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気ままな雑記帳です。話題はあれこれ&あっちこっち、空を飛びます。別ブログ「時代屋小歌(音楽編)(旅編)」も、よろしく。

フォークソング されどわれらが日々

2008年03月28日 | レビュー(テレビ、ゲーム、本、映画、その他)
これは、フォークと呼ばれた音楽の黎明期から主に70年代に活躍した13人のシンガーのインタビューから成り立っている本である。
編者は、週刊文春編集部。発行は、文藝春秋。

その13人(組)のシンガーの内訳を記しておこう。

南こうせつさん。りりィさん。NSPの中村貴之さん。三上寛さん。山崎ハコさん。ビリー・バンバンのお二人。なぎら健壱さん。高石ともやさん。カルメン・マキさん。シモンズのYumiさん&青木まり子さん。西岡たかしさん。友川かずきさん。小室等さん。

多彩な顔ぶれだし、話を聞いてみたい方が何人もいるので、買ってしまった。
それぞれ、若い頃に大活躍し、その名を残したシンガーばかりである。
当時のこと、そして今思うことなどが綴られている。
中には、かなり踏み込んで赤裸々に語られている箇所も多く、興味深かった。
まあ、今だからこそ語れたのだろう。

個人的には、現役の岡林さんや泉谷さん、拓郎さん、陽水さん、財津さん、佐渡山さん、五輪さん、藤岡藤巻(元まりちゃんズ)、古井戸のお二人、エンケンさん、あがたさん、ピピ&コット、海援隊などのインタビューも読んでみたかった。

きっと、どのシンガーにも、当時語れなかったこと、宝物のような体験談、などがたくさんあることだろう。

この本読んで思ったのは、当時のシンガーは(特に黎明期の人は)、最初は音楽で飯を食っていこうという気はなかった・・という場合が多いなあということだ。
いつのまにか周りをとりまく環境が勝手に(?)動きだし、気付ばプロとしてやっていくことになってしまっていた・・そんなケースがけっこうあったようだ。まあ、当時の音楽環境のせいもあろう。
今のように自分で歌を作り自分で歌い(演奏し)、しかもそういう曲がチャートに溢れてる・・なんてことは当時はなかったものね。

今は違うよね。
最初から音楽で売れてしかもそれで飯を食ってゆくという野望であふれた若者が多いと思う。そういう人が音楽をやって、プロを目指してきている。

それで飯を食っていくとなると、当然売れなければならない。
売れるためには、どうしたら売れるかということを考え、どういう曲を作ったら売れるかということも考えて曲を作る。

思うに・・黎明期のフォークシンガーが今見直されてるのは、今プロを目指す人たちの作る楽曲との「モチベーションの根源」が違うからなのかもしれない。
黎明期のフォークシンガーが歌っていた内容と、今の若いシンガーが歌っている内容が根本的に違うからではないだろうか。
歌詞のテーマの選び方、歌い方、そして生き方。
だからこそ、黎明期のフォークシンガーの歌ってた歌が新鮮に映るのではないだろうか。

黎明期のシンガー達の時代は歌謡曲の時代だった。
レコード会社があり、専属の作詞家がいて、お抱えの作曲家がいて、専属の歌手がいて。
で、専属の作詞家や作曲家が作った歌を、専属歌手が歌う。売れるための戦略を練って。
そんなところに、それまでの歌謡曲の作り方をぶちこわすようなフォークシンガーが現れたのだ。

そういう意味では、今のJ-ポップってのは、昔の歌謡曲の時代の歌の作り方に戻ってきてるのではないだろうか。
いくら自作の歌を歌っていたとしても、いくら曲がロックっぽくてもフォークっぽくても・・である。
歌う曲が自作の曲であろうが、なかろうが、曲調がロックであろうがフォークであろうが、それは今では昔ほど「売り」にはならないし「新鮮」でもない。むしろ、それは「当たり前」になってきてる。つまり、完全にもう定着してるのだ。体制側ともいってもいい。
歌の作り方も、今のJ-ポップは「方程式」「正しいヒットソングの作り方」で作られている気がする。
黎明期のフォークシンガーの作る歌は、そういうのはあまり意識してなかったような気がする。良くも悪くも、ね。
まあ、だからこそ、聴くに耐えない曲もいっぱいあったのだろうけど。残っていないだけで。

今大事なのは、どういうところから歌が生まれ、どういうモチベーションから歌が作られるかという違いなのではないだろうか。
歌作りをするなら、一度「方程式」「正しいヒットソングの作り方」なるものから離れてみるのも必要かもしれない。
クリエイティブであろうとすれば、するほど。

そう考えると、既成の歌謡曲社会を壊した黎明期のフォークシンガーたちの歌ってた歌は、今一度見直してみるのは悪くない風潮だと思う。
それがずべて良いというわけではない。でも、今では失われたような歌、今では作られそうもない歌ってのが、そこにはあるとは思う。
で、なぜそれらが、当時の歌謡曲の流れに風穴をあけたか。当時のシンガーが今でもリスペクトされてるのはなぜか。
当時の歌が今見直されてるのがなぜか・・・が少し見えてくるかもしれない。
それをマネしろという意味ではなく、スピリットの問題だ。
真似して同じことをやっても、当時と今では時代が違うしね。














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