・・・のりちゃんにも手伝って貰うからねー?もぐもぐ」
「えー。めんどいなぁ」
「故障して困るのは自分でしょうが・・ごちそうさま」
なんだかよく解らない内に朝食は胃の中に。でもまぁ、おいしかった。
お皿を洗い場に漬けて、椅子に戻って紅茶で一服。
「いってきまーす」
「親父ーワタクシも付いていきますわー」
「ちょ、遊びに行く訳じゃ・・」
「うーそーつーきーにーはー死ーでーすーわー」
と、微笑ましい会話が玄関から聞こえてくる。
わらびー達は出かけたようだ。
縁側から差し込む朝の光。
葉っぱは安物だけれど、いい感じに漬かった紅茶。
平和な朝。
「と、やっぱりデザートが欲しいよね?ね?」
にっこりしながらのりちゃんが目の前で手を合わせて聞いてくる。
んむ、確かに検査は10:00からしようと思っていたからまだ時間はある。
「でも、デザートになりそうなモノがもう冷蔵庫には・・・」
そう、冷蔵庫には無い。”冷蔵庫”には。
しかし・・あれは・・・あれだけは・・・
「ふ・・・ふふふ・・・ふふふふふふ・・・」
目の前で手を合わせたまま不吉な笑い声を上げるのりちゃん。その顔は下を向いていて見えない。
まさかっ!?気付かれたか!?
「甘物の匂い!!」
ぐわっと振り返って後の棚をどっかーんと開ける!
「ああ!それは!」
急いで止めようと腰を浮かすも、既にモノは机の上に置かれていた。
ど・・どんな早業なんだろう・・・・
「・・・?これはっ・・・まさかっ・・・!?」
白い箱を目の前にぷるぷる震えるのりちゃん。
うむ、気持ちはわかる。
「わらびーと折半して買った・・・その・・」
何故か言いよどむ。
「”ヴェルク”のレアチーズケーキ1ホール・・・」
呟くと同時に、ケーキのあった棚の一つ隣の棚がいきなりどっかーんと開いた。
「”ヴェルク”のレアチーズケーキ1ホールだとう!?」
「うおぅΣ」
そこには、何故か窮屈そうにしたボサボサ逆毛の男が体育座りではまり込んでいた。
目が血走っていて怖い。
「洋菓子屋”ヴェルク”のレアチーズケーキと言えば月刊プロンテラ東京等でも取り上げられTVの批評番組でも文句なしのお墨付きを貰い星で言えば五つ星は確定と言われ予約一ヶ月待ちと言われているあの”ヴェルク”のレアチィィィィィィィィィズなのかぁぁぁぁぁぁ!?」
狭い棚に体育座りではまり込み血走った目でガクガクと口を動かす人間。怖すぎる・・・。
「長文説明セリフごくろう様だけど、どしたの?ジョン」
膝までカクカクになりつつあった僕をよそに、のりちゃんはしれっと話しかける。
知り合いなのかな?
「や、アネサン。ご無沙汰しておりますです。」
急に普通に戻られても怖い。
「ちょっと驚かそうと思って隠れてたんですが・・・どうにも・・こう・・出れなく・・」
タハハ、と笑うその笑顔は、なんだ、悪い人じゃなさそうだ。
「もう、しょうがないなー」
のりちゃんと二人がかりで男を棚からひっぱり出す。
男は棚から出してみると、よくもまぁ棚に収まったなと思う程の長身だった。
ノム君と同じくらい・・・180前後はありそう。
でも、体の線が細く、手足が異常に長い。
元は白色だったと思われるぼろっぼろの白衣を身につけ、銀縁の細いめがねをつけていた。
取りあえず近場にあったkr君の椅子を進め、紅茶を出す。
「お、さんきゅー。あんた、プリーストだね?」
「えぇ、そうですけども?」
どこから出したか解らない櫛で髪をざざっとかきあげ
「おれぁジョンってんだ。職業は同じプリースト。ははーん、アネサンもあれだね?おれが居なくなって寂しくなってプリ追加なんだね?ね?」
「え?ごめ、良く聞いてなかった。もう一回」
「あっはっはー、アネサンの照・れ・屋・さ・ん☆」
どうにも・・・・話に入っていけない・・・・。
このジョンって人がどうやら元幻影の人だってのは解ったんだけれど・・。
あとちょっとズレてるって事も・・・。
とりとめも無く、節操も話の繋がりもなく会話は続いていく。
わらびーと折半で買ったケーキを3人で食べながら。
ごめんよ・・・わらびー・・・・。

話が一段落付き、ケーキも尽きたころ
「それで?今日はどうしたの?」
のりちゃんが本題をジョンに振った。
ジョンは紅茶をずずっと啜り
「今日はね、パーティーをしに帰ったんだよ」
とだけ、告げた。
「パーティー?」
何の前触れも無い言葉に不意に声が出た。
でも、もしかすると自分の知らない行事なのかもしれない。
と、思いのりちゃんを見るが、のりちゃんもちょっと思いつかない感じだ。
「やっぱり、パーティーは皆でやらなくちゃね。3人だと、ちょっと盛り上がらないからさ。」
ジョンはまだ持ったままの紅茶のカップを見ながら、誰に言うでも無くそう言った。
「なにやるにしても予定を空けて置かなくちゃ・・あ、ちょっと待って、メールだ」
予定表の確認の為に電脳を使ったのだろうのりちゃんが後を向く。
しかし、普通メールが届いていたなら直に読むはず・・・。なんで今まで気が付かなかったんだろう。
暗号、秘匿、裏コードのモノでそう云った処理をされるモノがあると聞いたけれど・・。
「パーティーは、大勢で楽しくって、教えたんだ」
え?不思議に思いジョンを見る。今までメインで話かけていたのりちゃんは後を向いたままだ。
じゃあ、僕に?
「だから、さぁ、パーティーをしよう」
違った。もう、その言葉は誰に向ける訳でもなかった。
その目は、だれも写してなかった。
ただの、独り言。
「パーティーの、始まりだ」
その一言で、ジョンの左目から一滴の涙が零れる。
涙?違う!何か・・・黒い・・・液体?
それはゆっくりと机に落ち・・・たように見えたが、机をどういった訳がすり抜けてジョンのいる椅子の足元に落ちて黒い水溜りを作った。
「!?」
すると信じられない事が起きた。
ジョンが椅子ごとその黒い水溜りに沈んでいく!?
「あ・・・ああ・・・・」
突然の事で声が出ない。まだのりちゃんは後を向いたまま。
マズイ、何かが絶対的にマズイ。
両手を思いっきりジョンに伸ばし、掌を向ける。
が、唱えるべき神聖術が思いつかない。
どうすれば・・・どうすれば!
「ジョン!!あなた!!!」
振り返りながらのりちゃんが銀色の糸を飛ばすが、ジョンは既に顔の半分を床に沈めてしまっている。
楽しそうに、顔を歪めて。
のりちゃんの飛ばした銀の糸は、途中にあった机も紅茶のカップも易々と切り裂いたが、肝心のジョンは
「とぷん」
と、黒いミルククラウンを残して床に消えた。
縁側から入る朝の光が、少しだけ赤い、煤けた色に。
室内の空気清浄機が急に回転を強める。
その場の空気が、ジョンの消失と共に、変わった。

石の下には百足がいるもの。

2005-12-28 06:04:54 | Weblog
「ぼく」はいつでも夢を見る。
メルヘンだと、メランコリックだと、笑われても。
「ぼく」はいつでも夢を見る。
ネクタイが似合う歳になっても。
大人のたたずまいができるようになっても。
古い本屋を見ればときめく。
街角でふいに出会った猫にときめく。
古く、重そうな扉の向こう。
目指す道のその向こう、ふいの横道に「ぼく」はときめく。
いくら歳をとったとしても。
背筋を伸ばしてゆっくり道を歩く「私」の心は
何か面白い事は無いかと走り回っている「ぼく」のままだ。

Vol:14 誰でも無い誰かの悪魔の悪夢

2005-12-19 20:58:11 | 妄想具現化
辺り一面真っ白だった。
あれ?なんでだろ。良く・・・わからない。
地平線すら見えない、完全の白。
白しかない世界。白だけの白。
どこまでも、白。
(わたし、何やってるんだろう)
うん?”わたし”?なんか違うような気がする。
”ぼく”?
”おれ”?
どうもしっくりこない。なんだろう。全部が全部当てはまらないような、全部当てはまるような。
良くわからない違和感。
「うち、のりちゃん」
やっぱりしっくりこない。
なんだか、考えるのもダルい。椅子に座りたいなぁ。
思うと、目の前に椅子があった。木製で使い込まれているような飴色の。
どっしりとした、椅子。
座席部分だけがレザーで、これもしんなり柔らかそう。
(丁度いいや)
よいしょ、とその椅子に座る。
座る・・・のだが、どうにも自分の体が無い。
確かに自分はこの椅子に座ろうと思って座ったのだけれど、体は見えない。
手や、足。目で見る、といった概念はあるのだけれど、目視できない。
よく解らない。でもいいや、椅子に座れたのだから。
椅子に座って、ぼぅとしていると目の前に緑色の線が走った。
ゆっくり、塗りつけるように。
さらさらさら。
透明なキャンバスに、透明人間が絵を書いているように、何も無い空間に色や線が走る。
(?)
目の前・・・といっても目はどうにも無いようなのだが。
じゃあ、椅子の前に色鮮やかな絵が出来上がる。
これでどうだ。この表現が限りなく近いと思う。
大きな木、根元に咲く花畑。
その花畑に座る、白い髪をして、白い衣服を着た女の子。
その背後に棒のように立ち尽くす白衣を着た男性。
の、絵。
それが、目の前で動き出した。
初めはコマ送りのようにぎこちなく。
だんだん、滑らかに。
(なんだかわからないけれど・・・)
どうにも椅子から離れるつもりも、目を逸らすつもりも無い自分は、この動画を見る事になりそうだ。
楽しければいいなと思う。
何かは、わからないのだけれど。


「こ・・・こここコンニチワ」
がちがちに固まってしまった声。
ちくしょうっ!こんなつもりじゃなかったんだ!
もっとこう・・スムァートに「おぜうさん」とか言うつもりだったんだ!
それでも彼女は振り返ってしまう。
真紫の瞳。
「うっ・・・」
こう云ってはなんだが、正直女性は苦手だ。
それが例え、人間では無くても。
「・・・・・・・・・・」
自分とそう年齢の違いそうにない白色の女性は何も言わず、真紫の瞳でじっと見る。
うううううぅ、こ・・・言葉が出ない・・・。
昨夜あれ程練習したのに!
『オレの名はジョン。どうだい?良い名前だろう?』
で、ざぁっと髪をかき上げる。
練習したのに!本番でちっとも生かされねぇ!!
「・・・・・・・・・」
興味を失ったのか、白い女性は視線を自分の足元の花に戻そうとする。
マズイ!このままじゃおれヘタレじゃん!!
「お・・・おおおおおオレの名は!」
何とか言葉を捻り出す。ちょっと噛んでしまったけれど、もう構うものか。
ざぁっと髪をかき上げる(順番間違い)
ビッと右手の親指を上げ、白い歯を見せる(予定外)
「ジョン!」
後半は突然恥ずかしくなったので中止(ヘタレた)
ダメダメな自己紹介だった。
昨夜必死で考え、練習した1/10も発揮できなかった。
でもくじけない。男の子だもん!!
「きききキミのななななな名前は!?」
さぁどうだ!と言わんばかりに両手をばっと差し出す。
・・・・・・何やってんだ、オレ。
「・・・・・×××××・・・・」
か細い声が聞こえたのだが、どうにもちゃんと聞き取れなかった。
「ぷ・・ぷりーずあげいん?」
なんかオレ間違ってないか?
「・・×××××」
あ。
急に思い出す。彼女の履歴。
「そ、そうか。キミの名前は・・・オレ達には聞き取れないし、発音も出来ないんだった・・・」
なんだ、知っているんじゃないか。と言わんばかりに、彼女は睨んできた。
「ちょ!ちが!いや、その、ね?ほら、名乗ったから名乗れ的な・・・ね?ちょっと武士テイストの・・・ね?・・ね?」
ね?と首を傾げるのだが、どうにもギコギコとぎこちない音がしているような気がする。膝関節の感覚が無い。ぼ・・棒になっちゃった!?
NO錯乱。
レディーの前で錯乱するなど、我輩の辞書には無い。
粗相はするかもしれんが(ダメ)


もうだめなので死のう。
と思ってがっくりとうな垂れていると、クスクスと笑う声が聞こえた。
「アレイシア」
アレイシア?何それ?オレの左遷先?
クスクスと続く声。
「私の名前はアレイシア」
はっきりと、その言葉は耳に入ってきた。
「あなたのお名前は?」
クスクスと、真紫の瞳が笑っている。
その笑顔にどこか、救われて。
棒だった足も、固まった心も、ほぐれて解けた。
「ジョン。キミの主治医さ」
さっきまでブリキになっちゃったんじゃないかと内心心配していた手は、思った100倍の軽さで彼女に伸ばされた。
彼女からも伸ばされる白い、本当に白い手。
神様が、色を付け忘れたんじゃないかってくらい、白い手。
その手に初めて触れて思った事は

「あたたかい」

だった。

「あなたも、私を解体してしまおうってお医者様?」
ドキリ、とする。
「ちが・・・わないか・・・」
申し訳なくて、顔を下に向ける。
彼女の顔は、見れない。
頭をボリボリと掻く。ちゃんと、白状しなきゃな。
「確かに、キミの瞳なら使える、と言ったのはオレだ」
言葉を搾り出す。辛い。でも、でも・・・ちゃんと言わなきゃ。
姿は見えないけれど、目の前の少女が態度を固くするのが感じられる。
当たり前だよ・・な・・。
「兄貴がさ、目を怪我したんだ」
あぁ、なんか弁解クサイなぁ。
いや、完全に弁解か。
「それでさ、普通の義眼じゃダメだったからさ、魔力のある瞳を捜してた」
背中を汗が伝う。冷たい。
「それで、私の瞳を?」
言葉を引き継がれる。
声には、”あぁ、こいつのせいか”といった棘。
うな垂れた頭をさらにこくん、と揺らして答える。
「いくら兄の為とはいえ」
「そうだよな・・・酷すぎるよな・・・」
今度はこっちが言葉を継ぐ。
少し驚いたような気配。そっか・・オレってそんな冷酷そうに見えるか。
そうだよな。言い出したの、オレだもんな。こんな事言う奴なんて、まともじゃないんだ。
少し自虐的になる。
「困ってるから目ン玉くれって、言われても・・・な」
ハハ、と乾いた笑い声が出る。笑い事じゃ、無いのに。
「・・・・わかっているなら」
「違うんだ!」
がばっと顔を起こす。
そうだ、違うんだ。今日はその事を言いに来たんじゃないんだ!
いや、ちゃんと白状するのも大切なんだけど!
「何が違うの?あなたは私の目を・・・」
「それが違うんだ。もう、キミの目を取ったりなんかしないで、いいんだ」
必死になって説明する。
「錬金術師協会ってとこがあってさ、そこの協力が得れるようになったんだよ!」
顔に”?”の彼女。そりゃそうだ、全然ちゃんとした説明になってない。
「だからさ、錬金術師の人にキミの”瞳”だけを作ってもらうんだよ!」
ね?と首を傾げる。今回もやっぱりギコギコと音がなるようだった。
凝ってるのかな?
ジェスチャーも使う。手をぶんぶん振ってみる。効果あるのかわかんないけど。
「えっ・・・・と・・・つまり?」
くそっ!もどかしいな!
「だから!キミの目を取ったりなんかしなくて良くなったんだ!」
息も絶え絶え、なんとか声にする。
「・・・・痛くない?」
「痛くない!」
「ほんと?」
「ほんと!」
「ほんとに?」
「ほんとに!」
「家に・・・帰れる?」
「今すぐには無理だけれど」
「帰れる?」
「いつか、必ず」
できるだけ、紳士な顔をしたつもりだ。
ちょっとニヤケてたりするかもだけれど。
・・・・・・・・・・・・・。
無反応な彼女。
おかしい。オレ様の予測では
「やったラッキー!→大好きジョン様!→ベッドシーン」
なのだが。
おかしいゲームのやりすぎで脳がツルツルになっている気がしたが、気のせいとゆー事にしておく。
彼女は暫くぽかーんとしたまま。
オレは暫く紳士笑顔(のつもり)のまま。
ヤバイ。そろそろ顔の筋肉がおかしくなってきた。
口元がヒクヒクする。冷や汗の第一波がついにコメカミを通過しただと!?
馬鹿な!防衛隊は何をやってる!
そこ!弾幕薄いぞ!
と、脳内で有名な艦長のコスプレをした自分が砲手のコスプレをした自分に叱咤している。
ええい!いざとなればおかしくなった人のフリでもしてしまえばあるいは・・!
と、人として幾分ヤバ目な策が脳裏をかすめた頃。
「う・・・うぅ・・・」
ぽかーんとしたままの彼女から、嗚咽が聞こえてきた。
「???」
おや?ルートがだいぶ違うような?
真紫の瞳からは、垂れるように、頬を伝う涙。
ちょ・・・えぇ!?
表情もだんだんと変わっていく。
白い顔が、くしゃくしゃに。
「う・・・・うえぇ・・・」
これは・・・何ルートですか?
「うえぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇええんんんん!!」
そうしてついに白い彼女は泣き出した。
大声で。
「えええええええええええ!?」
何故か叫んでしまう。そりゃそうだ、こんなの予想してない!
ついでに言うと練習だってしてない!(錯乱)
「わっ・・・わたっ・・うぐっ・・わたしっ・・ほんっ・・・ほんとはっ・・・・ぐすっ・・・ずず・・・こ・・こわっ・・こわかっ・・怖かった・・・はぁ・・うぐ・・・いつ・・いつっ・・・こ・・ころ・・・ころこ・・」
コロコロ?
いや、まぁギャグは無しの方向で。
泣き声や嗚咽で無茶苦茶聞き取りにくいのだが、あえて訳すると
「私は本当は怖かった。知らない所に連れてこられて、眼をよこせと言う人達。言葉も交わさない、白い服を着た人達。そんな中で、たった一人、家に帰りたかった。」
・・・・・なんか・・・・英語の直訳みたいだけれど、きっとこんな感じ。
もちろん、ちゃんと全部聞き出すのに時間はかかった。
どれくらい?
そうだな、真上にあった太陽が、沈みかけるくらいまで。
でも、こんなのなんて事ない。彼女に、オレが間接的にでもしてしまった事を考えたなら。
オレは、酷い思い違いをしていたと。
夕日を背に、泣き続ける”魔族の”少女を見て思った。

不意にキャンバスは色を変える。

大木の葉は緑から深緑へと。
根元の花畑は、さらに輝かしく。
太陽の日差しは、随分ときびしく。


「ジョーンー?」
ほら、と足元の花を摘んで差し出す彼女。
「んー?」
掛けていた眼鏡のフレームを右人指し指と親指で掴みながら目を細めて花を見る。
知らない花だ・・・。
「アレイシア、この花の名前知ってる?」
ぶんぶんと首を振る彼女。
おれも知らね、と首を振るオレ。
「でも、綺麗だねー」
花の茎を指で摘み、くるくると回している彼女は、とても楽しそうに見える。
本当に・・・楽しければ・・・いいけどな・・。
「ジョン?」
本当は、早く家に帰りたいのだろうと思う。
楽しいはずなんて・・・ないか。
「ジョーンー?どーしたのー?」
おーい、と目の前で手をパタパタと振られる。
ダメだな。おれがこんなんじゃ。
「・・・いや、なんかかっこいいセリフないかなと思ってさ」
「今日の”ジョン語録”?」
「そそ・・・お、思いついた。」
ささっと居住まいを正し、正座するアレイシア。
じーっとこっちを見る・・・無邪気な瞳。
「花は全部美しい!」
ぐっと胸の前で拳なんて握ってみる。決まった。
「ジョン・・・それで付いてくる女はいないと思う・・」
「なぜぇ!?」
クスクスと笑うアレイシア。
最後にぼそぼそっと何か呟いたのだけれど、それは聞き取れなかった。


さっと色を変えるキャンバス。

大木の葉は薄い緑に。
根元の花畑は、少し可憐に。
太陽の光は、ちょっと柔らかく。

風が少し涼しくなってきた。
アレイシア用に実はセーターなんて編んじゃってるオレ紳士?
寒くなる前に完成できればいいと思う。
二ヶ月あれば・・・できる・・だ・・ろ・・。
マフラーになってるかもだが(弱気)
兄ぃが治れば、一番てっとり早いんだけれど。
ちょっと、まだ時間がかかりそうだった。
「あ」
いつものように、アレイシアポイント(アレイシアが好む大木の下)の近くにあるベンチに腰掛けていて、ふと思った。
「うん?」
あんまりにも唐突に声がでてしまったため、気の根元にいるアレイシアがこちらを向く。
「いや、オレ今日が誕生日だったわ」
完全に忘れてた。
いつもは兄貴や幻影の皆と過ごす為、自分が覚えてなくても良かったのだ。
「たんじょうび?」
うん?と首を傾げるアレイシア。
「えぇ?誕生日だよ誕生日。おれが、この世に生まれた日。そんな感じの日って、アレイシア達には無い・・・の?」
まぁ・・・確かに。
魔族に親がいても、魔族が出産するって決まってる訳でもないしな。
ぶんぶん、と縦に頭を振るアレイシア。
「いいか?誕生日ってのは・・・」
色々、ある事ない事吹き込んだ。
友達みんなとパーティーをする事。
ケーキを食べる事。
プレゼントをあげる事。
できるだけ楽しく過ごす事。
ものすっごく楽しく過ごしてもいい事。
そして、楽しく遊んだら「また明日」って解散する事。
オレが誕生日について話している間、アレイシアは目をキラキラさせて聞いていた。
さすがはオレ。話術の天才だったらしい。
一通り話し終えると
「そっかぁ、いいなぁ・・・ジョン・・誕生日あるんだね」
とアレイシアはぽつりと呟く。
そうだよな。魔族に誕生日なんて・・・普通は無いよ・・な。
こーゆー時はあれだろ。ほれ、いつもやってるゲームに良くある定番だろ。
参考するとこ間違えてるとかツッコミは無しな!
「あ・・・明日・・・・」
声がひきつる。さすがにゲームのオマージュは緊張するぜ(パクリでは無い)
「明日を!勝手に!アレイシアの誕生日にする計画発動!展開!終了!」
大声で叫んで気が付いた。終了してどーすんの!?
「えぇ!?やったー!!でもすぐ終了?」
がばーっ!と万歳して、すぐに手を下ろししょんぼりとこっちを見るアレイシア。
この子・・・だんだんノリが良くなってきたな・・・gg
「い、いや!明日を勝手にアレイシアの誕生日にする計画が展開され、無事に終了したって事だ!」
「それは・・・つまり?」
「明日は無事にアレイシアの誕生日DA!!」
やったー!がばーっ!→ベッドシーン
の予想だったのだ・・が・・今回もノーリアクション。
まさか・・いや、やはりと言うべきか・・・。
こんなの通じるの・・ゲームの中だけだよ・・な・・。
がっくり、と頭を垂れる。
現実って厳しい・・明日からどんなツラ下げて・・なんて、しょんぼりしていると唐突に目の前に花。
うな垂れて、真下を向いたオレの目の前に、花。
いつか見たのとは違う、けれど綺麗な、花。
それを支える白い手。
花に沿われた白い腕は、当然アレイシアに繋がっていたのだけれど。
その時のアレイシアの笑顔は、見たことがないくらいに。

「ありがとう」

そう言って、彼女はオレに花のプレゼントと、涙を一滴くれた。


ザッとキャンパスが塗りたくられる。
灰色に。
そこには、大木は無く。
花畑も無く。
太陽すらも無い、灰色のベッドのおかれた、灰色の病室。

白衣の胸ポケットに、昨日もらった花を挿し、両手で抱えきれないくらいの花束を持ってアレイシアの病室を訪ねる。
廊下に差し込む太陽の光はもう茜色。
朝から夕方にまで3件も手術が入っていた。
今日はアレイシアの誕生日だと言うのに。
もう・・・こんな時間。
アレイシアの病室の前で、廊下に差し込む茜色を見る。
そういえば、彼女はよく夕日を見て故郷を思い出していたっけ。
青い空もいいけれど、仄かに朱色がかった故郷の空が懐かしい、と。
あなたにも、見せたい、と。
それだってもうすぐ叶う。
ホムンクルスの実験はそろそろ最終段階。
これが成功されれば・・・!
がちゃり、と両手に花束と希望を持ってドアを開く。
ノックを忘れたが、彼女は気にはしないだろう。
「ごめんアレイシア!今日は朝から・・・」
病室に入ってすぐに頭を下げたから暫く気が付かなかった。
病室に、主がいない事を。



彼女を見つけるにはそれから15分程かかった。
今は、目の前で眠っている。
片目を無くし、息もせずに。

ザザーッ。
キャンバスが灰色と黒色に塗りたくられる。

「あぁ、ジョン。お前がさーあんまりチンタラやってっからさー」
「そうそう、実験動物と仲良くしてどーすんのよ」
「心配すんなって。お前の兄貴には移植完了でありますよジョン隊長」
「こゆ時身内は排除ってなー。ま、あれなら成功だろうから安心しろよ」
「おお、そういやーよ。こいつ、なんかジョンの事呼んでたぜ」
「そーだそーだw”ジョン!助けて!”ってよーwwww化け物のクセによwwww暴れたりとかUZEEEEEwwwww」
「なんかほかに言ってなかったっけw」
「あれだろ?”今日は誕生日がどうたらこうたら”」
「それだwwwwwwwwwwwww」
「化けモンに誕生日とかwwwwwwwww」
「笑いすぎてさ、俺麻酔するの忘れてるwwwwwww」
「ちょwwwだからあんなに叫んでたのなwwwww」
「別に※すんだしいいだろwwww」
「もう※んでるしなwwwwwww」


ばちん。
ゴムが引きちぎられるような音がして、キャンバスは寝ている少女を再度映し出す。
残った左目から走る涙の跡を指で拭う。
彼女が寝ている寝台の周りには、大量のバスタオルを濡らして散らかしたように見える。
人の残骸。

手術室で唯一息をしている男はなにも言わない。
ただ、自分の左目を血に濡れた手で引きずり出し、残った彼女の左目を即興で移植した。
麻酔無しで。
そして呟く。

「帰ろう」



唐突に。
キャンバスは世界の白に溶けて消える。
自分もなんだか・・・白くなっていっているような気が。
あぁ、せっかく動画を見たのに、冒頭の方から忘れていっている。
あれ・・・なんだったのかなぁ?
なんだったんだろう・・・一部すぎて―
楽しくはなかっ―
あ、目がさめ―


「のりちゃんってば!」


Vol:13 希望を諦めない。

2005-12-13 08:06:27 | 妄想具現化
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・」
ボロボロの白衣が走る。
「・・・ぐっ・・・う・・」
所々破れ、返り血が飛び、擦り切れた。
「・・はぁ・・・あ・・・_」
ボロボロの白衣が、日の当らない路地裏を走る。
そこはビルの木漏れ日も無く、本当の路地の裏で。
それは寂しい寂しい、路地の裏。
何かに追われているような、何かを追っているような。
それすら判別の出来ない表情で、彼はひた走る。
目を血走らせ、ボサボサの髪をたなびかせ。
「はぁ・・・あ・・・あははははははは!」
路地裏の先に誰も居ない事を知ってか。
路地裏の後に誰も居ない事を知ってか。
彼は急に笑い出す。哂い出す。
楽しくて楽しくて楽しくて、寂しいように。
「ひひひひひひっ!あははははははははははは!」
フラフラの足取りで走り、笑うものだから
ごりっ。
「!?」
白衣は派手に転倒した。
それも、運が良いのか悪いのか、ゴミの山に向かって。
「・・・・・・・・・・・・」
鼻を突く刺激臭に塗れて、やっと寂しい笑い声は止まった。


なんでこんな事になったのだろう。
知っているけれど思い出したくない。
解っているけれど知らないフリ。
体はボロボロ、いつ倒れてもおかしくない。
とゆーか、今倒れている。
起きれそうにないような気がする。
とゆーかぶっちゃけ起きれない。
「起きなきゃな・・・」
ぼーっと滲む頭で鈍く思考する。
思考?できてる?わからない。
「オーガトゥース、手を貸してくれよ」
ゴミの山に身を埋めたまま、右手をどうにか挙げる。
そこには誰もいない。誰も、居はしない。
「・・・・・・・役に立たねぇな・・・」
眠い。素晴らしく眠い。
自分が今身を預けているのはゴミの山だと云うのに。
それは最高級のベッドのようにも思えてきた。
でも、だめだ。
まだまだまだ、やらなきゃいけない事がある。
だから、起きあがらなければいけない。
誰か、誰か手を―
「ミストルテイン、すまないが起こしてくれないか」
誰も居ない。寂しい寂しい路地裏には、猫の子一匹、居はしない。
「あぁ・・・そうだっけか・・・もう・・・いないんだっ・・・けな?どうだったかな・・・そうだったかな・・・」
ぼすっとゴミの山に右手を戻す。
『ほら、まったく仕方の無い。それでも司祭様ですか?』
『あはは、仕方ないよ。彼はいつも夢見てばっかりの学者様だもの』
頼りにしていた者の楽しそうな幻視。
ちぇ・・・笑ってないで手ぐらい貸せってんだ。
『おいジョン。男なら立て。カマ野郎なら立たなくていいよwwwwww』
おれはあんたみたいに頑丈じゃねぇっつーの。
あー、あ・・・なんか立てそうな気がする。
大事な記憶を希望に変えて。主人公のように立たなきゃな。
ほら、おれって主人公みたいな髪型してるじゃん?
勇者っぽいよな。
だからなにか思い出して、それを力にかえ―
『勇者より蛮族って感じですよ?』
『誰の髪型がアトムみたいだってぇぇぇ!?』
こんなビルの路地裏じゃなくて、本当の木漏れ日の下で過ごした、あの日の幻視。
『あはは』
『次の検査は3割増しで痛くします』
『・・・ごめん』
『いや・・ほら・・・う・・嘘!嘘です!』
右手を宙に。
そこには何も無くて、誰もいないのに。
寂しい路地裏なのに。
「××××ぁ・・・おれがんばるから。絶対がんばるから」
『ジョン、体には気をつけてね』
「大丈夫。こう見えてもおれはしぶといから」
『私の―』
涙が溢れてきた。
血走った目を洗い流すように。目の奥から奥から。
心から。透明な、涙が。
「うっ・・・うぐっ・・はぁ・・うっ・・・うぅ・・」
路地裏の嗚咽。
「ごめんなぁ・・・オーガトゥース・・ミストルテイン・・・社ぉ・・・ごめんなぁ・・ほんと・・・ごめんなぁ・・・」
ぐしぐしと白衣の袖で涙を拭う。
「まだだから、もうちょっとだから・・・うぐっ・・・うぅ・・・おれ・・・がんばるから・・・・××××ぁ・・・おれ・・・がんばってがんばってがんばって」
『ジョン』
一輪の花を目の前に差し出してくれる彼女。
その花を受けとるように、右手を伸ばし白衣は立った。
「がんばって、死ぬから」
掴んだはずの右手になにも無い事を確認して、彼は走りだす。
転がりそうな危なっかしい走り方で。
猫の子一匹いない路地裏を。
寂しく、転がるように走り抜ける。
ただ、想いを叶える為に。
ただ、幕を下ろす為に。

Vol:XX-Moon distortion

2005-12-10 02:22:23 | 妄想具現化
使えない設定資料集公開。
マジで書き始める前に書いてましたw
本当はもっと長いし全員分あるんですが、このブログが10k文字しか書けないから割愛w
読んでもあまり楽しくないかも?(おれの落書きもな・・)

☆世界観。

リアルの現在だと思ってください。
首都である東京が王都プロンテラ東京になっているような感じ。
ちなみに王立国家ではありますが、王は象徴的なモノとなっており、実質は国民が選んだ貴族が国会のようなモノをして国政を決めています。

☆そこに住む人。

これも普通に普通の人が住んでいます。
ただ、生まれ持って特殊な身体能力を有している人間がいるって事で。
それが「騎士」だったり「魔術師」だったり「司祭」だったりします。
例えば「騎士」はすでに肉体の構造が一般の人間と違っています。
とても早く走り、力が強い。怪我や病気から治るのも早い。
もちろん「騎士」の強さにもランクがあります。
「魔術師」と「司祭」は生まれたときその人が持っている資質が重要になってきます。
勉強すれば使える。修行すれば使える。と云ったモノでは無いんですね。
また、こういった先天性の力を保有している者を「能力者」と呼びます。
「能力者」の中の更に5%程は更に特殊な能力を有している事があります。
これをそのまま「特殊能力」と呼びます。
ちなみに、公にはされていません。

☆社会構造

上記した「能力者」は全体の20%程で、社会になんとか溶け込んでいます。
「騎士」はその能力から「王立騎士団」、現在で云う「警察」に入る事が多いです。ちなみに強制ではありません。あくまでその本人が望むのなら、所属が可能になるのです。
また、「騎士団」が能力者を勧誘するのは禁止されています。
他にも「能力者」は社会的に差別される事が多いため、色々な保護条例や罰則が用意されています。
まぁ基本的には適材適所に収まっている、といった所でしょうか?
なお、「能力者」にはエーテルやマナと云われる一般人には無いエネルギーがあり、その香り、感覚は個人で違います。一人として同じものはありません。
そして、それが隠す事ができないので犯罪などに関与した場合は指紋のような扱いとなります。

☆ギルドについて。

基本的に会社と思ってもらっていいと思います。
警察やその他の巨大な組織に組みせず、少数で国からの依頼を受ける。
探偵の少し規模の大きなモノ、みたいな?

☆モンスターは?

はい、いません。ではなく、あんまりいません。
いるのはROで云う「不死・闇・悪魔」系のみです。
それも本来は人間の負の感情(憎悪・嫌悪・嫉妬etc)が生み出すモノ。
これの退治が「能力者」の仕事です。
「騎士団」や他の協会は一般の犯罪も扱う為、手が足りない。
そんな時に動きやすい「ギルド」が使われるんですね。


と、まぁ世界観みたいなモノを書いてみました。
穴だらけで恥ずかしいんですが、そこまで気が回らなくってw
んでは各自の紹介に移りますが、全員分書いていたら結局わからなさそうなので今までに登場した人物&重要人物のみの紹介でっす。

☆登場人物紹介。

☆iwaokun
ギルド「†_幻影騎士団_†」のギルドマスターで、元王立騎士団所属。
ある汚名を着せられて騎士団を除隊され、現在のギルドを立ち上げる。
が、実はその頃設立された「能力者管理委員会」(能管)への移動を秘密裏に行うためのヤラセ。
どの組織にも与さない「能力者」を管理する為にギルドを作った。
能管は公にはされていない組織である。
さらにその裏、本人の心は、そんなのは結局どうでもよく、楽しく遊べる集団が作りたかっただけ、との噂。
特殊能力については不明。あるのでは無いか?といわれているが本人は否定。
なお、多忙な身につき滅多に見ることがない。

☆ウェンリーナー
通称「のりちゃん」
この名以外で呼んでも反応しない場合がある。
幻影騎士団設立当初からおり、現在はハイ・プリースト。
iwaokunが「よし、この辺りを溜まり場にしよう!」と決めた場所でうろうろしていて勧誘された。
自身の正体は、その溜まり場の土地の土地神様。
あんまりにも楽しそうに人間(iwaokun)がうろうろしていた為持てる奇跡の全てを使って人間となった。
以降は普通の人間となりギルドに貢献して楽しんでいる。
なお、溜まり場にいる時は神性が少し戻るため、常人(常能力者)とは一線を越えた力を発揮する。
わらびに姉とみなされていたり。
特殊能力は「The silver」
銀色の液体を糸のように使ったり、布のように使ったりする。
実は本人の血液(エーテル塊?)であり、特殊能力とは違うのだがそう云って誤魔化している。

☆ネッド・スバース
「鋼鉄の司祭」「返り血の司祭」など、忌み名の多い司祭。
荒れていた時分にiwaokunと出会い意気投合。
現在に至る。
本人は「楽しければなんでもいーや」的な思想をしているが、実は心配性で繊細。
ギルド員の「あんまり頼れない」兄貴分である。
特殊能力は「shooting opera」
青ジェムを消費した分だけホーリーライトを同時に撃ち出す事ができる。
その限界数が無いのが恐怖。
最近才女と結婚したらしい。

☆ニレコ
幻影騎士団のムードメイカー的なハイ・プリースト。
表情が豊かで和むのだが、ふらっと何処かに行ったまましばらく帰ってこなかったりする困ったさん。
実は聖罰委員会と云われる堕落したクルセイダー・モンク・プリーストを裁いて周る組織の一員だったりもする。
聖罰名は”祝詞”
対聖属人物に対して絶大な戦闘力を誇っているが、通常の人間にはまったく効かない。
理由は、攻撃の全てが敵対象に対する神聖神経への攻撃であるから。
この神経をもっていない者に対しては無力。
特殊能力は「ハッピーコレクター」
相手の幸運を不幸にすりかえてしまう運命干渉系能力。
発動にエーテルの言霊がいらず、常時発動型。
ただ、本人に自覚がなくても発動してしまう為、いつ能力を使っているのかわからない。
発動条件も曖昧で、相手が自分を幸運とみなした時に即座に発動したりもする。
本人は厄介だとしか思っていない。
ちなみに聖罰としての正体はiwaokun・のりちゃん・わらび・の三人しか知らない。
が、他にも気がついている人がいるかも?
裏幻影”斑鳩の翼”5枚目。

☆ノム3ace
幻影所属のロードナイト。
元王立騎士団第18隊突撃殲滅部所属。あだ名は本名のaceから”盤上のエース”
第18隊の所属であったが、実情は一人きりの部隊。
一人で部隊となる戦力を持つ騎士であったのだが、実は作戦終了時にいつも一人で生き残っていたからと云う理由もある。
その功績と比例して、周囲の目も厳しかった。
”死神”と言われたり”味方殺し”と揶揄される事もしばしばあったが、本人はじっと耐えていた(らしい)。
が、ある日その功績を妬む上級貴族家の騎士に命を賭けた決闘を申し込まれ、相手を「うっかり」殺してしまう。
本来は公式の決闘であり、誰が死んでも問われる事は無いのだが、政治力にモノを言わされ騎士団除隊とされる。
除隊の日、「たまたま超偶然」通りかかったiwaokunにより幻影入り。
現在では戦場での直接指揮を執る事もしばしば。
特殊能力は無し。
ニブル戦役以前に当時の仲間とニブルに向かい瀕死の重傷を負うも様々な「実験」を施され延命。
体の70%を機械化している。
成功率0.数%を生き延び、体の機能を余す事なく使えるのはまさに奇跡。
最大の奇跡である「生命炉」と呼ばれるエーテル塊を胸に収めており、それを運用して攻撃・防御をする。
”槍”とだけ名付けられた攻撃はその際たるモノで、エーテルを収斂して右手から打ち出す。
にーちぇシステムと本人が名付けたエンチャントシステムと同時稼動が可能で、4大属性を”槍”に付与する。
特に火のエンチャントを施した”槍”は、敵命中後に大爆発を起こし、空を赤く染める事から「ラグナロック(神々の黄昏)」と呼ばれ、彼の最大攻撃となる。
もちろん、本人は変な名前を付けられる事を嫌がっている。
裏幻影”斑鳩の羽”の3枚目でもある。

☆御影 司
幻影騎士団所属の退魔士。
卓越した判断能力を持っており、口癖は「ふん」
普段から厳しい事を言う人物ではあるが、その指摘は的を得ている。
他の職業(クラス)の事にも精通しており、知恵袋的な存在でもある。
裏幻影と呼ばれる”斑鳩の羽”の一枚目でもあり、負感情の塊である化け物のBOSSを倒すチームの頭首。
スマックダウンとは幻影入団以前より共に行動し、以心伝心の仲。
特殊能力は「YHVH」
本人はただ”眼”とだけ呼んでいる索敵・哨戒系能力。
敵をスキャンし、能力を測る。
また、一度スキャンした相手の能力を記録し、絶対に忘れる事がない。
マーキングも可能だったり、幻術を見破ったりして結構幅広く使える。

☆スマックダウン(SWEAR)
御影 司の友人で、幻影所属のチャンプ。卓越した格闘能力を有する。
裏幻影”斑鳩の羽”の2枚目で、同じチームの人間以外とはあまり話す事はしない。
その為、正確などが解り難いのだが、悪い人間では無い(らしい)
特殊能力は「五光」
右腕正拳「富岳貫通」
左腕ボディブロウ「退魔無限後退」
右脚直蹴り「畳み縫い」
左脚後ろ回し蹴り「首刎ね」
広域殲滅「士魂」
と、各部の技があり、上から順にコンボする事が可能(順番を入れ替えたコンボは不可能)
「首刎ね」までを受けた対象は生命のあるモノなら死に、物体なら壊れると云うルールがある。
これは相手の強さ(硬さ)に関係の無い運命干渉で、絶対のもの。
ただ、「首刎ね」まで繋げる事は一日に一度の制限を受ける。
最後の「士魂」は自爆。
体内のエーテルを全て爆発に変えて四散する。
どのくらいの破壊力をもっているのかは、本人曰く「死んだ事が無いからわからねー」との事。

☆蹴球(kr)
幻影所属のロードナイト。
ムードメイカーで全然頼れない兄貴分。
よくいなくなり、ひょっこり帰ってくる。
同じロードナイトでもノム3とはまったく違った人格をしており、普段はただの遊び人に見える。
重い話題や深い話になるといつの間にかいなくなっていたり、自分の話題は煙に巻こうとする。
基本的に良い奴で、誰とも仲良くなれるのだが、他人とは一歩退いて接している感あり。
特殊能力は本人曰く「おれの槍はマジすげーよ?見たら死ぬよ?」とばかり言って見せない。
本当は無いと思っている人もいて、故意にそう見せている感もするが、エーテルは存在する為、iwaokunにはバレていたり。
決める所は外さないカッコイイ一面も。
ニレコの元旦那であるらしいが?

☆エレナ
幻影所属のアサシンクロス。
ニブル戦役で両親を亡くし、身寄りがなかったがわらびとへいに拾われ養子となる。
義理母であるへいを本当の母の様に思っており、義理父なぞいないとも思ってたり。
まだ幼く、11歳。
聖職者の義理両親なのだが、薦められた職業は「暗殺者」
デッドを師匠とし、メキメキ育ってアサシンクロスに。
が、師匠の考えで一度も殺人をした事がない。
本人は不服に思ってはいるものの、ほっとしている感もある。
特殊能力は「人形遣い」
特定の空間にハッキングを掛け、中にいる人物を操ったりする空間干渉能力。
現在はアサシンクロスになり、空間断絶まで扱うようになった。
次元そのものを切り裂くこの能力の前には、防御行動自体が意味を成さず、超便利。
が、あまりに危険な能力の為、能力管理委員(能管)から目を付けられている。

☆キル=デス=デッド
幻影所属のアサシン。生粋の殺人鬼で、アサシンになりたてでアサシンギルドを半崩壊にまで導いた事もある。
その件で追っ手を掛けられ、瀕死の重傷を負うも、あるばろーざと運命の出会いを果たし生還。
幻影にはあるばろーざの紹介で所属。
iwaokunの政治力でアサシンギルドから保護されている状態。
エレナの暗殺術師匠。現在は行方不明だが、あるばろーざは心配していない。
特殊能力は「Air」
自身を中心に15m内の空気を無味無臭の即効性致死毒に変える。
本人をして「殺すしか能の無い能力」と謂わしめる程で、仲間がいる場合は使えない。
特殊能力自体を隠していたが、のりちゃんに見破られ白状。以後厳重に封印を言い渡される。
危険度3A能力で、能管に目を付けられているが、iwaokun自体がどうしようとも思っていない。

☆あるばろーざ
幻影所属のプリースト。瀕死のデッドを助け、幻影を紹介した。
おっとりねっとり型の性格をしており、戦場がエレナの次に似合わない。
神聖術よりも薬師みたいな方に才能があり、本人も薬の調合の方が得意。
大変な正直者ではあるのだが、無理をして嘘をつく事がある。
一秒でバレるのは既にお約束となっているが、本人はバレてないと思っている。
実は結構なお嬢様だが、秘密。
特殊能力は無し。
が、あのデッドに付いていける事が特殊能力並に凄い事ではある。

☆無影
幻影所属のWS(ホワイトスミス)
所属していたギルドが解散したおり、iwaokunに勧誘されて幻影に。
女好きを自称しており、手が異常に早く、そのセクハラは「風の如し」と言われるエロ先生。
ギルド間の調整や話し合いが得意で、幻影の外交を勤める。
真面目なノム3とたまに意見の相違があるが、それも詰めて話あっている(らしい)
チャラチャラしているように見えてチャラチャラしている。
過去は全て不明。表情に翳りが見える事が極稀にある。
特殊能力は「ピースブレイカー」
素手で相手と握手をする事により自動発動。魅了のような力があり、これを使われた相手は無影を心底から嫌う事が出来ない。
本人は特殊能力を隠しており、iwaokun・のりちゃんの二人以外に知るものはない。
これも常時発動型で、その為に常に手袋をしている。
また、握手以外の接触でも発動する場合があり、その為に他人の好意を信じられないといった弊害あり。
生涯、真に愛される事は無いと覚悟している。

☆めぐ
幻影騎士団所属のスナイパー。
元王立騎士団11隊付き狙撃大隊第3小隊長。
華やかな経歴を持つも、自身から除隊。理由は不明となってはいるが、本人が零した思いは「殺しすぎた」
現行火器の概念武装が天才的に上手く、得意とする。
騎士団時代、狙撃の精度を上げるために服用した薬物に侵されており、時折幻覚を見る。
それを抑える為に強力な麻薬を使う為、意思の疎通が難しくなる事も。
親友に「悪女」と呼ばれる暗殺者がいるらしいのだが、幻影騎士団で見た事があるものは無し。
本人の幻覚だと思われている。
性格的にはまっとうな人間と変わらないが、薬物の副作用&麻薬によるハイテンションで人格が変わる事あり。
戦場では客観的な意見を述べれる立場にあり、作戦立案時には参加が義務付けられている。
特殊能力は「或いはその様に」
大弓の概念武装で強力な思念矢を飛ばす。
有効距離は3Km。効果範囲は着弾より円形に5M。
効果範囲内にいる生命体は精神をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられ夢を見る様に発狂or死ぬ。
なお、魔術攻撃でも、物理攻撃でも無いので防御不可能。避けるしかない。
矢の制限数は無いが、一矢事に自身の精神も磨耗するペナルティあり。
裏幻影”斑鳩の羽”の4枚目でもある。

☆悪女
めぐの親友で幻影騎士団所属のアサシン。が、めぐ以外の誰にも姿を見せる事がない。
iwaokunは「めぐがいるってんならいるんだろ」で入団を承認。面接すらしていない。
多くのギルドメンバーが存在を疑っており、めぐの妄想だとすでに思っている人の方が多い。
実はしっかり実在している。
特殊能力は「世界」
その名の通り世界と一体化する事で自身の存在を無と同じとする。
発動時は何者からも干渉されないが、こちらからも干渉できない。
一度解除するとしばらく(20時間程)使えなくなる。
継続して使い続けると自分の存在そのものが希薄になる、といったペナルティあり。
本人は、それでも良いと思っている。

☆綾波 レイ
元王立聖騎士団第1隊退魔聖十字軍覆滅隊所属。
誉れ高い聖騎士団きってのエリートで、家柄も貴族。
将来は女性初の聖騎士団長かとの噂もあった。
が、ニブル戦役でトラウマを負い除隊。名誉除隊扱いとなり、戦闘司祭に。
戦場には二度と戻るつもりはなかったけれど、iwaokunの熱心な勧誘に折れ幻影入り。
現在は幻影騎士団を脱退。理由等は不明。
特殊能力・不明
裏幻影”斑鳩の翼”6枚目でもあった。

☆バージル
幻影騎士団所属のプリースト。
中肉中背。非常に人当たりの良い好青年。
争い事は取り合えず一度止めて理由を聞こうとしたりする仲介屋気性。
正当性のある争いなら止めない。
ちょっとズレている感があるが、言っている事は的を得ており発言力あり。
家柄が非常に良く、父親は宮廷司祭隊で大司祭を務める。
幻影騎士団への加入に反対されたものの、「何故か」押し切って入隊。
御影司は「あの笑顔の裏には何かある」と踏んでいるが何もなかったりする。
プリーストとしての能力は非の打ち所が無い秀才。
幻影騎士団の所有する砦を監視・管理・防衛する役目を持つ。
特殊能力は「ブルーリンクス」
青い糸のようなもので他人とリンク(精神融合)し、相手の身体能力を数値化して管理できる。
複数の管理が可能で、試した事はないが100人はいけそう(らしい)
なお、自身の精神に「ファイル」と呼ばれる空きをもっており、そこに支援系神聖術をアップロードする事により、リンクした人物にダウンロードさせる事が可能。
つまり、単身で複数の人間の完全同時支援を可能とする。
複数支援の場合、もちろん精神に異常な負荷が掛かるが、笑顔でやってのける。
騎士団・魔術協会・教会・錬金術教会と、色々な機関から引く手数多な能力であるが、本人は能力だけで引き抜かれるのは嫌っている。

☆みるきー
本人は「自分の本名は、みる・みるーき・みる・ど・みーる・みるみる・みるきりす」
だと言っていたりするが長い為「みるきー」と呼ばれる。
14歳前後の少女の姿をしており、白いワンピースと麦藁帽子、赤いパンプスが盛装らしい。
幻影騎士団の溜まり場であった土地の近所に住んでいたため、いつの間にかギルドに溶け込んでいた。
正確にはギルドメンバーでは無いのだが、砦に入るのに必要だからとギルドエンブレムを持っている。
能力その他ほぼ全てが謎で、iwaokunやのりちゃんも正体が掴めない。
いつからいたのかすら誰も覚えておらず、のりゃんは自分の記憶が改竄されている可能性を思案中。
わらびを奴隷と勘違いしているが、何かと引っ張り回しては楽しんでいる模様。

☆ロキ
幻影騎士団所属の魔術師で、現在は怪我の治療の為入院中。
実家が魔術の大家で、その道では有名。
生まれた時には魔術の才能が無く、家の存続を危惧した両親によって「外道」と呼ばれる秘術で魔術を得た。
目を魔術触媒に変えているらしいが、両目ともなのか片目なのかは不明。
魔術アカデミーでは優秀な成績を残すモノの、中等部を卒業と同時に強盗に両親を殺され進学できず。
独学で大魔術にまで至る才能、異常なまでの高速呪文詠唱を持つも一つのギルドにとどまる事は無かった。
が、iwaokunの熱心な勧誘により幻影入り。
ジョンと云うプリーストの弟がおり、仲がいいんだか悪いんだかわからない間柄。
わらびから「弟者」と呼ばれた事から弟扱いに。
本人は仕方なく付き合っている。
特殊能力は不明。高速詠唱がそうなのでは?との声あり。
現在は入院していた病院を抜け出し、行方不明。

☆ジョン
幻影騎士団所属のプリーストで、ロキの実弟。
プリーストでありながらモンスター(負感情の実体化したもの)との共存をレポートとして提出したりして、神学校から追い出されたりした問題人物。
本人は大変な陽気で、真っ黒な逆毛が自慢。
常に白衣を着ており、銀縁の丸めがねをかける。
身長が兄のロキよりも高く、腕が異様に長く、針金のように細い。
幻影にはロキと一緒に入隊するも、砦に篭って研究ばかりしていた。
なんの研究をしていたのかは謎。
実兄を誇りに思っており、現在は主治医も勤める。
現在は病院を抜け出した兄を追うかのように失踪。
彼の監視役であった聖導騎士と退魔士が追うも、これまた行方不明。
特殊能力は不明。
本人は「そんなのあればいいんだけどねー」との事。

☆マドラ・モイライ
元幻影騎士団所属・現ミラージュ頭首。
両手剣騎士のランクを図るための「大太刀検定」で最高ランクの「剣聖」を持つ数少ない女騎士。
現在はロードナイトになっており、そのキレは増すばかり。
が、騎士団には所属せずに今は亡き両親の道場を継ぎ「マドラ流剣術道場」改め「ミラージュ」の道場主を勤める。
口数がとても少なく、感情が表に出るのも稀な為、弟子増員は槍術師範である社が引っ張ってきている。
馬鹿みたいにデカイ両手剣の概念武装を得意とし、剣速は社をして「見えない」との事。
実はこの剣速こそが彼女の特殊能力なのだが、本人はまったく気が付いていない。
特殊能力「始まりと終りの無い剣」
命名は社で、本人は特殊能力は無いと思っている。
高速剣ではあるのだが、ただの高速剣では無く、正体は「空間干渉能力」
剣で斬ろうとしたイメージをそのまま対称空間に実現化させる。
その際の斬撃の強度は「自分の概念装備で切れるもの」なら切れる、といったもの。
つまり、モイモイ本人が斬れると思うものは斬れる、という事。
斬り始めと斬り終わりにまったく時差が無く、「斬れるという現象そのものが空間に現れる」
が、本人は無意識に使っていて(斬ろうとイメージして、対象がイメージ通りに斬れるのだから当然か)
実際の剣の腕は一般人並。尚、概念武装が剣でなくとも、実体武装で木刀を使おうとも、本人が「この得物でも斬れる」と思えば斬れる。
魔術に限りなく近い物理攻撃。
射程範囲は自身を中心に360度全方位。周囲2M。

☆社 (水無月 社)
元幻影騎士団所属・現ミラージュ槍術師範。
本名は「水無月 社」元王立騎士団監査室室長をしていた水無月家の長男。
が、彼が10歳の時に陰謀により水無月家は凋落。それから「水無月」の名を捨て、ただの社と名乗る。
幼い頃に受けた訓練により、戦闘上手であり、若くして名の知れた傭兵として暮らしていたが
iwaokunの勧誘により幻影入り。
入団当初は苗字が無い事に不安や不信を持つメンバーも居たが、本人がいたって陽気な為すぐに溶け込む。
実家の事は数人に話したのみで、基本的には秘密。
単独での任務が得意で、幻影在籍中には斥候として活躍していた。
どうにも一つ所に留まる性分でなかったのか、「おもしろそうな事を見つけた」と幻影を脱退。
ミラージュに入りギルドメンバーに槍を教える。
特殊能力は「three kings」
自身の身体能力を最大3つ同時に強化できる内向型特殊能力。
恒常性維持強化を施した彼は実質限りなく不死に近く、全能力者内でも極めて特殊。
能管(能力管理委員)からは3Xの重要性をして認識されている。
元裏幻影”斑鳩の羽”の10枚目でもあった。

Vol:12 The 13 barrel-3

2005-12-05 20:03:26 | 妄想具現化
全ての行動が静まった土煙の舞う中、滞らない声が聞こえた。
「封落・聖剣奪取」
「崩式・聖盾奪取」
緑髪のクルセイダーが剣を魔剣の背中に立てる。それは体を貫通し、まるで腹から伸びているよう。
金髪の司祭が魔剣の左腕を蹴り壊す。
そうやって、ようやく魔剣は崩れ落ちた。
潮時・・・・だ。
こちらがいくら3人であれ、我々が聖罰である限り通常の能力者には勝てない。
それは揺ぎ無い。
そして、今現れた人物に姿を見せるべきでもない。
総合すると必然的に、それ以外答えがないかのように、今が潮時を知る。
正直、今帰ってしまいたくはない。なにせ、今まで自分に発砲してきていたのは旧知の友人、それを差し向けたであろうのも友人なのだから。
その、理由が知りたかった。その、意味が知りたかった。
それでも、任務は任務。
こなしていかなければ成らない。何が?自分の・・・人生が。
先程天井から降って来た人物をはっきり見た訳では無い。
ただ、あの妙にでかく、冗談のような両手剣は、あの人物以外には思いつかない。
なら、ここは任すべきだと思った。
そう思ったのなら、残る事すら、野暮。
「撤退!」
魔剣を確保した二人に告げ、この部屋に入ると同時に展開したワープポータルを開く。
ジョンには逃げられるのだろうが・・・ここは魔剣の確保でよしとする。
死ぬわけには・・・いかない。
「モイモイ・・後は・・」
そして、自分は光輝くワープポータルに乗り、舞台を降りた。


その姿を、その剣を、おぼろげにでも捉えた時、頭の中はノイズで一杯だった。

『おれは社。あんたは?』
『私の名は・・・××××××××』

ジジッ、ザザー。
頭痛が走る。
クソッ。あまりの頭痛で立ち上がれない。立ち上がれない?
気がつけば自分は膝立ちになっていた。あまりの頭痛に、耐えられなかったのだ。
そして無意識に膝を―
「女!また貴様か!!」
まだかすかに痛む頭を抑えながら立ち上がり銃口を向ける。
何千、何万も繰り返してきた動作で。
そんなに?してきたか?
考えようとすると頭痛が走る。痛い。
「・・・・・・・・」
天井から降って来た女は何も語らずこちらを見る。
泣きそうな瞳で。
そして一言
「・・・・やしろ・・・・」
脳を刺した。
一時間ほど追いかけっこをした女。
あまりにも追跡がなってなかったのでついつい遊んでしまうくらいの、どうしようも無い女。それに追いつかれるなんて、どうかしてる。
トリガーに指を掛け、引き絞る。
『よぉ、あんたを負かしたら1Mって、マジ?』
走るノイズを指先を集中する事で無視する。
バキバキバキバキッ
空間を揺るがすマズルフラッシュ。
が、女の少し手前で全て掻き消える。
そう、あれはあの女の剣結界。入るモノを何一つ許さない、剣の結界。
そんなモノは知らない。見たことも、聞いたことも無い。
けれど、この身はそれを”知って”いた。
あれは、始まりと終りの無い剣だ、と。
正面からの射撃がダメなら、移動する。
家に伝わる独特の足裁きでゆっくり、時に速く、時計回りに。
『へぇ、あんた本当にやるんだな』
『お前も・・見込みがある』
灰色のノイズ。
バキバキッ
隙を窺う為の連射は、瞳も向けられず切り落とされた。
『おれはまぁ、天才だからなw』
『だから・・その・・一緒に道場を教えないかっ!』
『はぁ?』
この角度がダメなら違う角度とスピードを。
ただ、ノイズが走る。この脳を刺すノイズがなければ、もっと・・。
『お前は見込みがある!良い腕をしている!でも、私が教えたらもっと良くなる!だから・・その・・うちの道場に・・』
『待て待て、おれのエンブレム見えねぇか?もう所属してんだよ』
ひゅおん。
目の前を剣結界がかすめる。やはりこれ以上の接近は出来ない。
銃での射撃がダメなら、実剣での攻撃―
『そ・・そうか・・・で、でも!うちに来てくれないか!退屈させないぞ!ほら、門下生もまだいないから何もかも真新しいんだ!』
『門下生0かよ・・・』
灰色に少し色が加わる。痛みは、増した。
スローイングダガーを右手に3本作って、女を中心に今度は逆時計回りに走る。
『ぜ・・ゼロだ!これ以上悪くならないぞ!』
『威張るなよ・・・それにおれの得物は槍だぜ?あんた槍もできるのか?』
『Σ』
剣の柄。究極的に言えば剣を握る指を狙って短剣を発射。
その先を確認せず、発射した地点の逆まで全力移動。
グロックを構える。
『な・・ならお前が師範で槍を教えてもいいっ!』
『趣旨変わってんじゃん・・・』
そのノイズは、だんだんと楽しくなってくる。
こんなに脳を刺し、痛ませるのに。
気持ちは、楽しくなってくる。
『でも道場主は私だっ!』
『威張ってるのか頼んでるのかどっちだよ・・』
バキバキバキッ
斉射3連・・・・また消される。
止まらない。それでは止まらず移動を続ける。
『そ・・そうだった・・その・・やっぱり・・ダメか?』
『上目遣いは辞めろよ・・』
家に伝わる独特の歩方は、エーテルを使って壁に張り付く事も可能とする。
部屋の壁を一気に駆け上がり、天井から狙う。
「つまらなかったからな・・・」
ノイズに釣られて口から出た言葉は、とても、なんて事もない一言だったが心を暖め、しかし脳を刺した。
目の前を唸り通る剣結界。
「・・・・・・・・・・・・・」
女は何も言わない。無性に腹が立つ。
『本当に楽しい?』
『もちろんだ!それには自信があるっ!』
どうやらあの女の能力とは相性が決定的に良くない。
天井から飛び降り、女から跳び退りながら冷静に考える。女は攻めに出ず、その場で向かえ討っている。
攻めて来ないか。ならば、一時退却だ。
答えは直ぐに出た。そう、暗殺者にとって第一は対象の抹殺ではあるが、それが可能で無い時、次の機会を得るために撤退する。
死ななければ、いつか殺せるのだ。
心は撤退を決めた。そう、逃げるのだ。だが。
体が動かない。敵から逃げる事を良しとしない。
ただの一時撤退なのに。ただ逃げるのとは少し意味が違うというのに。
なんだ?この葛藤。
『逃げるな!やしろっ!!』
『馬鹿!撤退だ!戦略的撤退!!』
『それでもだ!!ミラージュは!逃げないぞ!!』
逃げられない。何から?この女から?それとも、自分から?―この、ノイズから―
「クソが!!いい加減!!!!死ね!!!!!!!」
相手と10歩程の距離でグロッグの引き金を引き絞る。
”路地裏の凶刃”
消して見えない、聞こえない、そして必ず敵の死角から襲い掛かる凶刃。
それは放たれた。たったの10歩向こうの女に。
だが、その凶刃はいつまでたっても襲い掛からない。どこからも、刺し込まない。
「隙が無いと云うのか・・・?」
隙が無ければ凶刃は異空間で相手の隙を窺っている。もっているエーテルを消費しつつ。
「っ・・・ッ!」
ならば、もう一発!
指をトリガーに掛ける、と同時に。
ひゅん。
グロックの筒先は空を舞っていた。
そして、その動作を隙と捉えた凶刃が女に襲い掛かる。
まるでそれは、そうさせたかったが故と言わんばかりに返す刀で斬り落とされた。
逃げられない。攻撃が届かない。相手に勝る能力は腐るほどあるのに。
万策が、尽きた。
『あきらめんな!おれが隙間空けるからそこから―』
「・・・・捻じ込め・・・か」
ノイズで誰かが言っていた言葉の先を口にする。
もう、なにがなんだか・・・わからない。
ザッ。
両膝を地に落とす。最後の・・・策とは言えない・・策だ。
激しい頭痛が、演技に拍車を掛ける。
「一体お前は・・・なんなんだ・・・・」
両膝をついてうな垂れて呟く。
本心が半分、演技が半分だが。
「私は・・私の・・・」
馬鹿デカイ両手剣から片手を離して自己紹介を始める女。
ここで、殺す!!
「名前は・・・」
死ね!!!
「”路地裏の殺人鬼”」
筒先が斜めに欠けたグロックを地面から引き摺り起こし、フルバレルアタック。
13発全弾発射。13刃のメッタ刺し!!
バキッ
『やしろ、お前剣はだめだなー』
バキッ
『やしろ、お前のせいでまた弟子が逃げた・・』
バキッ
『やしろ、ちょっと珈琲でも飲みにいかないか?』
バキッ
『やしろ、どうした?風邪か!?馬鹿!帰って寝てろ!』
バキッ
『やしろ、新門下生だ!』
バキッ
『やしろ、私は・・その・・道場主っぽいか?』
バキッ
『やしろ、ちょっと買い出しに行くぞ!』
バキッ
『やしろ、これはどうやって使うんだ?』
バキッ
『やしろ、髭くらい当てて来い・・・』
バキッ
『やしろ、援護だ!援護しろ!』
バキッ
『やしろ、怪我はできるだけ・・その・・するな』
バキッ
『やしろ、私は実は料理が上手い。なんだその目は!』
バキッ
『やしろ、この旗をあそこに立てよう!私達でだぞ?あの砦は、いつか私達が―』

13発の凶刃。13個のノイズ。
どんどん吸い込まれ、どんどん色付いて。
女は一瞬だけ驚愕し、両手剣に手を戻す。
待っても、待っても、どこからも凶刃は舞わなかった。
隙は、無かったのだ。やはり。
今度こそ、万策が尽きた。地面に両膝を立てたまま、目の前の剣が自分の首を刎ねるのを待つ。

「俺の名前は社。水無月 社・・」
『俺の名前は社。苗字は捨てた。』
ノイズが被る。
「女、名は?」
『じゃああんた、名前は?門下生には名乗るもんだぜ』
ノイズが付いて来る。ここから先が知りたくて、知りたくて。
「私の・・私の名前は・・・」
『私?私の名前は、マドラ・・』
泣きそうな顔で、噛み締めるように女は名乗ろうとする。
そんな顔を見ていたら、ノイズがつい、口を出た。
「マ・・ドラ・・」
「やしろっ!」
さっきまで泣きそうだった女の表情がパッと明るくなる。
両手に握られていた馬鹿デカイ剣は既に光子化しつつあった。
薄れていく両手剣。蛍のような光を残して。
そして、こちらに走りよろうとする女の背後に、それは現れた。
13の凶刃。
『私の名は、マドラ・モイライ』
カチッ。
詰まっていた硬貨が何かの拍子で落ちるように、それの何かは落ちた。
「モイ子!!あぶねぇ!!!!!!!」
こっちに向いたモイ子の背に具現化する13の刃。
深く考える暇も、余裕も無かった。
自分の能力でもっとも得意な”脚部強化”のみをギリギリ発現させ、素早くモイ子を巻き込むように庇いこむ。
耳障りな音が何発かは的を外れて地面を跳ねる。何発かは、わからない所に飛んでいった。
静寂。
「・・・・・・・・」
「・・・や・・やしろ?」
胸元に庇った顔の頬を右手で撫でる。親指でりんごを磨くみたいに、ほっぺを磨く。
左耳につけている大振りのイヤリングが胸に当ってちょっと痛い。
よかった。一発も、当たってない。
「・・・なんつーか、役得?」
ぼんっ、と音が聞こえるかと思うかのような赤面化をする相棒。
「ばっ!馬鹿!!ちょ、違う!!」
ちょっと目尻に盛り上がった涙なんて最高だ。
「このっ!あっ!やしろ!!それより!大丈夫!?」
顔を両手で掴まれて、ちょっと背の低い彼女の目の前で固定させられる。
笑っちゃいそうだ。
「あー?うん?いや、大丈夫だけどぐぇっ!」
大丈夫だけど、と言った所で右のボディブローを頂いた。
厳しい道場主だ。
「もうっ!さっきまでやしろ別人みたいで・・なにがなんだか・・」
あんなに遠かった出口を目指す。二人で。
「そうだ、ジョン。ジョンだ。あいつ止めねぇと」
「でも・・・今は一度帰った方が・・・」
珍しく慎重だ。いつもこうならおれも助かるんだけどなぁ。
「いや、直ぐに追った方が良い。ジョン・・何かやらかす気だ」
「でも・・・」
出口を一歩出た所で横を歩く相棒に正面から言ってやる。
「モイ子」
「?」
「ジョンは止めないといけない。何かやらかす前にな。それよりもこれは、あれだぞ?ミラージュが喧嘩売られたんだぞ?」
「う・・・うんっ?そう・・か?そう・・だ。そうだな!」
「んだ。売られた喧嘩は?」
「10倍返し!」
左手で相棒の右肩を頼もしく叩く。
「ならモイ子はチェイス。今までで一番のヤツで頼む。おれは知り合いとかに連絡。」
「えぇ・・逆のがいいんじゃ・・・」
「あー、そうなんだけどなー」
今や”出口”から”入り口”になった扉の少し横に背を預ける。
「ちょっとジョンの洗脳だか幻術が抜けきらなくてな」
苦笑する。
「やしろ・・・一回帰ったほうが・・・」
そんな泣きそうな顔すんなよなー
「あー、もちろん。知り合いに電通(電脳通信)したら一回帰ってプリに体見てもらうぜ」
嫉妬すんなよひひひ!と笑った所で右足にローを食らった。
いってぇ。
「だから、モイ子。ジョンとミラージュのメンツを頼む」
目を見て言う。信頼の目で。
「うん、わかった。大丈夫。了解」
言うや否やくるりとAライン気味のスカートを閃かし、背を向けて走り出す。
こっちを信じきった、無防備な背。
「あーぁ、その背中、一人でなんとかしやがれよー」
社孝行、したい時に社無しってな。
ストンと、足から力が抜けた。
壁にもたれていた背中がズルズルと壁を擦りながら落ちる。
その壁にはべっとりと、血の痕。
「あー、疲れた」
気力を振り絞ってのりちゃんに電通。ささっと自分が見聞きした情報をまとめて送る。
「クリック・・・っと」
送信のマークが灯る。
「は・・・ぁ・・ごほっ」
一発は肺まで達していた。一発だけではないかもしれないけれど。
良く解らない。能力が発動できない。恒常性が維持・・出来ない。
これが、限界。
息が苦しい。喉がゴロゴロする。背中が熱い。
なんだか眠くなって目を擦る。その動作ものろくてもどかしい。
「あー・・・ダッセェ」
擦った瞳が次に捉えたのは、
「うん?あれ?城・・・?いや、白亜の・・砦・・?」
ごほごほっ。
咳き込むが、もう苦しくない。
だって、あの砦にはためく旗は・・・。
「見ろ・・・モイ子・・・あの旗・・・はは・・なんだよ、私達で獲るって・・おれも混ぜろよ・・・でも、やったな・・モイ子・・・砦だ・・俺達の家・・・・・・・俺達の・・・・帰る・・・い・・・え・・・・」

光子化を始めた自分の血で真っ赤になった右手を、真っ白な砦に伸ばす。
もう少し。もう少しで、あの旗に―

誰もいない廃工場を風が吹き抜ける。
壁に大穴の空いた倉庫を。
入り口の扉近くの壁に塗りたくられた真っ赤な色を。
その真下に落ちている、大振りなイヤリングの片割れを。
優しく撫でて。