さて、お茶事のお稽古を終えた後は、楽しみの「7月大歌舞伎 夜の部」。
この日のお目当ては、海老蔵主演の「江戸の夕映え」。以前に海老蔵、松禄、菊之助といった若手メンバーで演じられた舞台を見ており、苦手な新歌舞伎ながら、この演目はさわやかな印象が残っていたのだ。
…とその前に、情けないことに、たまった仕事を片付けに、会社に立ち寄り。
休日だから、あまり人がいないだろうと思っていたのに、意外に人がたくさんいて、着物姿で訪れた私にびっくりした様子。写真まで撮られてしまった…。
実はこの日の袋帯、花火模様が気に入って、ネットでついうっかり落札してしまったもの。最近、さすがにネットでつい…というパターンを避けてきたのだが、染めではなく織りで、しかも銀糸をメインに花火を表した様子がちょっと珍しく、つい…。
昨年、夏帯は買わないと心に決めたはずなのに、気が付けば帯ばかりを買っている今年の私。人間とはそう簡単に変われないものである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/19/0e7c2b390c18e4ad28dc07a8509e4dc9.jpg)
会社でばたばたと雑務を片付け、あわただしく演舞場に向かう。今日は、10年以上前に通った「慶応大学アートマネジメントコース」でご一緒したAさんと、歌舞伎観劇をきっかけに久しぶりの再会なのである。
当時、勤めていた画廊が閉鎖してしまったAさん、その後保険の仕事をしながら、近代美術館工芸館で解説にも携わられているという。アートマネジメントコースのみなさんは、形を変えながらもアートにかかわり続けている人が多い。あっさり志を変更してしまった私と違い、アートに対する情熱が並々ならうことがうかがえる。いや、みなさんほんとにすごい!
さて、舞台の感想をば。
一、吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)
鶴ヶ岡石段の場
大磯曲輪外の場
工藤祐経 梅 玉
曽我五郎 松 江
曽我十郎 笑 也
朝比奈三郎 男女蔵
秦野四郎 弘太郎
喜瀬川亀鶴 梅 丸
化粧坂少将 春 猿
大磯の虎 笑三郎
八幡三郎 猿 弥
近江小藤太 右 近
「弘太郎って?梅丸ってだれ?」状態。世代交代についていけてない自分を発見。ちょっとあせりましたよ。
最近の舞台は、私が歌舞伎見始めた頃の子役が、めきめきとちゃんとした大人の役を務めていて、しかもお父さんの前の名前だったりするから、混乱してます(^^;)。
右近丈と猿弥丈のがんどう返しに会場が沸いてました。うん、あれはなかなかすごい!
お正月の演目という印象の強い「吉例寿曽我」。共演者の海老蔵復帰祝いとみるのはうがちすぎ?ともかく、澤瀉屋の弟子たちが、成田屋の舞台で共演しているということ自体、これまでの両家の歴史を思うと感慨あり。團十郎さんと猿之助さんの仁徳ですなあ。
二、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)
小姓弥生後に獅子の精 海老蔵
家老渋井五左衛門 市 蔵
用人関口十太夫 亀 鶴
胡蝶の精 玉太郎
同 吉太朗
局吉野 右之助
老女飛鳥井 家 橘
襲名披露で、ゼロから作った衣装の元をとるというわけじゃないんでしょうが、襲名公演と同じ「春興鏡獅子」というのは、やはり海老蔵復帰を寿ぐ狙いなんでしょうか。
海老蔵が小姓役で出てきた瞬間、思ったこと。「でか!」
並んだ家橘丈や右之助丈が小柄なので、よけいに彼の体の大きさが目立ったのではないでしょうか。
けっして太ったわけでもなく、一時のように筋肉を作りこんでいたわけでもないのに、あれだけ体つきに女性としては違和感あるのは、ちょっとこの役、つらいですなあ。
そのせいもあってか、前半はかなり朦朧としていた私。しかしさすがに後半の獅子の毛振りは迫力ありました。しかし事前に噂で聞いていた、力任せの高速回転は、私の見た限りでは気がつかなかったなあ。人の評判を気にするぐらい、少しは大人になったのかしら(笑)。
この日の席は、花道すぐ横だったものだから、海老蔵を間近にして、柄にもなくちょっとどきどきしちゃったわ…。
三、江戸の夕映(えどのゆうばえ)
堂前大吉 團十郎
おりき 福 助
本田小六 海老蔵
お登勢 壱太郎
徳松 男女蔵
黒岩伝内 亀 鶴
網徳娘お蝶 宗之助
吉田逸平太 市 蔵
松平妻おむら 家 橘
おきん 萬次郎
松平掃部 左團次
あらためて、よい作品だなあと思う。支配側に回った元薩摩藩士の傍若無人ぶりを描いてはいるが、登場人物全員がそれぞれ自分自身の矜持をもって生きている様子が心に沁みる。
私の海老蔵観であるが、周囲が「ニン」と思うような役は結構はずし、意外な役がよかったりする人だなあというものなのだが、この「本田小六」役は珍しく、周囲のだれもが合うだろうと期待する役を、期待通りに演じたという気がする。
彼をとりまく人々の優しさ、暖かさがまたいい感じ。特に、甥っ子である大吉(團十郎)は勘当してしまったくせに、娘の許嫁の小六への配慮を忘れない左團次丈の掃部役には泣けました。小六の馬鹿だけど、真っ正直な生き方に、時代が変わっても、義理を重んじて時の為政者に仕えることができない自分自身の不器用さと通じるものを感じていたのでしょう。
とっとと武士をやめてしまって、新しい時代に順応しようと見える大吉も、心の中では失われていく武士階級の誇りには感傷的にならずにはいられない。多くの観客は、たぶん時代の趨勢に応じずにはいられない大吉にもっとも共感していたんじゃないでしょうか。
やっぱり歌舞伎をみた最後は、こういう爽やかな舞台で締めたいもんだわ。
この日のお目当ては、海老蔵主演の「江戸の夕映え」。以前に海老蔵、松禄、菊之助といった若手メンバーで演じられた舞台を見ており、苦手な新歌舞伎ながら、この演目はさわやかな印象が残っていたのだ。
…とその前に、情けないことに、たまった仕事を片付けに、会社に立ち寄り。
休日だから、あまり人がいないだろうと思っていたのに、意外に人がたくさんいて、着物姿で訪れた私にびっくりした様子。写真まで撮られてしまった…。
実はこの日の袋帯、花火模様が気に入って、ネットでついうっかり落札してしまったもの。最近、さすがにネットでつい…というパターンを避けてきたのだが、染めではなく織りで、しかも銀糸をメインに花火を表した様子がちょっと珍しく、つい…。
昨年、夏帯は買わないと心に決めたはずなのに、気が付けば帯ばかりを買っている今年の私。人間とはそう簡単に変われないものである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/57/19/0e7c2b390c18e4ad28dc07a8509e4dc9.jpg)
会社でばたばたと雑務を片付け、あわただしく演舞場に向かう。今日は、10年以上前に通った「慶応大学アートマネジメントコース」でご一緒したAさんと、歌舞伎観劇をきっかけに久しぶりの再会なのである。
当時、勤めていた画廊が閉鎖してしまったAさん、その後保険の仕事をしながら、近代美術館工芸館で解説にも携わられているという。アートマネジメントコースのみなさんは、形を変えながらもアートにかかわり続けている人が多い。あっさり志を変更してしまった私と違い、アートに対する情熱が並々ならうことがうかがえる。いや、みなさんほんとにすごい!
さて、舞台の感想をば。
一、吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)
鶴ヶ岡石段の場
大磯曲輪外の場
工藤祐経 梅 玉
曽我五郎 松 江
曽我十郎 笑 也
朝比奈三郎 男女蔵
秦野四郎 弘太郎
喜瀬川亀鶴 梅 丸
化粧坂少将 春 猿
大磯の虎 笑三郎
八幡三郎 猿 弥
近江小藤太 右 近
「弘太郎って?梅丸ってだれ?」状態。世代交代についていけてない自分を発見。ちょっとあせりましたよ。
最近の舞台は、私が歌舞伎見始めた頃の子役が、めきめきとちゃんとした大人の役を務めていて、しかもお父さんの前の名前だったりするから、混乱してます(^^;)。
右近丈と猿弥丈のがんどう返しに会場が沸いてました。うん、あれはなかなかすごい!
お正月の演目という印象の強い「吉例寿曽我」。共演者の海老蔵復帰祝いとみるのはうがちすぎ?ともかく、澤瀉屋の弟子たちが、成田屋の舞台で共演しているということ自体、これまでの両家の歴史を思うと感慨あり。團十郎さんと猿之助さんの仁徳ですなあ。
二、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)
小姓弥生後に獅子の精 海老蔵
家老渋井五左衛門 市 蔵
用人関口十太夫 亀 鶴
胡蝶の精 玉太郎
同 吉太朗
局吉野 右之助
老女飛鳥井 家 橘
襲名披露で、ゼロから作った衣装の元をとるというわけじゃないんでしょうが、襲名公演と同じ「春興鏡獅子」というのは、やはり海老蔵復帰を寿ぐ狙いなんでしょうか。
海老蔵が小姓役で出てきた瞬間、思ったこと。「でか!」
並んだ家橘丈や右之助丈が小柄なので、よけいに彼の体の大きさが目立ったのではないでしょうか。
けっして太ったわけでもなく、一時のように筋肉を作りこんでいたわけでもないのに、あれだけ体つきに女性としては違和感あるのは、ちょっとこの役、つらいですなあ。
そのせいもあってか、前半はかなり朦朧としていた私。しかしさすがに後半の獅子の毛振りは迫力ありました。しかし事前に噂で聞いていた、力任せの高速回転は、私の見た限りでは気がつかなかったなあ。人の評判を気にするぐらい、少しは大人になったのかしら(笑)。
この日の席は、花道すぐ横だったものだから、海老蔵を間近にして、柄にもなくちょっとどきどきしちゃったわ…。
三、江戸の夕映(えどのゆうばえ)
堂前大吉 團十郎
おりき 福 助
本田小六 海老蔵
お登勢 壱太郎
徳松 男女蔵
黒岩伝内 亀 鶴
網徳娘お蝶 宗之助
吉田逸平太 市 蔵
松平妻おむら 家 橘
おきん 萬次郎
松平掃部 左團次
あらためて、よい作品だなあと思う。支配側に回った元薩摩藩士の傍若無人ぶりを描いてはいるが、登場人物全員がそれぞれ自分自身の矜持をもって生きている様子が心に沁みる。
私の海老蔵観であるが、周囲が「ニン」と思うような役は結構はずし、意外な役がよかったりする人だなあというものなのだが、この「本田小六」役は珍しく、周囲のだれもが合うだろうと期待する役を、期待通りに演じたという気がする。
彼をとりまく人々の優しさ、暖かさがまたいい感じ。特に、甥っ子である大吉(團十郎)は勘当してしまったくせに、娘の許嫁の小六への配慮を忘れない左團次丈の掃部役には泣けました。小六の馬鹿だけど、真っ正直な生き方に、時代が変わっても、義理を重んじて時の為政者に仕えることができない自分自身の不器用さと通じるものを感じていたのでしょう。
とっとと武士をやめてしまって、新しい時代に順応しようと見える大吉も、心の中では失われていく武士階級の誇りには感傷的にならずにはいられない。多くの観客は、たぶん時代の趨勢に応じずにはいられない大吉にもっとも共感していたんじゃないでしょうか。
やっぱり歌舞伎をみた最後は、こういう爽やかな舞台で締めたいもんだわ。
江戸の夕映え8月28日にNHK教育で放映されますね!
帯の撮影、苦心の跡を組んでいただき、こちらもあざーーっす!!
獅子なんか力づくでねじ伏せそうですよね (^_-)-☆
相変わらずのお忙しさ…どうぞご自愛下さいね。
白地に銀の花火、涼しそうですね!
絵美さんの観劇日記も拝読しました。「ファンじゃないし」に大爆笑。7月に歌舞伎見に来たからって、エビファンと捉えるのが間違いですよね(^^)。
私は歌舞伎を見るのは憂さ晴らしもあるので、できれば気持ちよく終わってほしいのです。7月昼の部でいえば、最後に短い楽しい踊りでも入れて締めてほしかったです。最近の演目の組み合わせは、あまりそうした配慮がないなあと、ちょっと残念なのでした。