それは保険料を預かっている保険会社や預金を預かっている銀行も同様だ。前期、生保で有価証券の含み益が減少したところが多く、含み損に転じたところもあった。野村ホールディングスは、日本企業の株式持ち合いで昨年度は32億ドル(約3300億円)の損失が生じたとしている(5月26日:ブルームバーグ)。投資有価証券評価損を特別損失に計上した企業もある。株式持ち合いのコストは高かったと言えよう。株式持ち合いをするにしても、適正なリターンが得られるように相手企業の経営をチェックしてもらいたいものだ。それでなければ株式持ち合いは出資者から預かった資金の無駄遣いといわれても仕方がない。
東京証券取引所の斉藤惇社長が27日の定例会見で、「株式持ち合いは正しい行為と説明しにくいとした上で、世界的に理解されないとの見方を示した」という(5月27日:ロイター)。(どういう理由か分からないが日本経済新聞も報道しない。日本のマスコミはあまりあてにならないから、ロイターやブルームバーグをチェックしたほうがよいだろう。)
株式持ち合い、世界的に理解されない=東証社長 2008年 05月 27日 16:04 JST ロイター
http://news.livedoor.com/article/detail/3657544/
含み損は金融機関の経営に悪影響を及ぼすため、顧客にとっても関心事だ。損失を防ぐためにも投資先の経営者に株式からのリターンを向上させるよう、議決権行使しなければならないはずだ。金融機関の顧客としても、彼らの議決権行使状況は気にしている。
なお、TCIのジョン・ホー氏は「純投資の機関投資家の賛同は多い」とみているようだ。
英TCI、Jパワーの持ち合い株主・取引先約10社に投資 2008年 05月 28日 06:45 JST ロイター
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-31982520080527?rpc=112----------------------------------------------------------------------
・「もの言う株主」㈱講談社 ヴェルナー・G・ザイフェルト、ハンス=ヨハヒム・フォート著、北村園子訳 を読んだ。著者のザイフェルト氏も資本効率性(同書では資本生産性という言葉を使っている)は大切なことで、資本効率性が一部の金持ちや大資本家だけではなく、すべての人に関係する問題であることも、さらに株主の経営陣に対するチェック機能も理解している。年金資金を含めた巨大ファンドが、マーケットインパクトの大きさのため株式売却が容易でないことも知っている。著者とTCIのホーン氏の思考にはそれほど大きな差がないような気もするが・・・、日本の経営者はどうだ?
・5月29日の株主総会で、アデランスの取締役7人の再任が否定された。昨年、東京高裁で寝ぼけたような判決が出たが、これで司法も少しは目が覚めるのではないだろうか。
・武藤前日銀副総裁、東大先端研客員教授になるという。財務・旧大蔵次官経験者では、小川是横浜銀行頭取も退官直後、先端研で客員教授を務めたことがあると報道されている(2008/5/30日本経済新聞朝刊)。やはり、横浜銀行の次期頭取人事と関係があるのだろうか?
・新聞業界も大変ですね。
完全勝訴の販売店主、読売に9千万円の損害賠償訴訟 2008年06月01日09時30分
http://news.livedoor.com/article/detail/3662667/
追加:東証の斉藤社長発言は日経ヴェリタスには記載されていた。もっとメジャーな媒体に載せてほしい。