奈落のボレロ

Also sprach cyubaki3

アースダイバー

2010-12-10 08:52:55 | 

アースダイバー/中沢新一(講談社)

これは言わば中沢先生版「ブラタモリ」。世に出たのはこちらが先だが。キーワードは縄文と弥生、沖積世と洪積世、岬。大昔の東京は今よりもはるかに奥地まで海に侵食されたフィヨルド状態だったのだ。著者略歴を見ると人類学者、思想家とある。どうやら「オウム事件で宗教学者中沢新一は死んだ」(本人談)というのは本当だったようだ。

天才の時間

2010-10-25 10:20:36 | 

天才の時間/竹内薫(エヌティティ出版)

この本のタイトルの「天才の時間」とは暇のことである。ニュートンはペストで大学が閉鎖されて暇になったから万有引力を思いついたとか、アインシュタインは教授に嫌われて大学に残れず、暇な役所(特許局)に就職したから相対性理論を研究する時間があった等々。

この本の著者の竹内薫は約20年前に「アインシュタインと猿」でデビューした時から知っているが、その時に本のカバーに載っていた写真はちょっとナイーブな若き学究の徒という風情であった。それが数年前に久しぶりにテレビ(フジテレビのたけしのコマ大)で見かけたときには髭面のごついおっさんになっていたので、ちょっと驚くと同時に時の流れを感じた。

太陽系惑星の謎を解く

2010-09-09 16:22:49 | 

太陽系惑星の謎を解く/渡部好恵:著、池内了:監修(シーアンドアール研究所)

金星は自転方向が地球とは逆(時計回り)なので、太陽が西から昇って東に沈むという。もしかしたらバカボンのパパは金星人なのかもしれない。

チェット・ベイカーとクリフォード・ブラウン

2010-07-13 09:07:51 | 
最近チェット・ベイカーとクリフォード・ブラウンという全てにおいて対照的な二人のトランペッターの伝記を読んだ。意外な所に意外な人名が出てきたり、あまり関係ないと思っていたミュージシャン同士が実は接近遭遇していたり、初耳な話が多くてなかなか面白かった。考えてみれば、ジャズメンの伝記本というのは今までほとんど読んだことがない。ライナーノーツやジャズ専門誌で得られる情報で事足れリと思っていたのかもしれない。詳細な伝記を読んだからといってそれまで持っていたイメージが覆されるという程の事は無いが、分かったようで分かってなかった所も多々ある。例えばチェット・ベイカーの晩年の老け顔が巷間噂されるような麻薬のせいではなく、単なる父親からの遺伝であったことなど写真を見るだけでは想像もつかない。まさに事実は小説より奇なりだ。


終わりなき闇 チェット・ベイカーのすべて/ジェイムズ・ギャビン:著、鈴木玲子:翻訳(河出書房新社)



クリフォード・ブラウン 天才トランペッターの生涯/ニック カタラーノ:著、川嶋文丸:翻訳(音楽之友社)

「噂の真相」25年戦記

2010-06-20 11:51:36 | 

「噂の真相」25年戦記/岡留安則(集英社)

初めて「噂の真相」を読んだ時、何でこんな面白い雑誌があることに今まで気がつかなかったのだ!などと悔しがった事をよく憶えている。それだけに2004年に予告通り休刊になった時は非常に残念だったが、この本を読むとそれも仕方がないかなという気がしてくる。今思えばこのような過激な雑誌が25年間も存続しえた事の方が不思議だ。「噂の真相」というタイトルが「噂」と「真相」という先行スキャンダル誌の名前を合わせたものだというトリビアはこの”戦記”を読むまで知らなかった。

ぼくの大好きな青髭

2010-05-05 09:39:00 | 

ぼくの大好きな青髭/庄司薫(中央公論新社)

何故今さら庄司薫かというと、茂木健一郎のクオリア日記(過去ログ)でこの小説の事が言及されていて、60年代末の新宿が舞台(出版されたのは1977年)というところに惹かれてちょっと読んでみたくなったのだ。庄司薫は今の文壇で言えば島田雅彦のような存在だろうか(ちょっと違うか)。

無思想の発見

2010-05-02 09:45:30 | 

無思想の発見/養老孟司(筑摩書房)

養老孟司が解剖学を選んだ理由は”死体は死なないから”だとか。つまり死体は既に死んでいるので医療ミスで誤って死なせてしまうリスクが無いということ。何という解り易さ。それなら最初から医者になんかなるなよ!という突込みが聴こえてきそうだ。タイトルにある”無思想”とは”思想が無いというのもまた一つの思想”などという単純な(ありがちな)話ではない。

宮台真司ダイアローグズⅠ

2010-04-29 10:00:01 | 

宮台真司ダイアローグズⅠ(イプシロン出版企画)

宮台真司が90年代に様々な媒体で行った対談をまとめたもの。ⅠというからにはⅡ以降も出るのだろう。「ダイアローグズ」というタイトルは柄谷行人の同種の本を意識しているのだろうか。岡田斗司夫との対話の中で、”これからのビジネスはモノを作って売るより一般の人達に場所を提供するようなスタイルが勝ち組になるだろう”というような発言が出てくるが、これなどはまるで今日のBlogやTwitterを予見しているかのようだ。Blogが商売になっているかどうかはともかくとしてその先見性には驚かされる。

三島由紀夫vs東大全共闘1969-2000

2010-04-24 10:00:21 | 

三島由紀夫vs東大全共闘1969-2000/三島由紀夫、芥正彦、木村修、小坂修平、橋爪大三郎、浅利誠、小松美彦:著 (藤原書店)

1969年に行われた討論会「三島vs東大全共闘」に参加したメンバーと関係者が30年後に行った座談会を書籍化したもの。質量ともに充実していて読みごたえがある。ただし内容的には全共闘の方に重点が置かれていて、三島本人とはあまり関係の無い話が多い。1年後の市ヶ谷での自決の時と同じで、この討論会の時も三島の展開する論は相手に全く届いていない。しかし発せられた言葉を今読み直してみると、三島の目には現在の日本社会の混迷ぶりが見えていたとしか思えない。それ見たことかと呵呵大笑している声が聴こえてきそうだ。

三島由紀夫vs東大全共闘
http://www.youtube.com/watch?v=ttktCdQLixk

ジャズ喫茶 四谷「いーぐる」の100枚

2010-04-19 09:55:22 | 

ジャズ喫茶 四谷「いーぐる」の100枚/後藤 雅洋(集英社)

四谷のジャズ喫茶「いーぐる」のマスター、後藤雅洋のこれは何冊目の著書になるのだろうか。選ばれているアルバムは予想以上にマニアックで、これを全て揃えれば(入手不可能な盤もあるかも)コレクションにかなりの幅ができるだろう。

私はかつて明星一平(笑)というハンドルネームで憎まれ口を叩いて「いーぐる」HPの掲示板を荒れさせた(荒らしたのではない)ことがあるが、別にアンチ後藤さんというわけではない。それどころか「ジャズ・オブ・パラダイス」の初版本を持っているほどの昔からのファンなのである。この本を読んでいて、また久しぶりに「いーぐる」に行きたくなってきた。