紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

10月はたそがれの国

2007-10-01 21:14:50 | 読書
 いわずとしれたアメリカの詩情豊かなSF作家、レイ・ブラッドベリの短編集(私のもっているのは創元SF文庫だったかも)である。これはちょっとばかりホラーな分厚い短編集。表紙や物語のオープニングに1p入るイラストがかっこよくてとてもブラッドベリの作風にマッチしている。プレ・ハロウィンの気分を味わうにはぴったりのジャストシーズンな1冊。

 高校生の頃は、ブラッドベリにぞっこんだった。『たんぽぽのお酒』にはまったときには、どうやって作るのか血眼で!?調べた(笑) たぶん受験が終わった大学生の頃に、やっとホワイトリカーを買って来て、道端のタンャの花を集め「たんぽぽ酒」を作った。けれど未成年だったし、実はそれほどアルコールに興味がなかったので、友だちにあげてしまった。宝物のように何度も読んだ。

 『火星年代記』を読んだ時には、頭部をホールインワンされたような衝撃だった。なんていうのか、読んだ事のない世界だったので、そのあまりにリリカルな幻想に舞い上がってしまったのだ。これはオムニバス形式の長編。大変な名作。(でも皮肉な事に、精緻なクリスタルワールドに手垢がつくことが浮ュ、再読できない)

 短編集で一番好きなのは、たぶん『太陽の黄金(きん)の林檎』かもしれない。(『刺青の男』も捨てがたいが) 中でも『山のあなたに』という短編は忘れがたい(といいながら、記憶が間違ってたらごめんなさい)。私の記憶では、こんな話。

 奥深い山の中に住む字の読めない叔父叔母の元に少年がやってきて、彼らに郵便が来るよう、毎日DMを請求して上げる。郵便がくるなんて、ほとんど経験のない叔母は大喜びし、読めないDMを喜びでいっぱいになりながら封を切って眺める。幸せな日々が続くが、ある日少年は家に帰ってゆく。DMは徐々に少なくなってゆき、いつしか途絶えて。
・・・叔母さんは、たぶん少年が来る前以上に孤独を感じて、どれだけ嘆いただろうと、学校に向かう京阪電車の中で、彼女にずいぶん思いを馳せた。

 10月になったことと、郵政民営化されたことで、どうやら私の中のブラッドベリ・スイッチがオンになった模様。

 旧制高校の学生がわけもわからず闇雲に哲学書を読みあさったように、現代の(私の時代も含め)10代がファンタジーを読むのは意味のあることだと思う。
 ファンタジーの中には、哲学や宗教があるはずだから。いのちや社会システムや人生について10代の人たちが読むには、やはり直裁に書かれたものより、私にはファンタジーの異次元世界から吸収する方が相応しいような気がする。(好みや性格にも依るだろうが)

 今も昔もティーンは人生の崖っぷちを歩かなくてはならないから、彼ら自身が見つけなければいけない道しるべは必要なのだ。そして親は気が気ではない10年ばかりの日々を送るのである。(子どもひとりにつきだから、複数いるともう少し長い。やれやれ)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿