
これはサンタクルスを走る一般的なタクシーの運転席。サンタクルスをはじめ中南米の国々は右側通行。運転席は日本と逆で左側にある。ハンドルももちろん左だ。
しかしながら、このタクシーのように誰も乗っていない右側に速度メーターや油量計など計器類がある。この車の前の持ち主は日本人であろう。日本車なのだから。
ボリビアに車のメーカーはない、車は生産されていない。ひたすら輸入に頼っている。けれど、新車の輸入限度数が年間3000台と制限されていて、あとは5年以内のものなら中古車でも輸入して良い、ということになっている。しかし、実際はコントラバンド(密輸)で膨大な数の古い車が入ってきている。しかも恐ろしく古い。町を走っているのはドイツ車も多いが、圧倒的に多いのが日本車である。うちの車もどこかで第2の人生を送っているかもしれない。
ボリビアとの国境の町、チリのイキーケはフリーポート(無課税地域)になっていて、ここに集められた中古車は右ハンドルから左ハンドルに取り替えてボリビアに入ってくる。(ちなみにイキーケはこの産業で町が活性化された。)ここで取り替えるのはハンドルだけ、というのが非常に多い。計器類はそのまま右側に形をとどめはするものの電線はつながっていないので全く機能しない。
速度がどれくらい出ているかも、ガソリンがどれくらい残っているかも、計器がないのだからすべて運転手の感次第である。先進国のように技術の粋を集めた最新鋭のオートマ車に半ば人が支配されるのではなく、人間が車を操っているという感が強い。タクシーの運転手はがんばっている。
このタクシーの運転手は運転はちょっと荒っぽいが、車が大好きという風情でラジオから流れるラテンの音楽にあわせて身体をゆすった。