植田: 2030年の断面だけ示してそこまでどう動いていくかということは書いていない。移行経路が書いていない。移行経路も選択肢だったはず。これからそれをしていかないと。安全性、自己リスクを顕在化した。そして、放射性廃棄物や被曝労働など原発が持っている根源的問題も合わせて考えないと。
再処理は世界的に撤退している。乾式をどう考えるかで政策の大きな転換を促す。移行シナリオを考えないといけないということ。
電力会社の財務分析について、電気代が議論される。何らかの対策ができないのか。飯田さんは二基しか動いていないという今を出発にして移行を考えていこうという意見だが。
圓尾: エネ戦会議の報告書に移行が書いてないのは、こういう日本に導きたいという意思がないからだと思う。責任を取りたくないから書いていない。即座にゼロだと特損13億円、やるなら誰がする?段階的にやっても誰かが負担しなければいけない。電力会社はものすごい赤字で、来年債務超過に陥る。受け入れられないから電気料金値上げは私たちが受け入れるという痛みを政治家は言わないと。痛みの話ができて、リスクを負う話ができる政治家を選ばなければいけない。たとえ国民の9割がゼロといっても、これはやるという政治家がいてもいい。こういう方向に導く、という気持ちがない。すぐにゼロにしたら13兆円コストが出てくる。燃料費としてプラス2.5兆円、これにはCO2の費用は含まれていない。90年比で何パーセント削減の目標があり、それを上回った時クレジットを買ってくるとか。CO2の枠組みはどうする?どうオフセットしていくとか。
河合: CO2のコストというが、今までの仕組みを前提とするからいけない。日本はハンディキャップを負った国。原発をしたらいけない国。CO2だすよ、そんなこというなら原発やって放射能出すよ、と説得したらいい。真面目に。温暖化はCO2のせいと丸呑みにして、それは脅し。日本はハンディキャップの国。日本は地震が恐ろしいくらい集中している。そんなところで原発をやって迷惑でしょ?CO2出すけどごめんねといえばいい。でも、そこでいい顔するからしわ寄せがくる。原発推進を決断する政治家がいてもいいというが、悪い方向に決断する。
圓尾: 覚悟の問題。(脱原発、原発推進の)どっちにも見えないのはまずいと言っている。
河合: 自民党は原発推進をはっきりさせているから。
大島: 原発のエネルギーにまつわる環境問題をどうするのかという問題が問われている。CO2を言うと、経団連のフレームを受け入れることになる。でも温暖化も出さない。ドイツは脱原発と温暖化対策を両方やっている。CO2を20数%削減し、脱原発も両方やっている。政策、目標を実践している。日本もそういうやり方をして行くのが大切と思うからCO2を出して行くことは思わない。具体的に議論したい。
河合: 一般論としてはご尤もだが、日本は130倍の割合で地震がある。地震がほとんどないドイツのプロセスとは違って当然と思う。
大島: 日本は危険だから特殊な政策を取るというのは私も賛成。でも、CO2もどちらも大切な課題。温暖化するから原発だというフレームワークをとってしまうことがまずい。持続可能な社会に組み替えていく。これを脱原発を通してやっていく。でも、温暖化はやらなくていいというのは他の問題に移し替えていくだけ。
大林: 先日、エネルギー戦略会議で原発をした方がコストは高くなるとなった。佐藤さんが言ったように、本当にバックフィットをやっていたら10年かかる。シナリオを作っていく。大島さんに賛成する。温暖化が続けば省エネが進む。原子力を続けたらエネルギー消費は増える。だから温暖化対策になって行かない。
圓尾さんの2.5兆円には炭素税を入れるともっとかかる。世界的な規制があるから燃料費がかかってくるところから、自然エネルギーの利用が増大すると思う。2011年、比較して電気使用量は20%減ったし、今年はさらに10%減った。効果を考えて自然エネルギーへの投資も始まっている。これに対してどういう政治的判断があるか。2030年、こんな未来しかない、じゃなくて、いろんな形を提案したい。
佐藤: CO2には危機感を持っている。CO2が350ppmになったら不可逆的に温暖化が進み、南極やグリーンランドの氷が溶けるとされるが、今はそれを突破して450ppm。南極の氷を調べると、450になったところからできた。450になるとどんどん溶けるという説を信じている。そうすると海面が70m上昇し、主要都市は水没する。オランダ、バングラデシュ、上海、北京、ニューヨーク…原発事故どころではない。CO2か原発かと天秤にかけるべきじゃない。ドイツは一生懸命やっている。ハンディキャップがある日本がその努力をしてこそアピールがある。日本は2%CO2を削減している。これからも努力して、ハンディがあるからごめんでは世界が納得しない。ハンディがあっても原発からもCO2からも出ていく。その努力をして行かなければいけない。
大林: 原発の稼働率の高さとCO2発生率上昇は比例していない。
河合: まるで悪者のようになってしまったが、私が言いたかったのは、火力でCO2が増えるかもしれないが、自然エネルギーでキャッチアップして、とかそういう意味。
古賀: 基本的な考えをしっかりしろということ。ドイツが一つの基本。ドイツの大統領と話をした。ドイツの有識者と話をすることがあった時、印象的だったのはドイツの倫理委員会が原発は倫理、哲学の問題と言った。サンデルの世界だが、その理由は、事故のリスクは容認できないレベル。自動車事故やプラントの事故とはまるで違う。大きすぎて被害を回復できない。質的に違う。作ったものはあるから、使わないよりも安上がり。でも、自分たちは利益を受けるが、利益を受けていない人にもリスクを負わせる。これは倫理の問題でしょ?
また、重要なのは核のゴミの問題に答えがない。先送りするのはいいのですか?ということ。野田さんは消費税の時は「先の世代に負担を先送りしてはいけない」と盛んに言っていたけど、原発では言わないけど、倫理的に許されない。政治家の人がそれをどう考えるのか、それを聞きたい。倫理的に許されないからやめようよということ。今ゼロにすることは集団自殺、死にますよ、と脅されている。今すぐゼロにすると弱い人にしわ寄せがいくと言うなら、必要悪として一定期間認めることはありうる。でもいつまでにやめますか。重要なのは倫理的な問題であることをしっかり思う、そしてやめようと決める。今の政治家にはそういうところがない。
ドイツの大統領と大使との議論で、ドイツからみると日本の方が自然志向じゃないのかと言われた。日本は自然と共に生きると大学で習った、ヨーロッパは技術の進歩を信じて自然を征服してきた。日本人は違う生き方をする民族と理解していた。福島が起こった時、日本人は原発をすぐやめるなと思った。でもドイツの方が先だった。ドイツは倫理的な問題として国民的合意を作った。日本はやめるって聞こえないそうですね。福島の事故が起こってショック!すぐやめる!と思っていたのに、ドイツがそれを見てやめようと思った。日本は技術論と経済論しかしない。倫理の問題を話さない。これが目先の利益に追われてフラフラする原因だと思う。
電力会社の財務問題だが、重要なのは、電力はこれから競争の世界に入る。競争ということは企業が破綻するということ。電力会社が破綻してはいけないというのがおかしい。東京電力は破綻処理しなかった。そうするのが怖かった。電力がなくなると思った。普通に処理したら責任を取らされる人が出てくる。経営責任を問われる。株が紙切れになり、銀行債権は大幅にカットされる。被災者の債権がカットされるという話が出て、銀行の債権を守った。それが4兆円。4兆円を普通に破綻していたらJALが7ー8割の債権をカットしたように3兆円はカットできた。この3兆分、国民負担が減る。でも今はこれを返すために税金が使われ、電気料金が上がる。
同じことを繰り返さず、破綻処理して銀行債権をカットしたら負担すべき人が負担する。今、電力会社に金を貸すのはすごい簡単。美味しい商売をしている人が一回責任を取る事例を作れば、原発を動かしている人に金を貸す時の金利は上昇する。それを政府はまずいと言っているが、それが本来の姿だし、それが原発のコスト。保険を引き受けるところはないだろうけど、もし引き受けるところがあるとすればその掛け金もコスト。破綻しないように手当しない方がいいと思う。河合先生にも過激と言われたが。
長尾: 地震は地域的な問題。CO2は世界的位な問題。日本に比べればCO2の排出はアメリカ、中国の方がずっと多い。CO2はサウジの石油がからになったところにCO2を押し込む技術は日本は世界一。これを国策としておしすすめる。輸出産業になる。恐竜時代の方がCO2は高いが、今は1年の変化が10万倍高い。これがいろんな影響を及ぼしている。技術を日本の売りにする。地下にCO2を戻す。これは重要なのに押し進める政治家がいない。そういう技術を世界に売り込むことで相殺していく。
乾式貯蔵について、どれくらい持つのか、10万年ほしいのが本音だが、でも、日本にはそんなところはない。日本は地殻変動がある、つまり安全なところはない。真剣に考えないといけない。
植田: 方向性が決まらないなど倫理的判断基準からいえる。ゼロにならないといけない。でも必要悪があるのならどういう判断になるか。
電力会社の財務分析について、国民の電気代に転嫁する。国民負担になる方法があるのかないのかもう少し議論したい。
マクロ的に2030年代に向けてどれくらいの電気代、GDPへの影響になるのか。いろんな前提があるが、どういう幅で見て行くのか。国民全体に納得してもらわないと。ゼロにした時、国民負担なのか、他の方法があるのか検討していく。
倫理的判断基準を具体的にして行かないと。例えば、廃棄物はどうするのか、廃棄物から制約条件を作ってはどうかという提案もあるが、具体的にどう進めるかということ。今後、(自主会議を)大阪でやるかどうかについては東京でやった方が合理的な時にそうするが、それは了承頂きたい。