行ってきます・とただいま・の間。

2013,1に長男から貰った、SONY NEX-F3で撮っています。
その日の事柄と撮りたて写真で残してます。

物 語る。その4。。。。

2013年01月24日 16時48分47秒 | 物語。

やがてひとつの季節が過ぎようとしていた。

ユリもすっかり花びらを落として一本の茎ばかりが目立っている。
それとともに、お婆さんの様態も芳しくなくなっていた。
少女は、いつも目を閉じているお婆さんを見舞う。
時折、苦しそうに寝返りを打つお婆さんを見ると、自分も苦しくなる。
1人になってしまう・・私も、おばあちゃまも・・・・
そんな寂しさが小さな胸を襲った。

おばあちゃまは、白いユリのよう・・・
少女は、ユリの球根を掘り起こした。
そしてそれを、お婆さんの枕元に持って行った。
なんのためか、どうしてか、理由はつけられないが、少女はそうしなければいけないような気がして。
何かの御まじないにでもなるかのように。

球根は、日が経つうちに、萎れて小さくなっていた。
少女は片時も離れず、お婆さんの傍についている。

静かなときが流れていく・・ 静かに・・・

少女は大好きなお婆さんの大好きな手を握り締めていた。
すると、お婆さんは、少しだけ微笑んだような気がした。そして、小さくなっていたユリの球根を口に含み、ゆっくり飲み込んだ。
少女をじっとみつめ、「大丈夫だから。」というように、頷いて目を閉じた。
そのまま、もう2度と目を開けることはなかった。

 

歳月は流れ、飼い犬のジョンも老犬になった。
また、自分の周りからいなくなってしまうものがある。
おばあちゃまは、かつてこう言っていた。

【球根も種も木も、誰かがせっせと植えてくれたもの。それを見る人が幸せになってくれたら・・・・】との思いがあると。

ジョンの眠る場所に、桜の苗を植えた。
いつまでも、ジョンを忘れないために。いつまでも、おばあちゃまの言葉と意味を忘れないために。

さらに、時は流れる。
誰の上にも同じように、刻々と変わらずに。早めることもできず、戻すことも勿論できない。
それでもきっと、時というのは、繋がっているもの。どこかでプツンと切れてしまうのではなく、過去・現在・未来を繋げている唯一のもの。
たった今の出来事は、すぐに過去になり、取り返しのつかない出来事にもなる。
幸せも、はらはらとこぼれていくかのように、同じ幸せはとどまっていない。
それでも、ときに忘れる・ということが人には出来るからこそ、救われることもある。

そんなことをふっと、ベッドの上で思っていた。
それとも、夢だったのだろうか。
傍らにかつて自分が居たように、今は、この子がいる。
ミニカーを転がしては、喜んでいる。自分も寝そべって、車窓の位置に目を置いて、まるで自分が運転しているかのように。
時折、呼びかけに振り向いてにっこり笑う、そのしぐさの愛しさ。でもこの子との別れがすぐ近くに来ている。
1人になっていくこと・家族と別れること、体が老いていくこと。
恐れていること・・・
おばあちゃまの恐れが理解できる。


「ばぁば、何か置いてあるよ。」
そう言いながら、ミニカーを持つ反対の手に小さな花束を持って枕元にやってきた。

チューリップの花びら1枚。その中にオレンジ色のガーベラ・すずらんの茎・なでしこのぎざぎざ花びら・薔薇の香りが微かにしている。
リュウノヒゲがリボンの役目をしている。
これは・・・・

小さな小さな花束を受け取り、体を起こした。
窓の外、青空一杯に、桜の花びらが舞っている。
温かな春の風に、ひらひらと、ひらひらと、数限りない花吹雪が舞っている。
その中に、ユリを束ね抱えているおばあちゃまが見える。微笑んでいる。
「怖くはないのよ。」と。

             

    

                                                                            Conclusion

               

                                                                           

 

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4回に渡っての物語を最後まで読んでいただきありがとうございました。
つじつまの合わないところなどあるでしょうが、上手に読んでいただいて、空想・想像・妄想などして、消化してください。
(*≧m≦*)
書いておいて、読んでくださる方に、丸投げのようですが、なにせ、素人ゆえ。。
また、気が向いたとき、私の1人遊びにお付き合いいただければ、とっても、嬉しいです。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
ありがとうございました。


物 語る。その3。。。

2013年01月23日 14時20分14秒 | 物語。

甘く温かいアップルテイは、2人の時を暖かく満たしていった。

少女は、シワが浮いているようなお婆さんの手を見て、
「触っても良い?」と聞いた。
お婆さんは、どうぞというように、手を差し出した。
「私、おばあちゃまの手、好きよ。」
そして、何度も何度も手を撫でていた。

庭に咲いている花たちは、季節が巡るたび、自然と咲き香る。
日陰で咲くことが好きなもの、陽の光を全身に浴びて咲くことが好きなもの、花にも個性がある。

少女は、光輝く白いユリと、お婆さんの姿が一瞬重なったことが脳裏から消えていかない。
おばあちゃまは、白百合のように美しい。
しわくちゃの手も、とっても綺麗。

お婆さんは、少女に優しい笑みを浮かべてこういった。

「花は、ここにこれがあったら良いなあと思う人が、植えたんだよ。」

桜の下に黄色い菜の花が咲いていたら、見事に美しいだろうと想像した人が、植えた。
何年も何十年たってもそこで見る景色が美しいことを望みながら。そして、それを見る人が幸せになってくれたら。との思いで。

庭の球根も、種も、木も、昔、誰かがせっせと植えてくれたからなんだよ。
少女は、ふーん、というように話を聞いていた。

そして、何を思ったか、お婆さんにこんな質問をした。
「おばあちゃまは、生まれたときから、おばあちゃまだったの・?」

お婆さんは、声を出して笑った。
「そうよ。私は、生まれた時から、私。代わりはしないわ。私自身なのよ。」
「そう・・ょね。良かったわ。ずっとおばあちゃまで。」
「私も、あなたのように、蝶を追いかけ、草花を摘み、川のせせらぎを聞いて昼寝もしたわよ。」
遠い目をして、お婆さんは、昔を思い出していた。

戻りはしない。戻れもしない。
私の人生はもう、そう多くはないこと。

・・・・・

少女は、フッと思いついたかのように、また、こんなことを訊ねた。

「おばあちゃまは、大きくなったら、何になりたいの?」

その問いかけにも、お婆さんは、きちんと答えた。
「そうね。私は、何も怖くない人になりたいわ。」

「何も怖くない人・・・。私は、1人の部屋が怖いの。」
「うんうん。私も怖いわよ。」
「それと、怒っているママが怖いの。」
「そうかいそうかい。」
「それから、大きい蜘蛛が怖いの。」
「うんうん。怖いものだらけだね。」
優しいまなざしを向けながら、お婆さんは、少女の話を聞いていた。

「どうしたら、何も怖くない人になれるの? おばあちゃま。もうすぐなれるの・?」
「何ものをも恐れない人になるためには、正直な人になること、嘘を言ってはいけないのよ。」
そして、少しの間、考えていたお婆さんは、
「私は、まだまだ、そういう人にはなれそうにないわ・・。」

幾つになっても、怖いものだらけだった。
1人になっていくこと、家族と別れること、体が老いていくこと。
でもそれも、自然の流れに任せていこう。

少女もまた、何か一生懸命考えて、結果が出たように、明るい声で言った。

「おばあちゃまは、まだ何も怖くない人には、なれないのね。」
「そうだねぇ。」
「じゃあ、まだまだ、おばあちゃまは、これからもっと大きくなるのよ。私を追い越すくらいに。」

ねっ。

少女とお婆さんは、2人して屈託の無い笑顔を寄せ合った。

 

 

                                                                         end


物 語る。その2。。

2013年01月21日 15時14分17秒 | 物語。

冬の光は、誰にも姿を見せることなく、空を渡って行った。

お婆さんとまだ幼い少女のもとに、花束を届けることがなくなってから、お婆さんは、めっきり元気がなくなった。
少女は、お婆さんに手紙を書いて、とお願いをする。

「小さな花束を、また届けてくださいな。」 と。

数日、長い雨の日が続き、花束もこれじゃ、届けられないわね、と、言い聞かせる2人。
雨に打たれた花たちは、うなだれ、地面に顔を近づけていた。

少女は、お婆さんを元気付けようと、雨が早く上がるよう、照る照る坊主を下げた。
次の日は、少女の願いも叶い、真っ青な良いお天気になった。

待っていた少女は、庭に飛び出し、ハルジオンを摘んでお婆さんの枕元に届けた。
お婆さんは、少女の頭を優しくなでて微笑んだ。

それじゃ、またお手紙を書くとしようかね。
「水色のパンジーの花束が欲しいわ。」
お婆さんは、そうお願いするような手紙を書いた。
少女は、薔薇の棘に刺した。
しかし、少女はまだ字が読めない。
なんて書いたの? と訊ねると、水色のパンジーをお願いしたのょ。と答えた。

少女は、庭に出てはみたが、どれがパンジーだかわからない。
ジョンに話しかけてみた。
ジョンは、微笑んでこちらにおいでというように垣根の下へと案内した。
そこには、水色の花が咲いていた。
その花を摘んだ少女は、自分の髪を結わいていたゴムでとめた。

大急ぎでお婆さんのもとへ飛んで行き、
「おばぁちゃま、花束が届いたわ。」
そういって、お婆さんの手の中に渡した。

お婆さんは、とても喜んだ。
「また、きてくれるようになったんだね。」

少女は、喜ぶその顔をみて、とても嬉しかった。
そして、また手紙を書くようお願いした。

数日、お婆さんの手紙は、少女に託され、少女は、リスや、鳩に助けられて、お婆さんの望む花を束ねて届けた。

お婆さんは、とても元気になり、ドライフラワーになった花びらの詰まった小瓶ももう入りきれなくなっていた。
ある日、お婆さんは、こんな手紙を書いた。

「あなたは、アップルティが好きかしら・?」

少女にまた棘に刺してきてほしいとお願いした。
少女は、なんのお花をお願いしたの?と聞いた。

お婆さんは、今度は、白いユリの花びらの花束をと、書いたのよ。

少女は、白いユリ・・白いユリ・・と、庭を探して廻った。
お婆さんは、気づいていた。
せっせと花を集めて自分に届けてくれるのは、誰でもない、あの子なんだということを。

少女は、白いユリがなかなか見付からず半べそをかきながら探していたが、とうとう日が暮れてしまった。
棘に刺した手紙もいつのまにやら、風に飛ばされどこかへいってしまった。

次の朝。少女は、朝日に輝く一輪の大きな白いユリが咲いているのを見た。
そして、花の名前は知らなくとも、きっとこれなんだと思った。
でも、今咲いたばかりのこの花を切ることがとても悲しかった。
おはあちゃまのため。そう思った少女は、大きな白い花びらを折ろうとしたとき・・・


「折らないで。」

窓からお婆さんの声が聞こえた。
振り返り、見上げると、お婆さんは、窓辺に立っていた。
ユリの花のように白く輝いてみえた。

「おばぁちゃまっ・・・」

「もういいのよ。もう、いいわ。」
微笑むお婆さんは、少女をいつものように部屋に招いた。
そして、ティーテーブルには、甘くて温かいアップルティが乗っていた。

 

 

                                                                                                                                             end


物 語る。

2013年01月20日 14時40分29秒 | 物語。

チューリップの花びら1枚。
その中に、オレンジ色のガーベラ・すずらんの茎・なでしこのぎざぎざ花びら・薔薇の香りを添えて花束に。
リボンは、リュウノヒゲを1本。
可愛い花束が出来上がり。

さあ、誰かにプレゼントをしましょ。

胸に抱えて歩き回り、ふと見上げた薔薇の蔓のある窓辺に、少女が1人。
彼女は、両手に顎を乗せ、今にも泣きそうに空を見ていた。

よし、決めた。
この子にあげよう。

少女は、奥から呼ばれる声に返事をして、入って行ってしまった。
窓は開いている。そっと、花束を置いて帰ろう。

チューリップの花びらに、ムスカリの茎を3本。
くるりと巻いて、水仙の葉でくくって、可愛い花束が出来上がり。

さあ、彼女にプレゼントしに行こう。

いそいそとあの窓辺に向かう。
今日も彼女は、窓辺にいる。そして、また奥から呼ぶ声に、返事をして、中に入って行ってしまった。
窓は開いている。そっと、花束を置いて帰った。

ガーベラの葉に、タンポポが包められるだけ入れて、朝顔の花が付いている蔓をリボンにして花束の出来上がり。
彼女は喜んでいるのだろうか。受け取ってくれているのだろうか。
そんな心配をしながら、またあの、窓辺へ。

すると、手紙が薔薇の棘に刺してあった。

「いつも、可愛い花束をありがとう。」 と。
受け取っていてくれたことが分ると、嬉しくて、花束作りを続けていった。
それは楽しくて嬉しい毎日の日課になっていった。

手紙が今日も刺してあった。

「あなたは、だぁれ?  庭を走り回る犬よりも早く走れるの?」
そんな質問が書いてあった。

よし。彼女が見ている目の前で走ってみせよう。
花束を持って行くと、今日は彼女が窓辺にいた。
待っていてくれたんだろうか。

嬉しくなって、目の前で思い切り走ってみせた。
彼女の家の犬は、ジョンというらしい。
「ジョン~! なんて早いの。凄いわ。」
彼女は、飼い犬のジョンが嬉しそうに走り回っているのを見てとてもはしゃいだ。

次の日。
すみれとデージーの花びらの花束を持って行った。
今日の手紙には、
「あなたは、リスより上手に木登りができるのかしら?」

今度は、木登りの練習をした。
彼女の家の庭にある大きな木を登ってみせられるように。

青い花びらばかりの花束を作って、出かけて行った。
そして、彼女がいる目の前で、大きな木を登り始めた。

まっすぐ横に伸びた枝の上まで行って彼女と目が合った。そして、花束を手渡した。
するとその時、奥から彼女を呼ぶ声がした。
彼女は、中に入って行った。
木の枝からその部屋の中が見えた。

中央には、大きなベッドが置いてあり、そこには、年老いた女性が横になっていた。
彼女は、そのおばあさんの枕元にある小瓶に、花びらを入れた。
今までの、花びらがドライフラワーになって詰まっていた。

2人は会話を始めた。

「今日も花束を持ってきてくれたんだね。」
「そうょ、おばあちゃま。来てくれたわ。」
「そうかい、そうかい。」
「また、きっと来てくれるわ。」
「そうだね。」

自分が置いてくる花束を楽しみに待っていてくれるんだ。
よし、今度はピンクの花びらを集めて作ろう。

そして、持って行くと、また手紙が棘に刺してあった。

「あなたは、鳩よりも上手に空が飛べるのかしら?」 と・・・・・・

空を・・?
自分は空を飛んだことがない。練習をすれば飛べるようになるんだろうか。
今まで一度もやったことがない。どうやったら、空を、鳩のように、それ以上に、飛べるんだろうか。

今日は、真っ白い花びらを集めた。
いつものように、花束を抱えて彼女とおばあさんが待っている家に行った。
犬のジョンより早く走り、リスより上手に木に登り。木の枝から部屋の中を見る。
少女はいない。

ベッドに横になっているおばあさんがこちらを見ている。

「誰だい・・? 誰か居るのかい?」

 

今だ。飛んでみせるからね。
枝の上に立ち、思い切り枝を蹴った。そして、高く高く、空飛ぶ鳩に追いつこうと飛んだ。

 

少女が部屋に入ってきた。

 

「おばぁちゃま、誰と話しているの?」
「うううん。今ね、窓の外で、キラッて光るものがあったからね。」

少女は、窓辺に、真っ白い花束が置いてあるのを見つけた。そして、それを急いでおばあさんの枕元に持って行った。

「いつもいつも、こんな小さな花束を届けてくれるのは、いったい誰なんだろうね・・・」

 

 

                                                                                                                                            end