映画的ネットワーク(映画評ブログ)

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ドラマ「アオイホノオ」最終回(11話) 祭りの終り

2014-09-27 03:57:40 | ドラマ

 

ついにドラマ「アオイホノオ」が最終回を迎えました。

業界の著名人たちを巻き込んで、近年、ここまで盛り上がったドラマ(あるいはアニメ)

というのも、珍しい存在だと思います。

はっきりいって、ドラマ本編よりも、周辺情報の方が面白い、

本編はむしろ、おまけ、という、祭り的な盛り上がりを見せる、

珍しい作品でした。

 

という訳で、最終回を迎えたので、

最終回を振り返る感想と、全体の総括などを書いてみたいと思います。

 

前回、10話までは、ある程度、予想通りの構成でしたが、

そこを入れるの?という、予想外のシーンも、いくつかありました

(ウンコの早食い競争とか、庵野の、風呂で怪獣ごっことか)。

 

 

 

何かが足りないなあ~


 

 

オープニングは、遂に完成した「ダイコンⅢ」のフィルムを見て、

打ちのめされるホノオ(1話のオープニング)。あしたのジョーのように燃え尽き、

高橋、きっちゃんに、担ぎ出されます。

 

そこにやってきた南雅彦に、「ダイコンⅢ」での現場の様子を聞かされます。

ここで、手塚治虫役で、岡田斗司夫が登場。

何話だったか忘れましたが、岡田斗司夫が

手塚治虫の声をあてている(3話?、アニメを作るシーンでしたが)、

という伏線をうけての登場です。

しかし、死んだような目をしているからか、

原作にはあった手塚治虫のほがらかさみたいなものは、

まるで出ていません。

そして、原作には無い、おそらくアドリブの誉め言葉(専門用語)の数々、

透過光、付けPAN、密着マルチ、背景動画、

原作に出てくるのは背景動画の説明だけですが、

自画自賛かよ、といいたくなります。

この、手塚治虫が誉めに来た(なんなら、引き抜きに来た)という場面は、

岡田斗司夫の「遺言」にも出てくる場面なので、言わば現場に居合わせた本人による

歴史的な瞬間の再現です。

 

リンク→公式ツイッター。より詳しい、エピソードが載っています。

24時間テレビのアニメが完成していないのに、前日に「ダイコンⅢ」に来ている

手塚治虫、すげえ・・・。

 

 

車田正美のベタを見習え


 

帯のセリフシリーズに使われている、マッド・ホーリィのセリフが、ようやく登場します。

 

集英社のマッド・ホーリィからの電話を勘違いするホノオモユル。

原作者の島本和彦も、あれは自分が悪かった、みたいなことを語っており、

詳しくは何があったのか分かりませんが、原作でも、描き方に苦慮したようです

(公式ツイッターの方に、事情が書かれています)。

ともかく、島本和彦という漫画家が、「ジャンプ」から「サンデー」へと移ることになる、

歴史的な瞬間ともいえます。

この場面、原作ではマッド・ホーリィの心の声で説明されているのですが、

例によって、心の声を、普通のセリフに置きかえる福田演出。

しかし、ここはセリフだけで、上手く整理されています(やや説明不足な気もしますが)。

 

そして、漫画を諦め、ただの学生に戻ることを決意したホノオ

(ここから、ドラマのオリジナル展開)、

マスミ、トンコさん、津田さんと、立て続けにアプローチして、ふられることになります。

 

 

声の張り方ぁ・・・!


 

学食で、ミノムシミノコに、マスミを紹介してもらおうと思ったホノオですが、

ホノオの勘違いで、マスミにはすでに彼氏がいました。

 

「アニメの上手な人?漫画の上手な人?」とマスミに声をかけられたホノオは、

 

「違いますよマスミさん、僕は、アニメも、マンガも、上手じゃない人なんですよ!

と、叫んで、走りだします。

ミノムシミノコには「えぇぇ・・・、声の張り方ぁ・・・!」と、呆れて突っ込まれます。

 

トンコさんを探して、大学を駆けまわった後、お好み焼屋に着くホノオ。

ここで、トンコさんの新恋人が登場します。

演じるのは、福田組の常連にして顔、山田孝之で、納得の新彼です。

口の周りにマヨネーズをべったりとつけて、嫌味なお金持ちを演じています。

トンコさんの過去の言動を思い出し、すべては自分の勘違いだったことに気付くホノオ。

 

金持ちの彼氏に(ホノオは経済力が無いので)、コンタクトをプレゼントされたトンコさんに、

 

「良かったですねトンコさん。これですごく近づいてしゃべらなくてよくなったんですね」


と、最後のセリフともいうべき、声をかけます。

そう、すべての勘違いの元凶は、トンコさんの、近すぎる距離なのです。

それが解消された今、すでにトンコさんは、ホノオの心の恋人にすら成りえない、

という悲しいシーンです。

ここで、ロングのカットを挟むことで、二人の物理的な距離の遠さ=心理的な距離の遠さ、

であることを暗示する演出が入ります。いい演出です。

 

「食欲が出ないみたいなので帰ります」と席を立ったホノオは、津田さんを探します。

しかし、前回、タッチの髪型から、

ショートとロングなら、ロングに決まっていると(ドラマオリジナルのシーン)

断言したことで、すでに津田さんにもふられていたホノオ、

当然、部屋に帰っても津田さんは来ていません。

 

「俺は青春を謳歌することも出来ないのか・・・」

 

と、一人の部屋でつぶやくホノオ。

その夜、庵野との数々の(苛立たしい)思い出がフラッシュバックしたホノオは、

もう一度、小学館への応募を決意します

(つまり、最終的に後を押したのが、ライバル庵野である、というような話になっています)。

 

 

捨てる神あれば拾う神あり、そして、ホノオモユル覚醒!


 

小学館に応募した原稿はあっさりと捨てられてしまいます

(原作では、最新12巻のラスト。以下、雑誌にある話か、ドラマオリジナルか不明)。

 

しかし、サンデーの新人編集者、三上が、原稿を拾い、

「痛みは生きてる証しだぜ」というセリフ(パロディであり、「ビッグラン」でも使用された

伏線)にウケたことで、採用を決定。

伏線好きの福田監督らしい、つなぎ方です。

 

そして、3ヶ月後、一気にホノオのデビューが決まり、焔モユルというか、炎尾燃としての、

日々が始まります。

大学の教室に、ホノオのデビュー作が載ったサンデーを持ってくる、高橋ときっちゃん。

しかし、いつもハイテンションなホノオが、なぜかさえない顔で冷静です。

 

「なんだろう、手放しで喜べん。夢にまで見たデビューだというのに・・・」

 

と、戸惑うホノオの前に、

 

「思っていた程、嬉しくないだろう?」

 

と、声をかける庵野。

このセリフは、原作1巻の、庵野×島本の対談における、

“作品の成功を目標にしてやって来たけど、エヴァがヒットした時、何もなく、

むしろ、ヒットしても、いいことより、悪いことの方が多かった”、

という庵野の発言を彷彿とさせます。

 

そして、サインを頼む庵野。とてもイイシーンです

(庵野は実際、サインをもらっていた気がします)。

庵野の才能を認めないホノオとは違い、あっさりとホノオを認める庵野の器の大きさ。

そして、初めて、二人の心が通い合った場面になっています

(まったくホノオの気持ちが分からない、高橋、きっちゃんとの

温度差を対比させることも、効果的です)。

そして、ホノオが、もっとも「認められたい」ライバルから認められたことで、

ドラマ「アオイホノオ」のストーリーにも幕が引かれます。

結局、ドラマ「アオイホノオ」は、ホノオと庵野の話であった、という結末です。

 

 

ホノオ、バイクを買う


 

ドラマ当初から、なぜカットしていないのか不思議だったバイクにまたがるシーンは、

教習所のあたりで、伏線として絡められ(ドラマのオリジナル)、

そして、最終回において、ついにホノオがバイクを買うシーンにつながります。

 

ちなみに、このバイク(?)、「燃えよペン」では、迫力の効果を出すために、

アシスタントに燃やされています。

 

ここで登場する、原作者、島本和彦

このバイクに乗ってどこに行くのか、という質問に、とりあえず大学に、と答えるホノオ。

それに対して、

 

「違うぞ若者、お前はこのバイクに乗って『あした』に向かって走るんだよ!

 

声の張り方!

さすが、漫画より、本人の方が面白いと言われる漫画家です。

そして、

 

「いいか、大人になってから、『学生時代はよかったなぁ~』

などと振り返るような、くだらん大人にだけはなるなよ!」


と、まさに「アオイホノオ」という作品の根幹を表すような、名セリフでまとめます。

まさに「アオイホノオ」は、「よかったなぁ~」などと、振り返りたくない青春。

痛々しく、振り返りたくない青春を描いた作品なのです。

 

そして、ブラックアウト。

目を覚ますと、ホノオモユルは、すでにプロの漫画家として活動しています。

まさかの、ヘッドギアを付けた炎尾燃バージョンの柳楽優弥です。

3時間後に、原稿を入れないと落ちる、という修羅場。

 

「そんな時に俺は、学生時代を思いっきり1から振り返った夢を見ていたのか」

 

と、ホノオ。エンディングのテーマ曲が流れ始めます。

お得意の(福田監督お気に入りの)

あえて寝る!というセリフも飛び出し、寝てしまう炎尾。

はっきりいって、ドラマでは随所で、福田監督が本当に作りたいのは

「燃えよペン」なのではないか?

と思わせるような節があったのですが(ナイーブなホノオの描写をほとんどカットしたり)、

果たして、福田監督による「燃えよペン」シリーズの映像化はあるのか?という感じの

ラストでした。

 

 

単行本1冊分くらいの、番外編


 

ドラマ「アオイホノオ」、最終回を迎えてみれば、実に綺麗にまとまっています。

ここまで、さんざん、どうして淡白な演出(構成)を繰り返すのか、

濃くしないのか、と思っていましたが

(漫画完成までの描写が軽すぎたり)、

 

ここまで見てみると、つまり、1か月や、1巻が勝負の(延々と続く)原作とは違い、

あくまでも、全11話であること、つまり、

11話を一気に見られるくらいの「軽さ」に抑えること、というのが

演出意図だったのかと思います。

原作のように、濃く、重く、し過ぎずに、

11話ひとまとまりで見て、映画を見終わったときのような読後感(?)として、まとめる、

ということが狙いだった気がします。

 

映像化というと、どうしても、集大成とか、最終形、というイメージなので、

こんな映像化は無いだろう、と腹を立てていましたが、

放映期間3カ月というのは、原作の発刊ペースから見れば、1巻分にも満たない期間です。

つまりこれは、コミックス1巻分くらいを使った、番外編なのだ、と思えば、

腹も立たない、ということに、最終的に気付きました。

 

 

最近、エンディングの柴崎コウの歌も、実は「青春を振り返る系」の

(「夢をあきらめないで」とかに通じる)、意外と「グッとくる」歌なのだということに気付き、

いいエンディングでした。

 

 

 


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