行ってきます・とただいま・の間。

2013,1に長男から貰った、SONY NEX-F3で撮っています。
その日の事柄と撮りたて写真で残してます。

物 語る。その2。。

2013年01月21日 15時14分17秒 | 物語。

冬の光は、誰にも姿を見せることなく、空を渡って行った。

お婆さんとまだ幼い少女のもとに、花束を届けることがなくなってから、お婆さんは、めっきり元気がなくなった。
少女は、お婆さんに手紙を書いて、とお願いをする。

「小さな花束を、また届けてくださいな。」 と。

数日、長い雨の日が続き、花束もこれじゃ、届けられないわね、と、言い聞かせる2人。
雨に打たれた花たちは、うなだれ、地面に顔を近づけていた。

少女は、お婆さんを元気付けようと、雨が早く上がるよう、照る照る坊主を下げた。
次の日は、少女の願いも叶い、真っ青な良いお天気になった。

待っていた少女は、庭に飛び出し、ハルジオンを摘んでお婆さんの枕元に届けた。
お婆さんは、少女の頭を優しくなでて微笑んだ。

それじゃ、またお手紙を書くとしようかね。
「水色のパンジーの花束が欲しいわ。」
お婆さんは、そうお願いするような手紙を書いた。
少女は、薔薇の棘に刺した。
しかし、少女はまだ字が読めない。
なんて書いたの? と訊ねると、水色のパンジーをお願いしたのょ。と答えた。

少女は、庭に出てはみたが、どれがパンジーだかわからない。
ジョンに話しかけてみた。
ジョンは、微笑んでこちらにおいでというように垣根の下へと案内した。
そこには、水色の花が咲いていた。
その花を摘んだ少女は、自分の髪を結わいていたゴムでとめた。

大急ぎでお婆さんのもとへ飛んで行き、
「おばぁちゃま、花束が届いたわ。」
そういって、お婆さんの手の中に渡した。

お婆さんは、とても喜んだ。
「また、きてくれるようになったんだね。」

少女は、喜ぶその顔をみて、とても嬉しかった。
そして、また手紙を書くようお願いした。

数日、お婆さんの手紙は、少女に託され、少女は、リスや、鳩に助けられて、お婆さんの望む花を束ねて届けた。

お婆さんは、とても元気になり、ドライフラワーになった花びらの詰まった小瓶ももう入りきれなくなっていた。
ある日、お婆さんは、こんな手紙を書いた。

「あなたは、アップルティが好きかしら・?」

少女にまた棘に刺してきてほしいとお願いした。
少女は、なんのお花をお願いしたの?と聞いた。

お婆さんは、今度は、白いユリの花びらの花束をと、書いたのよ。

少女は、白いユリ・・白いユリ・・と、庭を探して廻った。
お婆さんは、気づいていた。
せっせと花を集めて自分に届けてくれるのは、誰でもない、あの子なんだということを。

少女は、白いユリがなかなか見付からず半べそをかきながら探していたが、とうとう日が暮れてしまった。
棘に刺した手紙もいつのまにやら、風に飛ばされどこかへいってしまった。

次の朝。少女は、朝日に輝く一輪の大きな白いユリが咲いているのを見た。
そして、花の名前は知らなくとも、きっとこれなんだと思った。
でも、今咲いたばかりのこの花を切ることがとても悲しかった。
おはあちゃまのため。そう思った少女は、大きな白い花びらを折ろうとしたとき・・・


「折らないで。」

窓からお婆さんの声が聞こえた。
振り返り、見上げると、お婆さんは、窓辺に立っていた。
ユリの花のように白く輝いてみえた。

「おばぁちゃまっ・・・」

「もういいのよ。もう、いいわ。」
微笑むお婆さんは、少女をいつものように部屋に招いた。
そして、ティーテーブルには、甘くて温かいアップルティが乗っていた。

 

 

                                                                                                                                             end