汨羅の観察人日記(一介のリベラルから見た現代日本)

自称『リベラル』の視点から、その時々の出来事(主に政治)についてコメントします。

石原慎太郎批判ー尖閣諸島の購入

2012-05-05 15:53:02 | 石原ファミリー


東京都が、石原都知事主導も下、尖閣諸島の購入を進めている。
報道によると、7,500万円近い寄付が集まっているとのことである。

石原都知事曰く「国がやらないから」都が買うとのこと。
「東京都が尖閣諸島を購入。個人で持つより安心できる」
との意見が多いようである。
しかし、冷静に考えると、石原慎太郎は何のために尖閣諸島を購入するのだろうか。

私は尖閣諸島を直接見たことがあるが、あんな岩山に不動産としての価値があるはずはないので、東京都民の利益になることはない。

そうすると、国益のために購入したという事なのだろう。
一介の首長が地方自治体の権限や住民の利益より、国益のため税金を使うという、知事に与えられた権限を逸脱することに税金を使用し、そのことを得意げに語っていること自体、私には理解の範疇外である。控えめに表現して「自分に与えられた権限が理解できていない」。端的にいえば、次の総選挙を見据えた売名行為であり、典型的な公私混同である。

話はそれるが、このような行為に対し、支持決議を出している大阪維新の会なる組織は、この段階で思慮の浅い人間の集団であり、国政などは冗談のレベルということがわかる。

さて、貴重な都民の税金を都民の利益とは何の関係もない不動産に投入する今回の行為は、石原都知事が目論む「国益」とやらになるのだろうか。
結論から言えば、否である。さらにいえば、「国益」を損ねる可能性が高い。

仮に中国人(香港の活動家含む)・台湾人が尖閣諸島に上陸したら、警視庁の機動隊を使って不法侵入の現行犯で逮捕するのか?都有地への不法侵入なのだから、中国漁船が尖閣に向け出港したという情報を得た段階で機動隊を送り込んで逮捕できる態勢を構築する必要がある。
次に、逮捕した後の処置はどうするのか。
仮に、東京まで連行した場合、大きな外交問題になり、中国では日本商品の不買運動が起こり、中国海軍の軍艦が尖閣諸島付近に対抗処置で進出してくる可能性がある。
特に、領土問題は主権の絡むデリケートな問題であり、一歩間違えると戦争に発展する可能性がある。
凡そ地方自治体には防衛・外交機能は無いのだから、東京都庁がこのような危機に有効に対処できない。国が対処しようにも、東京都と二元的な解決をせざるを得ないため、あれよあれよという間に状況が悪化。中国・台湾当局も状況をコントロールできずにということが生起する可能性がある。日本政治は調整型の政治である。また、中国にしても党の軍や大衆に対する指導力に対して疑問が呈されている今日、このシナリオに突き進む可能性は低くないといえる。

それでは、このような問題が生起するので、その場で追い返すのか。中途半端な対応では、中国や台湾の活動家になめられ、それこそ活動家が押し寄せてきて、中台のプロパガンダに用いられるだけである。

いづれのオプションになるにしろ、日本の国益に沿うということなどないのである。

では、このような事態が生起して困るのは誰か?都庁の職員でもなければ石原都知事でもないし。それは日本国民であり政府の人間である。
つまり、今回の尖閣諸島により、石原都知事は売名できる上、何のリスクも背負わないのである。
石原都知事が責任を取らず、他人に押し付けるのは、新銀行東京をみれば明らかである。
この、ノーリスク・ハイリターン人間は、「政府が悪い」「国民の覚悟が無い」と称して、自分の蒔いた種には知らぬ存ぜぬを貫きとおすのであろう。

つまり今回の件は、何のリスク・責任もとるつもりの無い人間が行った、自身の右翼チックな思想と政界再編を睨んだ売名の必要性の相乗効果による行動であり、国益を考えた行動でも何でもないということである。
そしてマスメディアや一部国民は、この無責任な売名行為に乗ってしまったということである。

余談になるが、石原都知事はなにやら危機管理に強いと思われているが、これほど危機管理に向かない政治家はいないといえる。
なぜなら、この男は肝心な時に逃げ出す人間だからである。
石原慎太郎が肝心な時に逃げ出す人間だということは、中華人民共和国との平和友好条約の国会承認時における不様な振る舞いを知っている人には有名な話である。