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長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

フィッツジェラルド「雨の朝 巴里に死す」

2021-04-18 10:45:00 | 

雨の朝 巴里に死す

FS・フィッツジェラルド(1896-1940

飯島淳秀訳


チャーリーは、過失で妻のロレインを死なせてしまう。憤る義姉は、預かった幼い娘オノリアを返そうとしてくれない。チャーリーは必死に義姉を説得するのだが……


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小説は、チャーリーと義姉の間の、娘を巡る駆け引きが中心だが、エリザベス・テーラー主演(妻ロレイン役)の映画(1954米)にもなっていて、こちらは夫婦のすれ違いがテーマになっているようだ。


他に、贈られたカットグラスのボウルによって数奇な運命を辿る女を描く「カットグラスの鉢」と、フィッツジェラルド自身を投射した少年が懺悔をする「罪の赦し」の二篇を併録。


2021.4.17読了


雨の朝 巴里に死す

角川文庫

昭和30420日初版発行

昭和3112105

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #フィッツジェラルド #雨の朝 巴里に死す






芹沢光治良「巴里に死す」

2021-04-16 12:11:00 | 

巴里に死す

芹沢光治良(1896-1993


夫の留学に伴って渡仏し、パリで結核に倒れた伸子。病の床にありながら、幼い娘が成人したときに読むようにと、三冊の手記を遺した。


《私は、愛情というものが自然に発生するのではなく、創るものだということを発見した。母と子の愛情さえ、苦しんで創ってなるものであるものを、まして、夫婦の愛は生涯精進してこそ最後に授けられるものであろうということにも気づいた》


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妻としての自分、母としての自分、そして夫婦の間の愛について、良いも悪いも包み隠さずに書き連ねながら、その中にあっても成長を続ける女性の姿。


パリを舞台とした愛すべき哀しい物語だが、それが太平洋戦争の最中(1943年)に連載されていたということも興味深い。



2021.4.10読了


巴里に死す(1943年)

角川文庫

昭和27920日初版発行

昭和3522826


# #読書 #文学 #文庫 #芹沢光治良 #巴里に死す






梅崎春生「桜島・日の果て」

2021-04-16 12:08:00 | 

桜島・日の果て

梅崎春生(1915-1965


「桜島」

暗号員の村上兵曹は、新たな勤務地の桜島に赴き、そこで終戦の知らせを聞く。


「日の果て」

フィリピン。宇治中尉が受けたのは、原隊を離脱した花田軍医中尉を射殺せよとの命令だった。


「崖」

海軍航空隊の防空電信室に配属された「私」は、不条理で陰惨な上下関係に対して卑屈な日々を過ごす。


他、日常生活の狭間に浮かび上がる死生観を描く「蜆」と「黄色い日日」を収録。



《あるのは生きているか殺されるかという冷たい事実だけだ。善とか悪はない。真実とは一つしかないのだ。それは内奥の声だ。生きたいという希求だ。自分のために生きるのが、唯一の真実だ。爾余の行為は感傷に過ぎない。》(日の果て)


2021.4.15読了


桜島・日の果て

新潮文庫

昭和26531日初版発行

昭和4551517


# #読書 #文学 #文庫 #梅崎春生 #桜島・日の果て






田宮虎彦「銀心中」

2021-04-05 13:05:00 | 

銀心中

田宮虎彦(1911-1988


夫の戦死を知らされた理髪師の佐喜江は、彼女の元で働く珠太郎と心通わせるようになるが、突然、夫が復員してくる。珠太郎は姿をくらませるが、居所を探し当てた佐喜江は彼を追って、東北のしろがね温泉に向かう。


《佐喜江は、喜一にかくれて直ぐ珠太郎に手紙を書いた。返事は来なかったが、矢つぎばやに三通も四通も出した時、簡単に私のことは思いきってくれと書いた葉書が来た。佐喜江は店先に投こまれた葉書をワンピースのポケットにさりげなくおしこんで、翌る日、汽車にのった》


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戦争の渦に巻き込まれた社会の不条理。しかし、その中で生まれた愛情は、純粋ゆえに燃え上がるのを止めることはできない。


苦しい悲話ではあるが、そんなヒロインを目に涙を溜めて見守るような視点で描かれている。


他七編を収録。


2021.4.4読了


新潮文庫

昭和36228日初版発行

昭和5021520


# #読書 #文学 #文庫 #田宮虎彦 #銀心中








田宮虎彦「愛のかたみ」

2021-04-02 15:04:00 | 

愛のかたみ

田宮虎彦・田宮千代


《私は、この現実世界に存在するものは愛情だけだと思う。他のものは何もない。千代は死んでしまったのだけれど、死も私たち二人の愛情をさくことは出来ぬであろう》


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作家田宮虎彦は、昭和31年に42歳の妻を癌で亡くした。その記録と、愛の形見としての二人の往復書簡集。


田宮の小説に溢れる優しさは、妻への狂おしいまでの愛情が核になっているのだろうな。


本書は当時、大ベストセラーになったとのことだか、僕の手持ちの本は、初版発行からわずか3ヶ月弱のものなのに、なんと38刷り!


2021.4.2読了


愛のかたみ(1957

光文社

昭和3241日初版発行

昭和3262238


# #読書 #文学 #文庫 #田宮虎彦 #愛のかたみ