去年、自宅で忘年会前日に、本棚の入れ替えをした。夫とふたりで夢中になって「あの本を1Fに、これは2Fに!」と、楽しい作業を味わった。
そのときに、ジャズ好きな夫のために昔私がプレゼントした村上春樹&和田誠コンビの『ポートレート・イン・ジャズ』(新潮社)が、2Fの手に取りやすい場所に移動した。これは、ジャズ・ミュージシャンの肖像を和田誠氏が描き、それに村上春樹氏が各ミュージシャンへの愛情に満ちたエッセイをつけた本で、年末に「セロニアス・モンク」の箇所が無性に読みたかった私は、この本がみつかった喜びとともに「セロニアス・モンク」のページを開いた。字の書いてあるのはたった2P。村上春樹氏の秀逸で的確なモンクへの賛辞は、「そうそう、そうなんやー!」と私を有頂天にした。
セロニアス・モンクの紹介コメントとして「・・・不協和音なハーモニーとつまずくようなタイム感覚によって演奏・・・」とあり、この人の曲を聴けばすぐ、「あ、モンクや」と分かっちゃうような個性的な演奏だけど、モンクの良さを説明するのはすこぶる難しい。まったく言葉が出て来ない。
それを村上春樹氏は『(彼の音楽によって)温かく励まされ』た、としょっぱなからジャストな感想を書いている。引用を続ければ
『モンクの音楽は頑固で優しく、知的に偏屈で、理由はよくわからないけれど、出てくるものはみんなすごく正しかった』
『彼の音楽はたとえて言うなら、どこかから予告もなく現れて、なにかすごいものをテーブルの上にひょいと置いて、そのままなにも言わずに消えてしまう「謎の男」みたいだった。モンクを主体的に体験することは、ひとつのミステリーを受け入れることだった。』
『謎の男』! なるほどそのとおりや!と深く納得してしまいました。モンク
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