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ドラマ版「アオイホノオ」 第1話の感想

2014-07-21 14:10:24 | ドラマ

 

「アオイホノオ」実写版のドラマがとうとう始まりました。

以前のエントリーで、キャスティングへの不安や、脚本・監督の福田雄一の脚色に、

まったく期待できないという旨のことを書きましたが、

いい意味で予想を裏切って、意外と面白かったです。

 

すごくいい、というほどでもないのですが、3回くらい、普通に笑えたので、

それだけで充分、面白かったといえると思います

(「逆境ナイン」なんて、まるで笑えなかったですし、福田の脚色・脚本・演出による

「私の嫌いな探偵」も、福田が追加した、妄想推理パートとか、剛力の鬱陶しいキャラ付け

などに、うんざりさせられましたから、それに比べれば、遥かにマシです)。

 

見どころはいくつかあって、本当なら細かく書きたいのですが、

面倒くさいので、とりあえず、ざっくりと書いてみます。

 

 

実写ならではの良さ


 

最大の見どころの1つだと思います。

 

始まる前は、実写ならではの良さなんて、無いだろう、と思っていたのですが、

オープニングから「ダイコンⅢ」のアニメで始まり、そうきたかという感じでした。

アニメという題材を扱っている以上、動かない漫画よりも、

動く映像の方が得意分野なわけで、

その後も、庵野たち製作の「ウルトラマン」(庵野と山賀の部分は差し替えですが、

イダーゲ星人とかは、多分そのまま)、写真を回す合成というのも、

漫画版での説明より分かりやすかったです。

そして、庵野のパラパラ漫画も、漫画版より、動いている感が出ている。

これらの、アニメをアニメのままに出せる、というのは、実写版最大の特色で、

これだけでも「アオイホノオ」ファンなら、見る価値があると言えます。

 

ただし、庵野のパラパラ漫画は、細かすぎて、さすがに、

あんな小さなメモ帳のようなものに描くのは無理だと思います。

あれは、後の「丈夫なタイヤ」なので、

実際はレポート用紙くらいの大きさの紙に描かれたものだと思います。

 

 

意外とまとまっている脚本に感心


 

福田雄一は脚本が本職だけあって、実に手際よく原作をまとめて脚色していました。

本作の最大の見どころの1つだと思います。

 

ポイントは、できるだけ普通っぽい感じにするということで、

コアな島本ファンだけでなく、幅広い層に受け入れられるために、

原作の奇矯な部分を押さえ目にしています。

しょっぱなから、高橋が仮面ライダーマスクをかぶっていないあたりで、

それが窺えます。

オープニングも、原作では、ホノオの大上段の「漫画界が甘くなってきている」という

ナレーションでしたが、

ドラマ版では、1980年の様子の説明という、普通の入り方をしています。

 

この脚色部分は、複雑すぎて、とてもすべてはフォローできませんが、

とりあえず覚えている限りだと、

・高橋との出会いのシーンをカット。最初から知り合いにして、時間を節約する

・高橋の、自作のライダー風マスクはカットしたが、ライダーの歌のくだりにはカットせず、

キャラの説明に生かす(あなどれん奴、というホノオの評価)

・きっちゃんが最初から登場していることで、全体のまとまりを出す。

 あだち充を評価しているセリフの追加で、ホノオに評価させる

(原作だと、きっちゃんは、ホノオの投稿上京前に、突如として登場していた気がする)

・あだち充の漫画紹介シーンを大幅にふくらませて、三ツ矢に声優をやらせる。

・トンコさんが、最初から顔が近い(原作だと3巻のラスト、18話で追加された設定)

 最初から、ホノオと怪しい関係、というニュアンスが出ている。

・トンコさんに誘われたからバトミントン部に入ったことになっている。それにより、

 話が圧縮され、まとまりができる(原作だと、単に楽ができそうだから入った、という説明と、

 トンコさんのバイト先に通うエピソードはあるが、それを合わせたような脚色)。

・庵野がクラスメートを羽交い絞めにして、「ショッカーのアジトを言え」という

 奇矯なふるまいがカット(原作だと、最初はおそらく赤井が餌食になり、

 ホノオがパラパラアニメを覗いたときが2度目)。

・クラスメートが庵野のパラパラアニメに騒いでいる、という場面を入れることで

「絵が動いているじゃないかー」というリアクションをスムーズな流れにしている

(原作通りにやると、唐突な感じになる)。

・南雅彦が、「なんとなく、クリスマス」を発案する場面のセリフが滑らかになっており、

 場面に溶け込んでいる(原作だと、もっと断定的に言っているが、

 そのまま映像にすると、そういう部分は不自然になる)

・ホノオだけは、不自然さが残されており、声のボリューム調整ができていない

・ホノオが高橋留美子を心配するシーンに、トンコさんを噛ませて、変さをアップする

(原作だと、「手塚治虫先生に、何を言われるか心配です」という場面などには

 絡んでいる)。

 ラーメン屋のシーンといえば、原作ではホノオが高橋留美子に、「持っていかれる」シーンだが、

 なぜか変更。今後、そのシーンがドラマ版に出てくるのかは不明。

・大学講師が、宇宙生物っぽい先生から、きたろうに変更。つまらないギャグを言う、

 というキャラ付けが追加。

・山賀のチーム作りで、きっちゃんが誘われたり、というくだりを追加。

・「ウルトラマン」が終わった後、庵野の「次は感動させる」というセリフは

 「帰ってきたウルトラマン」につながる重要な伏線だが(原作だと、「次?」という観客たちの困惑)

 その場面にホノオの「絶対に感動せん」というセリフを追加、

 よく分からない変更だが、1話のまとめとして必要だったものと思われる。

などなど

 

他にも、美術的な要素ですが、ホノオの部屋に、「あしたのジョー」の単行本がそろえてあったり

(分かっています)、原作には無い要素が追加され、

ラーメン屋での、ものすごく古い少年サンデーなども、本物を用意したのか?レプリカなのか?と、

興味深かったりします(原作でも、明らかに、本物の「サンデー」を使っていますが)。

実写の小物のリアリティには、改めて感心しました。

 

キャスティングはどうだったのか?


 

製作発表時には、もっとも不安だったのが、主役・柳楽優弥というキャスティングでしたが、

フタを開けてみれば、そこまでの違和感はないというか、

そもそも柳楽優弥にあまり見えないというか、

勝地涼みたいでした(勝地涼なら、わりと納得できるキャスティングなので)、

まあ、いいかという感じで(ネットの噂では、整形して、昔とは顔が変わったそうですが)。

演技も、「みんなエスパーだよ」の染谷将太などに並ぶ、

さすがの安定感で、ハイテンションに演じています。

 

その他のキャスティングは、

 

庵野(安田顕)→福田作品の常連だと思いますが、

同じく深夜ドラマの「みんなエスパーだよ」でも、怪演していましたが、さすがの安定感。

主役より安定感があると思います。

山賀(ムロツヨシ)→こちらも完全に福田組の常連(「勇者ヨシヒコ」とか)。

山賀といえば、モロボシダンに激似の濃い顔が特徴なので、

まるで山賀ではないです。でもまあ、所詮は山賀なので、別に、

ムロツヨシでもいいか、という気になります。

リンク→「蒼きウル」の凍結資料集など

 

トンコさん→最重要キャストですが、元々、メーテルそのままの容姿を実写で再現できる

わけが無いので、違和感さえなければ、誰でもいいかな、という気がします。

昔の羽野晶紀を彷彿とさせる感じの、バカっぽい雰囲気で、いいキャスティングだと思います

(しかも、羽野晶紀といえば大阪芸大出身ですし)。

 

きっちゃん→きっちゃんの最大の特徴は小柄であることなので、

さすがに、もうちょっと小柄な人を配役してほしかったです。

 

 

ということで、結論としては、

福田監督による改悪も特になく、

ホノオの暴走っぷりなども、実写ならではといえる良さがありました

(漫画より、はるかに変な感じになっていて、笑えます。原作でそれほど笑えない部分で、

実写で笑えるというのは、収穫といっていいと思います)。

なかなかに良い映像化で、今後も期待できる第一話でした。

 

 

 


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