投資家の目線

投資家の目線756(ロサンゼルス市の新住宅政策)

 住宅難に悩む米国ロサンゼルス市が、1戸建て住宅の裏庭に小型住居(ADUと呼ばれる)を建設できるよう規制緩和を行った(「米国発 裏庭住居、住宅難の救世主?」 日経MJ 2019/12/23)。同記事によれば、「家賃の高騰によりきちんとした職業に就いていても家賃を払えず、ホームレスになる人も多い。特に教師、看護師、ソーシャルワーカーなどは直接福祉に貢献するわりには平均賃金が低く、この犠牲となることがある。」という。フルタイムで働いてもホームレスになってしまう町で、教師や看護師を続けようと思うだろうか?教師がいなくては子供の教育に支障をきたし、看護師がいなくては地域医療が成り立たない。そのような町では、人々は生活していけないだろう。

 少し古いが、ロサンゼルス市の4人家族の生活費(円金額は1USD=109円換算)は、

住宅費(Housing costs): 月18.1万円、年217.5万円 {$1,663 per month ($19,956 per year)}
子育て費用(Child care costs): 月13.3万円、年159.9万円 {$1,223 per month ($14,672 per year)}
標準的な生活に必要な費用(Total cost of living): 月83.8万円、年1,006万円 {$7,691 per month ($92,295 per year)}
出所:「Here's how much it costs a 4-person family to live in the 15 largest US cities」 2018/3/15 CNBC(日本語訳、円換算は当方のもの。)

と、日本では考えられない高額である。


 前の日経MJの記事によれば、現地でADUへの関心は広がっていないという。そのため、家主は裏庭を貸すだけで、資金調達・住宅建設から入居者探し、賃貸契約・管理等を一括して請け負うビジネスも立ち上がっているという。生活費高騰の中、家主としては家賃収入が入るメリットがある。しかし、プライバシーが保たれるとしても庭の面積を減らして住宅を建てようとする家主はどれだけいるだろうか?一方、賃借人側は一所懸命働いて得られるものが小さな部屋での暮らしで満足できるだろうか?また、賃貸住宅より実入りの良い民泊に転用される可能性もある。人口の都市への集中化を止めるような政策をとらなければ、根本的な解決にはならないと思うが…。
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