2006年元旦 ブラックジャックの初夢2 

2006-01-17 14:28:49 | Weblog
長距離ランナーとは

江ノ島のディンギーを始めた時の決心は、『どんなに難しくても詰らなくても馬鹿になって10回やってみて、その後続けるかどうか決めればよい』でした。 
そして訳が分からない内に10回が過ぎ、20回が過ぎて、ディンギーのロープワークが一人で出来、着艇が出来て、そして冬のドライスーツを買い込んで。
江ノ島で10年間ディンギーに乗って、風と波で走る感触に夢中になって、ほとんどの土日をディンギーの世界に費やしました。 
夏も冬もお正月は2日から乗って烏帽子岩を廻りながら競争をしていました。
そして25ft, 37ft とセイリングボートを乗り継いで、5年の訓練の後に手作りの外洋クルージングに挑戦。
小笠原・グアム・プルワットを走って日本に戻って来ました。
もうこれでヨットとも別れるつもりで走ったグアムー日本でした。  
それから5年、ヨットを止めたつもりが、いつの間にかハワイでウルちゃんと36Ftのヨットを走らせていました。
ハワイ-南太平洋-日本を計画して日本を目指すも、失敗してフィジー島に到着しました。
フィジーに辿り着いたとき、私はやっと一人立ちのヨット乗りに成れたような気がします。

始めのディンギーの楽しさは、誰でも受け入れられる楽しさで、誰でもヨットが好きになるものと思ってました。 沢山の友人にヨットの良さを説明しました。 ところがその話を理解してくれる人が意外に少ないことに気が付きました。 大型のセイリングボートはもっと共鳴者が少なくて、一回付き合いで乗ってくれる友人でも2回目を付き合ってくれる人は非常にまれでした。
ヨットの楽しさは変人の楽しさか? 
理解できないのが普通なのか? 
外見が優雅に見える美しい姿は中に乗ってる人にとっては無関係なのか? 
ヨット乗りの皆様、そう思いませんか? 
私たち日本人は経験が少ないせいか、苦しいセイリングを当たり前と思い、軟弱を罪と思い、精神主義を前面に立てて頑張るのを本分として来ました。 クルージングは爽快さが20%、後の80%は辛く厳しいもの、といつも言ってました。 
その思いが少しづつ、変わってきたような気がします。

2006年を迎えて日本も変わりました。 
改革なくして復活なし。 意識改革なくして世界なし。 私はこの2005年のクルージングで意識が改革されて何と世界一周を思い付きます。 
2005年6月、サモアでヨットの修理をしている間の1ヶ月、沢山の世界のヨット乗りと自然に交流する機会がありました。 
スコットランド、カナダ、アメリカ、ドイツ、フランス、ニュージーランド、日本… 
これらの国々の名前を見ますとアジアの国は日本だけ。
これらのヨット仲間と話した人達の70%は、仕事を引退した夫婦ペアーでした。  これらヨット先進国の中で日本は感覚的にヨットに関する気持が違うように思います。
世界一周を目指していると言うより、延々と太平洋を限りなく走ってるという気楽な感じです。
『2人で体力的に大丈夫ですか?』 (問題ありませんよ)
『奥さん、船酔いはしませんか?』 (やっぱり気持ち悪くなります) 
『外洋で揺れに揺れて問題はありませんか?』 (特に大丈夫です)
『2人でなんか問題はありませんか?』(特に。 別にありませんね)
ヨットの中には子供さんの写真が飾ってあり、ヨットの中はほとんど例外なく清潔で乾燥していて、
トイレの悪い匂いも全く無いのが印象的です。 
この居住性は自宅とほとんど変わりなく、涼しくて乾燥しており、スリッパで絨毯の上を歩くように綺麗で、清潔そのものです。 

中にはウオーターメーカーがあっていつでも温水シャワーが使えるセイリングなんかを見ると、一体自分たちのヨットは何なんだろう?
少し実態が分かったことがあります。 ペアーの奥さんは特にヨットが好きなわけでは無くて、旦那さんがヨット好きで止むを得なくお付き合いしていると思います。 
ですから港に入るとすっかり元気になって、料理やお買い物に出かけて行きます。 
ほんとにヨットが好きな奥さんや女性に会ったという経験はありませんでした。 
あの揺れる不安定なクルージングが好きな女性、と言うか全体を通してこのヨット旅行をこよなく愛している女性は1000人に1人居るかどうかでしょう。 
一週間も10日もシャワーもないセイリングをして訳の分からない島に着き、そこで真水のシャワーにありつけるかどうかは着いて見なければ分からない。
3日に1日はご飯も食べられない気持ち悪さに耐え、クロース帆走で海水のバケツ5杯ものシャワーをかぶり、スコールで雨の中でワッチを続ける過酷なクルージングの世界が好きな女性が大変すくないのは当り前と言えます。
世の奥さんも同じで如何に旦那さんがヨット暦40年のベテランでも、奥さんまでがヨット好きというのは
稀であろうと言う私の発見はきっと当っているでしょう。
しかし1000人に1人の女性はきっと居るでしょう。
『私のフィールドにはヨットは一番合っている...』と云ってくれるような粋。

さて、こう云うヨット仲間と交流して行くうちに段々とミイラになっていって、ついに気がついたときはフィジーのマリーナで『グアムから日本に北上して行くよりも、そのまま西に走って世界を廻ったほうが自然だ』と思うようになりました。 
長距離ランナーには、どんなヨットが向いてるのだろうか? これは設備と種類の問題です。
長距離ランナーはどんなヨット乗りが出来るのだろうか? これは人の技量と人格と立場の問題です。
沢山の反対と困難を乗り越えて、果たして西へ向えるか。 今までの手作りの外洋から延長して手作りの世界へ挑戦して見たいと思いました。
そんな形で長距離ランナーを作ってゆきましょう。
外から見る美しい姿のヨット、静かに走るヨット。 しかし自分が乗ってるヨットは不愉快に揺れて、ちっとも美しいとは思えない。 
しかし、美しい自分をそこに作らないと長距離ランナーはつとまらない。




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1 コメント

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感銘する内容ですね。 (石井 隆)
2006-01-31 21:52:03
光瀬さん、こんにちは、石井です。何はともあれ、長い航海お疲れ様でした。写真で見るとサモアまでの海域は、ちょっとシビレますね。あの波の高かさ、写真ではわかりずらいですが、5Mはありますね。書かれた文章のなかにもありましたが、ヨットの楽しさは変人の楽しさです。理解できないのが普通です。外見が優雅に見える美しい姿は中に乗ってる人にとっては無関係です。ヨット乗りの皆様は、多分、そう思っているでしょう。文章では、多くを表現できませんが、世界一周の大航海、頑張ってください。ヨーロッパ等、大航海時代の伝統がある国々では、勇者として称えられることとも思います。その当時の日本は鎖国の国で海外に渡るのはご法度でした。300年に渡る文化の違いがあるのかも知れません。今後も航海の様子、期待しています。