再読のための覚え書き
プールサイド小景・静物
庄野潤三(1921-2009)
《プールサイド小景》
青木氏が夕方、小学生の二人の息子をプールで遊ばせ、妻も迎えに来てみんなで家に帰っていく姿は、それを見る者が心を打たれる家族団欒の光景だった。
しかし実は、青木氏は使い込みが理由で会社を辞めさせられていた。近所住民の手前、彼は出勤と称して毎朝あてもなく出かけていく……。
《舞踏》
夫は妻を愛し、妻も夫を愛しているが、それでも夫は若い恋人を作って恋に酔い、妻は絶えず孤独感に苛まれている。
夫は、たとえ夫の心が妻から離れようとも、子育てが妻の生き甲斐になるという世俗の考えに、口実を見つけようとしていた。
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「家庭の危機というものは、台所の天窓にへばりついている守宮(やもり)のようなものだ。」から始まる《舞踏》は、孤独に追い詰められながらも明るく振る舞おうとする妻の可憐で痛々しい姿に心を奪われた。
他、「相客」「五人の男」「イタリア風」「蟹」「静物」を収録。
2022.11.13読了
プールサイド小景・静物
新潮文庫
昭和40年2月28日初版発行
昭和44年12月30日5刷
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