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ASTRO PORT Blog

これはゲーム製作サークル「ASTRO PORT」の驚異に満ちた物語である

惑星大戦争

2023年09月06日 | 映像・書籍などなど
ASTRO PORTのサクです。

映画『惑星大戦争』を観ました。
子供の頃、劇場で興奮して観た思い入れの強い映画です。

また、思い入れとは裏腹に、後ろめたさを感じる映画でもありました。
なんといっても低予算で、スターウォーズの二番煎じを狙った、志の低い映画だと思っていたので。

しかし、今なら断言できる!
惑星大戦争は素晴らしい。あれはSFマインドがみっちり入ったスペースオペラだと。
『スターウォーズ』は公開前はバカにされた映画だそうです。
「SFアクション映画なんてくだらない、まして『2001年宇宙の旅』の後に制作するなんて、ルーカスはSFを分かってない」云々。

スターウォーズのカッコ良さの一つはロボットがナビゲーションすることです。
コンピュータによるナビゲートを一躍メジャーにしたのは、2001年宇宙の旅の『HAL9000』だそうです。
それ以前の映画では、ロボットが命令を受けて、答え、宇宙船をマジックハンドで操縦します。
2001年はロボのナビゲートを時代遅れにした事が凄かった。
そして、スターウォーズの凄さは、一度、時代遅れになったロボットを復権させたこと。このカッコ良さに気づいたのは、つい最近の事です。

そこに連動して、惑星大戦争も同じカッコ良い姿勢で作られている事に気づいたんです。
目指すのは『宇宙戦艦ヤマト』『スターウォーズ』以前のスペースオペラ!
ワープもできない銀色の宇宙船が飛ぶ、「紙芝居」や「絵物語」の世界を大画面で再現!

残念なのは「あえてレトロ調に描く事がカッコ良い」という当時は概念は無く、全て「ダサい」で片付けられてしまった事です。
その結果「惑星大戦争はSFを分かってない人たちが惰性で作った作品」という評価のまま、今に至ります。
いやいや、この映画、SFというかスペースオペラのアナクロニズムを分かった上でのこだわりが満載で、その熱意はスターウォーズと同じです。
冒頭の宇宙ステーション、銀地に赤と黄色のカラーリングは50年代のセンスですが、狙わないとここまで再現できません。
主役メカ、宇宙防衛艦「轟天」は艦首にドリルをつけた軍艦です。これは海底軍艦「轟天号」リスペクトです。今なら燃える要素ですが、当時の評判はイマイチでした。

メカ演出を語ります。
轟天は後部の推進ノズルがやたらと多いんですが、宇宙航行用ロケットと大気圏飛行用ラムジェットを両方積んでいるからです。
劇中でもちゃんと使い分けてるんですが、もうこの時点で子供には分からないこだわりです。
宇宙航行ロケットは、たぶんわざと派手に煙をふかせて噴射させてます。
船体両舷の垂直上昇ロケットも映像での見栄えを意識したメカデザインです。せっかくのデザインを映像で活かせない事って多いんですが、ここもしっかりハマってます。
宇宙で停止したり、向きを変える時は艦首スラスターをふかします。
このスラスターは『宇宙大戦争(1959年)』からやってる東宝特撮の伝統です。
リアルに見えない宇宙戦艦がリアルにスラスター制御する。ケレン味とリアルが混ざった演出が最高!
推進系統だけで凄く語ってしまいました。

艦載機発進システムは、拳銃のリボルバー型で見栄えが壮絶にカッコ良い。僕が世界一好きな発進演出です。
さらに、これを攻撃兵器リボルバービームにしてしまうデタラメさ。
リボルバービームは初期設定にないので、たぶん後からノリで追加したと思います。

敵メカ「大魔艦」のエキゾチックなデザインについても語り明かしたいんですが、止まらないのでネーミングについてのみ語ります。
そもそも「大魔艦」ってネーミングは70年代のセンスじゃないです。「太平洋魔城」という戦前のSF小説がありますが、そんな感じの名前。少年探偵団のタイトルにも合います。科学=夢だった時代には「悪の科学」を象徴する名前も沢山ありましたが、まさにそれです。

轟天対大魔艦の対決は、さながらメカゴジラ対メカゴジラ。
当時、一対一で宇宙戦艦がひたすら殴り合うシチュエーションは貴重でした。
この戦闘も二隻の個性が出ます。
轟天はジェット機のように飛び回ります。
大魔艦は静止したままスラスターもふかさず、重力制御で旋回します。
基本テクノロジーは大魔艦の方が圧倒的に高いんです。
東宝初の宇宙特撮『宇宙大戦争』でも、地球とナタールの技術力の差がさりげなく描かれてました。こういう描写は僕のツボです。

惑星大戦争は日本特撮の冬の時代に制作された低予算映画です。
日本は冬の時代にも、頑張って宇宙SFを撮っていました。
『宇宙からのメッセージ』はスターウォーズに対抗してます。
『さよならジュピター』は2001年に対抗してます。
この対抗意識がノイズになって疲れます。

惑星大戦争は豪快です。ストーリーは無いも同然ですが、「うわーぉ!」と思ってるうちに、どんどん話が進み、一気に終わります。

チューバッカみたいな猿人だけはスターウォーズの対抗というか、好きでもないのにとりあえず出したパチモン感があってモヤっとしますが、逆に言うとそこしかパチ感がありません。
いや『惑星大戦争』というタイトルそのものが『スターウォーズ』のパクリですが、特撮映画には『◯◯大戦争』がいっぱいあるし、パクってなくても同じタイトルになったんじゃないかと。公開があと3年遅かったら『金星(ヴィーナス)より愛をこめて』みたいな真のダサタイトルになってたかもしれません。こういうのは直球がいいんですよ。

というわけで『惑星大戦争』を延々語りました。
お薦めするほどの映画じゃないけど、みんな見よう!
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