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百合若神社 その3

2009年02月04日 07時32分10秒 | 神社
ある日のことです。沖合いで魚を獲っていた漁師がふと見ると、何かが島で動いているのです。目を凝らし、耳をそばだてると、一人の男が何か叫んで、手を振っているようです。男が百合若であることはおわかりですね。
漁師は直ちに島に向かって漕ぎ出しました。その得体の知れぬ者を初めて見た時の驚きようったらありません。もじゃもじゃのひげ面、伸びきった髪、真っ黒な手足、ぼろぼろの着物。人の言葉を話す鬼のようでした。
「某(それがし)はもと百合若殿の家臣、二年前の朝鮮軍との海戦に勝利の後、百合若殿一行は、この島に立ち寄り、しばし休息された。しかし某は船に乗り遅れ、独り島に取り残されてしまった。以来、人に出会ったのはそこもとが初めてだ。某を九州に連れて行ってはくれまいか。」
百合若は自らの素性(すじょう)は明らかにはしませんでした。ひよっとすると漁師が別府兄弟配下の者かも知れないと思ったからです。
漁師は男を不憫(ふびん)に思い、百合若を舟に乗せて戻ると「苔丸」と名づけました。顔といい体といい、まるで苔のように毛で覆われていたからです。漁師は苔丸を僕(しもべ)のように扱いました。そのうち、苔丸が切れ者で、並外れた力持ちであることがわかりましたから、漁師はことあるごとに苔丸に別府兄弟や春日姫のことを話して聞かせてました。
「いいか、あの兄弟(ふたり)は百合若の地位を奪い、我が物顔で国を治めている。庶民に重税を課し、労働を強要している。宮殿のような邸宅を構え、贅沢三昧の毎日を送っている。かたや、庶民は艱難辛苦に耐えている。権力に物言わせ、好き勝手のし放題。春日姫までわがものにしょうとした。可哀想に!百合若を心から愛していた春日姫は結局、まこもが池に身を投げて死んでしまった。」
妻の死を耳にした苔丸は心臓が張り裂けんばかりであったが、自分が百合若である、とは言いませんでした。

つづく
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