栃木発「ちゃりあん」ブログ2

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【夏の自由研究2017】 ”あくつ”さんと”はなわ”さんの意外な関係  地名写真家がゆく①

2017-08-12 21:33:41 | 地名
先日、ドライブで出かけた福島県塙町。

はなわ・・・と読むその地名を目にするたびに、「栃木あるある」の記事を書こうと思っていたのだが

また別の日、今度は茨城県で上圷を訪れる機会を得た。

かみあくつ・・・なんとも茨城ではあるけれど、個人的には「栃木っぽい」と思う地名。

この「はなわ」と「あくつ」。

地名にもあって、当然ながら人が名乗る「名字」にもあります。


インターネットを検索すると、さすがに珍しい文字ですから、その由来等で様々な記事が出てきます。


たぶん、真実は誰にもわからないのかと思います。


もちろん私にも。


けれども、地名を研究するものとして

少しでも、ヒントになることは記事に残しておきたい・・・


そう思い、大人の自由研究を久々アップいたします。


・・・それではまず「あくつ」について。


【あくつ】


由来は地形。


川沿いなどの「低湿地」を古代日本語では「あくつ」と呼び地名になったとされる。


川沿いの低地なので川が洪水を引き起こすと”あくつ”に豊富な水が供給されるため、作物の栽培に適地とされたため、集落が形成されたとされる。


北関東や南東北に多い苗字。



新人物往来社が2003年に発行した「日本の苗字ベスト30000」によると


【阿久津】さん  総合で733位、約6200世帯

    「福島県」 280位  約390世帯

    「茨城県」 226位  約630世帯

    「栃木県」  15位 約2500世帯
 
    「群馬県」 193位  約520世帯


この4県で半数以上の人口分布があることが推定されます。特に栃木県では馴染みの苗字といえます。


もちろん「阿久津」さんがいるならば・・・発祥の地はどこか?・・・ということになりますよね。


阿久津さんのご出身地はたくさんあります。


福島県郡山市阿久津


栃木県さくら市上阿久津








栃木県高根沢町中阿久津





群馬県太田市阿久津町





※合併前に撮影


群馬県高崎市阿久津町

群馬県渋川市阿久津


・・・以上は「大字地名」のみです。

ここに郵便番号のない「小字地名」(小さな集落名)を含めれば、阿久津という地名はいくつあるのかはわかりません。





栃木県茂木町  現在は廃止された茂木町営バスの停留所です。


ただいえることは、大字地名になったということは、かつてここに「村」が存在したことを意味します。


洪水が起きるのになぜ人が住んだのか・・・枯れることのない水の存在がいかに重要だったかがご理解いただけると思います。



・・・ほかにも「あくつ」という地名・苗字はあります。


【圷】さん 全国で3485位 約800世帯


      茨城県 240位 約580世帯


圷・・・まず茨城県以外の方は読めない方が多い苗字。これも「あくつ」と読みます。


「圷」は漢字ではなく「国字」(和製文字)。つまり日本人が漢字をヒントに作った文字です。

漢字は中国大陸から伝来された漢の国の文字で、日本人はそれを受け入れ漢字は定着しました。国字はその漢字では補いきれない部分を創作した文字です。

あくつ、とは古代の日本語といいました。 残念ながら当時の漢字では漢音(音読み)しかなく、適当に充てる文字がなかったものと推定されます。


ちなみに・・・阿久津の


阿=カタカナの「ア」の元となる


久=カタカナの「ク」の元となったとされます。


※カタカナの「ツ」に関しては「川」が元となったという説が有力ですが、音読みからすると「津」であった可能性も否定できないかと思います。


圷=日本人が考えた文字、 阿久津=カタカナの源となった文字


よく名字は明治になってから名乗るようになった・・・なんて言われますが、それは過去に「名字帯刀」を平民が持つことを禁じられていた時代があ

って、江戸時代までは「名乗れなかっただけ」の話といわれています。古代日本語が由来の地名、苗字が平成の現在でも残っていること、たいへん誇

りに思います。


なお、圷の地名も茨城県を中心に多く存在します。


大字では


茨城県水戸市 圷大野


茨城県城里町 上圷、下圷





















あくつさんはこれだけではありません。


【安久津】さん  全国で12399位  約120世帯

大字地名は 山形県高畠町 安久津


【明津】 神奈川県川崎市にある地名


・・・・


そして「あくつ」という言葉には「方言」のようなものもあります。


どちらが方言なのかはわかりませんが似たような地形地名に・・・


【あくと】があります。


【あくと】も「あくつ」と由来は同じとされ地名も苗字もあります。


【阿久戸】さん 全国で17003位  約70世帯


大字地名は


秋田県横手市 大雄阿久戸


異なる文字では・・・


栃木県佐野市 あくと町


茨城県筑西市 関本肥土


そして・・


【悪戸】・・・こちらは「あくど」と読みます。


秋田県能代市


青森県弘前市


にそれぞれ大字地名があります。


!!!


ここでひとつの疑問。。。


肥沃な土地であるのに、なぜ「悪」の文字を使ったのか。


昔も今も、縁起の良い文字というのは使うもので、悪、という縁起でもない文字を使っているのに人々が住むのはなぜかって思いません?


その疑問について推論ですがお答えいたします。


阿久津、を説明した際、あくつ=洪水が起こりやすい低湿地といいました。


悪戸とは悪土のこと。つまりは洪水が起きる「悪い土地」という意味です。


あくつ、という地形の特徴は「蛇行する川の周辺を指す」ものが多いです。地図、、見てみてくださいね!


大雨が降れば氾濫し、洪水を引き起こす。そこが昔の「あくつ」でした。


悪い土地だから近寄るな・・・あえて地名に悪をつけ、人々を近寄らせなかった可能性があります。


しかし、時代とともに防水の技術はよくなりますから、地名は残っても、洪水を防いで人々が集落を形成することは可能になるのです。


・・・もちろん、水は潤沢にある土地ですから村はできるのです。



参考までに似たようなことばで「やち」「やつ」という地名・苗字もありますが、ここでは割愛いたします。



・・・・

【はなわ】


地名に興味がある方なら「はなわ」と「あくつ」がセットで語られる意味をご存知かと思います。


あくつが「圷」=低湿地・・・であるならば


はなわは「塙」=先端がとがった小高い丘のような場所を意味するからです。


※ここでクレームをつける方がいると思いますので、その説明は最後に行います。


塙  全国で1287位  約3200世帯


    茨城県  75位  約 1530世帯


およそ半数の塙さんが茨城県にお住まいと推定されます。



福島県塙町





茨城県常陸太田市


茨城県大子町


茨城県阿見町


千葉県旭市



【塙田】  栃木県宇都宮市

【峰浜塙】 秋田県八峰町


大字地名以外でもたくさんあり・・・





茨城県常陸大宮市。 当時の烏山町営バスの塙バス停(栃木県から乗り入れています)


花輪さん 全国で2591位  約 1200世帯


岩手県宮古市


茨城県鹿嶋市


群馬県みどり市


千葉県野田市


千葉県富津市


千葉県流山市 【下花輪】


山梨県中央市 【西花輪】


鼻和さん 全国で21801位   約 50世帯


青森県弘前市鼻和




・・・・・


ここで素朴な疑問


「あくつ」は圷なのに


なぜ


「はなわ」は土+上・・・ではなく塙、なのか?



今回、あくつ、はなわを調べるうえで大きなキーワードが見つかりました。



圷=国字


でも・・・


塙=漢字・・・???


そう、塙は漢字だったのです。


圷=あくつ=訓読みのみ


塙=はなわ=訓読み・・・+音読みで「カク」とか「バン」とかあるそうです。


理由は定かではありませんが


漢字が大陸から伝来した際、もともとあった「塙」だけは小高い丘を意味する「はなわ」に置き換え


対する「あくつ」は適当な漢字がなかったため、国字を創作した・・・と私は推論しました。


漢字であったがために


「小高い丘」という理由のほか


「硬い場所」を表す等、地域によっては伝来があることも間違いではないのかもしれません。



また「あくつ」と「はなわ」には法則があり


必ず、「あくつ」の周辺には「はなわ」と呼ばれる地名があった、という事実。


残念ながら、地名が合併・バス停の廃止等で消えてしまいセットである場所は少なくなっています。


しかしながらその例はいくつか挙げることができます。



茨城県城里町。


旧桂村には・・・








上圷、下圷があり、元々圷村がありました。


対して


塙も・・・


旧桂村。 圷の西に塩子という地名があり、小字で塙があります。※以前は塙バス停がありましたが廃止されています。


いまは「塩子塙団地」にその名を残していますが


このように「小字」でセットになっている場所は茨城県・栃木県内にいくつか確認できます。


しかしながら小字ゆえに、その証拠が残せないのが地名の難しいところです。



・・・・・


そう、難しい、といえば・・・






栃木県益子町塙。


ここは要注意。


ここの由来は「地形」でがなく「人名」が由来だそうです。



この記事は継続案件です。情報を確認次第、追加、訂正いたします。
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2 コメント

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Unknown (ポニョ)
2023-09-28 10:15:42
こんな面白い見解をタダ読みしていいのでしょうか。ありがとうございました。
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ポニョさんへ (ぶろぐ屋茶莉庵)
2023-10-01 22:08:01
コメントありがとうございます。

あくまでも個人的な見解であって、専門家の見解ではないので、逆に「これを有料で?」ってなると思いませんか?
タダなら何を書いてもいい、とは言いませんが、この記事の作成については、亡くなった名字研究家の師匠の見解をベースにしておりますので、まったく的外れなことは書いていないつもりであります。
ただ、地名が命名されたのはとうの昔の話。現在、塙と阿久津の地名を訪れても、土地改良等でなかなか地形から立証するのは困難かと思います。
が、しかし、地名は人が名付けた地形の名前ですから、由来については先人の史料を見れば、たいていの推論はどなたでも可能かと思いますので、もし、この記事に関して異論を申される場合は、ぜひ、ご見解をお聞かせいただけたら幸いです。
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