再読のための覚え書き
闇のなかの祝祭
吉行淳之介(1924-1994)
《闇のなかの祝祭》
作家の沼田沼一郎は、妻の草子と暮らしつつも、女優の都奈々子という愛人があった。
妻は「絶対に別れない」と言うし、愛人は「どちらかを選べ」と言う。その間で、男は右往左往するばかり。
しかしある日、奈々子は沼一郎に、身籠ったことを告げる……。
「男と女とが一緒に暮してゆくために必要なものは、情熱でもなく、肉でもなく、それは忍耐にちがいない。相手の存在を燦めく光が取囲んでいたとしても、それはやがては消え去って、地肌の醜い部分が露出してくる。それをたじろがずに見詰め、自分の中に消化しようとする。しかし消化し切れない部分が常に残り、絶え間ない違和感と生ぬるい苦痛とを与えてくる。それを忍耐することが、男と女とが暮してゆくために最も大切なことだ。」
《風景の中の関係》
若い父親は、病弱な妻を家に残し、小さな息子を連れて、火山のある島へ旅行に出た。
本当の目的は愛人との逢引きで、子どもの同道は、妻への目くらましだった……。
息子、愛人、父親、それぞれの視点で章を分けて語られる。
他、「青い花」「海沿いの土地で」を収録。
2022.11.12読了
闇のなかの祝祭
角川文庫
昭和39年4月20日初版発行
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