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百合若神社 その5

2009年02月06日 07時31分04秒 | 神社
「よく聞け、皆のもの。われに気づく者はおらぬのか。われこそ誰あろう、そなたたちのまことの主(あるじ)百合若ぞ。兄弟(ふたり)により、2年前、島に置き去りにされた。さらに・・・」
これを聞いた別府兄弟は、馬の鼻面(はなづら)の向きを変えると、馬に一鞭(ひとむち)あてました。馬は一気に走り出しました。百合若はすかさず狙いを定めると、一本づつ矢を放ちました。
遠くの方から小走りに百合若の方にやってくる女がいます。百合若は一目でそれが春日姫とわかりました。
「春日・・」百合若は驚愕(きょうがく)し、春日姫の許に駆け出しました。再会できた喜びを表したかったのですが、百合若の雄叫び(おたけび)は、まるで野獣(けだもの)のそれのようでした。夫婦は駆け寄り手を握り合いました。
なつかしの我が家で再会できた喜び!夫は妻に孤島での暮らしを語り、妻は夫に艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えなければならなかったこと、別府兄弟の常軌を逸した扱いを語ります。
「ことに別府兄弟の兄の方は、私を手に入れようとしましたが、断られると激怒のあげく、家臣に私を殺すよう命じました。あの時は、危うく命を落とすところでした。」
「うん、そのことは私も耳にした。」百合若は答えます。「身を投げて命を落としたと聞き、動揺した。心の中で復讐を誓い、実行の機会をうかがっていた。今日あの極悪人を始末した。そこへお前があらわれた。これ以上の喜びがあろうか。夢ではなかろうか!」
「聴いてください。貴方様。いかにして兄弟(ふたり)の魔の手から逃れたかお話しなければなりません。私を殺すよう命ぜられた家臣はかっては貴方に長年仕えていたものでした。戦いの最中受けた毒矢がもとで、貴方様が島で亡くなったと信じていたようです。以来兄弟(ふたり)に仕えておりましたが、貴方の忠臣は、貴方や私のことは忘れませんでしたから、私を殺しはしませんでした。そんなことをすれば、一生罪の呵責(かしゃく)にさいなまれると思ったのでしょう。とは言え、非道な主(あるじ)の命令に従わなければ、罰せられ、別の家臣が命(めい)を受けて私を殺しに来ると思ったのでしょう。その家臣には、私と同じ歳の娘さんがおりました。見かけも私に似ていたのです。娘さんに私のことを話しました。娘さんは父親の苦しみを耳にし、自分の父親と私を助けるため命を捧げる決心をしました。」
春日姫の目は、涙があふれんばかりで、しばし言葉を継ぐことができません。
百合若は痛く心を打たれました。その後、その可哀想な娘さんを祀る寺を建立しました。

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