Life is・・・so・・・××××××Gun-Parade-March!!

死ぬから生きよう。ただ・・それだけ。

Vol:16 孤毒の終り。

2005-12-29 23:22:51 | 妄想具現化
「それってマジですの?」
助手席に座った娘が胡散臭そうに聞いてくる。
「マジも大マジだって、嘘じゃないよ」
ハンドルを持ったまま、前を向いて答える。この辺はちょっと混んでるなからな・・。
「喜ばしいですわ。切ないですわ。もう一度最初から・・」
はぁ、とため息をついて右手をハンドルから離し、ちょっと頭を掻く。
えーと、これで何度目だっけ?
「いーかい?よーく聞いておくんだぜ?」
助手席の娘の目をちらっと見る。うむ、ちゃんと聞いてる目だ。
さっき話した時もそうだったけれど・・・・。
「アムスで大麻は合法だ。」
もう何回も話してちょっと暗記しつつある話をまた始める。
「でも、いいか?合法とはいえ、ちゃんと規則はある」
うんうん、と頷く娘。うむ、ちゃんと聞いてるな。
「まず、吸って良い所ってのは決まってる。販売が許されている喫茶店。自宅。広い公園だな。ちなみに持ち歩くのはどこでも可。正し、それを人に売ったりするのはNGだ。売るのはあくまでも許可を持ってる人だけ。いいか?」
「そこが不思議でたまりませんわ。それですと、家の食事の後に家族で大麻を一服って事になったりしますの?」
「うむ、自宅で全員が規則で定められた年齢を超えていたらね」
「ふーん。どうにもこの国で生まれ育ったワタクシには信じられませんわねぇ」
どうしても信じられないらしい。
「まぁ、今度家族旅行で行ってみるか?家族で大麻を吸いに行くみたいであれだけど・・」
「いいですわねぇ。素敵ですわ。悲惨ですわ」
目を輝かせてどうなのか解らない事を呟く娘。どっちなんだ・・・。
「今日はホームセンターに青ジェム買いに行くだけだからアレだけど・・・エレーはいつもその格好?」
ちらっと娘に目をやって聞いてみる。おれにはこっちの方が幾分も不思議だ。
「なんですの?親父様はこの格好に文句でもあるんですの?」
自分が着ている薄布をちょっとつまんで不機嫌そうに言う。
いや、しかしそれはなぁ・・・
「ちょっと・・その・・扇情的すぎやしないかい?」
何せその格好ときたら、殆どボロボロになったスクール水着みたいなモンなのだ。
「いいんですのよ。これが暗殺者の正装らしいんですもの」
「うーん、それは聞いてるんだけれどねぇ。どうも・・その・・・」
「なんですの?」
「エレーは歳や身長の割には胸がもう大きいからなぁ・・お父さん心配で・・」
「っの変態!」
どぐわっしゃっと右から殴られる。
「ぐぅ・・・ナイスキック・・・」
「パンチですわ、変態親父」
く・・くそっ・・・車の運転中だと思って思いっきり殴りおって・・・。
事故ったらどうすんだっ!
「あともう一つ気になる事がありますわ。気にならない事がありますわ」
ど・・・どっち?
「う・・うん?なんだい?」
まだちょっと痛む右脇腹をさすりながら右にカーブ。
「フランスとかでハンバーガーはどう言いますの?ほら・・あちらは・・」
うむ、大変良い質問である。
食い物ってのがアレだが。
「そうだね。メートル法の世界だからね。例えばチーズバーガー」
ちらっとまた娘の目を見やる。お、今度はいつになく真面目な目だ。
「ロワイヤルチーズ」
くわっと目を開く娘。どうやら相当にショックだったらしい。
「本当に!?本当に”ロワイヤルチーズ”なんですの?子供と思って騙そうとしてませんこと!?」
早口でまくし立てて、右手を掴んでくる。あ・・あぶねぇなぁ・・。
「ほ・・本当だよ。誓って、チーズバーガーはロワイヤルチーズさ」
右手に摑まった手を見て、娘の目を見る。
すると娘はぱっと手を離し、座席の背凭れにどっかと身を沈め
「外国ってすっごいですわ・・・」
と一言漏らした。
んむ、外国は凄い。わけわからん。


と、まぁ娘とどこぞの映画の会話みたいなのをしている間に目的地まで着いた。
「じゃあちょっと青ジェム買ってくるからね、いい子で待ってるんだよ」
ドアを閉めながら娘に言って鍵を閉める。
ホームセンターの方を向いた時、背中に声がかかる。
「アイス・・・ストロベリーとバニラのダブルでよろしくですわ」
まったく、仕方ないなぁ。
「おれはそれにミントをプラスした方が好きだから、そのトリプルを2つ買ってくるよ」
振り返って見る、古いビートル”アンティーク・マーダー”の助手席で、娘が笑うのが見えた。
ひゆう。
今日は良い風が吹く。
ちょっとぬるめの風が背中を撫でる。
さて、買い物を済まして娘とアイスでも舐めようかと、ホームセンターに振り返ると。
その間にある噴水の前に、騎士がいた。
金色の逆毛を風にたなびかせ、少し空を向いた、概念防具をつけたままの騎士が。
別にそう珍しい事はない。騎士なんて、この界隈にはたくさんいる。
一歩一歩ホームセンターに足を向けるのだけれど、なんだかその間にいる騎士に向かっているよう。
どこか気になる。何か気になる。あの外装・・・どこかで見たような気もする。
騎士は未だ空を見たまま。肌は少し血の気が感じられず灰色のような。
不吉な色。
横顔からは感情がまったく感じられない。とゆーより、全身から生気が感じられない。
肌は微妙に危険を感じるが、それは相手が騎士ならば自然な事だ。
また一歩ホームセンターに、騎士に近づく。
どうも・・・目が離せない。
そこで不思議な事に気が付く。
・・・・静かすぎる・・・・。
今日は平日。確かに人がまばらであってもおかしくは無い。
が、しかし、ここは一番人の往来が激しい場所であったはず。
そこが静か過ぎる。否、大変な事に気が付く。
”誰もいない”
見渡す範囲に誰も、いない。
車の中には娘がいる。それは解る。けれど、その他には誰も。
騎士とおれと車の中の娘と。
それ以外に人がいない。異常・・・すぎる。
ただ、噴水から流れる水の音がするだけ。
異常に気が付き、娘のいる車まで戻ろうと思ったのだけれど、もう足は一歩前に出ていた。
それが、何かのスイッチとも気が付かずに。
『兄者』
聞きなれた声がどこからか聞こえる。(どこから?)
『兄者』
音を発するのは噴水と、おれの脚。あとは・・・・
『兄者』
ぎりり、と。目の前の騎士がこちらを首だけで向いた。
本当に、首からぎりりと音を鳴らしながら。
驚きで足が一歩後ずさる。
声は確かに弟者の声だった。
が、その声を発したのはどこかで会った事があるようなないような・・・灰色の騎士。
事態がうまく飲み込めない。
『ああ、この顔じゃわかりませんか』
ずるり、と騎士の顔が溶け落ちる。本当に、顔面の肌が溶けて、落ちる。
下から現れたのは、少し青ざめたよく知っている弟者の顔。
でも、体は騎士のままだ。
「お・・・弟者・・・か?」
おれを兄と呼び、見慣れた顔で反射的に問い返す。
『あぁ、兄者。驚かして申し訳ない。この体は借り物なんです。覚えてませんか?』
ぎここ、ぎり、と右手を動かしてみたりこっちを向いてみたりする。
先程までの金髪の逆毛。
今見つけた二の腕に走る概念防具の傷。
”借り物”と言った騎士の体。
「もしかして・・・”くし団子”?」
見覚えがあるはずだ。
それもそのはず、”くし団子”はついこの間まで自分自身が使っていた”アストラル”(別人体)なのだから。
でも”くし団子”はもう正式に破棄したはず・・・・。
『兄者。破棄申請をして渡した場所を、忘れましたか?』
ちょっと楽しそうに聞いてくる弟者。
えーと、たしかあれは・・・・
「弟者が入院していた”病院”?」
そうだ、確かジョンが格安で廃棄しておくからと薦めてくれたんだっけか・・。
『ですよ。それをちょっと保管してまして。愚弟の奴がですがね。それをちょちょっといじって借りさせてもらってるんです』
あはは、と顔色は悪いながらも笑う弟者。
無理しているようには見えないけれど、別人体を使うって事はやっぱりそこまで良くはないのか・・。
「体・・・良くないのか?」
思った事をそのまま聞いてみる。
心配なんて、今更なのだけれど。
弟者は首を振り
『いえ、もう随分良いですよ。今日はそのことで話がありましてな』
一歩、何気なく近づく弟者。
一歩歩くだけでも、借り物と呼ばれた別人体はぎこぎこと音を立てる。
手を貸そうと思い、こっちからも一歩近づいたその時。

「わらび。”それ”から離れろ」
真横から声がした。きっと、この辺りには誰も居ないだろうと思った場所から。
「?」
声がした方を向く。声がした事そのものもちょっと不思議だったのだけれど、それよりもっと不思議な事が・・・。
目を向けた先には、プリーストとチャンプが居た。よく知っている、二人。
「はろー、わらにぃ」
ニコニコと笑顔のチャンプ―海猿君がわきわきと右手を挙げる。
隣にいるのはプリーストのメタトロン君だ。
今日はいつもよりも更にしかめっ面だけれども。
「ああ、海君にメタ君か。どしたの?BOSSの帰り?」
二人の肩、いつもは幻影騎士団のエンブレムがあるはずの場所には茶色の羽が並んで貼り付けられている。
海君は10枚。メタ君は11枚。
斑鳩の羽―
これは主にBOSSと呼ばれるモンスターの集合体を倒しに行くときにつけられるエンブレムだ。
つまり、それを付けている間は、何かのBOSSを倒しに行っている時か、その後。
「いやぁ、帰りってゆーか最中って言うか・・ねぇ?」
海君はニコニコしたままメタ君を見やる。
「わらび。もう一度言うぞ。”それ”から離れろ」
びしっと弟者を指差して言い放つメタ君。
先程の違和感の正体がわかった。
「おいおいメタ君。”それ”なんて弟者に失礼だぜ。メタ君は知らないだろうけれど弟者は元幻影の」
メンバーなんだよ、と紹介しようとした瞬間
「離れろと言うとろうが阿呆!」
メタ君の怒声が聞こえ、目の前に海君がいた。
「え?」
「ごめんよ、わらにぃ」
海君は右の掌をそっと胸にあて
「ぐっ!」
寸剄を放っておれを5mは離れた”アンティーク・マーダー”まで吹き飛ばした。
がしゃん。自分の車の助手席側のドアに衝突して止まる。
しまった・・・中にはまだ娘のエレーが・・・
「メタ君海君!弟者だよ!覚えてないのかよ!!」
なんとは無しに弟者の危険を察知して叫ぶと同時に車の中を見る。
誰も居ない。さっきまで確かにエレーが居たのに。
「こんな”深淵”が弟?わらび、大層な弟を持ったものだな!」
ふっ、と息を短く吐いて神聖術詠唱の体勢に入るメタ君。
海君は
「森羅万象悉く右手に宿れ」
その能力を開放していた。
”森羅万象”
その地にあるエレメント全てを体の一部にエンチャントする海君の特殊能力。
『隔離空間にしたはずが、入ってこられるとはね』
弟者は呑気に構えすら取らない。
「味方だよ!味方!」
と、叫ぶ自分こそが、抜けているのだろうか。
2人は完全に戦闘体勢で
メタ君は自身のエーテルを解き放つ。
「走れ影矢。軸位、暗転、貫通!」
いつの間にか足元に展開されていた魔方陣を一部蹴り崩し、右の手で空間を刺す。
その空間先に海君は突然現れた。
なんの前触れも無く、突然に。
”invincible tears”
指定された空間にある一定質量の物体を送り込めるメタ君の特殊能力。
黄金色に輝く海君の右腕が弟者に突き刺さる前、その数瞬。
二本のきらめくナイフが弟者の背中に刺さる。
「空間内在座標固定!”足を失った人形”!!」
娘・・エレナの声どこからかして、弟者はぴくりとも動かなくなった。
そこに突き刺さる黄金色の右腕。
幻影騎士団3人による、とっさのコンボ。
熱い様な冷たいような爆発が弟者を中心に起こる。
自分は、その瞬間を見ている事しかできなかった。
ただ、見ている事しかできなかった。
黄金色の爆発が引いていく。
「やったか?海」
次の移動先を目で探りながら、メタ君が魔方陣を再構築し始める。
「いや、ダメだ。こいつは・・・っ!」
爆発で起こった煙の中から右腕を押さえながら海君が飛び出してくる。灰色になった、右腕を押さえながら。
『良いコンビネーションだけれどね』
まだ煙った中心からのんびりとした弟者の声。
『エレナ君。どうせなら内在座標だけじゃなく、指定空間事固定してればベストだったよ』
だんだんと煙が引く。
『裏まで固定できないかもしれないけれどね』
煙の中から姿を現したのは・・・
「弟者・・」
まっくろなローブに身を包んだ、魔術師然とした弟者だった。
辺りに、元は先程の騎士であったであろう肉片が飛び散っている。
『兄者、すまない。”くし団子”は壊されてしまったよ』
それ以外は、なんでも無いと手を広げる弟者。
『まったく、思い出の品だと云うのにね』
ちらっと、未だ戦闘意欲を失わないメタ君と海君を見る弟者。
「こいつっ・・・次元歪曲してやがる・・・3次元のダメージソースだけじゃこいつには・・っ!」
固まってしまったように動かない右腕を押さえて海君が吐く。
『さて、兄者。ここだと少し話難い。移動・・しようか』
右手を差し伸べてくる弟者。
「あ・・・あぁ・・・でも、弟者・・」
何かが聞きたいのだけれど、何が聞きたいのかもわからず、その右手をとりあえず取った。
途端に地面が沼のように沈みだす。
不安は・・・特に無い。弟者の手を握っているのだから。
少し、ほんの少し怖いけれど。
「空間断絶!舞い神r―」
姿の見えない娘の声が聞こえたが
『エレナ。子供は殺したく・・・ないんだ』
弟者の一言で、周りは全て静かになった。
とぷんとぷんと地面に沈んでいく体。
最後に目が捉えたのは、こちらに手を差し出すメタ君だった。

Vol:15 The End Of Solitude

2005-12-28 18:45:59 | 妄想具現化
じりりりり、とも鳴らない時計のアラームをぺちりと止める。
今日も午前7:30起床。
アラームは7:35にセット。毎日弛まぬ早寝早起きの為、このアラームはまだその機能を発揮した事がない。
そもそも、毎日弛まぬも何も、この時間以外に起きた事がないのだ。
アラームが無くては起きられない、といった人がギルド内にもいるが、それが今一不思議で仕方がない。
どーしてだろ。こんなにスッキリ起きれるのに。
でも、今朝は変な夢を見たっけな・・・えっと・・あれ?なんだっけ?
首を傾げながらパジャマから普段着へ。
そうそう、ちゃんとパジャマに着替えて寝ない人もいる。
なんかねぇ、そゆのちゃんと区切りが付かなくて気持ち悪いんじゃないかと思うんだけどな。
まぁ人の好みの問題もあるからとやかくは言わないけれどね。
ざっと着替えて1Fまで顔を洗いに行く。2Fのはノム君がまた壊したんだもんなぁ。
力の加減が難しいって言ってたけど、それなら鋼鉄製の蛇口にしたらどうだろう?
あ、それだと僕等が困るのか。
うーん、朝一はまだまだ回転が甘いなぁ。
とんとんとん、と階段を下りて1Fに。
あー、そだ、昨日の帰りに買い物してないから朝ごはんが貧弱になるかも。
えーと、なにが残ってたっけっかなー?卵とベーコンは・・・誰も摘み食いしてなきゃあるはず。
うん、いつも多目に買うし。朝は卵とベーコン、後はパンでいいかな。
1Fについて長ーい縁側を通り突き当たりの洗面所で顔を洗う。
大所帯の為に各人の洗顔料がざらーっと並んでいるのはちょっと壮観だ。
っと、こっちはkr君の・・・と。
同じのが2つくらいあって間違えそうなのがアレだけれど。
ざぶざぶっと顔を洗ってキッチンへ。
リビングに足を入れると、真ん中にある白い長机に人が突っ伏していた。
「うわっ」
両手はぶらーんと垂らしたまま、銀色の髪をばら撒きながら机に頭だけを乗せて突っ伏している。
「のりちゃんかぁ・・・びっくりしたぁ・・」
どうやらこっちとは反対の方に顔があるらしく、視点の先を思わしき所には
「プリン?なぜに?」
こ・・この人はプリンを眺めながら寝てしまったのだろうか・・。
はたと気付く。
「そだ、これから卵とベーコンの朝ごはん作ろうと思うんだけど、のりちゃんも食べる?」
・・・・・・・・・・・・。
返答が無い。ありゃ、まだ寝てるのかな。
「のりちゃーん?」
ちょっと肩を揺すってみる。
「・・・んんー・・・」
反応ニブ目。
昨夜も何か作業してたのかな?眠るのが遅かったのかもしれない。
でも今日はちょっとやらなきゃいけない事もあるし、それより何より・・
「のりちゃん、朝だよー?朝は起きるもんだよー?」
そう、朝は起きるもんなのです。
もうちょっと強めに肩を揺すってみる。
「のりちゃーん・・・のりちゃーんん!」
がくがくがく。
「んんー・・・んー・・・」
て・・・手強いな・・・・
「のりちゃんってば!」
ぱしん、と猫騙しのように手を打つ。
すると
「うむ、今起きた。」
ぱっちりと目を開けて、のりちゃんは覚醒した。
「おはよ~」
「んー・・おはよ~」
気を取り直してキッチンに。
「さっき何か言ったー?」
ごそごそとエプロンを身に着けていると背後からくぐもった声が聞こえる。
まだ突っ伏してるな。
「これからねー卵とベーコンのごはん作るけど、のりちゃんも食べるー?」
キッチンからのりちゃんまでは少し距離がある為、ちょっと声を張る。
少しの間を置いて
「んー、プリン食べるから冷蔵庫から取ってー」
まだ眠そうな声が返ってくる。
「プリンー?のりちゃん目の前にあったよー?」
フライパンを軽く水洗いして、コンロの上に。
「これぬるくなってるから新しいのがいいー」
そりゃ冷蔵庫から新しいの持って来てって事っすか。
フライパンに軽く油を引いてから、冷蔵庫をあける。あら?
「のりちゃーん、もうわらびーのプリンしか残ってないよー?」
同じモノでも見易い所に自分の名前を書いておく、すると間違って食べられたりしないのだ。
「ええーホントにー?ちょっとそれ持ってきてー」
やれやれ、のりちゃんもプリンの事となると疑い深いんだから。
残り一個になったわらびーのプリンを手に取り、リビングへ。
「はい、ここにちゃんとわらびーって書いて」
「どれどれー?」
びびーっ。
蓋であるフィルムを一気にはがすのりちゃん。
「・・・・・・ええ?」
「むむ?どこかなー?どこに書いてあるかなー?」
どこからか出した銀色のスプーン(以前プリン用に欲しいと軍曹にシルバー925で作ってもらっていたモノと思われる)でがしがしはむはむとプリンを食べていくのりちゃん。
「ああああああ」
「これかっ!このカラメルの下かっ!」
もぐはむ。
「ごちそうさまでした」
「・・・・・・・」
あ・・・開いた口が閉まらな・・・い。
「不思議だねー?どこにも名前書いて無いなんて。うっかりさんだねー^^」
「な・・名前はこのフィルムに・・・」
「これはそんなうっかりさんへの罰だね☆」
えいっ、とフィルムを僕の手から取り上げ空になったカップと一緒にゴミ箱にぽい。
「あーおいしかった」
満面の笑顔だ。もう・・その・・いいじゃないか。のりちゃんが幸せなら。
くるりと踵を返してキッチンへ。
朝食を作る事にした。
ささっとコンロに火を着け、ベーコンから炒める。
えーと・・・これはちょっと厚いから2枚でいいかな。
ちょっと火が通りかけた所に卵を割って投入。
スクランブルエッグのが簡単だけれど、まぁたまにはいいか。
ちちょっと塩こしょうで味付けして・・・っと、火を切って少し蒸らす。
んで、完成。超簡単。トーストをトースターに一枚放り込んで、焼く間に冷蔵庫から紅茶の入っているボトルを出してカップに注ぐ。
「あーうちもいるー」
リビングからキッチンの中は見えないはずなのに、のりちゃんが抜群のタイミングで言ってくる。
ど・・どっかに目でも付いてるのか?
「冷たいけどいいー?」
きっと欲しいだろうと思い、もう一つカップを追加。えーと、のりちゃんのカップはこの銀色ので良かったんだっけかな?
「別にいいよー。喉渇いてるから丁度いいよー」
おっけーおっけー。
のりちゃんのカップに冷たい紅茶を注ぎ終わったと同時にトースターからパンが焼きあがった。
こうも完璧に流れ作業が決まると気持ちいいよね。
ワンプレートに朝食をまとめ、紅茶のカップ二つと一緒にリビングに運ぶ。
僕の席は・・・っと、のりちゃんの真向かい、無印で買った白いワンチェアー。
「はい、紅茶お待たせー」
ソーサーは持って来なかったのでかちゃりとも言わない。
「んー、あんがとー」
つつっと紅茶を啜るのを見て、席に着いた。
「いただきまーす」
「召し上がれーってうち作ってないけどね」
はむはむと朝食を頂く。む、自作ながら今日のは中々良い出来だ。
と、自分の腕を再確認していると。
「おはよー。あ、おれも食べたいー」
頭をかきながら寝ぼけ眼のわらびーがキッチンに来た。
「あ、わらびーもう8:00だよー?寝すぎ寝すぎー」
さっき起こさなかったら絶対寝てた人物が言う。
「いや、昨日ちょっと遅かったのと変な夢見たからさー」
ふわぁ、とあくびするわらびー。
「うーん・・・もう一回作るのだるいなぁ・・・」
わらびーには悪いが、もうフライパンは水に漬けちゃってるのだ。
「バージル君のお手製ならなおさら食べたいなぁ」
とか言ってくれてもなぁ。
「あ、それよりわらびー。顔洗ったらお使い頼めないかな?」
「うん?なんの?」
「青ジェム200個。今日は砦の点検するから予備魔力に使うんだ」
GvG中はエンペリウムから魔力を注入されてるから砦は無制限に使えるが、GvG中以外で砦の機能を全部使おうとすると莫大な魔力が必要とされる。
それが例え検査で、その内の全機能を使う訳では無くとも、バリア、魔砲などの実際に魔力を通してみないと解らない装備もある。
そして、そういったモノが一番故障しやすいのだ。
「あ、そか。なら仕方ないけどそのかわり・・」
「解った解った。昼食は腕によりを掛けるよ」
右腕の袖をまくって腕を見せる。
「やりっ、ほんじゃちょっと行ってくらぁな」
わらびーは顔を洗う為にリビングから出て行く。
「そっかー、今日は砦の検査なんだー」
紅茶を啜りながら検査の言いだしっぺが呟く。
「のりちゃんが今日がいいって・・・」
「そだっけ?」
ま・・・まぁいいや・・取りあえず朝食を片付けよう。
「もぐ・・・のりちゃんにも手伝って貰うからねー?もぐもぐ」
「えー。めんどいなぁ」
「故障して困るのは自分でしょうが・・ごちそうさま」
なんだかよく解らない内に朝食は胃の中に。でもまぁ、おいしかった。
お皿を洗い場に漬けて、椅子に戻って紅茶で一服。
「いってきまーす」
「親父ーワタクシも付いていきますわー」
「ちょ、遊びに行く訳じゃ・・」
「うーそーつーきーにーはー死ーでーすーわー」
と、微笑ましい会話が玄関から聞こえてくる。
わらびー達は出かけたようだ。
縁側から差し込む朝の光。
葉っぱは安物だけれど、いい感じに漬かった紅茶。
平和な朝。
「と、やっぱりデザートが欲しいよね?ね?」
にっこりしながらのりちゃんが目の前で手を合わせて聞いてくる。
んむ、確かに検査は10:00からしようと思っていたからまだ時間はある。
「でも、デザートになりそうなモノがもう冷蔵庫には・・・」
そう、冷蔵庫には無い。”冷蔵庫”には。
しかし・・あれは・・・あれだけは・・・
「ふ・・・ふふふ・・・ふふふふふふ・・・」
目の前で手を合わせたまま不吉な笑い声を上げるのりちゃん。その顔は下を向いていて見えない。
まさかっ!?気付かれたか!?
「甘物の匂い!!」
ぐわっと振り返って後の棚をどっかーんと開ける!
「ああ!それは!」
急いで止めようと腰を浮かすも、既にモノは机の上に置かれていた。
ど・・どんな早業なんだろう・・・・
「・・・?これはっ・・・まさかっ・・・!?」
白い箱を目の前にぷるぷる震えるのりちゃん。
うむ、気持ちはわかる。
「わらびーと折半して買った・・・その・・」
何故か言いよどむ。
「”ヴェルク”のレアチーズケーキ1ホール・・・」
呟くと同時に、ケーキのあった棚の一つ隣の棚がいきなりどっかーんと開いた。
「”ヴェルク”のレアチーズケーキ1ホールだとう!?」
「うおぅΣ」
そこには、何故か窮屈そうにしたボサボサ逆毛の男が体育座りではまり込んでいた。
目が血走っていて怖い。
「洋菓子屋”ヴェルク”のレアチーズケーキと言えば月刊プロンテラ東京等でも取り上げられTVの批評番組でも文句なしのお墨付きを貰い星で言えば五つ星は確定と言われ予約一ヶ月待ちと言われているあの”ヴェルク”のレアチィィィィィィィィィズなのかぁぁぁぁぁぁ!?」
狭い棚に体育座りではまり込み血走った目でガクガクと口を動かす人間。怖すぎる・・・。
「長文説明セリフごくろう様だけど、どしたの?ジョン」
膝までカクカクになりつつあった僕をよそに、のりちゃんはしれっと話しかける。
知り合いなのかな?
「や、アネサン。ご無沙汰しておりますです。」
急に普通に戻られても怖い。
「ちょっと驚かそうと思って隠れてたんですが・・・どうにも・・こう・・出れなく・・」
タハハ、と笑うその笑顔は、なんだ、悪い人じゃなさそうだ。
「もう、しょうがないなー」
のりちゃんと二人がかりで男を棚からひっぱり出す。
男は棚から出してみると、よくもまぁ棚に収まったなと思う程の長身だった。
ノム君と同じくらい・・・180前後はありそう。
でも、体の線が細く、手足が異常に長い。
元は白色だったと思われるぼろっぼろの白衣を身につけ、銀縁の細いめがねをつけていた。
取りあえず近場にあったkr君の椅子を進め、紅茶を出す。
「お、さんきゅー。あんた、プリーストだね?」
「えぇ、そうですけども?」
どこから出したか解らない櫛で髪をざざっとかきあげ
「おれぁジョンってんだ。職業は同じプリースト。ははーん、アネサンもあれだね?おれが居なくなって寂しくなってプリ追加なんだね?ね?」
「え?ごめ、良く聞いてなかった。もう一回」
「あっはっはー、アネサンの照・れ・屋・さ・ん☆」
どうにも・・・・話に入っていけない・・・・。
このジョンって人がどうやら元幻影の人だってのは解ったんだけれど・・。
あとちょっとズレてるって事も・・・。
とりとめも無く、節操も話の繋がりもなく会話は続いていく。
わらびーと折半で買ったケーキを3人で食べながら。
ごめんよ・・・わらびー・・・・。

話が一段落付き、ケーキも尽きたころ
「それで?今日はどうしたの?」
のりちゃんが本題をジョンに振った。
ジョンは紅茶をずずっと啜り
「今日はね、パーティーをしに帰ったんだよ」
とだけ、告げた。
「パーティー?」
何の前触れも無い言葉に不意に声が出た。
でも、もしかすると自分の知らない行事なのかもしれない。
と、思いのりちゃんを見るが、のりちゃんもちょっと思いつかない感じだ。
「やっぱり、パーティーは皆でやらなくちゃね。3人だと、ちょっと盛り上がらないからさ。」
ジョンはまだ持ったままの紅茶のカップを見ながら、誰に言うでも無くそう言った。
「なにやるにしても予定を空けて置かなくちゃ・・あ、ちょっと待って、メールだ」
予定表の確認の為に電脳を使ったのだろうのりちゃんが後を向く。
しかし、普通メールが届いていたなら直に読むはず・・・。なんで今まで気が付かなかったんだろう。
暗号、秘匿、裏コードのモノでそう云った処理をされるモノがあると聞いたけれど・・。
「パーティーは、大勢で楽しくって、教えたんだ」
え?不思議に思いジョンを見る。今までメインで話かけていたのりちゃんは後を向いたままだ。
じゃあ、僕に?
「だから、さぁ、パーティーをしよう」
違った。もう、その言葉は誰に向ける訳でもなかった。
その目は、だれも写してなかった。
ただの、独り言。
「パーティーの、始まりだ」
その一言で、ジョンの左目から一滴の涙が零れる。
涙?違う!何か・・・黒い・・・液体?
それはゆっくりと机に落ち・・・たように見えたが、机をどういった訳がすり抜けてジョンのいる椅子の足元に落ちて黒い水溜りを作った。
「!?」
すると信じられない事が起きた。
ジョンが椅子ごとその黒い水溜りに沈んでいく!?
「あ・・・ああ・・・・」
突然の事で声が出ない。まだのりちゃんは後を向いたまま。
マズイ、何かが絶対的にマズイ。
両手を思いっきりジョンに伸ばし、掌を向ける。
が、唱えるべき神聖術が思いつかない。
どうすれば・・・どうすれば!
「ジョン!!あなた!!!」
振り返りながらのりちゃんが銀色の糸を飛ばすが、ジョンは既に顔の半分を床に沈めてしまっている。
楽しそうに、顔を歪めて。
のりちゃんの飛ばした銀の糸は、途中にあった机も紅茶のカップも易々と切り裂いたが、肝心のジョンは
「とぷん」
と、黒いミルククラウンを残して床に消えた。
縁側から入る朝の光が、少しだけ赤い、煤けた色に。
室内の空気清浄機が急に回転を強める。
その場の空気が、ジョンの消失と共に、変わった。

石の下には百足がいるもの。

2005-12-28 06:04:54 | Weblog
「ぼく」はいつでも夢を見る。
メルヘンだと、メランコリックだと、笑われても。
「ぼく」はいつでも夢を見る。
ネクタイが似合う歳になっても。
大人のたたずまいができるようになっても。
古い本屋を見ればときめく。
街角でふいに出会った猫にときめく。
古く、重そうな扉の向こう。
目指す道のその向こう、ふいの横道に「ぼく」はときめく。
いくら歳をとったとしても。
背筋を伸ばしてゆっくり道を歩く「私」の心は
何か面白い事は無いかと走り回っている「ぼく」のままだ。

Vol:14 誰でも無い誰かの悪魔の悪夢

2005-12-19 20:58:11 | 妄想具現化
辺り一面真っ白だった。
あれ?なんでだろ。良く・・・わからない。
地平線すら見えない、完全の白。
白しかない世界。白だけの白。
どこまでも、白。
(わたし、何やってるんだろう)
うん?”わたし”?なんか違うような気がする。
”ぼく”?
”おれ”?
どうもしっくりこない。なんだろう。全部が全部当てはまらないような、全部当てはまるような。
良くわからない違和感。
「うち、のりちゃん」
やっぱりしっくりこない。
なんだか、考えるのもダルい。椅子に座りたいなぁ。
思うと、目の前に椅子があった。木製で使い込まれているような飴色の。
どっしりとした、椅子。
座席部分だけがレザーで、これもしんなり柔らかそう。
(丁度いいや)
よいしょ、とその椅子に座る。
座る・・・のだが、どうにも自分の体が無い。
確かに自分はこの椅子に座ろうと思って座ったのだけれど、体は見えない。
手や、足。目で見る、といった概念はあるのだけれど、目視できない。
よく解らない。でもいいや、椅子に座れたのだから。
椅子に座って、ぼぅとしていると目の前に緑色の線が走った。
ゆっくり、塗りつけるように。
さらさらさら。
透明なキャンバスに、透明人間が絵を書いているように、何も無い空間に色や線が走る。
(?)
目の前・・・といっても目はどうにも無いようなのだが。
じゃあ、椅子の前に色鮮やかな絵が出来上がる。
これでどうだ。この表現が限りなく近いと思う。
大きな木、根元に咲く花畑。
その花畑に座る、白い髪をして、白い衣服を着た女の子。
その背後に棒のように立ち尽くす白衣を着た男性。
の、絵。
それが、目の前で動き出した。
初めはコマ送りのようにぎこちなく。
だんだん、滑らかに。
(なんだかわからないけれど・・・)
どうにも椅子から離れるつもりも、目を逸らすつもりも無い自分は、この動画を見る事になりそうだ。
楽しければいいなと思う。
何かは、わからないのだけれど。


「こ・・・こここコンニチワ」
がちがちに固まってしまった声。
ちくしょうっ!こんなつもりじゃなかったんだ!
もっとこう・・スムァートに「おぜうさん」とか言うつもりだったんだ!
それでも彼女は振り返ってしまう。
真紫の瞳。
「うっ・・・」
こう云ってはなんだが、正直女性は苦手だ。
それが例え、人間では無くても。
「・・・・・・・・・・」
自分とそう年齢の違いそうにない白色の女性は何も言わず、真紫の瞳でじっと見る。
うううううぅ、こ・・・言葉が出ない・・・。
昨夜あれ程練習したのに!
『オレの名はジョン。どうだい?良い名前だろう?』
で、ざぁっと髪をかき上げる。
練習したのに!本番でちっとも生かされねぇ!!
「・・・・・・・・・」
興味を失ったのか、白い女性は視線を自分の足元の花に戻そうとする。
マズイ!このままじゃおれヘタレじゃん!!
「お・・・おおおおおオレの名は!」
何とか言葉を捻り出す。ちょっと噛んでしまったけれど、もう構うものか。
ざぁっと髪をかき上げる(順番間違い)
ビッと右手の親指を上げ、白い歯を見せる(予定外)
「ジョン!」
後半は突然恥ずかしくなったので中止(ヘタレた)
ダメダメな自己紹介だった。
昨夜必死で考え、練習した1/10も発揮できなかった。
でもくじけない。男の子だもん!!
「きききキミのななななな名前は!?」
さぁどうだ!と言わんばかりに両手をばっと差し出す。
・・・・・・何やってんだ、オレ。
「・・・・・×××××・・・・」
か細い声が聞こえたのだが、どうにもちゃんと聞き取れなかった。
「ぷ・・ぷりーずあげいん?」
なんかオレ間違ってないか?
「・・×××××」
あ。
急に思い出す。彼女の履歴。
「そ、そうか。キミの名前は・・・オレ達には聞き取れないし、発音も出来ないんだった・・・」
なんだ、知っているんじゃないか。と言わんばかりに、彼女は睨んできた。
「ちょ!ちが!いや、その、ね?ほら、名乗ったから名乗れ的な・・・ね?ちょっと武士テイストの・・・ね?・・ね?」
ね?と首を傾げるのだが、どうにもギコギコとぎこちない音がしているような気がする。膝関節の感覚が無い。ぼ・・棒になっちゃった!?
NO錯乱。
レディーの前で錯乱するなど、我輩の辞書には無い。
粗相はするかもしれんが(ダメ)


もうだめなので死のう。
と思ってがっくりとうな垂れていると、クスクスと笑う声が聞こえた。
「アレイシア」
アレイシア?何それ?オレの左遷先?
クスクスと続く声。
「私の名前はアレイシア」
はっきりと、その言葉は耳に入ってきた。
「あなたのお名前は?」
クスクスと、真紫の瞳が笑っている。
その笑顔にどこか、救われて。
棒だった足も、固まった心も、ほぐれて解けた。
「ジョン。キミの主治医さ」
さっきまでブリキになっちゃったんじゃないかと内心心配していた手は、思った100倍の軽さで彼女に伸ばされた。
彼女からも伸ばされる白い、本当に白い手。
神様が、色を付け忘れたんじゃないかってくらい、白い手。
その手に初めて触れて思った事は

「あたたかい」

だった。

「あなたも、私を解体してしまおうってお医者様?」
ドキリ、とする。
「ちが・・・わないか・・・」
申し訳なくて、顔を下に向ける。
彼女の顔は、見れない。
頭をボリボリと掻く。ちゃんと、白状しなきゃな。
「確かに、キミの瞳なら使える、と言ったのはオレだ」
言葉を搾り出す。辛い。でも、でも・・・ちゃんと言わなきゃ。
姿は見えないけれど、目の前の少女が態度を固くするのが感じられる。
当たり前だよ・・な・・。
「兄貴がさ、目を怪我したんだ」
あぁ、なんか弁解クサイなぁ。
いや、完全に弁解か。
「それでさ、普通の義眼じゃダメだったからさ、魔力のある瞳を捜してた」
背中を汗が伝う。冷たい。
「それで、私の瞳を?」
言葉を引き継がれる。
声には、”あぁ、こいつのせいか”といった棘。
うな垂れた頭をさらにこくん、と揺らして答える。
「いくら兄の為とはいえ」
「そうだよな・・・酷すぎるよな・・・」
今度はこっちが言葉を継ぐ。
少し驚いたような気配。そっか・・オレってそんな冷酷そうに見えるか。
そうだよな。言い出したの、オレだもんな。こんな事言う奴なんて、まともじゃないんだ。
少し自虐的になる。
「困ってるから目ン玉くれって、言われても・・・な」
ハハ、と乾いた笑い声が出る。笑い事じゃ、無いのに。
「・・・・わかっているなら」
「違うんだ!」
がばっと顔を起こす。
そうだ、違うんだ。今日はその事を言いに来たんじゃないんだ!
いや、ちゃんと白状するのも大切なんだけど!
「何が違うの?あなたは私の目を・・・」
「それが違うんだ。もう、キミの目を取ったりなんかしないで、いいんだ」
必死になって説明する。
「錬金術師協会ってとこがあってさ、そこの協力が得れるようになったんだよ!」
顔に”?”の彼女。そりゃそうだ、全然ちゃんとした説明になってない。
「だからさ、錬金術師の人にキミの”瞳”だけを作ってもらうんだよ!」
ね?と首を傾げる。今回もやっぱりギコギコと音がなるようだった。
凝ってるのかな?
ジェスチャーも使う。手をぶんぶん振ってみる。効果あるのかわかんないけど。
「えっ・・・・と・・・つまり?」
くそっ!もどかしいな!
「だから!キミの目を取ったりなんかしなくて良くなったんだ!」
息も絶え絶え、なんとか声にする。
「・・・・痛くない?」
「痛くない!」
「ほんと?」
「ほんと!」
「ほんとに?」
「ほんとに!」
「家に・・・帰れる?」
「今すぐには無理だけれど」
「帰れる?」
「いつか、必ず」
できるだけ、紳士な顔をしたつもりだ。
ちょっとニヤケてたりするかもだけれど。
・・・・・・・・・・・・・。
無反応な彼女。
おかしい。オレ様の予測では
「やったラッキー!→大好きジョン様!→ベッドシーン」
なのだが。
おかしいゲームのやりすぎで脳がツルツルになっている気がしたが、気のせいとゆー事にしておく。
彼女は暫くぽかーんとしたまま。
オレは暫く紳士笑顔(のつもり)のまま。
ヤバイ。そろそろ顔の筋肉がおかしくなってきた。
口元がヒクヒクする。冷や汗の第一波がついにコメカミを通過しただと!?
馬鹿な!防衛隊は何をやってる!
そこ!弾幕薄いぞ!
と、脳内で有名な艦長のコスプレをした自分が砲手のコスプレをした自分に叱咤している。
ええい!いざとなればおかしくなった人のフリでもしてしまえばあるいは・・!
と、人として幾分ヤバ目な策が脳裏をかすめた頃。
「う・・・うぅ・・・」
ぽかーんとしたままの彼女から、嗚咽が聞こえてきた。
「???」
おや?ルートがだいぶ違うような?
真紫の瞳からは、垂れるように、頬を伝う涙。
ちょ・・・えぇ!?
表情もだんだんと変わっていく。
白い顔が、くしゃくしゃに。
「う・・・・うえぇ・・・」
これは・・・何ルートですか?
「うえぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇええんんんん!!」
そうしてついに白い彼女は泣き出した。
大声で。
「えええええええええええ!?」
何故か叫んでしまう。そりゃそうだ、こんなの予想してない!
ついでに言うと練習だってしてない!(錯乱)
「わっ・・・わたっ・・うぐっ・・わたしっ・・ほんっ・・・ほんとはっ・・・・ぐすっ・・・ずず・・・こ・・こわっ・・こわかっ・・怖かった・・・はぁ・・うぐ・・・いつ・・いつっ・・・こ・・ころ・・・ころこ・・」
コロコロ?
いや、まぁギャグは無しの方向で。
泣き声や嗚咽で無茶苦茶聞き取りにくいのだが、あえて訳すると
「私は本当は怖かった。知らない所に連れてこられて、眼をよこせと言う人達。言葉も交わさない、白い服を着た人達。そんな中で、たった一人、家に帰りたかった。」
・・・・・なんか・・・・英語の直訳みたいだけれど、きっとこんな感じ。
もちろん、ちゃんと全部聞き出すのに時間はかかった。
どれくらい?
そうだな、真上にあった太陽が、沈みかけるくらいまで。
でも、こんなのなんて事ない。彼女に、オレが間接的にでもしてしまった事を考えたなら。
オレは、酷い思い違いをしていたと。
夕日を背に、泣き続ける”魔族の”少女を見て思った。

不意にキャンバスは色を変える。

大木の葉は緑から深緑へと。
根元の花畑は、さらに輝かしく。
太陽の日差しは、随分ときびしく。


「ジョーンー?」
ほら、と足元の花を摘んで差し出す彼女。
「んー?」
掛けていた眼鏡のフレームを右人指し指と親指で掴みながら目を細めて花を見る。
知らない花だ・・・。
「アレイシア、この花の名前知ってる?」
ぶんぶんと首を振る彼女。
おれも知らね、と首を振るオレ。
「でも、綺麗だねー」
花の茎を指で摘み、くるくると回している彼女は、とても楽しそうに見える。
本当に・・・楽しければ・・・いいけどな・・。
「ジョン?」
本当は、早く家に帰りたいのだろうと思う。
楽しいはずなんて・・・ないか。
「ジョーンー?どーしたのー?」
おーい、と目の前で手をパタパタと振られる。
ダメだな。おれがこんなんじゃ。
「・・・いや、なんかかっこいいセリフないかなと思ってさ」
「今日の”ジョン語録”?」
「そそ・・・お、思いついた。」
ささっと居住まいを正し、正座するアレイシア。
じーっとこっちを見る・・・無邪気な瞳。
「花は全部美しい!」
ぐっと胸の前で拳なんて握ってみる。決まった。
「ジョン・・・それで付いてくる女はいないと思う・・」
「なぜぇ!?」
クスクスと笑うアレイシア。
最後にぼそぼそっと何か呟いたのだけれど、それは聞き取れなかった。


さっと色を変えるキャンバス。

大木の葉は薄い緑に。
根元の花畑は、少し可憐に。
太陽の光は、ちょっと柔らかく。

風が少し涼しくなってきた。
アレイシア用に実はセーターなんて編んじゃってるオレ紳士?
寒くなる前に完成できればいいと思う。
二ヶ月あれば・・・できる・・だ・・ろ・・。
マフラーになってるかもだが(弱気)
兄ぃが治れば、一番てっとり早いんだけれど。
ちょっと、まだ時間がかかりそうだった。
「あ」
いつものように、アレイシアポイント(アレイシアが好む大木の下)の近くにあるベンチに腰掛けていて、ふと思った。
「うん?」
あんまりにも唐突に声がでてしまったため、気の根元にいるアレイシアがこちらを向く。
「いや、オレ今日が誕生日だったわ」
完全に忘れてた。
いつもは兄貴や幻影の皆と過ごす為、自分が覚えてなくても良かったのだ。
「たんじょうび?」
うん?と首を傾げるアレイシア。
「えぇ?誕生日だよ誕生日。おれが、この世に生まれた日。そんな感じの日って、アレイシア達には無い・・・の?」
まぁ・・・確かに。
魔族に親がいても、魔族が出産するって決まってる訳でもないしな。
ぶんぶん、と縦に頭を振るアレイシア。
「いいか?誕生日ってのは・・・」
色々、ある事ない事吹き込んだ。
友達みんなとパーティーをする事。
ケーキを食べる事。
プレゼントをあげる事。
できるだけ楽しく過ごす事。
ものすっごく楽しく過ごしてもいい事。
そして、楽しく遊んだら「また明日」って解散する事。
オレが誕生日について話している間、アレイシアは目をキラキラさせて聞いていた。
さすがはオレ。話術の天才だったらしい。
一通り話し終えると
「そっかぁ、いいなぁ・・・ジョン・・誕生日あるんだね」
とアレイシアはぽつりと呟く。
そうだよな。魔族に誕生日なんて・・・普通は無いよ・・な。
こーゆー時はあれだろ。ほれ、いつもやってるゲームに良くある定番だろ。
参考するとこ間違えてるとかツッコミは無しな!
「あ・・・明日・・・・」
声がひきつる。さすがにゲームのオマージュは緊張するぜ(パクリでは無い)
「明日を!勝手に!アレイシアの誕生日にする計画発動!展開!終了!」
大声で叫んで気が付いた。終了してどーすんの!?
「えぇ!?やったー!!でもすぐ終了?」
がばーっ!と万歳して、すぐに手を下ろししょんぼりとこっちを見るアレイシア。
この子・・・だんだんノリが良くなってきたな・・・gg
「い、いや!明日を勝手にアレイシアの誕生日にする計画が展開され、無事に終了したって事だ!」
「それは・・・つまり?」
「明日は無事にアレイシアの誕生日DA!!」
やったー!がばーっ!→ベッドシーン
の予想だったのだ・・が・・今回もノーリアクション。
まさか・・いや、やはりと言うべきか・・・。
こんなの通じるの・・ゲームの中だけだよ・・な・・。
がっくり、と頭を垂れる。
現実って厳しい・・明日からどんなツラ下げて・・なんて、しょんぼりしていると唐突に目の前に花。
うな垂れて、真下を向いたオレの目の前に、花。
いつか見たのとは違う、けれど綺麗な、花。
それを支える白い手。
花に沿われた白い腕は、当然アレイシアに繋がっていたのだけれど。
その時のアレイシアの笑顔は、見たことがないくらいに。

「ありがとう」

そう言って、彼女はオレに花のプレゼントと、涙を一滴くれた。


ザッとキャンパスが塗りたくられる。
灰色に。
そこには、大木は無く。
花畑も無く。
太陽すらも無い、灰色のベッドのおかれた、灰色の病室。

白衣の胸ポケットに、昨日もらった花を挿し、両手で抱えきれないくらいの花束を持ってアレイシアの病室を訪ねる。
廊下に差し込む太陽の光はもう茜色。
朝から夕方にまで3件も手術が入っていた。
今日はアレイシアの誕生日だと言うのに。
もう・・・こんな時間。
アレイシアの病室の前で、廊下に差し込む茜色を見る。
そういえば、彼女はよく夕日を見て故郷を思い出していたっけ。
青い空もいいけれど、仄かに朱色がかった故郷の空が懐かしい、と。
あなたにも、見せたい、と。
それだってもうすぐ叶う。
ホムンクルスの実験はそろそろ最終段階。
これが成功されれば・・・!
がちゃり、と両手に花束と希望を持ってドアを開く。
ノックを忘れたが、彼女は気にはしないだろう。
「ごめんアレイシア!今日は朝から・・・」
病室に入ってすぐに頭を下げたから暫く気が付かなかった。
病室に、主がいない事を。



彼女を見つけるにはそれから15分程かかった。
今は、目の前で眠っている。
片目を無くし、息もせずに。

ザザーッ。
キャンバスが灰色と黒色に塗りたくられる。

「あぁ、ジョン。お前がさーあんまりチンタラやってっからさー」
「そうそう、実験動物と仲良くしてどーすんのよ」
「心配すんなって。お前の兄貴には移植完了でありますよジョン隊長」
「こゆ時身内は排除ってなー。ま、あれなら成功だろうから安心しろよ」
「おお、そういやーよ。こいつ、なんかジョンの事呼んでたぜ」
「そーだそーだw”ジョン!助けて!”ってよーwwww化け物のクセによwwww暴れたりとかUZEEEEEwwwww」
「なんかほかに言ってなかったっけw」
「あれだろ?”今日は誕生日がどうたらこうたら”」
「それだwwwwwwwwwwwww」
「化けモンに誕生日とかwwwwwwwww」
「笑いすぎてさ、俺麻酔するの忘れてるwwwwwww」
「ちょwwwだからあんなに叫んでたのなwwwww」
「別に※すんだしいいだろwwww」
「もう※んでるしなwwwwwww」


ばちん。
ゴムが引きちぎられるような音がして、キャンバスは寝ている少女を再度映し出す。
残った左目から走る涙の跡を指で拭う。
彼女が寝ている寝台の周りには、大量のバスタオルを濡らして散らかしたように見える。
人の残骸。

手術室で唯一息をしている男はなにも言わない。
ただ、自分の左目を血に濡れた手で引きずり出し、残った彼女の左目を即興で移植した。
麻酔無しで。
そして呟く。

「帰ろう」



唐突に。
キャンバスは世界の白に溶けて消える。
自分もなんだか・・・白くなっていっているような気が。
あぁ、せっかく動画を見たのに、冒頭の方から忘れていっている。
あれ・・・なんだったのかなぁ?
なんだったんだろう・・・一部すぎて―
楽しくはなかっ―
あ、目がさめ―


「のりちゃんってば!」


Vol:13 希望を諦めない。

2005-12-13 08:06:27 | 妄想具現化
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・」
ボロボロの白衣が走る。
「・・・ぐっ・・・う・・」
所々破れ、返り血が飛び、擦り切れた。
「・・はぁ・・・あ・・・_」
ボロボロの白衣が、日の当らない路地裏を走る。
そこはビルの木漏れ日も無く、本当の路地の裏で。
それは寂しい寂しい、路地の裏。
何かに追われているような、何かを追っているような。
それすら判別の出来ない表情で、彼はひた走る。
目を血走らせ、ボサボサの髪をたなびかせ。
「はぁ・・・あ・・・あははははははは!」
路地裏の先に誰も居ない事を知ってか。
路地裏の後に誰も居ない事を知ってか。
彼は急に笑い出す。哂い出す。
楽しくて楽しくて楽しくて、寂しいように。
「ひひひひひひっ!あははははははははははは!」
フラフラの足取りで走り、笑うものだから
ごりっ。
「!?」
白衣は派手に転倒した。
それも、運が良いのか悪いのか、ゴミの山に向かって。
「・・・・・・・・・・・・」
鼻を突く刺激臭に塗れて、やっと寂しい笑い声は止まった。


なんでこんな事になったのだろう。
知っているけれど思い出したくない。
解っているけれど知らないフリ。
体はボロボロ、いつ倒れてもおかしくない。
とゆーか、今倒れている。
起きれそうにないような気がする。
とゆーかぶっちゃけ起きれない。
「起きなきゃな・・・」
ぼーっと滲む頭で鈍く思考する。
思考?できてる?わからない。
「オーガトゥース、手を貸してくれよ」
ゴミの山に身を埋めたまま、右手をどうにか挙げる。
そこには誰もいない。誰も、居はしない。
「・・・・・・・役に立たねぇな・・・」
眠い。素晴らしく眠い。
自分が今身を預けているのはゴミの山だと云うのに。
それは最高級のベッドのようにも思えてきた。
でも、だめだ。
まだまだまだ、やらなきゃいけない事がある。
だから、起きあがらなければいけない。
誰か、誰か手を―
「ミストルテイン、すまないが起こしてくれないか」
誰も居ない。寂しい寂しい路地裏には、猫の子一匹、居はしない。
「あぁ・・・そうだっけか・・・もう・・・いないんだっ・・・けな?どうだったかな・・・そうだったかな・・・」
ぼすっとゴミの山に右手を戻す。
『ほら、まったく仕方の無い。それでも司祭様ですか?』
『あはは、仕方ないよ。彼はいつも夢見てばっかりの学者様だもの』
頼りにしていた者の楽しそうな幻視。
ちぇ・・・笑ってないで手ぐらい貸せってんだ。
『おいジョン。男なら立て。カマ野郎なら立たなくていいよwwwwww』
おれはあんたみたいに頑丈じゃねぇっつーの。
あー、あ・・・なんか立てそうな気がする。
大事な記憶を希望に変えて。主人公のように立たなきゃな。
ほら、おれって主人公みたいな髪型してるじゃん?
勇者っぽいよな。
だからなにか思い出して、それを力にかえ―
『勇者より蛮族って感じですよ?』
『誰の髪型がアトムみたいだってぇぇぇ!?』
こんなビルの路地裏じゃなくて、本当の木漏れ日の下で過ごした、あの日の幻視。
『あはは』
『次の検査は3割増しで痛くします』
『・・・ごめん』
『いや・・ほら・・・う・・嘘!嘘です!』
右手を宙に。
そこには何も無くて、誰もいないのに。
寂しい路地裏なのに。
「××××ぁ・・・おれがんばるから。絶対がんばるから」
『ジョン、体には気をつけてね』
「大丈夫。こう見えてもおれはしぶといから」
『私の―』
涙が溢れてきた。
血走った目を洗い流すように。目の奥から奥から。
心から。透明な、涙が。
「うっ・・・うぐっ・・はぁ・・うっ・・・うぅ・・」
路地裏の嗚咽。
「ごめんなぁ・・・オーガトゥース・・ミストルテイン・・・社ぉ・・・ごめんなぁ・・ほんと・・・ごめんなぁ・・・」
ぐしぐしと白衣の袖で涙を拭う。
「まだだから、もうちょっとだから・・・うぐっ・・・うぅ・・・おれ・・・がんばるから・・・・××××ぁ・・・おれ・・・がんばってがんばってがんばって」
『ジョン』
一輪の花を目の前に差し出してくれる彼女。
その花を受けとるように、右手を伸ばし白衣は立った。
「がんばって、死ぬから」
掴んだはずの右手になにも無い事を確認して、彼は走りだす。
転がりそうな危なっかしい走り方で。
猫の子一匹いない路地裏を。
寂しく、転がるように走り抜ける。
ただ、想いを叶える為に。
ただ、幕を下ろす為に。

Vol:XX-Moon distortion

2005-12-10 02:22:23 | 妄想具現化
使えない設定資料集公開。
マジで書き始める前に書いてましたw
本当はもっと長いし全員分あるんですが、このブログが10k文字しか書けないから割愛w
読んでもあまり楽しくないかも?(おれの落書きもな・・)

☆世界観。

リアルの現在だと思ってください。
首都である東京が王都プロンテラ東京になっているような感じ。
ちなみに王立国家ではありますが、王は象徴的なモノとなっており、実質は国民が選んだ貴族が国会のようなモノをして国政を決めています。

☆そこに住む人。

これも普通に普通の人が住んでいます。
ただ、生まれ持って特殊な身体能力を有している人間がいるって事で。
それが「騎士」だったり「魔術師」だったり「司祭」だったりします。
例えば「騎士」はすでに肉体の構造が一般の人間と違っています。
とても早く走り、力が強い。怪我や病気から治るのも早い。
もちろん「騎士」の強さにもランクがあります。
「魔術師」と「司祭」は生まれたときその人が持っている資質が重要になってきます。
勉強すれば使える。修行すれば使える。と云ったモノでは無いんですね。
また、こういった先天性の力を保有している者を「能力者」と呼びます。
「能力者」の中の更に5%程は更に特殊な能力を有している事があります。
これをそのまま「特殊能力」と呼びます。
ちなみに、公にはされていません。

☆社会構造

上記した「能力者」は全体の20%程で、社会になんとか溶け込んでいます。
「騎士」はその能力から「王立騎士団」、現在で云う「警察」に入る事が多いです。ちなみに強制ではありません。あくまでその本人が望むのなら、所属が可能になるのです。
また、「騎士団」が能力者を勧誘するのは禁止されています。
他にも「能力者」は社会的に差別される事が多いため、色々な保護条例や罰則が用意されています。
まぁ基本的には適材適所に収まっている、といった所でしょうか?
なお、「能力者」にはエーテルやマナと云われる一般人には無いエネルギーがあり、その香り、感覚は個人で違います。一人として同じものはありません。
そして、それが隠す事ができないので犯罪などに関与した場合は指紋のような扱いとなります。

☆ギルドについて。

基本的に会社と思ってもらっていいと思います。
警察やその他の巨大な組織に組みせず、少数で国からの依頼を受ける。
探偵の少し規模の大きなモノ、みたいな?

☆モンスターは?

はい、いません。ではなく、あんまりいません。
いるのはROで云う「不死・闇・悪魔」系のみです。
それも本来は人間の負の感情(憎悪・嫌悪・嫉妬etc)が生み出すモノ。
これの退治が「能力者」の仕事です。
「騎士団」や他の協会は一般の犯罪も扱う為、手が足りない。
そんな時に動きやすい「ギルド」が使われるんですね。


と、まぁ世界観みたいなモノを書いてみました。
穴だらけで恥ずかしいんですが、そこまで気が回らなくってw
んでは各自の紹介に移りますが、全員分書いていたら結局わからなさそうなので今までに登場した人物&重要人物のみの紹介でっす。

☆登場人物紹介。

☆iwaokun
ギルド「†_幻影騎士団_†」のギルドマスターで、元王立騎士団所属。
ある汚名を着せられて騎士団を除隊され、現在のギルドを立ち上げる。
が、実はその頃設立された「能力者管理委員会」(能管)への移動を秘密裏に行うためのヤラセ。
どの組織にも与さない「能力者」を管理する為にギルドを作った。
能管は公にはされていない組織である。
さらにその裏、本人の心は、そんなのは結局どうでもよく、楽しく遊べる集団が作りたかっただけ、との噂。
特殊能力については不明。あるのでは無いか?といわれているが本人は否定。
なお、多忙な身につき滅多に見ることがない。

☆ウェンリーナー
通称「のりちゃん」
この名以外で呼んでも反応しない場合がある。
幻影騎士団設立当初からおり、現在はハイ・プリースト。
iwaokunが「よし、この辺りを溜まり場にしよう!」と決めた場所でうろうろしていて勧誘された。
自身の正体は、その溜まり場の土地の土地神様。
あんまりにも楽しそうに人間(iwaokun)がうろうろしていた為持てる奇跡の全てを使って人間となった。
以降は普通の人間となりギルドに貢献して楽しんでいる。
なお、溜まり場にいる時は神性が少し戻るため、常人(常能力者)とは一線を越えた力を発揮する。
わらびに姉とみなされていたり。
特殊能力は「The silver」
銀色の液体を糸のように使ったり、布のように使ったりする。
実は本人の血液(エーテル塊?)であり、特殊能力とは違うのだがそう云って誤魔化している。

☆ネッド・スバース
「鋼鉄の司祭」「返り血の司祭」など、忌み名の多い司祭。
荒れていた時分にiwaokunと出会い意気投合。
現在に至る。
本人は「楽しければなんでもいーや」的な思想をしているが、実は心配性で繊細。
ギルド員の「あんまり頼れない」兄貴分である。
特殊能力は「shooting opera」
青ジェムを消費した分だけホーリーライトを同時に撃ち出す事ができる。
その限界数が無いのが恐怖。
最近才女と結婚したらしい。

☆ニレコ
幻影騎士団のムードメイカー的なハイ・プリースト。
表情が豊かで和むのだが、ふらっと何処かに行ったまましばらく帰ってこなかったりする困ったさん。
実は聖罰委員会と云われる堕落したクルセイダー・モンク・プリーストを裁いて周る組織の一員だったりもする。
聖罰名は”祝詞”
対聖属人物に対して絶大な戦闘力を誇っているが、通常の人間にはまったく効かない。
理由は、攻撃の全てが敵対象に対する神聖神経への攻撃であるから。
この神経をもっていない者に対しては無力。
特殊能力は「ハッピーコレクター」
相手の幸運を不幸にすりかえてしまう運命干渉系能力。
発動にエーテルの言霊がいらず、常時発動型。
ただ、本人に自覚がなくても発動してしまう為、いつ能力を使っているのかわからない。
発動条件も曖昧で、相手が自分を幸運とみなした時に即座に発動したりもする。
本人は厄介だとしか思っていない。
ちなみに聖罰としての正体はiwaokun・のりちゃん・わらび・の三人しか知らない。
が、他にも気がついている人がいるかも?
裏幻影”斑鳩の翼”5枚目。

☆ノム3ace
幻影所属のロードナイト。
元王立騎士団第18隊突撃殲滅部所属。あだ名は本名のaceから”盤上のエース”
第18隊の所属であったが、実情は一人きりの部隊。
一人で部隊となる戦力を持つ騎士であったのだが、実は作戦終了時にいつも一人で生き残っていたからと云う理由もある。
その功績と比例して、周囲の目も厳しかった。
”死神”と言われたり”味方殺し”と揶揄される事もしばしばあったが、本人はじっと耐えていた(らしい)。
が、ある日その功績を妬む上級貴族家の騎士に命を賭けた決闘を申し込まれ、相手を「うっかり」殺してしまう。
本来は公式の決闘であり、誰が死んでも問われる事は無いのだが、政治力にモノを言わされ騎士団除隊とされる。
除隊の日、「たまたま超偶然」通りかかったiwaokunにより幻影入り。
現在では戦場での直接指揮を執る事もしばしば。
特殊能力は無し。
ニブル戦役以前に当時の仲間とニブルに向かい瀕死の重傷を負うも様々な「実験」を施され延命。
体の70%を機械化している。
成功率0.数%を生き延び、体の機能を余す事なく使えるのはまさに奇跡。
最大の奇跡である「生命炉」と呼ばれるエーテル塊を胸に収めており、それを運用して攻撃・防御をする。
”槍”とだけ名付けられた攻撃はその際たるモノで、エーテルを収斂して右手から打ち出す。
にーちぇシステムと本人が名付けたエンチャントシステムと同時稼動が可能で、4大属性を”槍”に付与する。
特に火のエンチャントを施した”槍”は、敵命中後に大爆発を起こし、空を赤く染める事から「ラグナロック(神々の黄昏)」と呼ばれ、彼の最大攻撃となる。
もちろん、本人は変な名前を付けられる事を嫌がっている。
裏幻影”斑鳩の羽”の3枚目でもある。

☆御影 司
幻影騎士団所属の退魔士。
卓越した判断能力を持っており、口癖は「ふん」
普段から厳しい事を言う人物ではあるが、その指摘は的を得ている。
他の職業(クラス)の事にも精通しており、知恵袋的な存在でもある。
裏幻影と呼ばれる”斑鳩の羽”の一枚目でもあり、負感情の塊である化け物のBOSSを倒すチームの頭首。
スマックダウンとは幻影入団以前より共に行動し、以心伝心の仲。
特殊能力は「YHVH」
本人はただ”眼”とだけ呼んでいる索敵・哨戒系能力。
敵をスキャンし、能力を測る。
また、一度スキャンした相手の能力を記録し、絶対に忘れる事がない。
マーキングも可能だったり、幻術を見破ったりして結構幅広く使える。

☆スマックダウン(SWEAR)
御影 司の友人で、幻影所属のチャンプ。卓越した格闘能力を有する。
裏幻影”斑鳩の羽”の2枚目で、同じチームの人間以外とはあまり話す事はしない。
その為、正確などが解り難いのだが、悪い人間では無い(らしい)
特殊能力は「五光」
右腕正拳「富岳貫通」
左腕ボディブロウ「退魔無限後退」
右脚直蹴り「畳み縫い」
左脚後ろ回し蹴り「首刎ね」
広域殲滅「士魂」
と、各部の技があり、上から順にコンボする事が可能(順番を入れ替えたコンボは不可能)
「首刎ね」までを受けた対象は生命のあるモノなら死に、物体なら壊れると云うルールがある。
これは相手の強さ(硬さ)に関係の無い運命干渉で、絶対のもの。
ただ、「首刎ね」まで繋げる事は一日に一度の制限を受ける。
最後の「士魂」は自爆。
体内のエーテルを全て爆発に変えて四散する。
どのくらいの破壊力をもっているのかは、本人曰く「死んだ事が無いからわからねー」との事。

☆蹴球(kr)
幻影所属のロードナイト。
ムードメイカーで全然頼れない兄貴分。
よくいなくなり、ひょっこり帰ってくる。
同じロードナイトでもノム3とはまったく違った人格をしており、普段はただの遊び人に見える。
重い話題や深い話になるといつの間にかいなくなっていたり、自分の話題は煙に巻こうとする。
基本的に良い奴で、誰とも仲良くなれるのだが、他人とは一歩退いて接している感あり。
特殊能力は本人曰く「おれの槍はマジすげーよ?見たら死ぬよ?」とばかり言って見せない。
本当は無いと思っている人もいて、故意にそう見せている感もするが、エーテルは存在する為、iwaokunにはバレていたり。
決める所は外さないカッコイイ一面も。
ニレコの元旦那であるらしいが?

☆エレナ
幻影所属のアサシンクロス。
ニブル戦役で両親を亡くし、身寄りがなかったがわらびとへいに拾われ養子となる。
義理母であるへいを本当の母の様に思っており、義理父なぞいないとも思ってたり。
まだ幼く、11歳。
聖職者の義理両親なのだが、薦められた職業は「暗殺者」
デッドを師匠とし、メキメキ育ってアサシンクロスに。
が、師匠の考えで一度も殺人をした事がない。
本人は不服に思ってはいるものの、ほっとしている感もある。
特殊能力は「人形遣い」
特定の空間にハッキングを掛け、中にいる人物を操ったりする空間干渉能力。
現在はアサシンクロスになり、空間断絶まで扱うようになった。
次元そのものを切り裂くこの能力の前には、防御行動自体が意味を成さず、超便利。
が、あまりに危険な能力の為、能力管理委員(能管)から目を付けられている。

☆キル=デス=デッド
幻影所属のアサシン。生粋の殺人鬼で、アサシンになりたてでアサシンギルドを半崩壊にまで導いた事もある。
その件で追っ手を掛けられ、瀕死の重傷を負うも、あるばろーざと運命の出会いを果たし生還。
幻影にはあるばろーざの紹介で所属。
iwaokunの政治力でアサシンギルドから保護されている状態。
エレナの暗殺術師匠。現在は行方不明だが、あるばろーざは心配していない。
特殊能力は「Air」
自身を中心に15m内の空気を無味無臭の即効性致死毒に変える。
本人をして「殺すしか能の無い能力」と謂わしめる程で、仲間がいる場合は使えない。
特殊能力自体を隠していたが、のりちゃんに見破られ白状。以後厳重に封印を言い渡される。
危険度3A能力で、能管に目を付けられているが、iwaokun自体がどうしようとも思っていない。

☆あるばろーざ
幻影所属のプリースト。瀕死のデッドを助け、幻影を紹介した。
おっとりねっとり型の性格をしており、戦場がエレナの次に似合わない。
神聖術よりも薬師みたいな方に才能があり、本人も薬の調合の方が得意。
大変な正直者ではあるのだが、無理をして嘘をつく事がある。
一秒でバレるのは既にお約束となっているが、本人はバレてないと思っている。
実は結構なお嬢様だが、秘密。
特殊能力は無し。
が、あのデッドに付いていける事が特殊能力並に凄い事ではある。

☆無影
幻影所属のWS(ホワイトスミス)
所属していたギルドが解散したおり、iwaokunに勧誘されて幻影に。
女好きを自称しており、手が異常に早く、そのセクハラは「風の如し」と言われるエロ先生。
ギルド間の調整や話し合いが得意で、幻影の外交を勤める。
真面目なノム3とたまに意見の相違があるが、それも詰めて話あっている(らしい)
チャラチャラしているように見えてチャラチャラしている。
過去は全て不明。表情に翳りが見える事が極稀にある。
特殊能力は「ピースブレイカー」
素手で相手と握手をする事により自動発動。魅了のような力があり、これを使われた相手は無影を心底から嫌う事が出来ない。
本人は特殊能力を隠しており、iwaokun・のりちゃんの二人以外に知るものはない。
これも常時発動型で、その為に常に手袋をしている。
また、握手以外の接触でも発動する場合があり、その為に他人の好意を信じられないといった弊害あり。
生涯、真に愛される事は無いと覚悟している。

☆めぐ
幻影騎士団所属のスナイパー。
元王立騎士団11隊付き狙撃大隊第3小隊長。
華やかな経歴を持つも、自身から除隊。理由は不明となってはいるが、本人が零した思いは「殺しすぎた」
現行火器の概念武装が天才的に上手く、得意とする。
騎士団時代、狙撃の精度を上げるために服用した薬物に侵されており、時折幻覚を見る。
それを抑える為に強力な麻薬を使う為、意思の疎通が難しくなる事も。
親友に「悪女」と呼ばれる暗殺者がいるらしいのだが、幻影騎士団で見た事があるものは無し。
本人の幻覚だと思われている。
性格的にはまっとうな人間と変わらないが、薬物の副作用&麻薬によるハイテンションで人格が変わる事あり。
戦場では客観的な意見を述べれる立場にあり、作戦立案時には参加が義務付けられている。
特殊能力は「或いはその様に」
大弓の概念武装で強力な思念矢を飛ばす。
有効距離は3Km。効果範囲は着弾より円形に5M。
効果範囲内にいる生命体は精神をぐちゃぐちゃに掻き混ぜられ夢を見る様に発狂or死ぬ。
なお、魔術攻撃でも、物理攻撃でも無いので防御不可能。避けるしかない。
矢の制限数は無いが、一矢事に自身の精神も磨耗するペナルティあり。
裏幻影”斑鳩の羽”の4枚目でもある。

☆悪女
めぐの親友で幻影騎士団所属のアサシン。が、めぐ以外の誰にも姿を見せる事がない。
iwaokunは「めぐがいるってんならいるんだろ」で入団を承認。面接すらしていない。
多くのギルドメンバーが存在を疑っており、めぐの妄想だとすでに思っている人の方が多い。
実はしっかり実在している。
特殊能力は「世界」
その名の通り世界と一体化する事で自身の存在を無と同じとする。
発動時は何者からも干渉されないが、こちらからも干渉できない。
一度解除するとしばらく(20時間程)使えなくなる。
継続して使い続けると自分の存在そのものが希薄になる、といったペナルティあり。
本人は、それでも良いと思っている。

☆綾波 レイ
元王立聖騎士団第1隊退魔聖十字軍覆滅隊所属。
誉れ高い聖騎士団きってのエリートで、家柄も貴族。
将来は女性初の聖騎士団長かとの噂もあった。
が、ニブル戦役でトラウマを負い除隊。名誉除隊扱いとなり、戦闘司祭に。
戦場には二度と戻るつもりはなかったけれど、iwaokunの熱心な勧誘に折れ幻影入り。
現在は幻影騎士団を脱退。理由等は不明。
特殊能力・不明
裏幻影”斑鳩の翼”6枚目でもあった。

☆バージル
幻影騎士団所属のプリースト。
中肉中背。非常に人当たりの良い好青年。
争い事は取り合えず一度止めて理由を聞こうとしたりする仲介屋気性。
正当性のある争いなら止めない。
ちょっとズレている感があるが、言っている事は的を得ており発言力あり。
家柄が非常に良く、父親は宮廷司祭隊で大司祭を務める。
幻影騎士団への加入に反対されたものの、「何故か」押し切って入隊。
御影司は「あの笑顔の裏には何かある」と踏んでいるが何もなかったりする。
プリーストとしての能力は非の打ち所が無い秀才。
幻影騎士団の所有する砦を監視・管理・防衛する役目を持つ。
特殊能力は「ブルーリンクス」
青い糸のようなもので他人とリンク(精神融合)し、相手の身体能力を数値化して管理できる。
複数の管理が可能で、試した事はないが100人はいけそう(らしい)
なお、自身の精神に「ファイル」と呼ばれる空きをもっており、そこに支援系神聖術をアップロードする事により、リンクした人物にダウンロードさせる事が可能。
つまり、単身で複数の人間の完全同時支援を可能とする。
複数支援の場合、もちろん精神に異常な負荷が掛かるが、笑顔でやってのける。
騎士団・魔術協会・教会・錬金術教会と、色々な機関から引く手数多な能力であるが、本人は能力だけで引き抜かれるのは嫌っている。

☆みるきー
本人は「自分の本名は、みる・みるーき・みる・ど・みーる・みるみる・みるきりす」
だと言っていたりするが長い為「みるきー」と呼ばれる。
14歳前後の少女の姿をしており、白いワンピースと麦藁帽子、赤いパンプスが盛装らしい。
幻影騎士団の溜まり場であった土地の近所に住んでいたため、いつの間にかギルドに溶け込んでいた。
正確にはギルドメンバーでは無いのだが、砦に入るのに必要だからとギルドエンブレムを持っている。
能力その他ほぼ全てが謎で、iwaokunやのりちゃんも正体が掴めない。
いつからいたのかすら誰も覚えておらず、のりゃんは自分の記憶が改竄されている可能性を思案中。
わらびを奴隷と勘違いしているが、何かと引っ張り回しては楽しんでいる模様。

☆ロキ
幻影騎士団所属の魔術師で、現在は怪我の治療の為入院中。
実家が魔術の大家で、その道では有名。
生まれた時には魔術の才能が無く、家の存続を危惧した両親によって「外道」と呼ばれる秘術で魔術を得た。
目を魔術触媒に変えているらしいが、両目ともなのか片目なのかは不明。
魔術アカデミーでは優秀な成績を残すモノの、中等部を卒業と同時に強盗に両親を殺され進学できず。
独学で大魔術にまで至る才能、異常なまでの高速呪文詠唱を持つも一つのギルドにとどまる事は無かった。
が、iwaokunの熱心な勧誘により幻影入り。
ジョンと云うプリーストの弟がおり、仲がいいんだか悪いんだかわからない間柄。
わらびから「弟者」と呼ばれた事から弟扱いに。
本人は仕方なく付き合っている。
特殊能力は不明。高速詠唱がそうなのでは?との声あり。
現在は入院していた病院を抜け出し、行方不明。

☆ジョン
幻影騎士団所属のプリーストで、ロキの実弟。
プリーストでありながらモンスター(負感情の実体化したもの)との共存をレポートとして提出したりして、神学校から追い出されたりした問題人物。
本人は大変な陽気で、真っ黒な逆毛が自慢。
常に白衣を着ており、銀縁の丸めがねをかける。
身長が兄のロキよりも高く、腕が異様に長く、針金のように細い。
幻影にはロキと一緒に入隊するも、砦に篭って研究ばかりしていた。
なんの研究をしていたのかは謎。
実兄を誇りに思っており、現在は主治医も勤める。
現在は病院を抜け出した兄を追うかのように失踪。
彼の監視役であった聖導騎士と退魔士が追うも、これまた行方不明。
特殊能力は不明。
本人は「そんなのあればいいんだけどねー」との事。

☆マドラ・モイライ
元幻影騎士団所属・現ミラージュ頭首。
両手剣騎士のランクを図るための「大太刀検定」で最高ランクの「剣聖」を持つ数少ない女騎士。
現在はロードナイトになっており、そのキレは増すばかり。
が、騎士団には所属せずに今は亡き両親の道場を継ぎ「マドラ流剣術道場」改め「ミラージュ」の道場主を勤める。
口数がとても少なく、感情が表に出るのも稀な為、弟子増員は槍術師範である社が引っ張ってきている。
馬鹿みたいにデカイ両手剣の概念武装を得意とし、剣速は社をして「見えない」との事。
実はこの剣速こそが彼女の特殊能力なのだが、本人はまったく気が付いていない。
特殊能力「始まりと終りの無い剣」
命名は社で、本人は特殊能力は無いと思っている。
高速剣ではあるのだが、ただの高速剣では無く、正体は「空間干渉能力」
剣で斬ろうとしたイメージをそのまま対称空間に実現化させる。
その際の斬撃の強度は「自分の概念装備で切れるもの」なら切れる、といったもの。
つまり、モイモイ本人が斬れると思うものは斬れる、という事。
斬り始めと斬り終わりにまったく時差が無く、「斬れるという現象そのものが空間に現れる」
が、本人は無意識に使っていて(斬ろうとイメージして、対象がイメージ通りに斬れるのだから当然か)
実際の剣の腕は一般人並。尚、概念武装が剣でなくとも、実体武装で木刀を使おうとも、本人が「この得物でも斬れる」と思えば斬れる。
魔術に限りなく近い物理攻撃。
射程範囲は自身を中心に360度全方位。周囲2M。

☆社 (水無月 社)
元幻影騎士団所属・現ミラージュ槍術師範。
本名は「水無月 社」元王立騎士団監査室室長をしていた水無月家の長男。
が、彼が10歳の時に陰謀により水無月家は凋落。それから「水無月」の名を捨て、ただの社と名乗る。
幼い頃に受けた訓練により、戦闘上手であり、若くして名の知れた傭兵として暮らしていたが
iwaokunの勧誘により幻影入り。
入団当初は苗字が無い事に不安や不信を持つメンバーも居たが、本人がいたって陽気な為すぐに溶け込む。
実家の事は数人に話したのみで、基本的には秘密。
単独での任務が得意で、幻影在籍中には斥候として活躍していた。
どうにも一つ所に留まる性分でなかったのか、「おもしろそうな事を見つけた」と幻影を脱退。
ミラージュに入りギルドメンバーに槍を教える。
特殊能力は「three kings」
自身の身体能力を最大3つ同時に強化できる内向型特殊能力。
恒常性維持強化を施した彼は実質限りなく不死に近く、全能力者内でも極めて特殊。
能管(能力管理委員)からは3Xの重要性をして認識されている。
元裏幻影”斑鳩の羽”の10枚目でもあった。

Vol:12 The 13 barrel-3

2005-12-05 20:03:26 | 妄想具現化
全ての行動が静まった土煙の舞う中、滞らない声が聞こえた。
「封落・聖剣奪取」
「崩式・聖盾奪取」
緑髪のクルセイダーが剣を魔剣の背中に立てる。それは体を貫通し、まるで腹から伸びているよう。
金髪の司祭が魔剣の左腕を蹴り壊す。
そうやって、ようやく魔剣は崩れ落ちた。
潮時・・・・だ。
こちらがいくら3人であれ、我々が聖罰である限り通常の能力者には勝てない。
それは揺ぎ無い。
そして、今現れた人物に姿を見せるべきでもない。
総合すると必然的に、それ以外答えがないかのように、今が潮時を知る。
正直、今帰ってしまいたくはない。なにせ、今まで自分に発砲してきていたのは旧知の友人、それを差し向けたであろうのも友人なのだから。
その、理由が知りたかった。その、意味が知りたかった。
それでも、任務は任務。
こなしていかなければ成らない。何が?自分の・・・人生が。
先程天井から降って来た人物をはっきり見た訳では無い。
ただ、あの妙にでかく、冗談のような両手剣は、あの人物以外には思いつかない。
なら、ここは任すべきだと思った。
そう思ったのなら、残る事すら、野暮。
「撤退!」
魔剣を確保した二人に告げ、この部屋に入ると同時に展開したワープポータルを開く。
ジョンには逃げられるのだろうが・・・ここは魔剣の確保でよしとする。
死ぬわけには・・・いかない。
「モイモイ・・後は・・」
そして、自分は光輝くワープポータルに乗り、舞台を降りた。


その姿を、その剣を、おぼろげにでも捉えた時、頭の中はノイズで一杯だった。

『おれは社。あんたは?』
『私の名は・・・××××××××』

ジジッ、ザザー。
頭痛が走る。
クソッ。あまりの頭痛で立ち上がれない。立ち上がれない?
気がつけば自分は膝立ちになっていた。あまりの頭痛に、耐えられなかったのだ。
そして無意識に膝を―
「女!また貴様か!!」
まだかすかに痛む頭を抑えながら立ち上がり銃口を向ける。
何千、何万も繰り返してきた動作で。
そんなに?してきたか?
考えようとすると頭痛が走る。痛い。
「・・・・・・・・」
天井から降って来た女は何も語らずこちらを見る。
泣きそうな瞳で。
そして一言
「・・・・やしろ・・・・」
脳を刺した。
一時間ほど追いかけっこをした女。
あまりにも追跡がなってなかったのでついつい遊んでしまうくらいの、どうしようも無い女。それに追いつかれるなんて、どうかしてる。
トリガーに指を掛け、引き絞る。
『よぉ、あんたを負かしたら1Mって、マジ?』
走るノイズを指先を集中する事で無視する。
バキバキバキバキッ
空間を揺るがすマズルフラッシュ。
が、女の少し手前で全て掻き消える。
そう、あれはあの女の剣結界。入るモノを何一つ許さない、剣の結界。
そんなモノは知らない。見たことも、聞いたことも無い。
けれど、この身はそれを”知って”いた。
あれは、始まりと終りの無い剣だ、と。
正面からの射撃がダメなら、移動する。
家に伝わる独特の足裁きでゆっくり、時に速く、時計回りに。
『へぇ、あんた本当にやるんだな』
『お前も・・見込みがある』
灰色のノイズ。
バキバキッ
隙を窺う為の連射は、瞳も向けられず切り落とされた。
『おれはまぁ、天才だからなw』
『だから・・その・・一緒に道場を教えないかっ!』
『はぁ?』
この角度がダメなら違う角度とスピードを。
ただ、ノイズが走る。この脳を刺すノイズがなければ、もっと・・。
『お前は見込みがある!良い腕をしている!でも、私が教えたらもっと良くなる!だから・・その・・うちの道場に・・』
『待て待て、おれのエンブレム見えねぇか?もう所属してんだよ』
ひゅおん。
目の前を剣結界がかすめる。やはりこれ以上の接近は出来ない。
銃での射撃がダメなら、実剣での攻撃―
『そ・・そうか・・・で、でも!うちに来てくれないか!退屈させないぞ!ほら、門下生もまだいないから何もかも真新しいんだ!』
『門下生0かよ・・・』
灰色に少し色が加わる。痛みは、増した。
スローイングダガーを右手に3本作って、女を中心に今度は逆時計回りに走る。
『ぜ・・ゼロだ!これ以上悪くならないぞ!』
『威張るなよ・・・それにおれの得物は槍だぜ?あんた槍もできるのか?』
『Σ』
剣の柄。究極的に言えば剣を握る指を狙って短剣を発射。
その先を確認せず、発射した地点の逆まで全力移動。
グロックを構える。
『な・・ならお前が師範で槍を教えてもいいっ!』
『趣旨変わってんじゃん・・・』
そのノイズは、だんだんと楽しくなってくる。
こんなに脳を刺し、痛ませるのに。
気持ちは、楽しくなってくる。
『でも道場主は私だっ!』
『威張ってるのか頼んでるのかどっちだよ・・』
バキバキバキッ
斉射3連・・・・また消される。
止まらない。それでは止まらず移動を続ける。
『そ・・そうだった・・その・・やっぱり・・ダメか?』
『上目遣いは辞めろよ・・』
家に伝わる独特の歩方は、エーテルを使って壁に張り付く事も可能とする。
部屋の壁を一気に駆け上がり、天井から狙う。
「つまらなかったからな・・・」
ノイズに釣られて口から出た言葉は、とても、なんて事もない一言だったが心を暖め、しかし脳を刺した。
目の前を唸り通る剣結界。
「・・・・・・・・・・・・・」
女は何も言わない。無性に腹が立つ。
『本当に楽しい?』
『もちろんだ!それには自信があるっ!』
どうやらあの女の能力とは相性が決定的に良くない。
天井から飛び降り、女から跳び退りながら冷静に考える。女は攻めに出ず、その場で向かえ討っている。
攻めて来ないか。ならば、一時退却だ。
答えは直ぐに出た。そう、暗殺者にとって第一は対象の抹殺ではあるが、それが可能で無い時、次の機会を得るために撤退する。
死ななければ、いつか殺せるのだ。
心は撤退を決めた。そう、逃げるのだ。だが。
体が動かない。敵から逃げる事を良しとしない。
ただの一時撤退なのに。ただ逃げるのとは少し意味が違うというのに。
なんだ?この葛藤。
『逃げるな!やしろっ!!』
『馬鹿!撤退だ!戦略的撤退!!』
『それでもだ!!ミラージュは!逃げないぞ!!』
逃げられない。何から?この女から?それとも、自分から?―この、ノイズから―
「クソが!!いい加減!!!!死ね!!!!!!!」
相手と10歩程の距離でグロッグの引き金を引き絞る。
”路地裏の凶刃”
消して見えない、聞こえない、そして必ず敵の死角から襲い掛かる凶刃。
それは放たれた。たったの10歩向こうの女に。
だが、その凶刃はいつまでたっても襲い掛からない。どこからも、刺し込まない。
「隙が無いと云うのか・・・?」
隙が無ければ凶刃は異空間で相手の隙を窺っている。もっているエーテルを消費しつつ。
「っ・・・ッ!」
ならば、もう一発!
指をトリガーに掛ける、と同時に。
ひゅん。
グロックの筒先は空を舞っていた。
そして、その動作を隙と捉えた凶刃が女に襲い掛かる。
まるでそれは、そうさせたかったが故と言わんばかりに返す刀で斬り落とされた。
逃げられない。攻撃が届かない。相手に勝る能力は腐るほどあるのに。
万策が、尽きた。
『あきらめんな!おれが隙間空けるからそこから―』
「・・・・捻じ込め・・・か」
ノイズで誰かが言っていた言葉の先を口にする。
もう、なにがなんだか・・・わからない。
ザッ。
両膝を地に落とす。最後の・・・策とは言えない・・策だ。
激しい頭痛が、演技に拍車を掛ける。
「一体お前は・・・なんなんだ・・・・」
両膝をついてうな垂れて呟く。
本心が半分、演技が半分だが。
「私は・・私の・・・」
馬鹿デカイ両手剣から片手を離して自己紹介を始める女。
ここで、殺す!!
「名前は・・・」
死ね!!!
「”路地裏の殺人鬼”」
筒先が斜めに欠けたグロックを地面から引き摺り起こし、フルバレルアタック。
13発全弾発射。13刃のメッタ刺し!!
バキッ
『やしろ、お前剣はだめだなー』
バキッ
『やしろ、お前のせいでまた弟子が逃げた・・』
バキッ
『やしろ、ちょっと珈琲でも飲みにいかないか?』
バキッ
『やしろ、どうした?風邪か!?馬鹿!帰って寝てろ!』
バキッ
『やしろ、新門下生だ!』
バキッ
『やしろ、私は・・その・・道場主っぽいか?』
バキッ
『やしろ、ちょっと買い出しに行くぞ!』
バキッ
『やしろ、これはどうやって使うんだ?』
バキッ
『やしろ、髭くらい当てて来い・・・』
バキッ
『やしろ、援護だ!援護しろ!』
バキッ
『やしろ、怪我はできるだけ・・その・・するな』
バキッ
『やしろ、私は実は料理が上手い。なんだその目は!』
バキッ
『やしろ、この旗をあそこに立てよう!私達でだぞ?あの砦は、いつか私達が―』

13発の凶刃。13個のノイズ。
どんどん吸い込まれ、どんどん色付いて。
女は一瞬だけ驚愕し、両手剣に手を戻す。
待っても、待っても、どこからも凶刃は舞わなかった。
隙は、無かったのだ。やはり。
今度こそ、万策が尽きた。地面に両膝を立てたまま、目の前の剣が自分の首を刎ねるのを待つ。

「俺の名前は社。水無月 社・・」
『俺の名前は社。苗字は捨てた。』
ノイズが被る。
「女、名は?」
『じゃああんた、名前は?門下生には名乗るもんだぜ』
ノイズが付いて来る。ここから先が知りたくて、知りたくて。
「私の・・私の名前は・・・」
『私?私の名前は、マドラ・・』
泣きそうな顔で、噛み締めるように女は名乗ろうとする。
そんな顔を見ていたら、ノイズがつい、口を出た。
「マ・・ドラ・・」
「やしろっ!」
さっきまで泣きそうだった女の表情がパッと明るくなる。
両手に握られていた馬鹿デカイ剣は既に光子化しつつあった。
薄れていく両手剣。蛍のような光を残して。
そして、こちらに走りよろうとする女の背後に、それは現れた。
13の凶刃。
『私の名は、マドラ・モイライ』
カチッ。
詰まっていた硬貨が何かの拍子で落ちるように、それの何かは落ちた。
「モイ子!!あぶねぇ!!!!!!!」
こっちに向いたモイ子の背に具現化する13の刃。
深く考える暇も、余裕も無かった。
自分の能力でもっとも得意な”脚部強化”のみをギリギリ発現させ、素早くモイ子を巻き込むように庇いこむ。
耳障りな音が何発かは的を外れて地面を跳ねる。何発かは、わからない所に飛んでいった。
静寂。
「・・・・・・・・」
「・・・や・・やしろ?」
胸元に庇った顔の頬を右手で撫でる。親指でりんごを磨くみたいに、ほっぺを磨く。
左耳につけている大振りのイヤリングが胸に当ってちょっと痛い。
よかった。一発も、当たってない。
「・・・なんつーか、役得?」
ぼんっ、と音が聞こえるかと思うかのような赤面化をする相棒。
「ばっ!馬鹿!!ちょ、違う!!」
ちょっと目尻に盛り上がった涙なんて最高だ。
「このっ!あっ!やしろ!!それより!大丈夫!?」
顔を両手で掴まれて、ちょっと背の低い彼女の目の前で固定させられる。
笑っちゃいそうだ。
「あー?うん?いや、大丈夫だけどぐぇっ!」
大丈夫だけど、と言った所で右のボディブローを頂いた。
厳しい道場主だ。
「もうっ!さっきまでやしろ別人みたいで・・なにがなんだか・・」
あんなに遠かった出口を目指す。二人で。
「そうだ、ジョン。ジョンだ。あいつ止めねぇと」
「でも・・・今は一度帰った方が・・・」
珍しく慎重だ。いつもこうならおれも助かるんだけどなぁ。
「いや、直ぐに追った方が良い。ジョン・・何かやらかす気だ」
「でも・・・」
出口を一歩出た所で横を歩く相棒に正面から言ってやる。
「モイ子」
「?」
「ジョンは止めないといけない。何かやらかす前にな。それよりもこれは、あれだぞ?ミラージュが喧嘩売られたんだぞ?」
「う・・・うんっ?そう・・か?そう・・だ。そうだな!」
「んだ。売られた喧嘩は?」
「10倍返し!」
左手で相棒の右肩を頼もしく叩く。
「ならモイ子はチェイス。今までで一番のヤツで頼む。おれは知り合いとかに連絡。」
「えぇ・・逆のがいいんじゃ・・・」
「あー、そうなんだけどなー」
今や”出口”から”入り口”になった扉の少し横に背を預ける。
「ちょっとジョンの洗脳だか幻術が抜けきらなくてな」
苦笑する。
「やしろ・・・一回帰ったほうが・・・」
そんな泣きそうな顔すんなよなー
「あー、もちろん。知り合いに電通(電脳通信)したら一回帰ってプリに体見てもらうぜ」
嫉妬すんなよひひひ!と笑った所で右足にローを食らった。
いってぇ。
「だから、モイ子。ジョンとミラージュのメンツを頼む」
目を見て言う。信頼の目で。
「うん、わかった。大丈夫。了解」
言うや否やくるりとAライン気味のスカートを閃かし、背を向けて走り出す。
こっちを信じきった、無防備な背。
「あーぁ、その背中、一人でなんとかしやがれよー」
社孝行、したい時に社無しってな。
ストンと、足から力が抜けた。
壁にもたれていた背中がズルズルと壁を擦りながら落ちる。
その壁にはべっとりと、血の痕。
「あー、疲れた」
気力を振り絞ってのりちゃんに電通。ささっと自分が見聞きした情報をまとめて送る。
「クリック・・・っと」
送信のマークが灯る。
「は・・・ぁ・・ごほっ」
一発は肺まで達していた。一発だけではないかもしれないけれど。
良く解らない。能力が発動できない。恒常性が維持・・出来ない。
これが、限界。
息が苦しい。喉がゴロゴロする。背中が熱い。
なんだか眠くなって目を擦る。その動作ものろくてもどかしい。
「あー・・・ダッセェ」
擦った瞳が次に捉えたのは、
「うん?あれ?城・・・?いや、白亜の・・砦・・?」
ごほごほっ。
咳き込むが、もう苦しくない。
だって、あの砦にはためく旗は・・・。
「見ろ・・・モイ子・・・あの旗・・・はは・・なんだよ、私達で獲るって・・おれも混ぜろよ・・・でも、やったな・・モイ子・・・砦だ・・俺達の家・・・・・・・俺達の・・・・帰る・・・い・・・え・・・・」

光子化を始めた自分の血で真っ赤になった右手を、真っ白な砦に伸ばす。
もう少し。もう少しで、あの旗に―

誰もいない廃工場を風が吹き抜ける。
壁に大穴の空いた倉庫を。
入り口の扉近くの壁に塗りたくられた真っ赤な色を。
その真下に落ちている、大振りなイヤリングの片割れを。
優しく撫でて。

Vol:11 The 13 barrel-2

2005-12-03 08:01:40 | 妄想具現化
「うおぁ!?」
友人であったはずの人物から射撃を受け、立ち込めた沈黙を破ったのは案外にも間抜けな驚嘆だった。
「!?」
目の端で捕らえる。見れば先程仕留めたと思っていた「オーガトゥース」が起き上がって剣を振るう様が見えた。
ち・・・だからいつも詰めが甘いと・・・。
「こいつっ!意識もねぇクセに!」
金髪の司祭が飛び退ける。
横に凪いだ剣をそのまま袈裟に斬り落とすオーガトゥース。
ガチッ。
しかしその剣は緑髪のクルセイダーに止められる。
「ソロではかなわんっ!”燭台”!!手伝え!」
「シィィィッ!」
二つの聖具と一振りの魔剣は、瞳の端で切り結んだ。

不意に感じる殺気。
キリエの欠片を残しながら右後方に飛び退る。
赤い光弾は少しのキリエにかすってギリギリで体を剃れる。
「女。」
バキバキッ
薄闇を一瞬だけ照らしだす二つのマズルフラッシュ。
射線から15cmだけ体をずらして回避。
クセのような連射・・・致死率の向上・・・!
「ジョン!!社君になにをしたぁぁぁ!!」
相対する男の更に後方、唯一の出入り口に立つ男は、楽しそうに
「なぁんにも?なぁんにもしてないよ。あるべき姿にもどってもらっただけさ!」
逆光で表情は読めない。
微かに見える口の端は・・・不気味な程引きつりあがっていた。
「どこで聞いたか知らぬが」
バキバキッ
弾丸を目で追っていては避けれない。撃つ瞬間だけ銃口の前から移動する。
「人の名を馴れ馴れしく呼ぶものではない」
呼吸をするように引き金を引く。
一体何が・・。
彼は「水無月」を名乗った。とうの昔に捨て去った名を。
彼にとっては忌まわしくもあるその名。
水無月家―。
15年前までは騎士団内における規律と風紀を監視していた上級貴族家。
と言えば聞こえは良いが、ようは騎士団の醜聞を闇から闇に消す為の暗殺一家。
騎士であるものは必ずその名を聞いたと云う。
それは、その誉れからでは無く、その最後に寄って。
水無月は最後・・・・騎士団内にあった最大のタブーに触れ、後ろ盾であった王家によって、炎に落ちた。
一家皆殺しの上、爵位とりあげ領地没収。色々な・・・それこそありとあらゆる罪を着せられ、反逆の一家として、処罰された。
社君はその家の唯一の生き残り。
まだ幼かった彼は、父親の腹心に連れ出され苗字を捨て今まで生きてきた。
少し前まではその腹心だった者の名を使っていた事もある。
ただ
「じぃさんが死んでからは、使うの止めたけどな」
と、寂しそうに彼は自分の過去をこぼしていた。
その彼が水無月を名乗る―。
「ふん、女。しぶといな」
20発目あたりを避けたあたりで彼は銃口を下げた。
「社君・・・わたしがわからない?」
ゆっくり、慎重に聞く。
油断はまったくできない。彼の特殊能力は身体能力の爆発的な向上。
一瞬の後に懐に入られている、なんて事は全然ありえるのだ。
「女。人の名を慣れなれしく呼ぶなと言うたろうに。そもそも貴様なぞ知らん。女子供の相手は好かんが・・・まぁいい。もう飽きた」
再度その銃口を向ける。
ノングロスのグロック。
グロック?彼の得物は槍なのに?
「ふん。水無月の頭首が貧相な銃なのが気になるか?」
はっとして表情を戻す。自分は気取られる程びっくりしていたか。
しかし、それも当然。彼は直接攻撃タイプであった筈なのだ。
「しかしな、人間なんぞ始末するのは」
目を細める。
「これで十分すぎる」
そして呟く。
「”路地裏の凶刃”」
銃口が光・・・らない!?
音もしない!!
彼が先程呟いた言葉にはエーテルを感じた。つまりそれは・・。
特殊能力!
ありえない!!特殊能力は一人につき一つのはず!
そんな事を考えている場合じゃない!今は回避に全力を―。
踏み退った右足に不幸が触る。
ずるり。
そこには何故かワインのボトルが。
「っ!!」
体勢が崩れる。こんな事じゃ避けれない!!
ちゅいん。
体が右後方にズレたままでも相手を睨んでいた左目の前に垂れ下がっていた前髪を何かがかすめて通る。冷たい汗が背を伝う。
パァン。
そしてそれはそのまま何もないコンクリートの床に落ちた。
「は・・・運がいいな。女」
楽しそうだ。
こっちはまったく楽しくもなんともないのだけれど。
それにしても今のは・・・。
「知覚不可能な場所からの射撃。良く避けた。」
銃口は下がらない。
「運もあったが、それでもアレを避けるとは大したものだ」
理解が追いつかない。
背信したジョン。別人のような社君。そしてその能力。
「しかし、おれも運がいい。一日にこんな楽しい女二人に出会えたのだから。」
体勢を立て直す。普通の騎士相手では勝ち目は無い。
なら、逃げなければならないのだけれど、もう一度さっきのを避ける自信は無い。
知覚不可能攻撃・・・。
待て、それより重要の事が今目の前で起こったんじゃなかったか?
「ま、さっき会った女は追跡が鬼ごっこレベルで楽しかっただけだがな。」
女。追跡してきた女。否、重要なのはそこじゃない!
「しかし、客人を接待せねばならん。悪いが死んでもらうぞ」
声に感情が無い。違う。そうじゃない。気がつかなければいけないのはそこじゃない!!!
「次も運で避けて見せるか?」
それだ!

「運の良さを語るが最後」
「つまらん辞世の言葉だ」

「”ハッピーコレクター”」
「”路地裏の凶刃”」

見えない凶刃は、知覚が不可能だと彼は言った。
ならそれは必ず
「能力の相性抜群!」
”幸運の一撃”なのだ。
跳び退るために落とした体勢の上を何かがかすめる。
私は避けた。見えない凶刃を。
そして、彼の不運が舞い降りる。屋根を爆撃で突き破って。
その不幸は、自身の身長より大きな剣を持っていた。