Life is・・・so・・・××××××Gun-Parade-March!!

死ぬから生きよう。ただ・・それだけ。

Vol:21 Gun-Parade-March-5 a split happiness

2006-04-30 17:30:56 | 妄想具現化
夢は、まったく見なかった。



無味無臭の朝、なんてものがあればきっとそれは今みたいな時だろう。目が覚める原因となったものが何一つ無い、完全な自然起床。尤も、今は朝では無いはずだ。今の記憶に至った過程を思い起こす。自分は何故”目覚め”なければならなくなったのか。
それよりも、だ。
それよりも最初にしなければならない事がある。それは、目を開くことだ。
確かに、集中して考え事をするときには目を瞑る。それは視覚情報をカットして、余計な事に頭を使わせない為だ。思考能力を余すところ無く使いたい時、目を瞑って思考する事になる。
だが、今はそんなに悠長に構えている時では無いように思う。理由は、”目覚める”事になった原因を突き止めるに至っていない事なのだが・・・。
まぁいい。とりあえず現状を知らなければまずかろう。
目を開こう。
目を開かなければ。

おかしかった。
何がおかしいって、どうやら自分はいつからか知らない内に目を開いていたようなのだ。目蓋が下りて、また上がる感覚がある。筋肉の動きを感じられる。
なのにもかかわらず、世界はいまだ目を閉じた時のように真っ暗だった。一応、体の感覚が麻痺している可能性を考えて左手を顔の前まで持ってくる動きをする。
左腕はまったく問題なく、顔の前まで持ち上がった。はずだ。
見えないからわからないのだけれど、自分の腕の感覚は完璧にある。腕はそこにある。
でも、見えない。仰向けに寝ているはずなのに、空も何も。
左手を顔に近付ける。まったく見えない。もしかすると自分はもう死んでしまっているのではないだろうか?
中指がつい、と眉間に触れた。どうやら、先程の考えは思い過ごしのようであった。
安堵したのも束の間、そんなに目の前にあるはずの手の平が見えない。
つつつ、とそのまま指を滑らすと左手の人差し指が眉毛に触れる感触。中指は丁度両眉の間、鼻筋の上だ。
今自分の視界は左手の手の平によって制限されている。のにも関わらず、やはり視界は左手を上げる前とまったく変わらない。
そのままさらに左手を動かす。人差し指が目蓋の縁、左目の眼球寸前まで降りる。
そのまま、左目に触れてみた。
微かな違和感と共に左手の人差し指が眼球に触れる感触がした。
目は、開いていた。

「あぁ、暗かったか。ごめんよ」
突然声が聞こえた。その声はどこかで聞いたことがある・・・なんてレベルでは無く、そう・・・旧知の声。
耳元で普通に喋られたようでもあり、遠くから聞こえてきたようでもある、不思議な声。方向は・・・わからない。
「光を」
声の主がそう言うと、天井だか空だかわからない・・・とにかく頭の上から光が射した。
一組の少し大振な丸机と、二つの椅子。どちらも木製で、なんだか酷く暖かく感じた。
「”光あれ、するとそこに光があった”か。かはは、神みてぇだろ?」
自分から見て奥の椅子には、針金を思わせる痩身の男が座っていて、真っ赤に充血した目でこちらを見ながら両手を大仰に広げて哂った。
そのボロボロの白衣、その天を突くような髪、その痩身、その人を食ったような哂い方。
自分には覚えがあった。
「ジョン・・・・」
またの名を”白谷の悪魔”
悪魔は名前を呼ばれると、にっこりと微笑んだ。


「ジョン・・・ここは?」
促されるままに椅子に座ってジョンと正対する。
丸机の上にはスコッチと、適当に割ったと思われる氷が一つ入った透明なガラスコップが二つ。四角い銀色の灰皿が一つだけ乗っている。
「まぁまぁ、とりあえず一杯飲みねぇ」
ジョンは質問には答えず、おれのコップにスコッチのビンを傾ける。
「あぁ・・・悪いね」
そう言いながら手に持ったコップを見てぎょっとする。
中に注がれたスコッチは、真っ青だったからだ。
「なんだ・・・・?青色一号?」
つい最近発売されて少しだけ話題になった飲み物に使われていた着色料。発がん性物質を含むらしい。
よぼどマヌケな声を出してしまったらしい。
ジョンは一瞬だけ真顔になり、それから無邪気に笑った。
「かはははははははw」
「なんだよぅ」
もしかすると、今この飲み物は流行っているのかもしれないな、と思った。
知らなかった事を自然と恥じて、憮然とした声を出してしまう。
ジョンはまだ顔に微笑を浮かべたまま、自分のコップにも青色の液体を注ぐ。
「いやいやwそっか・・・わらにぃにはそう見えるのか・・・」
「・・・?」
「ほい、これでどう?」
ぴっとおれのコップを人差し指でジョンが指す。つられてコップを見ると、液体は琥珀色に変わっていた。
「おおおお!?」
「じょんずまーじーっく!かははははw」
コップを手に取り、上から注ぐ光に透かしてみる。液体は綺麗な琥珀色だった。
「これ・・・飲めるんだろうな・・・・」
「大丈夫だってw」
くふふ、と笑いを零しながらジョンは毒見をするように一口飲む。
「ほら、なんともないw」
また大仰に両腕を開いて微笑む。
それをジト目で睨んで、やっと一口目を飲む事にした。

コップは一度空になり、タバコは3本目。
いつも饒舌なジョンは、今日に限って聞き手に周りゆっくりとコップを傾けている。
話題はなんてことない雑談なのだが、それをとても楽しい話のように聞くジョン。
なんだか・・・不気味だった。
「あ、そうだ」
思い出した。真っ暗な部屋や色の変わるお酒、ジョンの奇妙な態度ですっかり後回しになっていた事がある。
「弟者は?弟者はどこだよ」
そう、おれは弟者に連れてこられたんだ。
異様に冷えた手の平の温度が記憶に蘇る。しかし、その手を取ってから目覚めるまでの記憶がどうやっても思い出せなかった。
ジョンは目を瞑り眉間に皺を寄せ
「あー・・・今はちょっと出てるんだ」
と言ってそのままコップの中身をまた一口飲む。
「弟者・・・怪我がまだ良くないんじゃないか?体温が低かったし・・何よりなんか苦しそうだった」
いつもちょっと猫背気味ではあった弟者だけれど、あの手を差し伸べてきた時は更に前屈みで・・そう、腹を抱えているようにも見えた。
「術後の経過は完璧さ、それは保障するよ」
ジョンはまた元の笑顔になってじっとこちらを見ている。
なんだか、観察されているようで気味が悪い。
「でも・・・顔色があまり・・・」
そこまで言った所で、ジョンは今までの笑顔をぐらっと崩し、眉を八の字にして「ハァー」
と長いため息を付いた。
「ジョン?」
「いつもいつも”弟者弟者”ってほんとにもう・・・過保護っつーかなんつーか・・」
がたんっ。
ジョンはそう言っていきなり席を立ち、おれの横を通り背中側に周って立ち止まる。
「はいちゅーもーく!」
どこか能天気な声に、振り向く。
それを見て、持っていたコップは地面に落ちて割れてしまった。


「・・・・なんだこれ?」
ジョンの声に振り返った目の前に、つい一瞬前までは存在しなかった風景が広がっている。
赤土の荒野に立つ、白亜の砦。所々から煙や爆発を纏っていて、一目で戦闘中だとわかる。
視点は上空、砦を空から斜めに見下ろしたような感じ。
砦の周りには黒い黒い点が大量に浮かんでおり、それがどうやら砦に対する攻撃勢力らしかった。
空中の攻め手が10程砦に滑空していく。一筋の光が一瞬だけ瞬き、滑空していった攻め手は盛大な爆発に巻き込まれ塵に変わる。砦の屋根には射手がいたのだ。
次に滑空を開始しようとしていた攻め手が、その爆発に怯み少しだけ後退。
余程強力な射手らしい。雑魚だったのかもしれないが、10もの目標を一撃で焼き払うなど並の実力では無い。
一目射手を見ようと目を凝らす。
その前に気がつくべきだった。
あの赤土に立つ砦が、どこか見覚えがある、と。
射手はノム3だった。


「ジョン!!!」
がたりと大きな音と立てて椅子から立ち上がる。
「いやー・・・かははははw」
ジョンは画面に向かって右側に針金みたいな腕を組んで立って哂っていた。
「これは・・・リアルタイム?」
もしかすると、ジョンが作った映像かもしれない。そうあって、欲しかった。
「かはは・・・もちろん」
「なら早く助けに行かないと!!!」
画面の中のノム3はかなり辛そうだった。周りに支援する仲間も見えない。援護も無い。あの大量の敵を相手に、屋根で1人きりだった。
「あー・・・いや、それは困る」
ジョンは腕組みをしたまま
「だって、これはおれがしてるようなモンだから」
そう言って、また「かははw」と哂った。


「え・・・・?ええ?」
今、ジョンはなんて・・・・?
「だから、これはおれがやってんの、かははははw」
ジョンの楽しくて仕方ないみたいな表情に比べて、今の自分の顔はどうなっているのだろうか?かなりのマヌケ面になっているのは間違いないのだろうが。
喉の奥がひりひりする。膝の裏や腰がぞっとする。
「だって・・・ジョン・・・ノム君1人だぜ?」
考えがまとまらずよくわからない事が口から漏れる。
「いやー、あの砦には・・えーーと・・・ノム君にバージル君にkr君にニレちゃんにめぐーに悪女ちゃんに司っぴにすまっぴに無ちゃんにのりちゃんがいるぜぃ」
「みんなを・・・どうするつもり・・なんだ?」
脳はまだよく理解していない。よく解っていない。
だって、ジョンだ。弟者の実弟。弟者を助ける為に日夜研究を続けていた。弟者が元気だった頃は、力を合わせて戦いもした。
みんなで馬鹿話をした。楽しかった。
ジョンだ。そのジョンが敵だと云う事を、脳は理解できていない。
「いや、皆殺しにしようかなって、かははははw」
苦笑、とも取れる笑顔に向けて刃が走る。
脳は理解できなくても、体は反応してしまっていたらしい。
「かははwこりゃあなんだい?わらにぃ」
剣先をぴんっと人差し指で弾いて哂う。
「や・・・止めるんだ」
どうしても、そのまま剣を突き立てれずに喉元で刃は止まる。
おれは気まずい事この上なく、情けない事にジョンの顔を見れないまま俯いて声を絞り出した。
「かはははははっw止めなきゃどうすんだ?ええ?髭でも剃ってくれちゃうの?ww」
かはは、かはは、と悪魔は身を捩って哂う哂う。
「脅しじゃないぞ!」
言ってから”それはチンピラのセリフだ”と軍曹に言われた事を思い出す。
”抜いたら斬れ”とも。
悪魔は、左目に浮かんだ涙をひぃひぃ言いながら指で掬い
「あー・・・笑った笑ったwわらにぃ殺すつもりかよ」
と言って持っていたボトルを口に運ぶ。
(あんなもの、持ってたっけ?)
的外れな考えが脳裏をよぎったとき、ジョンの姿が一際大きく照らされた。
「!?」
巨大な画面に映されていた砦に、変化が起きたのだ。
そこには、天を貫くような大きな火柱が一本。
徐々に火柱は細くなり、ただの光になって消える。そこに現れたのは二人の友人。
1人は体の殆どを機械化した幻影最強の騎士。
1人は弟と呼び、自分の失態で廃人にしてしまった黒衣の魔術師。
魔術師は宙に浮き、騎士は砦の屋根。
煤けた空を挟んで睨みあう。
魔術師は狂ったように微笑み、騎士は苦虫を噛み潰したように顰めた。
「弟者!ノム3!!」
ジョンを片手で払いのけ、巨大な画面に張り付く。
画面はまるでTVのブラウン管のように冷たく、硬かった。
あんなに顔色が悪かった弟者の顔には生気が満ち、自身の周りに黒くて歪な刃をいくつも漂わせる。
いつも不機嫌そうなノム3は、その顔をいつもの二倍くらいに顰めて右の手の平を宙に翳す。
先程の火柱は、宣戦布告だったと知った。

「ああ・・・あ・・・・」
目の前、と言えば語弊があるかもしれないがそれはまさしく目の前で起きた。
戦いの火蓋。
弟者は空中に漂っていた黒い捩れた刃をノム3に撃ち下ろす。
ノム3はそれを一つ一つ狙い撃って、その隙間から弟者を射殺そうとする。
衝突する二人のエーテルで、画面はときおり真っ白になるほど。
至近距離で撃ち落した為に黒刃の破片がノム3の頬を裂く。
撃ち落しきれずに弾幕を抜けてきたエーテルの槍が弟者のローブの端に穴を空ける。
手加減なんて、そこには欠片だってなかった。
「弟者・・・やめろよ・・ノム3も・・やめ・・・」
喉がひくついて大きな声が出ない。まぁ、TV画面に大声出しても意味はないのだけれど。
「いやぁ、聞こえててもアレは止めねぇよwかはははははw」
イラつく笑い声だった。しかも”アレ”?”アレ”ってなんだ?
激しい弾幕の張り合いは、このままずーっと続くかと思えた。それ程両者の実力は伯仲していた。
が、それを塗り替える出来事が起きる。
いきなり弟者の体に3つの穴が開いたのだ。
「弟者!!!」
致命傷だ。この離れた視点の画面ですら、弟者の胸に空いた穴から向こうの空が見える。
弟者は胸に空いた穴を左手で押さえてゆっくりと・・・・落ちてはこなかった。
ただ、キッと砦を睨む。
「あー?なんか居たかな?」
ちょっと視点変更っと、とジョンが言い、手を画面に翳すと弟者の背後からの視点に切り替わる。
視線の先にいたのは・・・
「あぁ、めぐちゃんかー忘れてたwwww」
パンパンと手を叩き、納得したと言わんばかりのジョン。
そこには確かに、自身より長大な対戦車ライフルを三脚で支え、それを2Fの窓枠から突き出すように構えためぐちゃんがいた。
その表情は能面のように硬い。戦闘モードになっているのが一目で見て取れる。
ノム3に援軍だ!
これで2対1。
「めぐちゃ・・・」
その援軍の名を呼ぼうとした時、弟者に変化があった。
両手を空に向けて挙げ、また黒い刃を生み出す。
今までと違ったのは、その黒い刃の大きさがノム3と撃ち合っていた時のモノとくらべて10倍程大きかった事だ。
めぐちゃんを睨む弟者。
射殺そうと雷撃の荒らしを弟者に降り注ぐめぐちゃん。
弟者は無数の穴を胸や腕に開けられているのにも関わらず、まったくの無表情で振り上げた両手を
「めぐちゃんにげ―」
下ろした。

砦に黒くて尖った何かが突き刺さっている。
2Fの一つの部屋をそのまま抉り潰すように。
「はい、ごしゅーしょーさまだ。かはははwあそこに居た人は死にました。でっどえーんど!!!王大人死亡確認ってなwwwwかはははははw」
ぱちぱちぱちと拍手が聞こえる。手を打っているのはもちろん、悪魔。
「ジョン!!!なんでだ!!!!」
画面を背に、悪魔と向き合う。
悪魔は「理由?うーん」と唸り、腕を組んで考えだした。
「なんでこんな!!・・・こんな酷いこと・・・」
右手に血が滲む程、剣を握り締める。
ジョンは”あそこに居た人は死にました”と言った。あそこに居た人・・・めぐちゃん・・・・。
「あー・・・うーん・・・」
あーでも無いこーでも無い、と頭を捻るジョン。
突然その頭がぐぃと上がり、悪魔はその理由を言った。
「楽しそうだと思ったから?」
腕の一本くらいもぎ取ってやろうと、剣をジョンに振りかざした。


Vol:-- The NO Number-2

2006-04-23 17:53:33 | 妄想具現化
緑がまだ多く茂る丘に、一つの建造物がある。
建造物、と遠まわしに言ったが実際は唯の砦だ。コンクリートで出来た3階建ての、すこし大振りな砦。
最近流行りのカラフルな壁や、艶のある屋根なんてものとはまったく縁遠い、まるでサイコロを三つ積み上げただけの様な無骨な砦。
窓は狙撃に対する為か殆ど無く、部屋が丸ごとトーチカか砲台にでもなってしまったような外観が目を引く。
訂正しよう。その砦の外観は、大振りのサイコロ3つ積みに爪楊枝を何本も適当に刺したような不出来なおもちゃの様。
そのおもちゃの屋上に一組の男女が居た。
一人はまるで燃えるような赤髪を適当に後で束ね、さらに燃えるような赤いマントを身に纏った男。
一人は白いシャツにグレーのタイトスカート。夏場の向日葵を連想させるような金髪を、さらに輝かしい金色の鈴の付いた髪留めで結った女。
「これぁどう思う?」
男は視線を荒野に向けたまま、口に咥えたタバコの煙を吐き出しながら気だるそうに言った。
そう、男の立つ砦から西は完全な荒野だった。
砦から東はまだまだ緑の映える大地にも関わらず、その砦の西は完全な荒野・・もとい、戦場。
所々にもう古くなってしまった塹壕や、それごと抉ったようなクレーターが目立つ。
それ以外は、見渡す限りの荒野。視界を唯一塞いでいる約10km離れた山ですら、丸坊主の有様。
彼等は知っている。その山の向こうも、また荒野だと。
男の口が咥えていたタバコから灰が落ちた。
いつまでたっても返事の無い相方を、特に気にする訳でも無く見ると、横に起つ女もまた同じように荒野を見ていた。
少し砂の混じった風を真正面から受け、髪留めの鈴が『りん』と鳴る。
その瞳からは、強い意志が感じられた。
”なんか考え事かいな”そう思い、話しかけるのを止めてまた荒野に振り返った時、返事は返った。
「第一防衛線があるにも関わらず、第二防衛線であるこの砦に敵が近づいて来ている事について?」
男はびっくりして相方のいる横を見ようと思ったが、なんとなく彼女はそれを望んではいないように思えたので前を向いたまま答える。
「あぁ、その事」
第一防衛線は約10km離れた山の向こう、少し行った所に展開している。
その更に20km先にある、別名”ゼロ・クレーター”と呼ばれるMOBの吹き溜まりを抑える為に。

”ゼロ・クレーター”正式名称は『特殊次元歪曲穴』又は単純に『侵攻穴』。
発生は2年程前。正確な日時は不明。王都プロンテラ東京から”北東”約70kmの一応ながら小さな町があった場所。
それが2年前のある日突然、底の見えない穴の空いた大きなクレーターになってしまった。
王都はそれの原因究明の為、調査チームを派遣。途中から交通機関が使えなかった事もあり、到着に2日を要した。
第一次調査チームは”ゼロ・クレーター”到着と共に全滅。派遣された調査チームは皆、一般の科学者だった。
原因は、”ゼロ・クレーター”のあたり一面に立ち込めるエーテルが通常の50倍近い濃度を持っていた事。
そんな濃度のエーテル域で、なんの装備も無い人間は1時間と生きていられない。
即座に第二次調査チームが編成、派遣された。
まったくの音沙汰無く返信が絶えた第一次調査チームが、何者かの襲撃を受けた可能性を考慮し第二次調査チームには軍と魔術協会から能力者が数名同行する事になった。(当時の教会は魔術協会と折り合いが付いていなかった為に同行を見送り)
この時斥候を勤めていた騎士がエーテル量の異常濃度に気が付き、第二次調査チームの全滅は防がれた。(この時の騎士の通信記録”まるで・・・瘴気のような感じだった”からエーテルの異常濃度は『瘴気』と呼ばれるようになる)
第二次研究チームは軍が搬送した特殊装備を受け取り、ついに”ゼロ・クレーター”の調査が始まる。
調査が始まって直に解った事がある。
それは、このクレーター内部がどうやら異次元であるらしい、という事。
”あるらしい”とされているのは、確証を得る為の方法が無かったからである。
魔術協会より派遣された魔術師は、その穴の底を目掛けて索敵用の指向性エーテル・ソナーを放った。
空気中のエーテルを伝わせ、自分の魔力を波紋として投げかけたのだ。
そうすれば、いつか底に伝わりその波紋はまた術者に返ってくる。
しかし、その波紋はいつまでたっても返っては来なかった。
術後1時間で唐突に消滅したのだ。それはつまり、この穴の先にエーテルが無い事を告げていた。
もっと解り易く言うと、エーテルが無い=空気が無いと言う事だ。
穴は物理的に空いているのにも関わらず、穴の先には空気の無い空間がある。
調査チームはその事実を受け、翌日には穴に入って調べる事を決定した。
翌日、王都プロンテラ東京にはなんの報告も届かなかった。
事態を重く見た王都は第三次調査チームを編成派遣。
そのチームには軍から騎士が半ダース、魔術協会から魔術師が3人同行する事になった。
また移動に3日を費やし、第三次調査チームが”ゼロ・クレーター”に到着したのは夕暮れ時。
元から盆地であった土地を、更に抉るように空いたクレーターの脇にある第二次調査チームのテントはバラバラにされた調査員や能力者達の血や肉で赤黒く変色していたと云う。
その余りの凄惨さから、一度王都に帰還する事が決定。
能力者の遺体は捨て置き、調査員の遺体(主に頭部がある)をパッキングしている最中にそれは起こった。
パッキング作業を護衛していた一人の騎士がゾンビと思われるMOBに接敵、それを斬り捨てた。
ゾンビはこの世界ではとてもありふれたMOB(モンスター)である。
MOBが発生する条件として、人間の闇因子(憎悪、妬み、嫉み等人間の暗部的心情)があるのだが、通常はある一定の量がエーテルと混ざり、溜まって初めて形となる。
だが、”入れ物”があるのならもっと少量の闇因子でMOBはMOBとして起動する。その”入れ物”が人間の遺体だ。
法儀礼を済ましていない人間の遺体に、闇因子が宿り、そして動き出す。しかし少量の闇因子で構成されているだけに、その能力はとても小さなモノとなっている。
精々、”入れ物”である遺体が破損し物理的に動けなくなるまで人間や動物を襲うくらいのもの。
それは確かに能力者では無い一般人なら脅威ではあるのだが、銃器で武装した一般人で倒せない事は無い程度。
パッキング現場を護衛していた騎士が倒したゾンビも、やはり特別強くも無く一刀で切り捨てられた。
しかし、彼は魔術師に「サイトをしてくれ。暗くて敵が見え難い」と言った。
夕暮れ時とは言え、まだ日は沈んでいない。世界は茜色に染まり、まだまだ暗いとは言えない時間なのに、だ。
この頃、騎士達は各自で戦闘態勢を強化する。
遺体のパッキング作業も終わり、第二次調査チームが建てたテントを後にしようとした時、またゾンビが現れた。調査対象である”ゼロ・クレーター”から。
この時は魔術師が目視と同時にファイヤーボールで焼き払った。
そうして、何も気が付かないまま第三次調査チームは最悪の撤退戦を始める事となる。
敵はゾンビでは無かった。確かに、ゾンビの外見はしていた。実力も彼等がよく知っているゾンビそのモノだった。
だが、それはやはりゾンビでは無かったのだ。
元は盆地でも、紛いなりにも街があった”ゼロ・クレーター”には、もちろん交通機関が通っていた。
森の中を走る電車が一本だけ。他の交通手段は徒歩による山越え森越えだけ。
その電車を通す為の線路は、森に入ってすぐに破壊されていた。第一次調査チームも第二次調査チームも、もちろん第三次調査チームもその破壊された線路の上を歩いて来たのだ。
撤退する為に線路の上を戻る第三次調査チームの前に、今度はジャックが現れる。
もちろん、同行していた騎士が一刀に伏せた。敵の死骸は塵に戻る。騎士は怒鳴った。
「サイトをしろと言ったろ!暗くて敵が見え難い!」
その騎士には、ジャックが輪郭しか見えず、真っ暗に見えた。森に入って夕暮れ時の日がまったく届かなくなったにも関わらず、魔術師がサイトをするのをサボったと思ったのだ。
だが
「サイトしていますが・・・」
一人の魔術師が弱弱しく怒鳴った騎士に答える。
そう、彼は森に入った事で視界が悪くなるのを懸念して一人でサイトをしていたのだ。
先頭に立つ、騎士の真後ろで。
「え・・・・」
一瞬の静寂の後、随分と暗くなった森のあちらこちらから、MOBが襲ってきた。
ウィスパーに見えるモノ、レイスに見えるモノ、ゾンビプリズナーに見えるモノ、全部何かに見える、モノ。
騎士も魔術師も何がなんだかわからないままに必死で応戦した。
調査員達も銃器を手に取り、応戦した。
その中で一人、また一人と命を落とし始める。
騎士が3人死に、魔術師が1人死に、調査員が3人死んだ時やっと森の出口に辿りついた。
戦って休んでを繰り返し、来たときよりも時間を掛け、夜通しの強行軍をし、やっと線路がぐちゃぐちゃに破壊されている場所まで帰って来れた。
つまり、すぐそこに森の出口がある。
よく見れば、今まで薄暗かった森にも光が差し込んできている。出口は、すぐそこなのだ。
安堵した第三次調査チームは、その光に照らされた最悪の現実を見る。
森の出口で待っていたMOBは・・・・ドッペルゲンガー。
王都プロンテラ東京に辿りつけた第三次調査チームは4人。騎士1人と魔術師1人、調査員が2人(一名は重症を負っており、その傷が原因で他界)
その4人に対する聴取と、第二次調査チームの遺体から情報を引き出し、王都は対策を建てた。
森を焼き払い、砦を設けた。
”ゼロ・クレーター”に一番近い場所に『第一防衛線』、一つ山を挟んだ所に『第二防衛線』、王都外周防壁から少し離れた場所に『第三防衛線』
数度の襲撃により、敵の目的はどうやら”南西”にあるものと推測。
敵はまっすぐに”南西”王都プロンテラに向かってきていた。
敵の目的は不明。敵の総数も不明。敵の正体も、すぐに塵になる為に不明。王都を灰にする為、無限に異次元から湧いてきている、と噂されている。

その戦いが始まって、もう2年になる。
一度は『第一防衛線』が全滅し、『第二防衛線』まで敵が雪崩れ込んで来た事もあった。目の前に広がる荒野や、塹壕、クレーターがそれを証明している。
だが、今は・・・


「第一防衛線にはぽこちゃんもレイちゃんもいるんだ。あいつらがなんの連絡もしねぇままやられちまうなんて、そりゃありえねぇ」
根元までいつのまにか灰になったタバコをプッと吹き捨て、脚で磨り潰す。
「・・・・私はその二人をよく知らないから、なんとも言えないわねぇ」
髪が荒野の風に揺られ、髪留めの鈴がりんとまた小さく鳴った。
男はもうとっくに消えてしまったタバコを苛立たしい表情を隠さずに潰し続ける。
「連絡がねぇのも、できねぇのも、ECM系(電子的妨害)のMOBのせいだ。そうに決まってる!」
MOBの中には、その一体の空間にあるエーテルを混沌とさせ、こちらの情報を妨害してくるモノもいる。
「そうだと・・・いいのだけれど」
金鈴の女は、そう言って西側の丘の下で塹壕待機や兵器搬送をしている兵士を見た。
「そろそろ目視可能な所まで来るな・・・N.O.A!!」
ボンッと小さな音を立て、男の横に全身を炎で包んだ女性が現れる。
否、その女性は炎そのモノだった。
見た目こそは、人であるものの、その潜在魔力は計り知れない。人から魔法に転身した、奇跡。
「どっちにしろ生かしちゃおかねぇ・・・見つけ次第焼き払え!」
「I♪」
炎の女性は、そう楽しそうに言って荒野に飛んだ。
「いつ見てもびっくり便利よねぇ」
「ま、使う魔力はおれから引っ張り出されるんだけどな」
空を飛んで行く少女の後姿を満足そうに見ながら、然程まんざらでも無いように彼は言った。
「てっちゃんは?」
てっちゃんと呼ばれた金鈴の女性は、パチンと指を鳴らす。
同時に、今まではただの荒野だった場所に色とりどりの魔方陣が大量に現れた。
「おぉーこりゃまた仕込んだなぁおい」
「まぁねぇ、こんな見渡しの良い場所で罠を仕掛けない手は無いでしょ?」
「ちげぇねぇ」
赤髪の男は「ニシシ」と笑った。
「でもN.O.Aちゃん便利だなぁ。猿君今度貸してよ」
「だっ・・ダメだ!NOAはお・・おおおおれが・・・面倒・・そう!面倒見なきゃいかんからっ!」
「えー、別に魔力注ぐだけでいーんでしょー?いーじゃーん」
「だだだだっだめ!てっちゃんは自分で見つけなさい!」
「うーん、自分でかぁ・・・そうだなぁ・・・」
脳裏に、パンを買いに行ってくれたり肩を揉んでくれる男が浮かんだ。
「・・・・別に今でも変わらないかw」
金鈴が同意するようにりんと一際大きく鳴る。
「わらびーなむ・・・・」
赤髪の男が笑いながら”東”に手を合わせる。
「みんな元気してっかなー」
金鈴の女は、そう言って”東”に微笑んだ。

Vol:20 Gun-Parade-March-4 ALLorALL

2006-04-16 01:54:18 | 妄想具現化
赤く、薄暗い空に濁った雲が流れる。
大地は真っ赤で、砂は一粒一粒がルビーの様。
風はどこか鉄の匂いを孕み、頬を撫で、鼻をくすぐり、赤い荒野と赤い空の境目まで流れ飛んで行く。
何も無い、何も無い。
ここはニブルヘイム4+。
異界の王族が避暑に訪れる、最高の楽園。最深の地獄。
今は、悪魔の茶会場。
白衣を来た悪魔と、墨色の魔術師の。

赤い空を照明にして。
濁った雲を緞帳にして。
赤い荒野を舞台にして。
ミニチュアのような砦を舞台に。

風が髪の先を惑って飛ぶ。
果ての無い、お茶会の地平線に。


ボロ布を纏った男は、その風景を素直に美しいと感じた。何よりも美しいと。
この、空と大地と濁った雲の世界が、何処と無く血の匂いを感じさせる風が、美しいと。
光もおぼろげで、何処か夢の中の世界を感じさせる全てが。ただ、美しいと。
男はもう色々な事が考えられなくなっている。怪我で入院していた、だからその為かもしれない。
白衣を着た弟が悪魔になってしまったからかもしれない。
自分が××××になってしまったからかもしれない。
よく、解らない。
ここは地獄みたいだ、と思うと同時に天国みたいだ、とも思う。
こんなに十字架の似合う世界は無い。
真っ赤な荒野に突き立てたなら、それは素晴らしい絵になるだろう。
業火も、鬼もいないのだけれど、それは確かに地獄のように思えた。
「・・・・・・・・・・」
足元で耳障りな轟音が響く。
男は地上50m程に浮かんでいた。足元にはちっぽけな砦が一つ。
薄い紫色につつまれ、ときおり花火を打ち上げたように爆炎が開く。
この美しい世界にあって、唯一美しくないもの。
濁って無いもの、赤くないもの。
それはびっくり箱だと、弟は言っていた様に思う。
『何が出てくるかわからない』
あの悪魔はそんな風に言っていた。
プレゼントだ、とも。
最初は嬉しかった。『目』を使って魔力を充填するだけで、空気から影絵のようなバケモノが出る。
そしてそれは途端に意思を持ち、眼下のちっぽけな砦に群がるのだ。
最初は、それこそ最初は楽しかった。
空気を吸うように影絵は生まれ出て、砦に群がる。そして爆発と共に塵になる。
ばーん、どどーん。すばーん、きゅあーん。
派手だった。
自分が今まで見てきたどんな映画よりも、それはリアルで熱かった。
30分がたった頃には自分でもびっくりするくらいに飽きていたが。
何も進展しないのだ。
影絵は砦に群がっては塵になる。
最初こそは、そのあまりにも異形な様を見て「こんなちっぽけな砦は、海辺の砂の城みたいに崩れるに違いない」と思っていたのだ。
ついさっきまで思っていたのかもしれない。
あとちょっと、あとちょっと、なんて思っていたら30分もたってしまった。
何も変わらずに。
そりゃあちょっとは変わった。
砦の外観は少しだけ薄汚れた。
砦の上空には硝煙みたいにものがたちこめていたりする。
それだけ。
それだけはあまりにもつまらなかった。
もう、飽きてしまった。
自分がちょっと手を加えてやれば、こんな砦は一瞬で潰れてしまうに違いない。
もう、砂山遊びには飽きた。
だから潰そうと思った。一思いに、足でぐしゃっと。
中に何があってもいい、潰してから探そう。
潰れてしまったのなら、それはそれでいい。そのまま飾ろう。
綺麗であって、完全である必要は無いと思う。
有る様に、有ればいいんだ。
がちゃん。
両目の周りに黒い歯車がかかる。
右目の歯車は少し小さく、左目の歯車は右目のよりは二周りも大きい。
キリキリキリキリキリキリ。
あぁ、そうだ。
砦に大きな十字架を落とそう。
この赤い大地に似合うように。その十字架で、砦を潰してしまおう。
その情景を想像してうっとりとする。
きっと、この世界には似合う。
赤い空と濁った雲と赤い荒野に、全部を縫うように立つ十字架。
地獄の様な天国の様なこの世界にきっと―
そして、自分を貫いて空に縫うような視線を感じた。


砦の屋上はチェスの盤の様だと思った。自分はもちろんナイト。敵はポーンばかり。
味方は・・・・無し。
依然ERとの通信は回復しない。砦の内部状況はまったくこっちには流れてこない。
右上空2時の方向から敵3体接近。
”アイリンクシステム”で敵を視認と同時にロック。
左腕”にーちぇ”より最少量のエンチャントが右腕”阿修羅”に送られる。
右腕より収斂されたエーテルを発射。・・・命中爆破。
細かい破片の確認。視認と同時に右肩の対物ファランクスが自動迎撃。
体内エーテル機関良好。
薄青い煌く線が体に接続されて、かれこれ10分。まだ線は切れていない。
ERで代理マスターをやっているバージルの『ブルーリンクス』
つまり、ERでバージルは生きている。状態までは解らないが。
もしかしたら、一秒後に死ぬのかもしれない。
全然元気かもしれない。
解らない。
上空00時から敵接近。
左肩対人ファランクス自動迎撃・・・成功。
味方が来ない。どこからも来ない。既に自分が接敵してから30分はたった。のにも関わらず、どこからも味方が来ない。
砦にはkrが居た。当てにしていた訳ではないが、どういった事か。
「・・・・・・」
どうと云う事は無い。
死んだのだ。
krは、砦内に侵入したMOBとの戦闘で命を落とした。それだけだと思われる。
当てにはしていなかった。強がりでもなく、本当に。
だって、自分はいつも一人で戦ってきたのだから。
いつも一人で生き残ってきたのだから。
砦の中を想像してぞっとする。
krが死んだのだ。ERの外は、地獄だろう。
応戦していた仲間はみんな死んだのではないのだろうか。
ERにはバージルが一人で血を吐いているだけなのではないだろうか。
絶望した訳では無い。そんなに自分は弱くない。
ただの現状確認。戦力確認。
・・・・・するまでも無い。
自分は死ぬだろう。弾切れで、致命傷を受けて。中々死なない自分は苦しむのだろう。
その果てにあるのは、ただの死だ。
ならば、それまでは・・・・・・・・・。
ピッ。
体内の魔力探知が高魔力を感じて網膜にその位置を投影する。
上空50m。
身を磨り潰されるような魔力を全身に受けながら尚、意思は死んでいなかった。
そしてその意思は死を覚悟した心と連動連結し、頑丈に絡め取り一つに合わさる。
『ただの一体でも、多く』
意思が、心が、上を見ろと言う。
『首が千切れ飛んでも』
そして”盤上のエース”はソレを見る。
『敵の喉笛を噛みちぎ』
赤い空と濁った雲を背景に、漂う黒いボロ布を。
「ロォォォォォォォキィィィィィィィィィ!!!!」

砦の裏門で一人塵の山を築いていたスマックダウンは、轟音と共に砦から火柱が立つのを見た。
空に大穴を開けるような、巨大な火柱を。



プロンテラ東門の近くで、大人の男性3人と少女一人が正座をしていた。
それはそれだけで異様な光景なのだが、それを見て笑う人間は一人も居ない。
とゆーか、周りに人気がまったく無い。
変わりにMVPBOSSもかくや、といった気配をさせている人物が一人いる。
正座させられている男女の前に立つ、30歳くらいの男性。
グレーのスーツに茶色のかばんを左手に下げた、何処にでもいそうな外見の男性。
だが、能力者であればわかるだろう。
その異様さが。
「たまに帰って来てみれば・・・こりゃなんだ?」
右手で万年筆をクルクルと弄ぶ。見るものが見たら万年筆が剣に見えるかもしれないが。
「じゃぎのせいだと思います!!」
ぴっ!と手を上げた男がもーそれ以外ありえないっ!って感じで発言。
「ちょwwwおまwwwwwww」
発言者の首を絞める男。
「軍曹、これには深いようでよくわからない訳が」
「あいすん・・・口出しするとロクな目に会いませんわよ」
下を向いた少女とあいすんと呼ばれた男性はボソボソと何事かを話す。
「海君の意見を採用。じゃぎ、おめーか?おめーがコレをやったのか?」
「え・・・えーと・・・コレ?」
バンッ!つーかベジャン!!と音を立てて50階から落としたスイカみたいになる茶色いかばん。

「なんで砦がねぇんだよwwwwwwwwwwwww」

その男性の叫びで、周囲10mのガラスと云うガラスが割れたとゆー。

おーるにでぃゆぁーらーぶ

2006-04-05 21:58:27 | Weblog
ホールデンは妹のフィービーと踊ったり話したりした後、知り合いの先生の家に行く事にしました。
しかしタクシーに乗ろうにもお金がまったく無かったのです。
だから、妹のフィービーに少しだけお金を借りれるか聞きました。
「フィービー、悪いんだけどお金を少し借りれないか?僕はすっかりおけらなんだ」
両親に見つからないように小声で真っ暗な部屋の中、フィービーを手探りで探しながら。
フィービーは
「いいわ、私まだクリスマスプレゼントも全然買ってないから」
フィービーは暗闇の中、ホールデンの手を掴みお金を渡します。
そのお金を見てホールデンは
「全部で無くてもいいんだ。ほんの2ドルでいいからさ」
と、返そうとしますがフィービーは受け取りません。
「8ドル62セントあるわ、あ、26セントだった。少し使っちゃったんだわ」
それを聞いたホールデンは急に泣いてしまいます。
本当に泣いてしまいます。

僕は、ここでホールデンが泣いてしまってこその「キャッチャー・イン・ザ・ライ」だと思い、何故だかほんわりとした気持ちになる。
意味が解らない人もいると思う。気持ちがわからない人がいると思う。
でも、きっと僕と同じように思う人が、この本を好きなんだとそう思う。