栗の根付は、
勝栗という栗の種類があり
勝負事に勝つという縁起物です。
私が最初に師匠から販売の許可をもらった作品です。
うちの師匠の方針では、
同じモチーフで10個、これならいいだろうと合格をもらって
はじめて販売することが出来るようになるのですが、
まだ最初だったから、根付を始めてから栗10個の合格をもらえるまでに
1年半もかかってしまいました。
以来ずっと、最初に作れるようになったという意味で
根付職人として思い入れの強い特別な存在です。
この栗は、昨日まで作っていた栗なので、
修行を始めてから12年めの栗です。
これまで1つとして同じ栗はないし、
それぞれの黄楊の木の特徴や、
たまたま拾ってきたモデルの栗の特徴を大きく反映していたり、
同じ栗を作ろうとしても、
おおらかな栗だったり、なんだか色っぽい栗だったり、
それぞれ出来上がりがやっぱり違ってきて面白いです。
12年目。
あの、1つ目の栗とはやっぱり表情が全く違い
柔らかく、余裕のある表情となりました。
まだ根付を始めたばかりの20代。
緊張して、一生懸命彫っていたころとは少し違い、
年齢も重ね、
私と同じように、根付も歳月を経て
大人になっているのかな。
どっちがいいものですか?
と聞かれると、正直今ですって答えたいけど
あの頃の作品の一生懸命な美しさはあの頃のもので
今はもうあの感じは出せないし、
この栗の根付も1個前ともまったく表情が違うし
(いろいろそれぞれ意図して表情を変えているということもあります)
10年後の栗の根付ともまた違うんだろうな。
そんな、歳月を考えずにはいられない、栗の根付です。
雨降りですね。
しっかり雨を蓄えて、
夏に一気に成長出来るように
植物なども準備しているところでしょうか。
今日も優しく。