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@アルジェリア

個人の視点で綴るアルジェリアのあれこれ。
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グアンタナモ、前回の続き。-愛する国へ戻れない者の心の痛み。

2009-05-29 06:29:41 | 時事系ニュース+α
前回の続き。

先日4人目のアルジェリア人が釈放され、フランス到着したことが5月16日にメディアで報道された。

既に3名はボスニアに帰化。彼はフランスへ。フランスを選んだのは、入国しても尋問や調査もなく、一般人同様に生活することを国が保障してくれたからだという。そして、フランスが許可を出したのには、身内がフランスに暮らしているという理由が大きかったようである。

アルジェリアに戻らなかったのは、アルジェリアにて再び拘束され、身元などを調査され、尋問されるのが嫌だったからだという。

帰化しようが、他国で受け入れられようが、旅行や出張でアルジェリアへ戻り次第捕まる可能性がある。政府の自分たちに対する態度が変わらない限り、自由に出入りできない状態がこれからも続くのだ。

アルジェリア人というのは、アルジェリアを誇りに思っている人間が非常に多く、フランス生まれだろうが、イギリス籍をもっていようが、生まれ育ちが他国だろうが、移民しようが、「私はアルジェリア人だ」と、胸を張って言う。

世界あちらこちらで暮らすアルジェリア人のなかには、アルジェリア政府から何らかの原因で、帰国すれば即逮捕あるいは、●年間アルジェリアに戻ってきてはいけないといわれている人物もいる。彼らはは帰りたくても帰れない。愛する国(母国)に戻れないことは、とても辛く、苦しいはずである。

最後に釈放された彼も、グアンタナモ基地に拘束された7年間のあいだ、自分は潔白であると主張し続け、辛い目にあっても何とか生きぬいて無罪を勝ち取った。やっと自由の身になったにもかかわらず、アメリカにテロリスト嫌疑をかけられてしまったことで、母国にマークされる羽目になり、帰りたくても帰れない立場におかれてしまった。そのことへのショックと怒り。

これは彼だけでなく、無罪で釈放されたのに、母国には拒絶され、他国に受けれてもらった人々全員の思いでもあるだろう。

現在、釈放された人の中には、ICJ(国際司法裁判所)にてアメリカを訴える姿勢を見せている人たちがいる。彼もそのひとりだそうだ。

オバマ大統領の夢-“グアンタナモ閉鎖”が実現に一歩近づくごとに、無罪放免とされる人が次々と釈放されていく。ということは、ICJへ告訴する人間もそれだけ増えるということである。

ブッシュ前大統領はこれらに対し責任をとるべきであり、国際法に依拠し罪をつぐなうべきだという声も挙がる。しかし私個人が想像するに、この世界、ブッシュ前大統領を出廷させ裁くことは、オバマ大統領を失脚させるよりも難しいと思う。
それにもし、アメリカが訴えられた場合、アメリカの経済や政治、国の財政面にも支障が出てくるであろう。

グアンタナモ閉鎖の実現で、問題が解決するではない。
もっと重大な問題は、その後にあるのではないのか?

オバマ大統領の苦悩は、これが序幕なのかもしれない。


無罪放免と釈放されたアルジェリア人-オバマ大統領が閉鎖に向けて奔走するグアンタナモ海軍基地とは

2009-05-26 21:59:33 | 時事系ニュース+α
ブッシュ前大統領がつくったキューバにある、アメリカのグアンタナモ海軍基地。表むきは、海軍基地。
ある日、アメリカの平和と治安維持のために(ついでに世界の平和のために)テロリストなど世界的に危険な人物たちを集めた収容所があるということが明るみになる。アメリカと世界の平和と正義のために、この場所が存在するのだと、ブッシュ前大統領は、我は正義のヒーローとばかり、うまーくたちまわった。

もちろん事実に基づく犯罪者もいるのだろうけれど、実際のところはアメリカ(ブッシュ政権)にとってこの世にいてもらうと不都合な人物や、不快な人物を重要危険人物(テロリスト)とみなし、私情や独断で世界各地から強制的に拘束し、キューバに移送させ、収容していたことも否めない。

そうでなければ、今頃何故こんなにも多くの人間が証拠十分で無罪放免になる理由がわからない。

グアンタナモ基地は、アメリカ国内にある、手に負えない凶悪犯罪人を収容する刑務所よりも、過酷なところなのだという。
かつてのナチスを髣髴させる、平成版強制収容所といっても大げさではない。ここに収容されている人物の多くが、イスラム教徒だといわれている。

外部からは完全に隔離された状態、家族など誰かと連絡をとることは許されず、人道的権利も無い。行われている尋問や拷問、そして虐待は、刑務所の死刑囚や無期懲役の囚人よりひどい扱いだと指摘するメディアもある。

1度収容されたら、無期限拘束。
ブッシュ政権時、心身ともに無傷で出てこられたら、それは奇跡だったようだ。

収容中に死亡した人、気が狂ってしまった人もいる。それが一体何人いるのかも不明。死亡した人は、既にどこかに葬り去られ、永遠に公表されることも無い死者もいることであろう。収容されている人数の具体な数字や、収容されている人物について(釈放された人間はのぞく)は、アメリカ内部でもごく一部のみしかこの情報を知るものはなく、未だ謎に包まれている。

拉致・拘束された人物は、母国や当時の居住土地では失踪や不法滞在者扱いになっている場合もある。家族やその国の政府すら、その人物がアメリカに拘束されたとか、グアンタナモにいると知らないからだ。その情報をを早い時期にキャッチできれば運が良く、無罪放免が発表された時にその事実に気づく家族もいるという。

アラビア語圏のCNNといわれるテレビ局、アルジャジーラに勤務するスーダン国籍のカメラマンもアフガン国境付近で拉致され、長い間収容されていた。

拘束理由は、“テロ活動に関与した嫌疑”であった。
現地で活動時、アメリカにとって不利な何らかの情報を入手したとか、パパラッチしたとか、きっと行動をかぎまわる邪魔な存在だったのであろう。アルジャジーラや他のメディアに対し「余計なことに首をつっこむな」という脅しと、見せしめのために拘束されたのだという声も出た。

アルジャジーラはこのようなアメリカの対応にもひるむことはなかった。一日も早く彼(我が社員)を救おうと、独自のメディアを通して長い間グアンタナモ基地の実態に迫りながら、彼の無実と潔白を訴えた。その強気な姿勢もあってか、他メディアでもグアンタナモ露出が増え、世界のお茶の間をにぎわす。謎のヴェール包まれていた基地の、アメリカにとって不利な秘密が露顕しはじめたのである。

さすがに世界全体が注目をむけはじめると、アメリカは。「彼はテロリストだ。そういう嫌疑がかかっているんだ。オレは世界(アメリカ)の平和を感考えて執った行動だ!」的発言をし、その場をうまく取り繕うとする。

拘束されてから、6年後。昨年の5月に上述のカメラマンは、同じくスーダン人の2人と無罪扱いになり釈放された。収容所では、拷問や200回を超える尋問を受けたという。現在はアルジャジーラで、仕事に復帰しているそうだ。

彼は、危険人物と証明する証拠は何も無い状態で拉致されたうちのひとりとされる。このような、不当な拘束をうけている人物が、収容所には沢山いるという。

ブッシュ政権も終盤に近づいたあたりから、グアンタナモの悪評が急激にではじめた。拉致された人々の多くは、危険人物と裏付ける、決定的な証拠も無い状態で収容されていたという話が浮上し、アメリカ国民からも政府に対する非難が高まったといえるだろう。証拠も無いのに、勝手に拉致するとは、世界の法律に違反するのではないか?と。

多くの国が何らかの理由で水面下で拉致しているという噂も世界にはある。それにもかかわらず世界から非難が集中したのは、グアンタナモ基地はその存在が明るみにでてたうえに、行為に度が過ぎていたということなのかもしれない。

ここまでくると何となく、オバマ大統領がグアンタナモ閉鎖を選挙演説でも訴えていたのか、その真の理由みえてくる。

公明正大だと胸をはれるのであれば、閉鎖する必要は無い。
他国から調達する頭脳とパワーをもつアメリカが、財政不足で閉めるはずもない。

一連の動きを見ていると、グアンタナモ基地を閉鎖して「アメリカの新政権は、前とは違う」とアピールしたいのも一理あるだろう。しかし、民主党員のなかには、部分的にであってもブッシュ前大統領のやりかたに多少賛同している者もいるようだ。

これは上院本議会で20日行われたグアンタナモ基地収容所閉鎖に必要な8,000万ドルの支出を認めない条項付補正予算案が可決されたことにも表れていると感じる。

グアンタナモを閉鎖し、もしアメリカ国内に危険人物を収容するのであれば、治安に問題が出る。だからこそ、グアンタナモのような収容所は必要だと懸念する議員もいる。とすれば、閉鎖したところで、どこかで第2のグアンタナモがつくられ、可能性だってありうる。

オバマ大統領は、1年以内に閉鎖と、拷問の禁止、テロの容疑者の拘束における対策の見直しを立てていくようだが、道のりは思うほど簡単ではないだろう。

現在グアンタナモからは、スーダン人のカメラマンのように、数百人近い収容者の無罪放免が確定し、閉鎖を目指すオバマ大統領政権の下、着々と釈放されつづけている状態だ。

近頃のニュースでは、ボランティアの人と接する機会や、コーランなどが与えられ、中は結構自由だ、非人道的行為は行っていないとにおわせ、悪いうわさを払拭しようとするアメリカ。だが、人物がひとりひとりと釈放されていけば、基地の真の顔が一刻一刻と明るみにでることは防げない。ここからも、また、問題が爆発しそうである。

《グアンタナモ基地とアルジェリア》

昨年11月、アメリカは、サラエボのアメリカ大使館のテロ計画をくわだてていたという嫌疑がかかっていた拉致アルジェリア人のうち5名を無罪とし、これらの人物を近々グアンタナモ基地から釈放すると伝えた。

5名の名を知るや、アルジェリア政府では、衝撃が走った。それはどうやらアルジェリア国内では(テロリストや犯罪歴のある人物として)全くマークされていない人たちだったからだろう、「彼らは誰なんだ?」という衝撃である。

マークされていなかっただけに、アルジェリアは警戒心を強めた。

分からない限り、アルジェリアに帰ってきて欲しくない。アルジェリアの治安が悪くなるのは困る。もし彼らがアルジェリアに戻るようなら、すぐにこちらで拘束し、徹底的に調査する!という構えだったようだ。

(※現在、彼らは無罪として、既に釈放されている。そのうちのひとりは、まともな状態ではなく、社会復帰は困難な状態だという。3人は既にボスニアに帰化したという話だ。また先日、今年5月16日に4人目が釈放され、フランス到着したことが報道された。この話については、次回に触れたい)

多くの国が、自分たちの国民に対して、同じような態度を示すのだろうか。
日本政府だって、「だれだよそいつ、しらねえなあ。釈放っていうけど、やばいんじゃないの?調査も面倒だし、かえってこなくていいよ、もう。どこか別の国がひきとってくれないかなあ」みたいなことを心の中でつぶやきそうですよね。
おっと、失礼。

「アメリカよ、罪の無いわが国の一国民を何年も拉致したのだ!!どうしてくれようぞ!」という態度ではなく、「拉致したからには、理由があるはず。危ない人物なら、帰ってこらえてもありがた迷惑」というムード。

釈放される人物が、アメリカにとってはノン・ギルティ(無罪)だったとしても、他国にとっても同様なのかは、アメリカからの情報提供も限られるだろうし、短期間では判断つけ難いところだ。

万一、危険人物だったらどうしようと考慮し、国が採った措置とは?
無罪と釈放された者たちの怒りの行き場は?
オバマ大統領にふりかかるであろう試練とは?

次回につづく