大人の生徒ちゃんからの質問。
「センセイ、SAUDADEって日本語でどういう意味?」
時々日本語に訳しづらいものがあって困る。
「・・・懐かしいとか寂しいとかですかねえ」と
答えたけどブラジル人の持つ言葉のイメージに近いのかはちょっと自信がない。
かといって「望郷」とか「郷愁」では難しすぎるし、ズレもあるかも。
「saudade」は某バンドが歌った「サウダージ」という曲で
言葉だけは知っていたけれどブラジルに来てからこの言葉の重みを感じる。
その昔、ブラジルがまだ奴隷制をとっていた頃にアフリカから
連れてこられた人たちが自分たちの境遇と故郷を思って
発せられた言葉だったという。
長い歴史の中でそれはブラジルを象徴する言葉となった。
移民国家ならではのことなんだろう。
今でもみなさんけっこう気軽に使う言葉だけど
たぶんわたしが何年ブラジルに住んだって
この言葉の本当のニュアンスは理解できないと思う。
学生時代に漢文の先生が中国のことわざを教えてくれた。
「文字は言葉を伝えることはできない
言葉は思いを伝えることはできない」
日本語のセンセイをしているわたしがこんなことを
言っていては元も子もなくなる。でもその通りなんです。
だけど、だからこそヒトはどうにかして自分の思いを伝えたいのだと
わたしは思う。そしてどんな言葉を使えばいいか、感性を磨く。
2年やそこらで生徒ちゃんたちにそんな表現力をつけさせるのは
ほぼ不可能だけど「saudade」ひとつでちょっと初心に戻った。