アル・ゴア元米副大統領の地球温暖化に関する講演を,これまでの様々な彼の生い立ちを織り交ぜながら展開していくドキュメンタリー作品。なお,本作品は第79回アカデミー賞(長編ドキュメンタリー映画賞・アカデミー歌曲賞)を受賞しています。
仕事の関連も含め環境問題について考える機会が割と多いんですけど,この作品は現在問題になっていることが映像(スライド)を使って解説してくれているので,何となく環境問題(特に地球温暖化)って難しそうと思っている人にこそ手にとってみる価値があるのではと思います(この手の作品にありがちですけど事実誤認の指摘もあるみたいですが,それを言いだすとノンフィクションが成り立たなくなるので,後は観た人がそれぞれで判断してくださいね)。
チャド湖が干上がっている映像やグリーンランドの氷が減少していっている状況はかなり衝撃的です。
<!-- からだ巡り茶 -->
自分達にとっても,この夏各地の最高気温が軒並み更新されたように温暖化は他人事じゃないですしね(埼玉県熊谷市は観測史上最高の40.9度)。特に自転車に乗っていると,より一層自然や街の環境って気になりますよね。
しかし,この作品を観る前から個人的にはこの問題の鍵を握っているのは,アメリカと日本,そして中国だとずっと思っていたけど,やっぱりそうなんだなぁって改めて思ってしまいました(何だかんだいって世界の中心であるアメリカがこの問題に本気になること,中国に自らの発展と持続可能な開発を考える良心を求めざるを得ない現状,それから日本自らが範となるよう環境問題に対し絶えず努力し続けることがこの問題の解決には絶対に必要なのでは!?)。
今日も暑いですけどそんな中,なんでこんなに暑いんだよって思いながら観るとリアルに考えられる作品です。
しかし,ゴア氏が大統領になっていたら世界は今とは違っていたんだろうなぁ・・・
(「不都合な真実」公式サイト)
http://www.futsugou.jp/
(環境goo)
http://eco.goo.ne.jp/
<!-- 緑のgoo -->
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地球にやさしい検索サービス「緑のgoo」のブログパーツを貼ってみました。毎日の何気ないあなたの検索が地球環境保護に貢献するという仕組み何だか良くないですか?
丸の内TOEI2で「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」を。
東京に来て何年にもなるのに,何故か丸の内TOEIは初めて。全席自由って今時結構珍しいかも。
映画は,黒澤作品「用心棒」からマカロニ・ウエスタンが誕生し一時代を築いたことに敬意を表しつつも三池崇史監督らしい作品に仕上がっているのではないかと個人的には感じたなぁ。
「壇ノ浦の戦いから数百年、寒村根畑(ネバダ)の湯田(ユタ)という村を舞台に、平家と源氏が真っ向勝負している真っ只中に、ある日一人のガンマンが流れ着き・・・」
って設定からぶっ飛んでいるもんなぁ。
主役級の役者さん達には申し訳ないけれど,タランティーノ,桃井かおり,香川照之が完全に持っていっているっていうか,素晴らしい。
仮に平日に鬱憤が溜まっていたとしてもこの映画を観ればすっかりそんなこと忘れられること請け合いです。何も考えず,ハラハラドキドキで痛快な時間を貴方もすごしてみませんか?
(スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ公式サイト) http://www.sonypictures.jp/movies/sukiyakiwesterndjango/index.html
「秋刀魚の味」
何と表現すればよいのでしょう。
東京的なんですよね。極限まで無駄が省かれていて,バウハウス的な空気を感じます。台詞や所作もよく練られた上で削がれるのがよく分かるなぁ。だってですよ,娘を嫁がせる話なのに,見合いも結婚式のシーンもないんですよ。それでいて,父親役の笠智衆はじめ周囲の人間の感情の起伏が我が事の様に伝わってくるんですから,お見事の一言でしょう。個人的には,もっと無駄がある作品が好みだけれどもこの潔さは格好良いです。
偶然ですが,小津監督を心から敬愛する周防正行監督約11年ぶりの作品。
そういう観点で見てみるとつながっているのかもしれないなぁ。全体的な構成が計算し尽くされている感じなどは共通点があるのかも。
とにかく,電車通勤・通学している男性陣ににとって決して他人事ではない正直怖い作品です。女性からすれば, 被害に遭うことは確かに屈辱的で耐え難いと思うけれども,一方でやってもないのにやっていると言われた方はたまったものじゃないのも事実です。いわゆるこの場合の「ないことの証明」は非常に困難であり,当事者にそれを証明させることは本来的に無理がありますよね。
解決策がなかなか見つからない難しい問題です。
この様な問題があることを気付かせてくれ,さらに冷静に考える経験を与えてくれた周防監督には感謝です。
しかし,警察,検察,裁判所の在り方は今後ますます難しくなっていくでしょうね。
裁判員制度が始まったらどうなるのでしょうか,良い方向にいくことを願います。
それにしても徹平の友人役の山本耕史が良かった。彼はいつの間にかよい役者になりましたね。
何気ない日常を,しかも今現在を約2時間飽きずに見せる。
これほど難しいこともないだろう。
しかし,この作品はそれを実現している映画のひとつです。
特別な何かはここにはないけれど,だからこそ,ここには一人ひとりの特別があるような気がしました。
何気ないとか平凡とかいいながら,本当は誰一人同じ人生を生きている人はいない。けれど,そんな日常を分け合いながら生きていくことはできる。そこにはかけがえのないものがきっとあるはず。
そんなことを思いながら2時間幸せな時間をすごすことができました。
それは佐々木蔵之介と塚地武雅(ドランクドラゴン)の二人から感じられる空気がそうさせていたのだと思う。
キャスティングでは,母親役の中島みゆき。絶妙です。スタッフに拍手です。
しかし,いつもの行きつけのレンタル屋さんに直美(沢尻エリカ)がいたらびっくりだけどね。結構というと怒られるけど,直美の妹役の北川景子良いですね,彼女のナチュラルな雰囲気が映画全体に奥行きが出しています。今売れてるのが分かるなぁ。
そんな姉妹や小学校の依子先生(常盤貴子)が家でのカレーパーティーに来たらそれこそ卒倒ものの驚きだ。そこが映画なのかもしれないけれど,最初に書いたようにそれが何気ない日常に見える。映画ってスゴイね。
映画では何回かそんな場面があったけど,女性に『断るっ』ってあそこまではっきり言われると傷つくなぁ。あの手の女性の強さが描かれるのは最近の空気なんでしょうね。
最後に関係ないけど久々にビール工場に行きたくなりました。
シネ・リーブル池袋で「夕凪の街 桜の国」を。
久しぶりに映画で涙しました。
自分的には今年は割と多くの作品を観ていて,感動したり,考えさせられたりした映画に沢山出会えているけれど,涙が自然に流れるっていうのはなかったかな。それも激しいって感じではなく,もっと静かで深い感じで。
人それぞれに,いろいろな考え方があるので,押しつけになるようなお薦めはしたくないと思っているのですが,この作品は是非,ひとりでも多くの人に観てもらいと思っています。
で内容ですが,まずはあらすじを
「原爆投下から13年後の広島。そこに暮らす平野皆実は、打越に愛を告白される。だが彼女は、原爆で父と妹を失い、自分が生き残っているという事が深い心の傷になっていた。そんな彼女の想いを打越は優しく包み込むが、やがて皆実に原爆症の症状が……。半世紀後。今は東京で暮らす皆実の弟・旭は、家族に内緒で広島の旅に出る。そんな父を心配する娘の七波は、ひょんなことから友人の利根東子と共に、旭の後を追って広島へ向かう……。
平成16年度文化庁メディア芸術マンガ部門大賞・第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した、こうの史代の原作漫画を映像化。過去と現在の二つの時代を背景に、二人の女性による二つの物語が描かれる。物語の核となる女性を演じる麻生久美子と田中麗奈の演技が素晴らしい。「夕凪の街」の原爆症発症の不安を抱えながらも、原爆で自分が生き延びたことの負い目から愛に臆病にならざるを得ない皆実。さらに、「桜の国」では父の秘密、自分のルーツを知り、それを静かに受け入れる七波。そこから浮かびあがるのは、平和の尊さ、生きることの喜び、二人の女性を通し、家族愛、兄弟愛、恋愛など様々な愛の形が紡がれて行く物語だ。」
(以上goo映画より)
戦争や原爆自体の直接的な表現は皆無と言ってよいと思います。
映像がとても美しく(一部VFXを除く(予算の関係かな)),女優陣からは,はかない魅力が溢れています。
そしてそこには,現実が,生活があります。
だからこそ,思います。
そんな彼女たち,彼らたちの幸せを誰に奪う資格があるのかと,幸せになってほしいと。
けれど,そうさせない現実があの日から今なお続いているのだと思います。
直接の身体的なことだけではなく,偏見や人間のエゴ等の複雑な感情。でもそれは多分自分にもあるもの。それを乗り越えていけるような大人になっていきたいなあと思います。
印象的なフレーズがいくつもありました。
「生きとってくれてありがとう。」
「長生きしなあかんよ。それから忘れんといてね。」
それだけでなく,それぞれの時代の歌が何故か爽やかに軽やかに残ります(なかでも麻生久美子さんの「お富さん」はとてもとても優しい歌声です)。
そういう台詞や歌が静かに心にしみてきます。
個人的には,麻生久美子さん(SALAのCM時からの透明感は健在!)と中越典子さん,それから七波の母親の少女時代が本当にとても良かったです。勿論田中麗奈さんも。脇を固める男性陣も本当にすばらしいです。
(「夕凪の街 桜の国」公式サイト)
http://www.yunagi-sakura.jp/
いわずと知れた手塚治虫原作の実写化。本当にこの作品が実写映画になる日は来ないと思っていただけに,感慨もひとしお。
単純に楽しむという意味では,悪くないと思う(原作を知っていると,設定のギャップから逆に楽しめないかな)。
キャストは妻夫木聡,柴咲コウ,瑛太の「オレンジデイズ」トリオに中井貴一,原田美枝子と豪華メンバーです。自分は寿海役の原田芳雄さんが良かったですが,その他にも土屋アンナ,麻生久美子も出てます。
それから本作の見所であるCGの出来ですが,蜘蛛女のシーンはとても良い出来で一見の価値ありです。ただし,その他は・・・波がありすぎるというのが本音かな。
あまり些細な事は気にせず純粋にエンターテインメントとして楽しむべき作品ですね。

第53回カンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞エキュメニック賞,ベルギー王立フィルムアーカイブ・グランプリ受賞の長編作品(217分)「EUREKA」(2000)。
少しあらすじを書くと,
福岡県で起きた多くの死亡者が出たバスジャックで、生き残った運転手の役所広司演じる沢井と、直樹(宮崎将)と梢(宮崎あおい)は心に言い知れぬ傷を抱えることになる。その後3人は直樹,梢の兄妹とその従兄の秋彦と一緒の共同生活を始めることになる。ちょうどその頃・・・
作品は多くの時間ずっとモノクロというかセピアカラーで進んでいく。
衝撃的な事件に巻き込まれた後,人はどの様に感じ行動するのか,全ての人が沢井,直樹や梢のような道を進むとは限らない。けれども3人の抱えた思い,その全てに共感できるとは言えないけれどシンクロする時間が確かにそこにあります。やるせない,どうしようもない,そして眠れない日々。傷ついていく人を見せつけられ,自らが傷つけられ,そして傷つけること。そのどれもが激しさでなく,静寂のなかで描かれていきます。リアルな現実は本当はそうなのかもしれない。
監督が,そのことを想起させるきっかけを与えようとしていたのか,それはわかりません。
ただ,3人の感情の離合集散というかうねりが静かにけれども圧倒的に迫ってきます。演技全体ならば役所さんですが,宮崎兄妹を讃えるしかないでしょう,やっぱり。なんて言ってもほぼ台詞なしで,あの役所さんとやりあっているんですから。なかでも宮崎あおいの凄さを見せつけられた感じです。
それでも正直言って誰にでも勧めることは難しい映画だとも思います。けれどもeureka(=I have found it)と言い合える友人には是非勧めたい作品です。
台風が通り過ぎたので,先週に引き続き早稲田松竹へ岩井俊二特集の第2週を観に行きました(今週も大盛況)。

「リリィ・シュシュのすべて」(2001)
岩井監督曰く、「遺作を選べたら、これにしたい」作品とも聞いたことがある本作。インターネット小説から生まれた実験的な作品ですね。正直かなり難しい作品だと思いますが,今回の「ドレミる?シネマ」では3位にランクイン,皆さん凄いです。
いじめをはじめとする現代的なテーマを取り入れながら,少年時代の繊細がゆえに鬱屈しがちな心を田園風景と音楽を取り混ぜ物語は進んでいきます。問題提起という意味や時代を切り取って残す意味では必要な作品だと思います。が,なぜか悲しくて堪らなくなる作品です。
その原因が,もはや自分が彼らとは同じ感情を持てない世代になったからなのか,そうではない何かがあるのかわかりません。
映像が綺麗であるからこそ,深く重い何かが圧し掛かってきますが,一方でリアルではない感情(=現実を生きていないような感じ?)がそこにはあるような気がしてならないです。
繰り返しますが,悲しくて堪らなくなる作品です。

「花とアリス」(2004)
冒頭の歩くシーンでのマフラーの巻き方が既に“杏ちゃん”と“蒼井優”だったなぁ(鈴木杏はどうしても杏ちゃんって言ってしまう(これってポンキッキーズの影響か?))。
中高生の女の子特有の独特な繊細さ,そしてたまに垣間見えるズルさというか強かさ・・・2人とも見事です(大胆な花を演じることのできる鈴木杏と心の移ろいを見事に演じきる蒼井優,甲乙つけがたい)。
何より拍手を送りたいのは,この2人に振り回される宮本先輩役(先輩って響きが懐かしい)の郭智博でしょう,やっぱり。ここまでフィルムの世界に自然に溶け込めるって凄いですよ。
それでも自分的にこの作品といえば,オーディションの際にバレエを踊るアリスです。あの数分間,時間が止まっていたようでした。そこには神々しささえ感じられシーンが終わってしまうことが勿体なく感じた程でした。大沢たかお扮するリョウ・タグチが “良かったよ”と言ったことに邪心はなかったと思うけどなぁ,どうでしょう?しかし,蒼井優は本当に踊っているとき良いですね。
海や夕焼け(岩井俊二は鉄塔や風力発電の風車の使い方がウマいっ

それから,注意していないと見逃してしまうほど多彩な役者陣にも注目ですよ。

雨が止まないので家で「博士の愛した数式」を観ました(外では蝉が啼いています。いつの間にか夏だなぁ)。日常つい見逃してしまいそうな草花などがとても柔らかく映像に刻まれています。
まず思ったのは,とても素敵なキャスティングだなぁということ(寺尾聰,吉岡秀隆,深津絵里,浅丘ルリ子など)。
静かな生活の中にある幸福な時間。得てして人はお金や派手な生活に目がいきがちですが,そこにはない大切なものを見せてくれる映画です。
それはきっと「互いを思いやる心」かな。
80分しか記憶の持たない博士は,子供という存在を大切にし,これ以上ないと言ってよいほど真っ直ぐな愛情を注ぎ,シングルマザーである家政婦の私は博士が人と付き合うことが苦手でありながらも数字を通して伝えてくる「思いやる心」を切ないくらいの思いで受け止め,そして私の息子である「ルート」はそんな二人の心からの思いやりの中から「数字」以上の大切なものを心で感じ取っていきます。
不思議ですが,数字に弱い人ほど(自分もそうだけど)逆に楽しむことのできる作品だと思います(強い人にとっては,用語の説明がクドく感じるかもしれません)。
静かで優しい時をすごしたい,そんな時にオススメの作品です。