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おまけ×3 イギリス「ダイアナ報道の嘘」

 「ダイアナ報道の嘘」 一部引用編集簡略版

  ダイアナ元皇太子妃(1962~1998年)が事故死したときに、イギリス王家は危機に見舞われたように見えた。二百万人といわれる人々が、ダイアナ妃が住んでいたケンジントン宮殿前の広場を訪れて花を捧げ、テディベアを供えた。エリザベス女王とチャールズ皇太子がダイアナ妃の死に当たって、冷淡に振る舞ったことに対する抗議が含まれていたといわれる。

  ダイアナ妃の葬儀はウェストミンスター大寺院で催されたが、荘厳なものだった。王室の伝統がそうさせたのだった。それにケンジントン宮殿前を花の海にしたのは、ダイアナ妃がカリスマ性をもっていたためだが、ダイアナ妃がイギリス王家に嫁がなかったとしたら、あのようなカリスマ性をもてなかったろう。ダイアナ妃も妖精の一人だった。

  ダイアナ元皇太子妃が事故死した直後に、イギリス社会はマス・ヒステリアによって襲われた。新聞とテレビが”ダイアナ熱”を煽ったのだった。その真っ只中にも、イギリスの新聞は新聞の報道姿勢や記事を批判する投書を載せた。イギリスの一流紙の投書欄から、私(加瀬氏)の目にとまったものを、抜粋したい。

 「マスコミによるダイアナ妃のニュースの操作はひどいものだった。たしかに大衆がそれを求めていたことがあろうが、あまりにもゆき過ぎていた。(中略)マスコミがダイアナ妃の葬儀に沿道に出るといって予想した民衆の数は、途方もなく誇張されたものだった。五、六百万人が繰り出すといったのに、実際には百万人か、二百万人だった。」(「インディペンデント」紙、ピーター・ゴーシ、オクスフォード大学歴史学教授)
 「これはマス・ヒステリアだった。貴紙は民衆の力だといったが、狂気だった。私はおびただしい花束の写真に嫌悪感を覚えた。大量の花束を見て、恐怖に駆られた。一種のフローラル(花による)ファシズムではなかったか」(「ガーディアン」紙、マギー・ウィンクウォース、精神科医)
 「かつてわれわれは中国で人々が”毛語録”をかざして、スローガンを唱えているのをヒステリーと呼んだ。だが、今、同じような狂騒と浮ついた状況が、イギリスを支配している」(「ガーディアン」紙、ロン・ブレス、引退した化学者)
 「貴紙がパパラッチを批判した同じページに、皇太子と二人の親王が教会へ向かう写真を載せていたが、車窓の外から撮られたものだった。その写真は、恥ずべき覗き趣味以外の何物でもなかった。三人をそっと悲しませてやれないのだろうか」(「インディペンデント」紙、バーナード・オコーナー、牧師)

  戦後、日本の新聞は一貫して民主主義の担い手であるというイメージを広めてきた。新聞はそのように装ってきただけではなく新聞自身もそう信じてきたようである。これはばかばかしいことだ。
  私(加瀬氏)は日本の新聞は、民主主義とほど遠いところにあると思う。日本の新聞はどうしようもない非民主主義的な体質を備えている。日本で新聞を批判するときに、投書欄に注目することはあまりない。だが、私は投書欄を読むたびに、日本の新聞の質が低いことを慨嘆せざるをえない。

  ある朝の朝日新聞の「声」欄をとってみよう。読者からの投書の見出しを順にあげていくと、「介護認定には十分現場を見て」「疑問を感じる”基地で活性”」「作るか外注かおせちで悩み」「ゲーム感覚で不景気を楽しむ」「携帯が使える車両設けては」「五十七歳で挑んだ大型免許取得」「留学で知ったすてきな人々」というものだ。
  どの日をとっても、読者の提案や日常体験、随想といった投書が並んでいる。その新聞の論調にそった意見もあれば、微笑ましいような話題もある。だが、一口に言えば、暇潰しには役立とうが退屈きわまりない。
  日本の新聞は外からの批判を嫌う。読者と対等であると思っていないからだ。読者を見下ろしている。都合の悪いことを隠蔽しようとする体質は、倒産や廃業を強いられた銀行や証券会社とかわらない。

  しかし、葬儀の日に沿道を埋めて並んだ民衆は、イギリス人らしかった。号泣する者もヒステリックに叫ぶ者もいなかった。警官が涙を拭った。大寺院の鐘が一分ごとに鳴った。棺を乗せた砲車の轍の音が、虚ろに響いた。それほど静かだった。「ウェルダン・ダイアナ・サンキュー」(ダイアナ、よくやった。ありがとう)と低く呟く男の声が、テレビのマイクに入った。
  ダイアナ妃は美しく、若くして悲劇的な死を遂げたために庶民の心をとらえた。それにイギリス国民はアンダードッグ~負け犬を贔屓するという気質がある。判官贔屓なのだ。ダイアナ妃が義母のエリザベス女王や、チャールズ皇太子からいじめられたというイメージが、庶民のあいだに広まっていた。

参考:加瀬英明著「イギリス 衰亡しない伝統国家」
 加瀬英明氏は「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長
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