風の族の祝祭

詩歌の森のなかで、風に吹かれて、詩や短歌や俳句の世界に遊んでいたい。
著作権は石原明に所属します。

「週刊俳句」200号記念句会に投稿しなかった俳句

2011-02-19 22:13:38 | 俳句
インターネット「週刊俳句」で創刊200号記念句会の案内があったのでメール句会に投稿する。それとは別にリアルな句会の案内があって参加するつもりで作ったのが以下の句。結局父の緊急入院で参加できなかったが。
お題が「台」「東」「根」「岸」。


「台」 雪明り台車ばかりの貨車ばかり
「東」 強東風に最後の鮟鱇吊られけり
「根」 大根の葉にさくさくと月明り
「岸」 雛罌粟(コクリコ)やセーヌ左岸の晶子かな


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「逸」28号(平成22年12月発行)掲載俳句 その3

2011-02-15 07:22:07 | 俳句
<夏や果てなむ水鏡> その3


あの世でも遊びをせむと茄子の馬
梅雨晴間風枇杷色に熟るるかな
とまどひを繰返しをり走馬灯
暑からむ熱砂の底の蟻地獄
黄金虫落としてみてもハズレ籤
昼顔やこれぞ女優と思ひけり
山椒魚ほんとは嫌な水族館
蚯蚓鳴く亀も鳴くなり吾もなく
黒南風やカフカの髪に静電気
噴水の誰も止めねば止めどなく

夜の秋手擦れし聖書の熱さかな
晩年や遠きに卯波綺羅綺羅し
くちなはや晩年くねくねくねるなり
蜘蛛の囲の埃となりし秘密かな
紫陽花や花相似たり人の来て
木蓮が終止符のやうに落ちてゐる
蝸牛人無き世まで急ぐなよ
たこ焼の蛸ほどはある復讐心
蛸壷の身も蓋も無き暑さかな
五月雨や進化不明の頭蓋骨

原爆忌世界を終らせたくないか
外つ国の戦は知らず蟇蛙
飛び込めば肺から烏賊になってをり
夜濯や隣のテレビの昭和演歌
梅雨冷や口の中には口内炎
バウムクーヘンの地層を剥すネイリング
日照雨私は翼見失ふ
どくだみや握手なら骨砕くまで
胃袋の形に溶ける夏野菜
メルカトル図法で青林檎切つてみよ

炎昼や狂気の蛸の茹で上がる
二重虹よからぬ系図阿弗利加まで
偽系図薄荷オイルを二三滴
夕焼けや煙突折ってみたくなり
敗戦日あっけらかんと風呂故障
端居してパンジーの三色目を考える
また逢ふ日なけれど菫つつがなし
蜂の胸希望のごとく括れをり
人体として木下闇を出て行かむ
耳立てて犬猫私日雷

蝸牛友達一人溶かしをり
ぬばたまの即身仏や夏の蝶
アネモネと早口言葉で言ってみるか
聖五月チタンの翼にしてあげる
なめくじの体内時計くれないか
ピアス穴に堕天使親子喧嘩して
明易し人類一斉にゴミを出す
五月雨や座敷童子の蒙古班
無目的的に蛇泳ぎ去る極暑かな
胸板を叩き痰切る梅雨の冷え

背を伸ばす猫ながながし梅雨晴間
奇術師の人体も鳩も道具なり
炎昼や活字大きな未来論
携帯電話を切ればほどける夏星座
モアイ皆夏の汀に望郷す
スペインの夏ピカソ少年泣いてをり
よくみればうぶな葡萄でありにけり
ここからは竜の領分瀧煙る
金魚鉢うつろふものは水替て
舟虫のわつと走りて泣きたし

月光に溶けては駄目よ蝸牛
ボトルシップに時間ずれだす夏日差
猫の尾は月の扉の合鍵
走馬灯燃えてしまへと止めてをり
梅雨寒や頭痛で測る脳の位置
無花果の撃たれしごとく落ちてをり
カサブランカ全人格とはこんなもの
自画像より鯨が美しいなんて
手花火や無声映画の雨となり
突っ伏せば草から夏となりにけり

施餓鬼会や人間の子のぐずりだす
絵を描けば慈姑のごとき叫びかな
雲の峰翔べない翼退化せず
青林檎半分喰つて考へる
赤海鼠掬へば少し嫌がれり
行く春やマジックミラーの草食系
地球儀の夏の地帯を削りとる
夏果てて魔術の函の中はから
宅配便明日には着くと竜に言ふ
九紫火星と大見得切って蝿叩く

海鼠にも神はおはすと海鼠言ふ
立葵音叉のごとく濡れてをり
身の底に穴惑するもののあり
身の底の蛇穴時に吾を呑む
半年を育てて卵火蛾となり
黒南風や旗はためいていて安心
八月の指から清算青酸燦燦
恋情の白装束の曼珠沙華
玫瑰や造反有理の少年過ぐ
せやからなあなんぼのもんやどぜう鍋

夏の海進化を止めしもの元気
墜ちてこそ瀧たまきはる命かな
一葉一葉見えぬ神ゐし椎若葉
原爆ドーム肺の空洞吹くやうに
片陰に少年半身失へり
夏の空鷹の形を整へぬ
夏の空溶けて水色の蛸となり
山椒魚どうせだつたら枕くれ
雲の峰悟空のごとく猫の坐す
未来より黒揚羽来る死にけるや
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「逸」28号(平成22年12月発行)掲載俳句 その2

2011-02-14 07:53:54 | 俳句
<夏や果なむ水鏡> その2

黒南風やだんだん地中に沈みゆく
磔刑の罪びと見しや五月冨士
五月雨や屈みて息を引摺りだす
五月雨に傘の五月蠅き女高生
五月雨や色褪せ危ふし家族写真
驟雨過ぐみどりみどりと風の色
白南風や少年少女犬渚
葬儀果て卯浪の汀一列に
履歴書のまだ瑞々し青葉風
雨垂れの音する青梅一袋

聖家族画ありて四壁は黴うすら
落雷は白し青白し限りなし
五月雨や女女女脚を組む
梅雨晴や狼狽も嘘も洗濯す
五月雨や遅々とあぐねて謝絶せり
蛍来て掌から驟雨となりにけり
養殖の蛍の迷わず灯をともす
鯰にもかくも重たき頭骸骨
青田風列崩さずに百世代
永劫に坐る男や夏の河

そは鴉か鴉のかたちか夏日差
初夏や少年の背筋竜のごと
半夏生メールで届く忌の知らせ
炎昼や止まることなき花時計
七月には七月の蝶片陰道
蒲の穂や子猫を掬ふ十の指
矢車菊ファラオに手向けし宇宙かな
日日草日々はさあれど色々に
生き死にも石竹ほどの色使ひ
罌粟の花艶冶なりけり老女形

鉄線花のごとく舞台に出でにけり
夜も昼も紺の濃淡茄子の花
夕顔の蔓の勁さをまだ知らず
キャベツ皆蝶の未来を抱きをり
浜木綿や沈みきりたる沖のあり
十薬の花も茎葉も臭ひけり
蛍袋かくまで淡き色として
小蛇さえ赤き眼や蛇苺
斑猫とこれも同行二人かな
夏の絵具で夏の器を描きけり

南風立ちて鴎白帆とちりぢりに
喜雨険しき休耕田を溢れけり
夏制服の少女は夏へ一斉に
初夏の発音記号の少女かな
夏至の朝葉書の角に涼のあり
緋鯉放つ五月の水の若さかな
線香花火子等に童子の紛れをり
水中花も水も動かぬ日暮かな
大輪の鉄路を染むる血とダリア
遠雷やすでに光の雨となり

合歓眠れせめて地球のあるうちに
向日葵を美しと見つめる詐欺男
翡翠や熱帯のごとく魚を呑む
昼顔や黒日傘来るくるくると
見しものは見しと言ひけり蟇蛙
来ぬといふメールと夏日かき混ぜる
元軍曹ハチ公前の極暑かな
字余りのごとき法話や夏の夕
盂蘭盆会先祖写真の美少年
西東忌手際怖ろし活造

人界を抜けきれるはず夏燕
残照や卯波に帰心ありにけり
柿若葉赤子を闇に入れんとす
夏祭射的のごとく外れたり
炎昼やコインと散乱する言葉
鳳仙花塔婆の信女そのままに
余地量り骨壷納む梅雨の晴
夏至の日や何事もなく日傘閉ず
飛魚のガラスの鰭の青春や
和菓子には四季の名のあり鮎若し

灯を消せばこれほどの音夏終る
廃城と気づかず牡丹となりにけり
日盛りや原爆ドームに余熱あり
夏の海まんぼうふらりと旅に出ず
カンナさやげ静かに落とす棺の蓋
夏の雲蟻塚登る蟻臭ふ
南風南国もつらしと思ひをり
水盤の剣山位置に定まりぬ
蛍火や蛍の意思の明滅す
木下闇マクドナルドに途切れたり

五月には五月の鯨太平洋
開け放ち灯蛾捨て始まる一日よ
空蝉のごとき迷彩服ありし
薔薇名句出でず薔薇とのみ応ふ
くちなはは口から蛇となりにけり
蜘蛛吊るす洋品店の蛍光灯
阿修羅像少女にあらず青葉風
青葉若葉光りて音も光るなり
蜂の巣の羽音の絞る油照
涼しからむニコライ堂の厚みかな

盂蘭盆会声だけ聞けば声よろし
夕焼や西方浄土こんなもの
凹ませて麦藁帽子前被り
他人事の死は見飽きたり盆供養
命去りて空蝉変な貌であり
蝉時雨寝付のよさは父譲り
黒南風や脳裏に撓む水平線
柿若葉鬼女の許さぬこともあり
夕顔や鬼女の影踏み遊びをり
枇杷と云ふこの美しき種までも

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「逸」28号(平成22年12月発行)掲載俳句 その1

2011-02-13 12:39:16 | 俳句
*今回も300句寄稿したのですが、一度に300句もあると読むのが大変だとの指摘を受けまして、今回は100句づつ三回に分けて掲載することにしました。



<夏や果てなむ水鏡> その1

花吹雪優しい言葉は忘れてきた
初花やさらり輪廻の色使ひ
丸顔の鬼も怖ろし鬼やらひ
花御堂まだ見ぬものは美しき
夕凪の大阪平野の狭さかな
水馬水輪の数に紛れけり
既に無き星座の統ぐる夏の旅
マグリットの鳩なき空に虹の気配
雑草と刈られて終る姫女苑
牡丹花や雨のしこりのほどけだす

かたつむり渦は輪廻のくるくるぱあ
瞑れば故郷は怖し百日紅
小糠雨もみじ若葉を透かしをり
庭石を押して溢るる杜鵑花かな
紅薔薇滅びし都市の炎かな
青葉雨口で喜ぶ緋鯉かな
夕照や街はエーゲの海なのか
紅の円舞曲のごとき薔薇の風呂
青嵐まだ冷切らぬ写真立
病葉を蹴れば毛虫の色とりどり

熱帯魚かうして生きよと翻る
身の丈で生きる術なし虹二重
凄まじき一歩を残し蟾の死す
梅雨寒に宛先不明で戻りけり
夏蝶や通りすがりのそれだけの
皿にパセリその先にある黄泉の街
端午には鍾馗の居ましし昭和かな
五月武者眉間に老の覚悟なし
誰の忌ぞ薄クリームの薔薇を買ふ
白鳥の一羽はネガかポジなのか

無限とは青に染むれば夏となり
ためらはず薔薇に爪痕残しけり
内示あり匂ひおこせよ白薔薇
水耕のグラジオラスの羞恥かな
メロン切る怒哀じんわり溢れけり
紫陽花や一山の青ここにあり
夏日差し日記の埃掌で拭ふ
じやりじやりと蜆の怒り小さけど
夏日刻む解読拒む慰霊塔
うわばみよ命の締切決めてくれ

向日葵迷路でポップアップの兎かな
極楽の両手生えたる小鳥かな
鈴蘭の花数ほどの日々もあり
木下闇滲み出す蛍一二滴
かつ結ぶうたかたかつ消ゆ蝌蚪の尾も
蜩や何を告げよか告げまいか
極端を好きかと笑ふ時計草
天球儀の不安な一点釣鐘草
カサブランカ一糸纏はぬ立姿
初夏の浪の下にはユメタウン

還暦を過ぎて小悪魔蛍烏賊
家老邸精神病院黒揚羽
梔子の花や合はない鍵ばかり
レントゲン星空のごとき肺病痕
薔薇深紅お転婆娘の蜂もがく
死ぬ人の無き日なけれど余花に逢ふ
付加へることなし富士の柿若葉
かたつむりの時間で角だすかたつむり
スプーンで掬ひとりたし白薔薇
レイバンのサングラスだけ夏終る

蟷螂の子のやはらかく逆へり
ぼうふらの気配なけれど蚊の実存
蜘蛛の子の別れを惜しむ子もありや
青バナナ土産に遺骨収集団
紫陽花の葉裏に居留守蝸牛
蚯蚓乾く平らに乾くアスファルト
廃屋はまだ崩れざり蟻地獄
残像のやうな黒蝶枯山水
黒蝶やダミアの唄は知るまいに
まだ負けぬと軍鶏の眼の老てあり

朝顔のクレヨンの香嫌ひなり
秒速の蜥蜴の舌の隠語かな
蝙蝠も蚊も無きデオドラント街
雨蛙指の腹よりやはらかし
蟾蜍悲喜と云ふ字を宛ててみる
蛇の殻蛇に似しまま靡きをり
母蝮腹喰ひ破る子を許す
灯を慕ふは蝶にはあらず我もまた
斑猫の行方も知らぬ山路かな
空蝉の触れればしかと幹を抱く

青嵐中年のあんぱん立喰ひす
たまさかは雷雨が欲しと端居かな
聖五月明治女の聖書かな
雷の気や贄の足らぬと鵙の声
月の北極に雪降る夜の話せし
余花残花花の残像花となり
後悔は一度と決めて灯蛾を掃く
貨物列車の積荷怖ろし梔子も
薄暑きて角を曲がれば霊柩車
万物に臭ひのありて火星かな

特攻機もエノラ・ゲイもや夏の空
冷し酒ちりりと電流あるごとし
忘れ傘谷中の墓地へ走り梅雨
走り梅雨ままにはならぬ忘れ傘
青嵐草生すものの息の根を
薫風や少女は制服ひと掃ひ
未成年の髭剃る音や梅雨の朝
短夜に子は預言者のごとく泣く
青嵐叡山僧兵湧き出でし
黒南風や検尿のコップ手につかず

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